【INTERVIEW】吉野大作 / 1978~85年、GOM、後退青年、そして、プロスティチュートのこと

吉野大作アー写


いわゆる一発録りのコンセプトで、非常に短時間で終了させたと記憶しています

–:現代音楽、オーネット・コールマンにエレクトリック・マイルス、そんな要素が混じったのが、次に始まるプロスティチュートですが。
吉野:80年の2月まで、後退青年の活動を続けていましたが、自分の頭の中には、次のグループの構成がすでにありました。……そして、フリー・ジャズ系のミュージシャンを探していたところ、ギターの東條A機さんと、サックスの時岡秀雄さんと巡り会ったわけです。ベースはグッピーなどで顔見知りになっていた高橋ヨーカイ君です。最初のドラムは、NOCHI君でしたが、すぐに横山孝二君に変わりました。彼は、ヨーカイ君が連れてきたと記憶しています。

プロスティチュートアー写

プロスティチュート


–:プロスティチュートの最初のライブが80年4月、横浜国立大学野外音楽堂ですが翌5月に神奈川大学でのPASSツアー(フリクション、突然段ボール、グンジョーガクレヨンなどを発売したパス・レーベルの全国プロモーション・ツアー)のライブに参加します。
吉野:PASSツアーに関わっていた横浜の音楽企画グループからのオファーがあり、参加したと思います。共演バンドでは、フリクションが、とても印象に残っています。
–:そしてすぐミニ・アルバムを作りますね。
吉野:そう、8月に4曲入りのE.P.を目黒のマッド・スタジオで録音しました。後退青年と同じく東芝EMIの特販部の制作で。
–:そして、イギリスのラフトレードの配給をしていたジャパン・レコード(現・徳間ジャパンコミュニケーションズ)からオファーがあったんですか?
吉野:そこのディレクターだった芹沢のえさんという方が、ライブを何度か見にきてくれて、話が進んでいったように思います。彼女は、当時のロンドンの音楽シーンをダイレクトに体験してきたので、プロスティチュートのようなサウンドも比較的受け入れやすかったのだと思います。

プロスティチュートアー写

プロスティチュート


–:そこで発売された『死ぬまで踊り続けて』はどのように作られたのですか?
吉野:ロクソと言ってましたが六本木のソニー・スタジオでの録音でした。アンプ類等すべて自分たちの機材を持ち込みました。いわゆる一発録りのコンセプトで、非常に短時間で終了させたと記憶しています。余談ですが、プロスティチュートが録音する予定だったフロアで、大瀧詠一氏が作業をしていましたが、すぐに我々と交代してくれたのを思い出しました。

プロスティチュートでは、従来のように歌うために書かれた歌詞ではない作品を、ビートに乗せて、歌おうとしたわけです。

–:84年くらいまでは、プロスティチュートはライブが毎月数回と多いですよね。
吉野:東京、横浜でのライブが大半でしたが、名古屋、京都、大阪、神戸のツアーも忘れがたいですね。京都での反応が最もよかったかな、という印象があります。関西ツアーは、夏場に行うことが多かったのですが、ライブのない昼間には、甲子園の高校野球を見にいったことがありました。まだ、球場にラッキー・ゾーンがあった時代ですね。
–:ライブは即興ですよね。
吉野:曲の構成は、歌が基本になっていますので、サビを繰り返して展開または終わるなどの最低限の決め事はあります。また、リフがある曲もありますが、それ以外はインプロビゼーションです。そのため、ライブは1回限り、二度と同じ演奏は出来ませんでした。
–:インプロにも関係しますが、吉野さんの言葉の感覚、活動初期から在った哲学的で現代詩を思わせる詩の世界が、プロスティチュートでは見事に反映されます。パンクとダダ、ニューウェーブとシュルレアリズムの関係のように、ここでは、アンドレ・ブルトンやトリスタン・ツァラを感じます。
吉野:シュルレアリズムやダダイズムの詩作品に、折あるごとに触れてきましたが、70年代前半から同人誌などに自分の作品を発表する機会もかなりありました。それで、プロスティチュートでは、従来のように歌うために書かれた歌詞ではない作品を、ビートに乗せて、歌おうとしたわけです。つまり、以前から行われていた詩の朗読を、確実に音楽と一体化させようとする作業ですね。いわゆる現代詩的な作品を、インプロビゼーション中心のバンドの一つの楽曲として、創り上げようとするコンセプトでした。それらの作品中に、ブルトンやツァラ、あるいは日本のダダイスト詩人の具体的な姿は存在しませんが、意識の根底のどこかの部分で、ゆらりとうごめいていたかもしれません。

