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INTERVIEW

【SELF LINER NOTES】carpool 嵯峨山諒による1stアルバム『Come & Go』メモ



carpoolがアルバムとソノシートのシングルをリリースすると聞いて、彼らが1日店長をするという新代田えるえふるに行ってみた。
そこでフロントマンの嵯峨山諒が来場者に手渡していたA4の紙には、アルバム『Come & Go』の全曲に対する彼の手書きのセルフライナーがしたためられていた。
当日店内に流れていたマスタリングが終わったばかりという音源を聴きつつこのセルフライナーを読むという時間が非常に楽しく、これはここの来場者だけでなく彼らのアルバムを耳にした人やこれから耳にする人全てにも読まれるべきなのでは?と思い、その場でセルフライナーの掲載交渉をしてみた。
以下は快諾をもらって掲載させてもらっているセルフライナーの全文。
6/28に発売された『Come & Go』を聴きながら、未購入の方がどんな内容なのかを思い浮かべながら…思い思いの方法で読んで彼らのアルバムへのアプローチをしてみてほしい。




carpool 『Come & Go』メモ
マスタリングから一夜あけ、何度か家や外でアルバムを聴いてみたのですが、「いい曲色々入ってるなー」というくらいで、まだまだどういうアルバムかわかってないのですが、そういうのはそのうち色々気付いていくものだと思うのでよいとして、とりあえずこの曲はこうだったなーとか、こういう曲を参考にした、とかそういうことをメモっておこうというのがこの紙。何も考えずに書くのでうまくまとまるか不安でしたが、多分なんとかなった(執筆後)長いけどよかったら!
2017.05.28 嵯峨山諒

01. 漫画

なんかでっかい曲が作りたい、と思ったのかどうかはおぼえてないのですが、できた時は今までにないのできたなーと思ったような…。なんか漠然とでかいロックの感じとOnly Realの「Get it on」のミックスというか。歌詞もできた時はこんなんでいいのかなと思ってた気も。ともまつさんのコーラスと最後の湯浅のギター(サビ)が好きです。ロックのバカ感が好きだし大事だと最近思います。笑っちゃうようなカッコイイ感じとかね。



02. Summer’s Coming

短くてかっこいい曲作りたいと思って作ったような…?寺田が入ってから作った気がします。Superchunkの名盤『Here’s to Shutting Up』の2曲目が「Rainy Streets」という曲で、2曲目だけどそこでアルバムが始まる感じがよくって、そういうのが作りたかった。いい感じに仕上がった。



03. 予感

ともまつさんとZINEを作ってた時に作って入れた曲。もともとずっとあった2コのアイデアをくっつけてみたら成立するなと思ってできました。スーパーカーの「Lucky」や「DRIVE」、ゆずの「みぞれ雪」が元ネタっぽいもの。
ZINEのテーマは「恋」だったので、当時の自分としては自分史上1番くらいのラブソングな気持ちでした。レコーディングで城ちゃん(城明日香:ex. 恋する円盤)が歌ってくれてマジで泣ける感じになりました。城ちゃんにスタジオで歌ってもらった時、良すぎてみんな笑っちゃうテンションだった。「バンドでやれ」と言ってくれた内田るんさん、ありがとうございます。
PV撮影も楽しかった。PV見てね。



04. いい風

2014年、多分メンバーが減ってスタジオで新しい感じの曲を色々やってた時できました。シャムキャッツの「MODELS」に多大な影響を受けています。バカっぽいけど憎めないというか、なんだかんだでイイ奴みたいな曲かもしれません。素直さ。生活の肯定をしていきたい。ミックスでムチャ悩んだんですが、最終的になんかイイ感じになった。



05. hi

「ロックのバカ感が大事」というのが最もストレートに出た曲。Vampire Weekendの「Diane Young」とか、アレンジやミックスのムチャクチャさに勇気をもらい参考にしました。スタジオで作ってる時楽しかった気がする。なんかうまいこと言ってるバカっぽい歌詞も気に入っています。チャーミング。



06. TPO

気に入ってる曲。よくお風呂入ってる時に曲ができるんですが、この曲も多分そう。ストロークスっぽい感じだけど案外ストロークスにめちゃ似てる曲はなかった。間奏がバカっぽくて良くないですか?歌詞はサビができた時そうだな〜と思って、すぐできるかなと思ったけど、色々言いたいことあるし、完成まで時間かかりました。割と最近の曲です。ミックスがけっこうむずかしかったです。




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『Come & Go』/ carpool
2017年6/28リリース
フォーマット:CD / デジタル配信
レーベル:PASSiON RECORDS
カタログNo.:PSON-003
価格:¥2,000(CD、税抜)
【Track List】
01. 漫画
02. Summer’s Coming
03. 予感
04. いい風
05. hi
06. TPO
07. W.W.
08. ストーリー
09. ヤング
10. ゴーゴーゴー
11. 20xx
12. Come & Go





2017.7.2 20:57

【INTERVIEW】『Contact』/ Frasco



タカノシンヤと峰らるによる東京のメタポップ・プロジェクト Frasco。
1年ほど前にふとSoundCloudに現れ、印象的であり、どこか奇妙さを漂わせる曲を発表し出したかと思うとsuppa micro pamchopp氏がプロデュースを務めるようになり、六本木ヒルズで行われるイベントの提供曲を書き下ろし等を経て、わずかな期間でEP『Contact』を自主レーベルよりリリースするに至った。
ここまで彼らの活動を追っていて気がついたのだが、自分でも意外なほどFrascoの事で知らない事が多い。
Frascoのタカノシンヤとはやりとりがある事を幸いに彼らにインタビューを申し込んでみた。



メロディーを仕事中に思いついてしまって「あ、いいかも」とか思ってたらどんどん忘れていくんですよね…「脳のバカヤロウ!」とか言って急いでトイレに駆け込んで小声で歌ってスマホに記録したのを覚えてます(笑)

–:EP『Contact』のリリースおめでとうございます。リリースが終わっての感想はいかがですか?
タカノシンヤ(以下 タカノ):ありがとうございます、ようやくって感じです。Indiegrabさんに初期のSoundCloud(以下「サンクラ」)の曲を取り上げていただいたあの頃が遥か昔のようですね。CDリリースってやはり大変なことなんですね(笑)。
峰らる(以下 峰):ありがとうございます。手探りで進めることも多かったんですが、なんとか形になって嬉しいです。
–:今作はsuppa micro pamchoppさんプロデュース以降の割と幅広い時期の作品から収録曲を選んでいるようですが、こちら選曲の基準みたいなものはありますか?
タカノ:基準は特にないですが、周りから反応の良かった曲と、自分達が気に入ってる曲をバランスを考えつつ選んだ感じです。
–:「反応の良かった曲」と「自分たちの気に入ってる曲」がどれかを教えてもらってもいいですか?また、「気に入ってる曲」についての思い入れも聞かせてください。
タカノ:Dance、PEA、IrritationはライブやSNSで反応良かったので入れました。元気な曲が多すぎるかなと思ってシメにBlueをもってきた感じです。思い入れはどれも強いですけど、自分は特にDanceかな。この曲、メロディーを仕事中に思いついてしまって「あ、いいかも」とか思ってたらどんどん忘れていくんですよね…「脳のバカヤロウ!」とか言って急いでトイレに駆け込んで小声で歌ってスマホに記録したのを覚えてます(笑)。これはシンセのアレンジも結構苦労したのでリリースできて良かったです。
峰:サンクラに公開している時はDanceが人気高めの印象でしたが、リリース後はPEAの好評をいただくことが多い気がします。
Contactの4曲の気に入り具合は甲乙つけ難いですね…悩む。
Irritationはライブの定番なんですが、歌っててこの曲の番が来ると張ってた気がほぐれるので、個人的にこの曲は大切です。ポケポケしてるのが良い。

Toro Toro Sounds ロゴ



–:今回自主レーベルのToro Toro Soundsからのリリースとなりますが、こちらのレーベルはいつ頃から準備されていましたか?
タカノ:元を辿れば最初にツイッターやサンクラ、HP等のドメインを取得する時に当たり前ですが「Frasco」では取れなくて、でもブランディング的に統一感を出そうということで語尾にttsというのを付けてたんです。それが何かの略ってことでレーベル名みたいな感じを意識はしていて。それで年末年始くらいにCDリリースの話が出て「自主レーベルならTTSだ。じゃあTTSは何の略にする?」みたいな感じで峰とアイディアを出しあって「Toro Toro Sounds」という名前に落ち着きました。実際にレーベル業務が動き始めたのは今年入ってからですね。
–:略称から先についた名前なわけですね(笑)既存のレーベルではなく自主レーベルからのリリースというのはどのような意味合いを持っていますか?また、色々ご苦労があったと思いますが、一番大変だったことは?
タカノ:元々配信リリースは「PLAY TODAY」にお世話になっているのですが、フィジカルはやってないということだったので、「ならば今回は自分達でやってみようではないか」という流れでこうなりました。自主レーベルは自由度は高いですが、発注からPRまで全て自分達でやらなければならないので大変ですね。流通はULTRA-VYBEさんと話し合いながら進めまして、リリースに際してかなり親身に相談に乗ってくれて助かりました。あとは峰らるがレーベルロゴやCDのアートワーク等、デザイン関連を全てやってくれたので、そっちが一番大変な作業だったと思います。お疲れっす。オス。
峰:思いの外グラフィック系の作業が沢山あったので、私は暫く外界との交流を絶って引きこもり作業してたんですが、その間対外的なことは全部タカノがやってくれたのでそちらも大変だったと思います。Frascoは音作り以外の部分でも分業化されてるので何かと便利です。
タカノ:ちょっとベンチャー企業感ありますね。
–:Toro Toro Soundsですが、こちらは今後どのように運営、展開したいというようなビジョンはありますか?
タカノ:今のところは自分らがフィジカルリリースする時だけの便宜上のレーベルって感じですね。ただ峰らるが考案したロゴマークがかわいいので(笑)、今後レーベルの存在自体が広まっていっても面白いかもと思いますが、音楽活動と並行してレーベル業務をガンガンやってく余裕はまだちょっとないですし、何ならどこかにうちらのリリースをお願いしてもいいくらいに考えてるんで(笑)、自主レーベル的な展望とかは何も決まってません。

『Contact』はFrasco入門EPでもあると思うので、聴いた人にFrascoの世界に溶け込んで堪能してもらいたいと思ってまして、そのままを描きました

–:今回リリースパーティー、大阪、福岡、東京と開催されましたが、それぞれいかがでした?各パーティーで一番印象深かった事を聞かせてください。
タカノ:どこも最高でしたね。
大阪は主宰してくださった西川さんの采配のおかげもあり共演の方々との化学反応が素晴らしかったです。mukuchiのマリさんとは去年秋に調布の小さなバーで出会って「いつか一緒にライブやりたいね」と話してたので再会出来てほんと嬉しかったですね。
福岡は、僕は人生初だったんですけど、博多についてそのままタクシーで会場のDai-tuに直行したらいきなりHisatooさん(主宰)が握手で「おかえり!」と出迎えてくれて(笑)。イベント自体とてもアットホームで良かったです。熊本からはツイッターで交流のあったNostolaも参加してくれて、皆さん本当素敵な方ばかりで良い出会いにつながったイベントでした。
東京はもう、御存知の通りバチカの床が抜けるんじゃないかってくらい満員御礼で(笑)、めちゃめちゃありがたかったです。普段仲良くしていただいてる皆さんからお祝いでフラスコの容器に入ったお花が届いたのも感動でした。

東京リリパ会場に飾られていた花

(さらに…)

2017.7.2 19:00

【INTERVIEW】『all sheep sleep in yours』/ soejima takuma



音楽家・soejima takuma。
福岡を拠点として活動していた彼が、1stアルバムのリリース後に東京へと拠点を移す。
そのうちに彼が担当し提供する音楽が耳に入ってくるようになり東京での基盤を築いているのだなと実感し出した頃に2ndアルバム『all sheep sleep in yours』リリースの報が飛び込んできた。
ディストピアを生きる人々をテーマにしたという今作は、どのように産まれてどのように制作されたのか。
ディストピアを通して彼が目指した表現はどのようなものだったのか。
それらの疑問をぶつけてみるため、約1年半ぶりに彼にインタビューを申し込んだ。


これからは各々の創作性や活動、生活基準にフォーカス当てて、音楽を作っていけばよいのではないでしょうか

–:ご無沙汰しております。アルバムのリリースおめでとうございます。約2年ぶりのアルバムですが、今作はいつ頃から制作を始めたのですか?
soejima takuma(以下、soejima):ありがとうございます。今作『all sheep sleep in yours』は9曲目のunknown wordsという楽曲のみ4年ほど前の楽曲を少しリアレンジして収録しましたが、それ以外は東京に活動拠点を移してから書き始めました。トータルの制作期間は途中SEA LEVELの活動や他の仕事があったので、だいたい半年程度だったと思います。
–:上京後初となるアルバムかと思いますが、東京に出てきて制作環境に変化はありましたか?
soejima:制作環境については福岡時代のものをほぼ完全な形でそのまま持って来たので、上京をきっかけに機材を追加したり、減らしたりとかは一切なかったです。
東京に来た理由は単純にイベントやクリエイターの総数が圧倒的に多いので、そういう点に価値を見出しました。
会いたいと思った瞬間にすぐに直接会えるというフットワークの軽さは非常に大事なことなので、1stをリリースした時点で名刺代わりになると判断し上京を即決しました。

いまはSNSの普及でプロモーションのチャンスがフラットになりつつあるのに加えて高品質で低価格な機材が増えてるので地方創生とは言われてますが、僕の実感としてはそれが唯一無二の正解ではないように強く感じてるので、これからは各々の創作性や活動、生活基準にフォーカス当てて、音楽を作っていけばよいのではないでしょうか。



ディストピアという舞台は人々の葛藤や抵抗、心の動きなどが非常に掴みやすく、またその舞台における廃墟のような退廃的世界はある意味で幻想的だったり、耽美であったりするので自分の音楽観と非常に近いと感じてます。

–:前作『Bouquet』と比べるとエレクトロニクスの比率が上がり、少しそちらに比重が向いた楽曲が多くなっていると感じましたが、その辺りはいかがでしょうか。また、前作と比べてギターサウンドの扱いやラッパーとのコラボといった音楽の幅の広がりを感じますが、その辺りも意図的なものでしょうか。
soejima:そうですね。今作では意図的にクラシカルな要素は削いでます。
これは年々増加傾向にあると思うんですが、SoundCloudの登場以降、Bandcamp、Apple Music、Spotifyとあらゆる音楽を殆ど無償に近い形で楽しめる時代になったことから、昔のようにCDを買ったらまずは通して聴くという形は主流ではなくなっていて『話題になってる人を30秒ずつくらい掻い摘んで聴いてみる』という傾向が強くなってると思います(散々指摘されてることだと思いますが)。実際Bandcampの配信では各楽曲がどのくらいの時間、試聴されたかのデータを取れるようになってるんですが、だいたい7~8割位が半分程度しか聴かれてないのが分かりました。つまり最初の試聴の触りでダウンロード(購入)するかどうかをリスナーさんは判断するのでこの時間をどう有効に使うかが制作の鍵になってると思いました。
特に若手はイメージが固定されてない状態で試聴されることが多いため、どうしてもそういった部分に比重を置かざるを得ない状況になってるんだと思います。なので、今作では各楽曲を出来るだけ短くし、展開をコンパクトにまとめることで時間当たりの情報密度をより高め、各楽曲間もバラエティ性を重視して意図的に変えています。クラシカルな作品は聴き手に集中力を求める場面も多いので、そういった要素はどうしても削がざるを得ませんでした。
–:今作は「ディストピア」をモチーフにした作品との事ですが、「in a cube」「where i am」「numbers」と、ディストピアをイメージさせるタイトルが並んでいます。soejimaさんの中でイメージしたディストピアとはどのようなものでしたか?
soejima:そうですね。今作の各楽曲には明確なテーマというより元ネタにあたるディストピア作品が存在していて、タイトルが直接的もしくは間接的なヒントになっています。制作にあたって、人間の内面にフォーカス当てたものを作りたいと感じてたこともあって、作品のテーマ設定をどうするかすごく悩んでたんですが、ディストピアという舞台は人々の葛藤や抵抗、心の動きなどが非常に掴みやすく、またその舞台における廃墟のような退廃的世界はある意味で幻想的だったり、耽美であったりするので自分の音楽観と非常に近いと感じてます。
–:M12の「hailsham」はカズオ・イシグロの『Never Let Me Go』から?
soejima:まさにそうです。この作品はごく静かで控えめな抵抗の物語なのですが、興味あれば是非小説を手に取ってもらえたらと思います。


–:今作を制作するにあたってインスピレーションを与えてくれたものなどがあればきかせてください。
soejima:前の質問でも触れましたが、今作『all sheep sleep in yours』ではすべての楽曲にそれぞれモチーフになる作品が存在しています。前述の小説しかり漫画だったり、映画だったり幅広く影響を受けてます。今作ゲーム向けに書き下ろした楽曲も収録してますが、そちらも偶然ディストピア(ポストアポカリプス)が舞台になっていたので、ゲーム作者のところにょりさんの許可を得てアルバムに収録させて頂きました。

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通常の制作とは視点を変えながら書くので、新しい発見が常にあり楽しくやれています

2017.6.30 19:00

北 航平『Imbalance Order And World』インタビュー






京都を拠点に活動し類い稀な才能を持つ音楽家/打楽器奏者である北 航平による待望の3rdアルバム『Imbalance Order And World』が完成。世界的にも非常にレアでとても美しい音色を奏でるアレイムビラ(カリンバの一種)を中心として数種類のスリットドラムなどの音階打楽器、ジャンベやウドゥドラムをはじめとした膨大なパーカッション群、ピアノやトイピアノなど様々な生楽器と肉声を取り入れ更なる独自のスタイルを探求した本作に関して、制作スタイルやその手法などを中心に語ってもらった。