プロスティチュートアー写

–:そしてプロスティチュート、実は2003年まで続く吉野さんにとっては長期に渡るバンドとなりました。
吉野:今回発売されたライブ・アルバムは85年までの録音を収録しましたが、85年に横山孝二と高橋ヨーカイが脱退し、その後、杉山シンタロー(ex.スターリン)がベースで、土屋 巌がドラムで加わります。96年にシンタローが脱退したため、ヨーカイが復帰します。この頃よりキーボードに千野秀一(ex.ダウンタウン・ブギウギ・バンド)が参加し、2003年の解散まで続きます。
–:では、最後に40数年前の音源を今聴いてどうでしょうか
吉野:改めて、GOMのメンバーの演奏力の高さに感心しました。その時、自分はすでに27歳で彼らは20歳前後の若者でしたが、若さを感じさせないプレイですね。後退青年の各メンバーについても、同様です。当時、ある有名バンドのベースマンが、ドラムの付岡君について、「彼のドラムは天才的だ」と言っていたのをふと思い出しました。



『LIVE 1980-85』 吉野大作 & プロスティチュートアートワーク
『LIVE 1980-85』
/ 吉野大作 & プロスティチュート
2025年3/19リリース
フォーマット:2CD
レーベル:SUPER FUJI DISCS
カタログNo.:FJSP527
【TrackList】
DISC-1
01. 死ぬまで踊り続けて
02. FROGS
03. M.U.R.A.
04. FALLING HEAVEN
05. 試験管の嵐
06. ジグラットの魔女狩り
07. ここ、そして、ここじゃない場所 
08. そしてストリート・カーはゆっくり走る
09. MUTANT PUBへようこそ
10. AI O ITAMU UTA
[BONUS TRACK]
11. AI O ITAMU UTA [EP Version 1980]
DISC-2
01. エグゾポタミーの悪霊たち
02. 皮膚と骨の隙間に
03. 冷たい十字路
04. サーカス小屋から逃げ出す動物たちに捧ぐ
05. MISSING
06. FOZZDELIC FARM
07. 十二番目のジャガー
08. 涙ぐむ火山を見つめて
09. 後ろ姿の素敵な僕たち
10. ハルマゲドン
[BONUS TRACK]
11. FROGS [EP Version 1980]
ディスクユニオン
Amazon

【クレジット】
80.9 新宿ロフト 81.6 渋谷屋根裏 81.7 法政大学・学館ホール 81.12 新宿ロフト 82.5 京都拾得 83.8 山口県宇部市文化会館 83.10 目黒鹿鳴館 84.4 横浜シェルガーデン 85.11 東京造形大などのライブから選曲・編集
編集・マスタリング:George Mori
デザイン:ダダオ
解説:吉野大作

吉野大作 Vocal, Electric Guitar
東條A機 Electric Guitar
高橋ヨーカイ Bass
時岡秀雄 Sax
横山孝二 Drums




『LIVE 1978-79』吉野大作&GOM、吉野大作&後退青年アートワーク
『LIVE 1978-79』
/ 吉野大作&GOM、吉野大作&後退青年
2025年4/23リリース
フォーマット:2CD
レーベル:SUPER FUJI DISCS
カタログNo.:FJSP529
【TrackList】
DISC-1
[吉野大作 & GOM LIVE 1978]
01. 後ろ姿の素敵な僕たち
02. 賭博師のブルース
03. 朝のバスのブルース
04. 光り輝く場所へ
05. イッツ・オールライト・ジョン
06. 叫び声
07. ブルースを聞かせてくれ
[吉野大作 & ホワイト・ラビッツ STUDIO 2021]
08. 氷の上の街
09. 聞け、悲しみの歌
10. 鐘の音は絶え間なく
11. 追いかけても
12. 影さえも残さずに
13. 月の夜のいくつかの夢
14. 馬車馬の想い出
DISC-2
[吉野大作 & 後退青年 LIVE 1979]
01. この世はロック&ロール
02. Michiko
03. 後退青年
04. 街は病気だよ
05. 不滅の男
06. 放蕩息子の帰還
07. MUTANT PUBへようこそ
08. Michiko *STUDIO 1979 SINGLE VERSION
[吉野大作 & ホワイト・ラビッツ STUDIO 2021]
09. 影が呼んでいる
10. 曲がりくねったハイウェイ
11. 地下鉄の線路の上に
12. 雨よ降れ
13. 古びた木靴と帆のない舟
14. かすかな炎
15. 丘の上の小さな墓
16. 暗闇の中で
ディスクユニオン
Amazon

【クレジット】
DISC-1:
M1-4 横浜教育会館 1978年10月
M5-7 横浜国立大学 1978年11月
吉野大作 Vocal, Electric Guitar
佐藤ヨシカズ Electric Guitar
神山峰郎 Electric Guitar
堤トシフミ Bass
付岡オサム Drums
DISC-2:
M1, 2 横浜国立大学 1979年10月
M3-7 関東学院大学 1979年11月
M8 横浜FLAT STUDIO 1979年10月
吉野大作 Vocal
金井太郎 Electric Guitar
神山峰郎 Electric Guitar
HIGENO Bass
付岡オサム Drums




created by Rinker
Zach Top
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2025.5.31 21:00

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