弱さや暗さの中から溢れ出る誰にも負けない強い熱量のようなものを表現できたらと思ってます

–:『Imbalance order And World』を聴かせていただいて、とても文学的で物語性があり、様々な感情が描かれているように感じました。
北 航平:そう感じてもらえたならとてもうれしいです。感情に関しては、今回の最新作はもちろん、1stアルバムの『endless cycle of rebirth』や2ndの『akashic records』からすべて一貫してなんですが、よくあるような明るく強く前向きな部分だけを描くというのはあまりしたいとは思わなくて、人の弱さや暗さ、複雑な葛藤なんかにも焦点を当てて描きたいというのはありますね。でもその弱さや暗さの中から溢れ出る誰にも負けない強い熱量のようなものを表現できたらと思ってます。物語性に関しては非常によく言われるんですが、そういう曲が好きなので勝手にできてしまうんです。むしろ無機質なものを作るのは感情移入ができず作業にノレないんで、持続して制作を詰めて行くのが難しい気がします。
–:楽曲制作時はどのような過程で作業を進めているのでしょうか?また比較的変わったアプローチなども見られますが、アイデアの源などを教えてもらえますか?
北 航平:まずは映像のイメージが先に浮かびますね。少しオカルト的で怪しく聞こえるかもしれないですが(笑)、頭上高くの空中に前後左右上下に広がる立体的な抽象イメージが浮かんでるんです。それがすごく大きな物から小さな物まで様々なサイズ、様々な色や温度を持っていて、しかも配置的にとても芸術的で絶妙なバランスで並んでるんです。例えるなら画家のミロの後期の作品みたいに。それをいつも音として分かりやすく具現化したいと思ってるんですか、それがなかなか難しくて、いつもその映像イメージの半分も具体化できていないかもしれない、というジレンマがあります。その為にもっと必要な技術を磨いたり、枠から外れた斬新な表現方法を常に模索しています。
–:北さんの作品は一般的にはエレクトロニカと呼ばれるジャンルにあると思いますが、その中では特にリズムに非常に個性を感じます。何かこだわっている部分などはあるのでしょうか?
北 航平:リズムに関しては、やはり打楽器奏者なのでそれについて考えることが好きですし、相当重要視してますね。苦労する点としては、昔から大好きな黒人音楽などのグルーヴと、先程お話した抽象イメージを具現化する作業をうまく融合させたいと思ってるので、その微妙な兼ね合いが難しいです。一般的なノリというものからあまりにも外れ過ぎると聴き辛いと思うので、自然なグルーヴも残したい。でもリズムにも映像的な表現や斬新な手法も取り入れたいし、と欲張りなんです(笑)
–:そのお話はアルバムを聴くとよく分かる気がします。正円でなく楕円で回っているようなグルーヴというか、直線ではなくジグザグ走行というか、何か不思議で複雑なニュアンスを感じます。
北 航平:ありがとうございます。でも、それは企業秘密というか(笑)、まあ、たいしたことではないかもしれないですけど、「3」と「4」の要素を同時に存在させることは非常に多くて、それをあえて意識して多用してたりしますね。具体的には、四分音符と二拍三連、八分音符と三連符、十六分音符と六連符などを同時に並走させることによって生まれる独特の時間の流れというのがあるように思っていて、これは非常に好きなニュアンスなんです。例えば、サルサなどのラテン音楽では4と3の要素が同時に進行するのは盛り上がる部分だったりアクセントとしてよく使われる手法でもあって、あの独特の空間や時間がグニャっと歪むような表現に昔からとても惹かれていて、この感じは何だろうと色んな実験をよくしていましたね。あとは、十六分音符のスクエアとスウィングの中間、いわゆる「ちょいハネ」みたいなことはよくあるのでもちろんのこと、八分音符の「ちょいハネ」はコントロールするのが意外と難しいのですが、ピンポイントを見つけるとすごく絶妙なグルーヴの回転をしてくれるので気に入っている表現のひとつでもあります。楽譜では表せないポイントが大切な気がしますね。



今回の3rdはアルバム全体の80%くらいが生楽器から生まれた音でできているんです

–:デビューアルバムから本作まで三作とも全てにボーカル&タイトル考案で参加されてるカルネイロ(ex.Fonogenico)の高山奈帆子さんの役割とはどういったものでしょうか?
北 航平:先ほどの物語性の話にも通じるんですが、僕が抽象的なバランス重視で作った作品に、彼女が具体的な「名前」というものを与えてくれることにより最後に生命を吹き込まれるんです。毎回あまりにもしっくりくるので、出来上がるたびに「ああ、この子(曲)はこういう名前だったのか」と本当に納得します。そして、もちろん彼女のボーカルも物語性には不可欠で、ビョークに通じるような空気感と、ある種少年のような個性的な声によって、よりアルバムの感情的な部分や色彩性を高めてくれていると思います。そういう意味では、僕の作品を完結させる役割を担ってくれていると思いますね。
–:技術的にはかなり高度で複雑なことをされてるのに、飽きずにすっと一枚を通して聴けました。
北 航平:最終的に全ての曲のバランスやディテールに至るまで細かくディレクションをしてくれた今回のアルバムのリリース元であるPROGRESSIVE ForMのオーナー・nikさんの手腕によるところは大きいですね。今回初めて一緒に仕事をさせてもらって、あらためて客観性というのは重要だなと思いました。いくら一人で全身全霊を傾けて推敲に推敲を重ねて制作していても、やはりどこか見えない部分というのはあるもんだと痛感しましたし、アーティストのこだわりと、リスナーの視点とを繋いでくれる役割というのは本当に重要だと感じました。
–:アルバム中で本当に多岐にわたる様々な楽器を使われてますが、一部を紹介してもらえますか?
北 航平:今回の一番のポイントとなる重要な楽器はやはりアレイムビラですね。これはアフリカの民族楽器カリンバを進化させて近代化したアメリカの楽器なんですが、サンディエゴの職人のおじいちゃんがほぼ一人で作っていて受注してから届くのにものすごく時間がかかりました。でも本当に綺麗で奥行きのある澄んだ音がします。4オクターブも音域があるのでほとんどの楽曲にも対応できますし、またステレオのライン端子も備わってるので、コンデンサーマイクでの空気感と混ぜて録音しています。あとは、RAV VAST DRUMというUFOのような形をしたスリットドラムも比較的たくさん使用しました。これはハングドラムとも言われる種類の音階打楽器で、ロシア産の物をドイツのお店から送ってもらいました。暗く深い、倍音をいっぱい含んだ音色が特徴で、普通に鳴らす単音や和音だけでなく、逆回転いわゆるリバースってやつですね、それがすごくザラザラした良い質感になるんですよ。なので、一聴したらそれとは思わない音も、そのRAV VAST DRUMの仕事だったりします。他にも、ジャンベやカホン、ウドゥドラムなど色々な打楽器群、それと今回はドラムセットも積極的に使ってみました。
–:元々はスタジオミュージシャンでドラムが専門なんですよね?
北 航平:実はそうなんですよ(笑)、ポップスのバックのお仕事はもちろん、ブラックミュージックなどのルーツ系やクラブミュージックなんか結構叩いてたんです。でも、今までの1stや2ndアルバムではほとんどドラムは使ってなかったので、せっかくドラマーなんだからもっとドラムを入れようよ、という声も結構多かったので、今回は頑張って入れてみました。といっても、いかにもドラマーのソロアルバムみたいな感じや、いわゆるよくある定型のドラムパターンという感じの入れ方にはしたくなかったので、色々と試行錯誤して、入れ方を考えるのに少し時間を費やしましたね。生音っぽい入れ方をしてない音も実は生ドラムだったりします。そういうドラムの音を含め今回の3rdはアルバム全体の80%くらいが生楽器から生まれた音でできているんです。その甲斐もあってより有機的なサウンドになったと思っています。アレイムビラなどの自分にとっての新しい楽器ではなくて、数十年訓練を重ねた楽器はやはり作品作りにおいても扱いやすかったですね。ドラムは、ほぼ脳内のイメージをそのまま自由自在に手足に伝えることができるので、そういう意味ではドラムセットを使ってみるのは成功だったかな、と思います。

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やっぱり一番は手塚治虫で、最も長い間ハマり続けていて、今現在でも最も大きな影響を受けています


2017.6.2 19:38

【INTERVIEW】変わる変わる変わる。『A.O.S/血漿』



濱野祐輝(Vo. / Gt.)と青栁昇太郎(Dr. / Cho.)によるロック・バンド「変わる変わる変わる。」。両A面EP『A.O.S / 血漿』を2017年4/21にリリースし、5/1から配信・流通を始めている。今回、二人に楽曲作りへの向き合い方や最初に出会った時の話についてインタビューを行った。

誰よりも自分に聞いて欲しい

―:「変わる変わる変わる。」の楽曲を聴いて、本人たちに聞きたかったのが、ズバリ誰に聴いてほしいと思っていますか?
濱野:女子大生。
―:ん?え?どうして?
濱野:昔から女子大生が好きなんで。
一同:(笑)
―:本当に「好きだから」っていう理由?
濱野:いや、女子大生を好きなのは嘘じゃないけど、正直、誰にとかは考えてないです。ほんとに、ただただ、自分が聴きたい曲を書いています。
―:では、一番に聴いて欲しいのは自分ってこと?
濱野:あー……自分に聞かせるために書いているっていうか、そういう曲が多いですね。
―:「自分に聴かせたい曲を作る」ということだけど、どういうときにそういった曲が出てくるんですか?
濱野:どういうときにっていうのはなくって、普通に生活していてメロディーが浮かんできて、浮かんでくるものはだいたいかっこいいんです。「誰かこういう曲やってくれないかなー」と思うんですけど、誰もやってくれないから自分で作るという感じですね。せっかくバンドやってるんで。出来上がったものを青栁だけじゃないですけど、みんなに聞かせて、ブラッシュアップしていって、っていう感じですね。
―:青栁さんは楽曲をもらって、編曲などどういう気持ちで取り掛かるんですか?
青栁:7割から8割は僕らで作っていて、あとの部分はプレイヤーに任せるっていうスタイルが多いんです。僕としては、結構頑固だから「いいじゃんいいじゃん」って軽く言われると、許さないですけど。
―:やっぱり譲れないところは譲らず、こだわりたい、と。
青栁:うちはサポートメンバーが変わることが多いから、なかなかいつも同じように、という感じでは作れないんです。そのうえ、納期とか時間とかが迫ってきて、関わっている人達全員がMAXにやりたいなって言うことを出来ないなって感じます。ただ、今回の2曲はサポートメンバー全員が得意な曲調だったので、みんなで作りたい物を作れたんじゃないかなと思いました。
―:『A.O.S』と『血漿』を作ったきっかけってなんでしょうか?
濱野:作るぞと思って作ったことがなくって、書きたいから書くみたいな感じで。『血漿』の方は日記のように書いたっていう感じです。ちょっと嫌なことがあって、それを単純に出てきた言葉を歌詞にした、みたいな。
―:その嫌なこととは……?
濱野:ギリ言えないです。(笑)
―:嫌なことの発散、みたいな感じですか?
濱野:そうですね。ストレス発散法みたいなところがあります。だいたい、歌詞は日記で、曲は自分が好きな曲を書くみたいな気持ちですね。
―:『A.O.S』の方はどうだったんですか?
濱野:たまに「何かのために歌詞を書こう」と思うことがあるんですよ。ドラマとかアニメとかを見て、「もし、プロデューサーからエンディングテーマを依頼された」という設定で作るなんてことをしていて。
青栁:『堂々巡りのその果てに』とかそうだよね。
濱野:そういうシリーズと、あとは人のためにじゃないですか、人をモチーフにして書くことがあるんです。『MEME』とかそうなんですが。元サポートメンバーのベーシストに向けて書いて。『A.O.S』も青栁に向けて書いた歌詞です

受け取るための鍵が必要




―:今回の2曲、『A.O.S』と『血漿』は難産でしたか?
濱野:もともとは前からあった曲で、『A.O.S』はメロだけで言うなら、20歳頃からずっとあった曲ですし。
―:温めていた?
濱野:温めていたというよりも歌詞、どうしようかなって。メロが結構キャッチーだから、歌詞に困っていました。
青栁:これ、やり方が汚いんですよ。この歌詞、『変わる変わる変わる。』のDropBoxにこっそり上がってて。メロとかなく、歌詞だけ。歌詞を見たときに、ソッコーで電話して「お前な!」って。
濱野:よくわかったよな。「青栁の曲だよ」って言うつもりなかったのに。
青栁:その前に『そんなこと』っていう曲があって、そのときも「お前さぁ……」って。(笑)
濱野:そのときは、青栁に色々あって……。
青栁:交換日記かよ。(笑) その時期、丁度僕が長く付き合っていた彼女と別れて。
濱野:「お前、大丈夫かよ」って。
青栁:今まで一番長い歌詞が上がってて「うわーメッセージ性の塊だよ」って思った。でも、何の先入観も持たずに読んでいても、「あれ? もしかして、これは俺のことかな?」って思いはじめて。
―:濱野さんはバレないと思ってやっているんですか?
濱野:バレないと思ってやった。でも、『そんなこと』については時期が時期だったし、言おうかなって思ってた節もあったんだけど、『A.O.S』はバレないと思った。でも、青栁ぐらいだよ、誰かを軸にしたもので気付かれるの。
―:ということは、青栁さんはある程度歌詞の内容について、自覚している部分もあった、と。
青栁:まあ、察しが良いですからね。濱野にかけた電話の第一声が「殺すぞ! 何してくれとんじゃ!」ですから。(笑) 「こういうことするからお前は気に食わんのじゃ!」って。(笑)
―:どこで自分のことを書いている歌詞だと気づきましたか?
青栁:ど頭ですね。だいたいこういうことを言うヤツって、70%ぐらい俺だなって。途中「浅はかに期待するから すぐ裏切られる事になるのでした」って歌詞の部分で俺だったらいいのにって思いましたし。だって、可愛くありません?
―:では、『血漿』の方ではどうだったんでしょうか?
青栁:『血漿』で覚えているのは、4、5年前になるけど、前のバンドが解散してからまたやろうってなったときにあったんですよ、「この曲をやるから」って感じで。歌詞を読んで、その時の濱野の状況を知ってたから、「まあ、そうなるよね」って。(笑)



―:お二人はなんだかんだ言っても近いですよね、考え方というか雰囲気というか。
青栁:根本は似たもの同士だなって思います。日本全国歌詞書いている人は理解出来ると思うんですけど、鍵になる受け取り方を持っていないと、受け取りきることができないなって。逆を言うと、その鍵さえ持っていれば、その人の伝えたいことをがっつり受け取ることが出来ると思う。歌詞に寄っては、鍵が最初から空いている歌詞とかもあって。それこそみんなに共感が得られ易いような。濱野の曲って、鍵がないと読めない曲が多くって、それがインディー感だと言われればそれまでなんですけど。(笑)
―:それは濱野さんの書く歌詞に物語性、文学性があるからだと思います。
青栁:何であれ起承転結はすべてに存在していて、ただその鍵となる立場というか見方がないと読めないなって。僕は誰よりも近い位置にいて、歌詞を読み解けているから、一番贅沢なリスナーなんですよね。もちろん、たまにわからないこともあるんですけどね。それこそ、『A.O.S』がすぐに自分のことを書いているなって思ったのも、いつも喋っているからこそだと思います。
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二度とこんなヤツと会わねぇ



2017.5.11 22:00

【INTERVIEW】satohyoh『inacagraphy+』インタビュー



風景の音にアコースティックの音を添え、サンプリング等の手法を交えて制作する「音メモ」シリーズが好評の秋田の音楽家、satohyoh。PROGRESSIVE FOrMよりリリースされた初音源集『inacagraphy+』は、アコースティックな音に豊かなサンプルや景色の音を混ぜ合わせ、田舎の景色や日本の原風景に寄り添うサウンドが表現されている。初リリースを迎えた彼に、作品の紹介を兼ねて今の気持ちを語ってもらった。

のどかな風景はどこにでもあるので、感じ入るものがある人にはほっとしてもらえるのかもしれないです

–:音源を聴かせていただき第一印象として懐かしさや郷愁に感じました。タイトルの「inacagraphy+」(イナカグラフィプラス)には田舎というフレーズが入っていますが、このタイトルに込めた意味や思いはありますか?
satohyoh:“田舎暮らし”を文字って作った造語ですが、田舎暮らしの記録という意味にしています。以前に配信限定の“1”と“2”があって、今回はそれらを練り直して、新曲や未公開だった曲を加えているので“+”を付けました。あとは“+”のあとに聴いてくれた方の名前がくるようなイメージを持ちたいなと思っています。
–:秋田で音楽を作られているということで、大まかにどのような制作環境なのですか?
satohyoh:自宅には録音機材とギター類とアップライトピアノが置いてあります。日頃から短いフレーズをたくさん録音しておいて、編集時に組み合わせていくような感じです。少し離れた小屋みたいなところにドラムとアンプがあってちょっとだけ大きな音も出せます。こういう環境も田舎特有かもしれないですね。
–:soundcloudやnoteで「音メモ」シリーズを公開されていますが、アルバムにも様々な景色の音が入っていますね。音メモが活かされている楽曲はありますか?
satohyoh:半分くらいは音メモをベースにしています。例えば1曲目の「roof snow」は雪が解けて屋根を滑る音が入っていますが、3曲目の「ame to asa」では雪が雨に変わっています。曲順が進むと虫の声が聞こえて、枯葉を踏む音になって、また吹雪や除雪の音になって、1曲目の雪解けの頃に帰るという。
–:細かく聴かせていただくと、まずは音の重なり方が丁寧だなと感じました。中盤は特に様々な音を使っているように思いますが、音を重ねる上で意識されていることはありますか?
satohyoh:意識というより好みなんですが、あまりメインのメロディがくっきりとしていない方が心地よく感じます。聴く度に別の楽器のメロディを追ってもらえるようなものになればうれしいです。
–:遠くで聞こえるような音がまた気持ちいいですね。空気感のあるサウンドが多くそれらが全体で包む込むような音楽になっています。個人的には聴いていてほっとする、安心する音楽に感じます。
satohyoh:ありがとうございます。音メモの感想に、自分の住んでいるところに合うというものがあり、フランスの方からそう言われたときはびっくりしましたが、よく考えたらのどかな風景はどこにでもあるので、感じ入るものがある人にはほっとしてもらえるのかもしれないです。
–:インスト曲が中心ですが3曲のボーカル曲も個性があって面白いですね。「ame to asa」はアイディアが詰まっていて楽しいですし、「sukimakaze to mikansei na uta」「tone」はとてもシンプルな感想ですが単純にいい歌だなと思いました。この3曲について何か気を配ったことや聴いてほしいポイントなどがありますか?
satohyoh:「ame to asa」と「sukimakaze to mikansei na uta」は友人がたくさんサンプルを提供してくれたので、曲の中で会って楽しくセッションしているようなものにしたいなと思いました。「tone」はフィールドレコーディングを手伝ってくれる友人の結婚式がテーマだったので、一緒に録音した音も使いつつ厳かな雰囲気にしました。ボーカルを際立たせるというよりは、やはり全体の心地よさを意識しました。
–:その中に印象的な歌詞もありました。“きっと私は未完成でそのすきま風が歌になる”や、“みんながみんな未完成で誰かの歌探してる”の部分に、ご自身の音楽への向き合い方が覗えるのかなと思いましたが、どうですか?
satohyoh:できないことが時には個性になるというのは、言い訳に使うとよくないですが向上心を持ちつつそう思えたらいいな、と。そうすれば人にも優しくなれる気がしますし。音楽への向き合い方はそうですね、寂しい時や何かが足りない気持ちのときに音楽を聴くことも多いので、そうかもしれません。

今できることは詰め込んだので、自己紹介となりスタートとなる作品としてとても満足しています

–:好きな音楽ジャンルとしては、やはりエレクトロニカ/フォークトロニカなどですか?
satohyoh:もちろん好きですが広く浅くですね。子供の頃にカーペンターズを聴いて古い洋楽に興味を持って音楽を聴くことが好きになって、そこからずっと広く浅く。最近はカナダのBroken Social Sceneの久々の新曲をリピートで聴いています。
–:作る方ではどうですか?参考にしているアーティストや、この人に近づきたいなという方はいますか?
satohyoh:細かくはたくさん参考にしています。この曲のこの楽器の音がいいなと思ったら、近づけてみたり。それでいうと、どちらかといえば精神面というか、編集作業を始める前にfishmansのインタビュー集を読むと気合いが入ります。
–:終盤へ進むと、より穏やかな楽曲に深く没入できる感覚があります。先程もお話にありましたが、カレンダーをめくって季節が廻っていくような作品にしようという構想は最初からあったのですか?
satohyoh:ある程度編集が終わってそろそろ曲順をというときに、季節通りにしようと思いました。通して聴いてもらえるようイントロアウトロを変更したり。なので、廻っていくと言ってもらえたのはうれしいですね。
–:お話も含めやはり統一感やコンセプトがしっかりした作品であると感じました。初めてのアルバム制作、満足度はどうですか?
satohyoh:今できることは詰め込んだので、自己紹介となりスタートとなる作品としてとても満足しています。この人に協力してほしいとか、ジャケットはこの絵がいいとか、制作前に考えた希望はすべて叶っていますし。あとは聴いていただいた方に満足してもらえるかどうか。そうなることを願ってます。
–:ジャケットの絵はとても印象的ですね。
satohyoh:近藤康平さんというライブペインティングなどの活動をされている方の絵です。一度自分が携わった曲でライブペイントをしていただいて、すごく大きな絵だったんですが真ん中を切り抜いていただき持ち帰りました。飾っているとどの季節にも見えてきて、絵の中の二人がこちらを向いて見えるときと向こうを見ているように思うときがあります。ずっとこの絵を眺めて作ってきたので、初めてのリリースに使わせていただけてうれしいです。
–:最後になりますが改めて、初の全国流通版となる作品をリリースした今の率直なお気持ちと、今後の目標などあればお聞かせください。
satohyoh:リリースのお話をいただいたときは実感がなくて、ただただ驚いたんですが、CDになって手に取ったときはうれしくて息がもれました。PROGRESSIVE FOrMさんにとても感謝していますし、1枚のアルバムを出すということにたくさんの方が携わっていただいていることを知ったので、その信頼に足る作品になれていたらうれしいです。この作品を作っている間、音メモをお休みしていましたが、今後も続けます。soundcloudやnoteで応援してくれている方がCDリリースをすごく喜んでくれて広めようとしてくれる人もいて、その気持ちにも応えたいなと。この作品でsatohyohを知っていただいた方には、まずは「inacagraphy+」がお気に入りの一枚になってもらえたらうれしいですし、さらに心地いい音楽を目指していきますので今後も聴いていただければと思います。

インタビュー・文:ニワケンジ




『inacagraphy+』/ satohyoh
2017年4/14リリース
フォーマット:CD
レーベル:PROGRESSIVE FOrM
カタログNo.:PFCD67
価格:¥2,000(税抜)
【Track List】
01. roof snow
02. yukinohateharuurara
03. ame to asa
04. sukimakaze to mikansei na uta
05. garden curtain
06. sanpo
07. folktale
08. returning
09. gloomy snowday
10. tone
11. children grow up surely
12. paragate

all tracks written, performed and produced by satohyoh, 2015-2017 akita, japan

except

vocals
M3 by asako
M4 and M10 by airi hashimoto

M3 and M4 guitar by yusuke ogino
M4 bass by koki sasaki
M4 drum by yuta yamazaki

M4 studio session sample by ukishizumi
sound effects sample by sato-dai

artwork by kondo kohei
photography by satohyoh







2017.4.29 12:00

【INTERVIEW】MONO NO AWARE『人生、山おり谷おり』



その日、渋谷は雨だった。咲き乱れ、まさに見頃となっていた桜の花びらは、4月で一番だったといえそうな強い雨に打たれ、散り散りにアスファルトへ落ち、道路脇の排水溝へと流れていった。

今回のインタビューは、そんな日に行われた。メンバーの幾人かが遅れてしまうほどの強雨とは裏腹に、バンドのこと、これまでのこと、これからのこと、彼らはそれぞれに話してくれた。

そのなかでギターボーカルの玉置はこう語ってくれた、「感情を押し付けるようなバンドになりたくはないかな」と。

そこから続いていった会話をしているときの、玉置の眼をぼくは簡単に忘れられやしない。それまで笑いもたびたび起きるような穏やかな空気が、この話になったとたんに、ピンと張り詰めたのを感じたことも忘れやしない。

渋谷の桜は散り、次の季節がやってくる。
ファーストアルバムを生み出したMONO NO AWAREが、つぎにどんな花を咲かせるのだろうか?待ち遠しいかぎりだ。

僕らとGi Gi Giraffeは土俵が違いますが、曲作りという点ですごく嫉妬してしまうほど魅力的ですね(玉置)

最初にお聞きしたいのですが、バンド結成のきっかけはもともと玉置さんと加藤さんが高校の時に同級生で仲がよかった、ということから始まっているそうですね。
加藤成順(ギター:以下 加藤):僕らは八丈島出身で、同じ地元に生まれたんです。
気になるのでお聞きしたいのですが、八丈島の街はどんな場所なんでしょうか?
加藤:コンビニとかチェーン店はないし、スーパーも8時に閉まるようなところですね。あとは海と山しかない、そんな場所です。
玉置周啓(ギターボーカル以下 玉置):地域の人とのつながりがこっちよりも密接だと思います。父や母に加えて、地域の人々に囲まれて生活してきて、何十人もの親の中で育ってきたと感じてます。
お2人は音楽とどう出会ったんでしょう?
加藤:音楽を意識して聞き出したのは、中学でインターネットを使いはじめたころからですね。島だとコミュニティが小さいのですぐに広まるんですけど、僕らが中学2年のころはバンドが流行ったんです。その時に友達どうしで「これがいいよ」「あれがいいよ」とおすすめしあって、L’Arc~en~CielやGLAYなどのヴィジュアル系をその頃は聞いてましたね。不思議なのが、同じ頃に東京で流行っていたバンドが同じようにこっちでも盛り上がっていたということ、それはインターネットのおかげだったのかな?と思います。
玉置:ぼくはラジオでしたね、ラジオを中1の頃から聴いていて、気になった音楽をインターネットで調べたり、CD置いてあるのが電気屋しかなかったので、その電気屋で探したり、品番を伝えて取り寄せてもらってました。
ラジオを聴いていたということですが、いまパッと思い出して「これ聴いてたな」という曲を思い出せますか?
玉置:・・・氣志團「One Night Carnival」ですね。当時ラジオではSCHOOL OF LOCK!を聞いていたんですよ。当時は、RADWIMPSやRIP SLYMEにチャットモンチーが出ていたので、あの時期に流行ったものはあの番組を通していろいろ教えてもらいましたね。
柳澤さんはいかがでしょう?
柳澤豊(ドラム:以下 柳澤):僕は生まれが神奈川の海老名なんですけど、姉が結構音楽が好きで、隣の部屋から流れてくるCoccoや鬼束ちひろ、それこそL’Arc~en~Cielを聞いていました。意識的に聴くようになったのは、アニメ版Bleachのオープニングテーマ「D-tecnoLife」という曲でUVERworldを好きになってからですね。中学卒業する頃からドラムを始めて、そのとき先生になってくれた人や高校で入部した軽音部の友達から流行りのバンドなどいろいろ教えてもらったりしました。友達からはASIAN KUNG-FU GENERATIONやRADWIMPSを、先生からはブラック・ミュージックを教えてもらいましたね。
玉置さんと加藤さんはいつ頃出会ったんでしょう?なにか印象的なエピソードはありますか?
加藤:高校から同級生だったんですけど、印象的なエピソードとしては、数学か英語でクラス分けするための小テストをしていたときに、玉置が「どれが好き?」っていう感じで女の子の髪型を8通りくらい描いていたことですね(笑)8人分すごくキレイに描いていたのをよく覚えていて、ぼくは黒髪ロングで前髪パッツンの子を「これむっちゃ好き!」って答えたんです、たぶん最初に彼を意識したのがその時だったかなと。
玉置:そのとき入学した人みんなに聞いて回って、こういう髪型かーってみんなで納得するみたいなことをしましたね、暇だったんですよ、テスト中でしたけども(笑)
加藤:高校の時はサークルや部活もなかったんですが、バンドをやるやつはみんなでグループになっていて、当時僕と玉置は1回だけ組んでやっただけでしたね。そのころは、文化祭や島の祭りに出たりしてましたね。
その後上京したあとに、東京と群馬で離れた生活をそれぞれしていながらもバンドを結成された、そのきっかけはなんだったんでしょうか?
加藤:僕が玉置に声をかけたのがきっかけですね。それまでずっと曲を作り続けていたのは知っていたんです、高校卒業したあとに彼からデモを聞かせてもらって「こんなにいい曲を作るならバンド作りなよ!」と言ってたんです。1年経ってもそれが変わらなかったんで、大学2年のときに「オレ群馬だけど、一緒に組もう」ってしびれを切らして言ったのが始まりでしたね。
MONO NO AWAREというバンド名、非常に良いなと思うんですけど、誰がどういう想いでつけられたんでしょう?
玉置:僕はもともと日本語の響きや表現方法が好きで、それを大事にしたいと思ってこのバンド名を選んだんです。でも、ひらがなやカタカナにしてしまうと、バンド名としてはクサすぎるし、日本的すぎてエグイと思えて、ローマ字表記にしたんです。それによって、移ろいの美しさや得も言われぬ風情とか、そういった意味を逆説的に強く出せたし、バンドは好きなように自分たちのやりたいことを順々にできているので、バンドの在り方にかなりリンクしたバンド名になっているなと。
「自分たちのやりたいことを順々にできている」というと、それぞれのプレイングやバンドの質感によるところが重要になってくると思うんですが、メンバー各々で「このプレイヤーになりたい」とか目標のようなものはありますか?
柳澤:目指すプレイヤーとしては、ぼくはクリス・デイヴですね。DJ的な要素をドラムでやっていくところは好きですね。ドラマーだけども音楽家という目線で言うと、リンゴ・スターや松本隆さんですね。松本隆さんのドラムだと、はっぴぃえんどで「ももんがーももんがー」っていう曲があって(「暗闇坂むささび変化」のこと)、その曲のなかで「真っ昼間から妖怪変化」というところからドラムのフィルが入るんですけど、まさに煙幕を投げた時の音のように響いて、「ドラムでこういう効果音みたいな音ができるのか」と驚かされたんです。そういうプレイングが僕としては理想ですし、この2人のようになりたいなと思います。



玉置:ぼくはタモリさんみたいな・・・なんというか、音楽以外の幅を持つ境地に立ちたいし、人が見て楽しめるような存在、ボーカルという役職にこだわらずにそういう存在になりたいですね。バンド4人がどんな感じでステージに立っているかとか、舞台で見てどう映えるのか?という演出にも関わりたい。最近生で見てきた人で、この人は他の人からどう見られるのか?とか計算していて、かつお客さんを楽しませている人というと、SANABAGUN.やTHE THROTTLEの高岩遼さんが思い浮かびます。彼のようなスタイルでやりたいというわけじゃないですが、同じような考えやプロセスを経て、違った形を出せればいいなと思いますね。



加藤:ぼくはプレイヤーとして好きな人はあまりいないんです、好きな音楽を色々と聞いてきたタイプなので。アルバート・リーのクリーンサウンドでめっちゃきれいな単音リフを弾くのが好きだったり、ウェス・モンゴメリーのオクターブ奏法を聞いた時、自分がコピーしていたメロコアバンドの質感とは違ったキレイな音色に驚かされたりしてきたね。皆さんどの方もすごいですし、部分部分を好きになるので、プレイヤ一1人をあげるとなると難しいですね。



竹田綾子(ベース:以下 竹田):バンドからあげるとなるとTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTを高校の頃もの凄く好きだったので、ウエノさんですね。プレベを使ってストラップを長くしていたりして、ベースを始めたころはかなり影響されたと思います。その後はThe Strokesを聞き始めてから徐々にストラップは短くなり始めました。どちらのバンドも8ビートとルート弾きが特徴なので、その辺りの影響もあると思います。



「このバンドは僕らと同じだな」とか「このバンドは僕らのライバルだな」と思えるような同世代のバンドはいますか?
玉置:個人的な話ですと、Gi Gi Giraffeですね。啓遊くんとは友達ですが、毎日のようにyoutuberを見ていて「彼らみたいになりたい」とか言っているし、啓遊くんの軽妙な人柄が曲に出てるんですよね。曲の面白さもそうですが、soundcloudに挙がっているデモ音源でもパーカッションの音位置が面白いんですよね、遊び心がすごくあるんです。僕らとは土俵が違いますが、曲作りという点ですごく嫉妬してしまうほど魅力的ですね。
柳澤:似てるバンドやライバル、いま考えていたんですけど、いないですね。
竹田:いないね(笑)友達を増やしたいですね。
柳澤:ただ言われてみると、オレもGi Gi Giraffeは意識したりしてますね。ドラムフレーズが宅録やっている方らしいフレーズなんですが、ライブでも忠実にこなすんですよね。ドラマーじゃない宅録の方による打ち込みフレーズを、ドラマーである自分のスキルとフィーリングで、どれだけ良いものに仕上げられるか。その点は僕らとも近い部分はあるので、ちょっとしたライバル心はあります。
(昨年Gi GI Giraffeへインタビューした記事はこちら)
→→【INTERVIEW】Gi Gi Giraffe『Gi Gi Giraffe』 http://indiegrab.jp/?p=42659

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感情を押し付けるようなバンドになりたくはない、押し付けたくないですし、断定したくないんですよね。

2017.4.29 12:00

【INTERVIEW】阿佐ヶ谷ロマンティクス『街の色』



古今東西、素晴らしい音楽には、何かしら一方向に向けられた統制が取られている。それはコード進行によるもの、それは音の質感によるもの、それは音に乗って運ばれる言葉やテーマ、そして音楽を紡ぐ者の想いによるもの。
それぞれが絡み合い、一つの統制とバランスが整った音楽は、総じてグッドソングになって聞く人の心を揺り動かしてくれる。

今回インタビューに答えてくれた阿佐ヶ谷ロマンティクスは、今年1月に初アルバムとなる『街の灯』を発表した。レゲエ/ロックステディのルーズなグルーヴ、J-POP/歌謡曲のメロディ、切なさと無情感に溢れた言葉、3つが混ざりあった叙情的な
グッド・ミュージックとなった。バンドの中心人物である貴志とドラムの古谷に、今作を通じて彼らバンドのメカニズムと意識を聞くことができた。

古谷『対バンしたバンドの中で、一番仲が良いのはWanna-Gonnaですね。マインドが私達と凄く似ているんです』

草野:阿佐ヶ谷ロマンティクスさんのプロフィールを追いかけてみると、川口や代々木や新百合ヶ丘などが出てくるのですが、結成は早稲田大学ということでよろしいでしょうか?
貴志:早稲田大学の中南米研究会というサークルに入っていて、サークルを引退した後に集まって結成しました。
草野:顔を見合わせていた5人だったんですね。早稲田の音楽サークルというと、オリジナルの曲を作って披露するサークルもあるわけですが、どういった音楽をコピーしていたんでしょう?
貴志:カプリソ/ロックステディ/レゲエ / ダブなど中南米の音楽です、といってもメインはカリブ海の音楽をコピーしていました。僕はロックステディが好きだったので、The Heptones、Uniques、Paragons、Derrick Harriottとか色々やってましたね。
草野:ものすごく根本的な話なんですけど、そういった音楽と出会ったのはいつごろだったんでしょう?
貴志:大学に入ってからですね。
草野:ということはそれまで全然違う音楽を聴いていたんですよね?古谷さんはどうでしょう?
古谷:東京スカパラダイスオーケストラとかフィッシュマンズを聴いているうちに、興味を持つようになりました。
貴志:先輩に教えてもらったり、レコードショップ行ったり、御茶ノ水のジャニスに行ったり、Youtubeなどでdigったりして良い曲を見つけるとコピーしていたんです。
古谷:そうやって見つけてコピーをするんですが、ガッツリと完璧なコピーをするんじゃなく、途中からソロを回してみたりして、ふわっとコピーする感じですね。
草野:ジャズみたいですね。
貴志:全然原曲に忠実ではやってなかったよね。
古谷:元々はリバーブがかかってないのに、「ここでリバーブかけてスネアいれよう!」って感じでやってみたり、ものすごく遊んでました。
草野:普通の軽音部とかですと、ロックバンドの曲をそのまんまにコピーして満足というような感じになりがちですが、全然違いますね。
貴志:ガッツリ3年間、カリブ海地域の音楽に浸ってましたね。
草野:なるほどです。濃密な3年間を過ごしてサークルを抜けた後、阿佐ヶ谷ロマンティクスを結成することになったということですが、なぜ結成することになったんでしょう?
貴志:サークルを引退して演奏機会が無くなってから外にアウトプットしていきたいという気持ちが強くなったのがきっかけです。
古谷:あとは単純に、バンドをやりたい!という気持ちが大きかったですね。
草野:阿佐ヶ谷ロマンティクスというバンド名ですが阿佐ヶ谷に強い思い入れがあるということでしょうか?
古谷:阿佐ヶ谷という街はメンバーみんな好きなんです。最初にメンバーみんなで集まった場所でもありますし、思い入れは強いですね。
草野:バンドを始めるにあたり、「こういうバンドになりたい」とか「こういう音をやりたい」というような具体的なイメージはあったんでしょうか?
古谷:レゲエとポップスをうまくミックスできた音楽がやれればいいねという話はざっくりしましたね。参考にしたバンドとかあったっけ?
貴志:無かったと思う。個々人で参考にしていたものはあると思うけど。
古谷:まずギターで弾き語った音源を、みんなに聞かせてから曲作りを始めるしね。
草野:その点をお聞きしたかったのですが、曲作りはどのように進んでいくんでしょうか?
貴志:他のバンドよりもアバウトだと思います。私が紙にコードを書いてみんなに配って「雰囲気はこんな感じ」とザックリ伝えているだけですし。
古谷:「雰囲気は分かるでしょ」みたいな?
草野:どういう雰囲気ですかそれ(笑)
貴志:スタジオで合わせて、録音した音を持ち帰ってトライアンドエラーして積み重ねで作っていくのが、僕らのやり方ですね。



草野:貴志さんの中で完全に作り込んで、そのとおりに演奏してくれ!という流れではないんですね。
貴志:そうですね、完全にメンバーにまかせてます。もちろんメンバーが奏でてる音が自分の想定していたものと違うと指摘はしますが。
古谷:そういう場面になると、メンバーに「違うよね」という話をしてくれます。ただまぁ、すごい細かくなときとすごいアバウトなときの差が激しいんですよね(笑)アバウトなときは叩きながら顔だけで表すし、的確なときは「バスとハイハットの間を埋める感じで~」とか「ベースよりももうちょっと後ろで叩いてみて」みたいに言ってくれますね。
貴志:このバンドは民主主義的だと思っていて、そこまでガッチリ作り込んでみんなに弾いてもらうというやり方はこのバンドの曲の作り方じゃない。最初はみんなに自由に投げたほうが想像以上のものが出来る。サークルから知っていて信頼しているので、彼らがどういう音を奏でるかも大体わかるし、お互い譲れないところは譲らないし。それが丁度いい塩梅なのだと思います。
草野:これまで対バンしたバンドのなかで、仲の良いバンドやライバルといえるバンドはいますか?
古谷:一番仲が良いのはWanna-Gonnaですね。マインドが私達と凄く似ているんです。
貴志:自主企画に呼んでもらったりしているしね、なにかあったら彼らを呼ぶみたいな(笑)
古谷:お互いにリスペクトしていて、切磋琢磨している関係かなと思います。
貴志:あとは夕暮れの動物園でしょうね。一緒にスタジオに入ったりします。年齢は離れているんですが、すごい良好な関係だと自分の中で思っています。

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自分の野望としては、リスナーの方が自分たちの音だけで・・・

2017.3.16 22:08

【INTERVIEW】『Asylum Piece』Fragile Flowers




ex.Boyish、ex.TenkiameのNakamura Ryuichi。
soundcloudにソロ名義の曲をアップし続けた彼がFragile FlowersというユニットでEPをリリースすると知り、詳細な情報を知った時、その内容に驚きを隠せなかった。
「Bad End盤」「True End盤」という2バージョンのリリース、豪華な参加アーティスト、そしてブラッシュアップされた楽曲の数々…楽曲に散りばめられた彼の嗜好や引用。
これらを読み取りながら聴いていくうちに、Nakamura Ryuichiという人との対話をしていくような作品となっている。
この作品を作るためにどのようなプロセスや背景があったかを確かめ、また作品から一歩踏み込んだものを確かめるためにインタビューを申し込んでみた。

ただ引きこもって物語を摂取した日々は確かに自分の血肉になっていたのだと分かったことも喜びでした。


–:とにかく今現在のNakamuraさんの全部をぶつけているなというのがまず一聴した時の印象でした。普段twitterで拝見している音楽の嗜好等がこれでもかと込められています。
音楽、文学、ゲーム、アニメなど様々な作品を一度Nakamuraさんの中に収めて、そこからの引用やイメージを構築して作る作業はかなり複雑だったと思いますが、その辺りの苦労はいかがでしたか?
Nakamura Ryuichi(以下:Nakamura):今まで自分はアウトプットする作業を全くしてこなかったので、作詞作曲に関しては楽しくて仕方なかったです。書きたいことは沢山あって常に頭の中でいくつもフワフワしていたのでそれを繋ぎ合わせる感覚に近かったです。引用するにも自分の言葉で翻訳したりする過程があったので、その作業がとても楽しかったです。自分にはこんな引き出しがあった、ただ引きこもって物語を摂取した日々は確かに自分の血肉になっていたのだと分かったことも喜びでした。
–:タイトルの『Asylum Piece』はアンナ・カヴァンからですか?
Nakamura:そうですね。僕は彼女の作品、特に長編『愛の渇き』、『あなたは誰?』『氷』、と短編集『アサイラム・ピース』が大好きで、『アサイラム・ピース』は病室の中で繰り広げられる救いの無い群像劇がとても冷酷でヒリヒリした文体で書かれていて、とても大好きな作品です。
–:このEPは読書体験も大きく影響しているとの事ですが、このEPに特に影響を与えている作家や作品は?(書籍、文学作品的な意味合いで)
Nakamura:アンナ・カヴァンは翻訳されているものは全て。加えて主な国内作家を上げると、大江健三郎、唐辺葉介、久坂葉子、高橋源一郎、太宰治、飛浩隆、津原泰水、舞城王太郎、村上春樹、夢野久作、海外作家はヴォネガット、カヴァン、コルタサル、ヘンリー・ジェイムス、シュトルム、ディック、バラード、ジャック・フィニイ、ブローティガンロバート・F・ヤング、ダン・ローズ辺りでしょうか。
作品名を上げると『遊戯の終わり』、『たんぽぽ娘』、『西瓜糖の日々』、『幼年期の終わり』、『ムーン・パレス』、『結晶世界』『リリス』、『コンスエラ』、『永遠の終り』、『スローターハウス5』、『ソラリス』、『黒い時計の旅』、『グッバイ・チョコレート・ヘヴン』『万延元年のフットボール』、『斜陽』、『好き好き大好き超愛してる』、『ヨハネスブルグの天使たち』、『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』、『氷の涯』などで、幻想文学やSF的な要素がありつつもメッセージ性が強い作品、終末モノの作品に強く影響を与えられてきました。

書籍、文学作品的な意味合いでとの質問でしたが、すいません、僕にとってノベルゲームはとても多大な影響を与えられてきたのでそれらも羅列させて下さい。主にCRAFTWORK『さよならを教えて〜comment te dire adieu〜』、Force『2nd LOVE』、『書淫、或いは失われた夢の物語。』、Key全作、Leaf『雫』、『天使のいない12月』、S.M.L『CARNIVAL』、Tactics 『ONE ~輝く季節へ~』、otherwise『sense off』ケロQ『素晴らしき日々〜不連続存在〜』、『終ノ空』、公爵『ジサツのための101の方法』、フェアリーテール『狂った果実』、130cm『僕は天使じゃないよ』です。
僕にとってノベルゲームは読書と同じ感覚ですし、クソみたいな作品も多いですが18禁、マルチエンディングを冠しているだけあり、ノベルゲームでしかできない表現が沢山あるんです。もし時間や興味がある方はやって欲しいなあ…という思いで羅列しました(笑)
–:アレンジもスピッツ、フリッパーズギター、くるり等のアーティストからの引用が多く見られますが、やはりこういった元ネタを聴き手にわかるように
散りばめていく手法はフリッパーズギター以降の渋谷系を連想しましたが、その辺りからの影響は?
Nakamura:そうですね…、一時期いわゆる、パチフリやC級渋谷系バンドおよび00年代以降の渋谷系をめちゃくちゃ熱心に聞いていた時期があったのでその影響はあるかもしれません。編集感覚で曲を作っていく感じとか…。ただぶっちゃけてしまいますと、僕のアレンジ能力が無かったからというのが一番の理由です…(笑)

アイデアが洪水の様に湧いてきて…。じゃあもう1つの作品に仕上げてやるぞ…!っていう気持ちから始まりました。

–:このEPの収録曲ですと「翼とナイフと銃弾」が7月ぐらい前にsoundcloudにアップされていますよね。このころ制作段階に入っていたと思うのですが、EPの全体的な構想はできていましたか?また、全体的な制作期間はどの位になりますか?
Nakamura:「翼とナイフと銃弾」が出来た段階では、自分が満足出来た曲が1曲作り上げられたからもういいかなと思ったりしたんですが、それ以降アイデアが洪水の様に湧いてきて…。
じゃあもう1つの作品に仕上げてやるぞ…!っていう気持ちから始まりました。EP収録曲の骨格自体は1ヶ月もかからずに出来ました。
ただミックス/マスタリングおよびピッチ補正作業で楽曲制作の3倍の時間がかかりました…(笑)
–:デジタル配信でありながらブックレットやtab譜など、音源以外のアイテムにもこだわりが見えますが、これらを同梱しようと思ったのはどの段階でしょうか。
また、ブックレットは全体的に暗めの落ち着いた色になっていますが、これはNakamuraさんの発注によるものですか?
Nakamura:僕が今回のEPでやりたかったのはART-SCHOOLの『Mean Street』なのでアートワークもそれになぞろうと最初から決めていました。ブックレットのデザインも元ネタ『アサイラム・ピース』の装丁の様にして欲しいと細かく要望を伝えました。tab譜に関しては僕にとって一度譜面に起こす作業が作曲において必要な過程なのでおまけで配布しました。本当に難しいことはしてないので、これから作曲をする人の参考になったら嬉しいなあという思いもあったりします。



2017.2.8 22:00

【INTERVIEW】『SONASILE』/ 網守将平(PROGRESSIVE FOrM)

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12/2にPROGRESSIVE FOrMよりアルバム『SONASILE』をリリースした音楽家、網守将平。
日本音楽コンクール1位受賞などのキャリアを持つ一方でラップトップによるライブパフォーマンスを行うなど、ジャンルの枠に捉われない活動を続けている彼が、あえてポップミュージックに振り切った作品である。
このアルバムで表現される「ポップミュージック」とは?
柴田聡子、Babi、古川麦といったゲストミュージシャンの参加という中でどのようにアルバムのカラーがデザインされていったのか。
30smallflowersがインタビューを試みた。


ポップミュージックを徹底的に作曲する

–:とても濃厚な作りになっていると感じます。トラックは全てアルバム用に製作したものなのでしょうか、あるいはこれまでのワークからの素材なども多様されているのでしょうか?統一感と多様性が折り重なっているからでしょうか。時間軸というのか、、一瞬で終わるような、永遠に続くような不思議な感覚を覚えました。
網守将平(以下:網守):ありがとうございます。全曲アルバム用に制作しました。使用している音色/音素材に関しては、これまで独自に制作したシンセのプリセットで作ったものやコンピュータ上のジェネラティブなアルゴリズムで作ったもの、また新たにアルゴリズムから作った素材ももちろん用いています。冒頭のピアノ曲に関しては、高校生の頃に作ったメロディーが元になっています。使えるタイミングを待つために実家の自室の部屋に譜面を書いて貼っていました。
–:それはとてもいいエピソードですね。音楽そのものだけでなく時間軸の捉え方がとても素晴らしいと思います。
網守:とはいえ作品全体としては、制作のメソッドにおいて特にこれといった特徴も制限もありません。自分に課したのは「ポップミュージックを徹底的に作曲する」ということのみで、統一感や多様性のようなものももちろんあるのでしょうけど、それは自然と演繹的に付与されただけですね。それは僕が過去に西洋伝統音楽の教育を受けてきたこととも関係しているのかもしれないですが、この作品に関してはあくまでそれはたまたまそうなっているだけで、過去を生かして今まで積み重ねてきたものを統一して作品化しようとは考えませんでした。言い換えれば何も考えずに作ってるんですけど、制作の段階において「過去」は作者の預かり知らぬ部分で必ず介入してくるので、その介入というプロセス自体を事後的に自ら楽しむことは目指していたといえます。

「ゲスト」であるという社会性と、「一作品の一楽曲の中の歌という1ファクター」であるという実存が作品内で拮抗している

–:今回、ヴォーカルでお二人の方をフィーチャーされていますね。それぞれの製作についてお伺いしたいのですが、まず、柴田聡子さんをフィーチャーしたトラック3のKuzira、こちらのトラックはわりと大きなフレーズがゆったりとした形をもつメロディーになっているように感じました。柴田聡子さんの声、歌詞との相性など明確にイメージされているところはありますか?
網守:Kuziraは全楽曲中一番最初に作った楽曲ですね。アレンジが終わった段階では、メロディー含めあまりにもナラティブのある曲になってしまったのでどうしようかなと思ったのですが、いろいろ悩んだ結果、この楽曲と相性が合わなさそうな人に敢えて歌ってもらってどうなるか試してみようというアイデアに着地しました。そこで短絡的なファン心理で柴田聡子さんにお願いしました。
–:それでも結果的にはとてもうまく引き立てていると思います。
網守:最終的に柴田さんのヴォーカルがここまで楽曲に浸透するとは思ってなかったんです。柴田さんはやはり自作曲を一人で弾き語りしているのが圧倒的に良いと思うので、他人の曲、しかもこんな曲も歌えるんだと感心してしまいました。突発的に職人みたいにもなれる人なんだと。
–:次に、Babiさん参加のトラック8のenv Reg.ですがこちらは対照的に細かな粒立ちのようなものが印象的なメロディーですね。Babiさんのヴォーカルも他のインストゥルメントパーツと並列に組み込まれているような気がします。この辺りは意識されていましたか?
網守:env Reg.に関しては、歌と楽曲の諸要素との関係性を考える前段階、つまりアレンジ前にメロディーだけが頭に浮かんだ段階でBabiさんの声でしかメロディーを脳内再生できなかったので、アレンジが終わった段階で悩まずにすぐBabiさんにお願いしました。Babiさんも本来は作曲家であり、シンガーであるという意識が希薄な人なので、この楽曲で聴かれるテクニカルな歌唱をそういったアーティストにお願いしたという点では、これもまた良い意味でどこかで相性の合わなさがあったはずです。つまり、Kuziraで柴田さんにお願いした時のような動機が僕の中に残っていたんだと思います。
–:お二人のヴォーカルが対照的にフィーチャーされていて、アルバム前半の中核、後半の中核というようなイメージも受けました。とても良いバランスだと思います。どんな形で参加が決まったのでしょうか?
網守:今回参加して頂いたゲストミュージシャンのみなさんがこのようなラインナップになったことに関しては、単に僕がファンであったということだったり、共通のミュージシャンの知り合いがいたりなどたまたま近くにいたからという短絡的な理由でセレクトした記憶がありますが、自分で改めて聴いてみると、やはり耳を使って選んでいたんだなという自負はあります。今回の作品は音響系的なアプローチがあったり和声の動きが多かったりで情報量が何かと多いことは明白なんですが、最も意識的に作ったのはメロディー、なんです。なのでメロディーにどれだけ強度があるかという点とそれを誰が歌えばその強度がさらに向上するかという点も、ヴォーカリスト選定の大きな判断基準でした。そういう意味でスピーカーだけでなく脳内でも音を鳴らしてセレクトしたと言えます。
–:ある種の身体感覚、でしょうか。
網守:その結果、柴田さんに抽象度の高い詞をおおらかなメロディーに乗せて歌ってもらうことも、Babiさんに幼児退行したような詞を細かいメロディーに乗せて歌ってもらうことも、最初からシンガーオリエンテッドな意識で制作しなかったことで、最終的に楽曲自体の方向性と相互浸透させることができのではないかと思います。ただ、この作品は本来シンガーではない僕自身が歌ったり声を出したりしている楽曲も数曲存在しているというのも重要で、ゲストヴォーカルの入った曲が取り立ててアルバムの核であるとは思ってないんですよね。それは言ってみれば、「ゲスト」であるという社会性と、「一作品の一楽曲の中の歌という1ファクター」であるという実存が作品内で拮抗している。この拮抗を生み出すことがポップミュージックのアルバムを作る醍醐味の一つかと思います。

この作品はアルバムという形態を取りつつトータリティを志向していないんです

–:冒頭のタイトル曲や古川麦さんとのインタープレイもそうですが、エレクトロニクスが後付けとは思えないような、生演奏と電子音の融合がとても印象的でした。作曲をされている時点である程度の最終形はイメージされているのでしょうか?偶然を活かす集中力が生演奏にも電子音にも等しく注がれているようで驚きました。
古川麦さんとのインタープレイということでお伺いしたいのですが、製作以前から例えば共演のような形でお互いにつながりはあったのでしょうか?濃密なセッションを経て、あるいは試行錯誤を経て10.Mare Songの形が出来上がったのか、あるいは最初からイメージがあって、そこに古川麦さんが後からうまく色彩を増やしていったというような形なのか、その辺りはいかがでしょうか?
網守:古川麦さんは大学の先輩なんですが、学生時代は面識がなく知り合ったのは比較的最近ですね。Mare Songに関して言うと、丁度1年ほど前に現代アートのイベントに僕がライブで出演した際にゲストで麦さんにも飛び入り参加してもらい、その場で一緒に演奏した楽曲がMare Songの叩き台として存在していました。その時は僕の歌とピアノ、麦さんのギターというオーソドックスなデュオ形態で演奏したのですが、その時点でアルバム用にアレンジし直してレコーディングをすることも決まっていました。
–:そういった経緯があったのですね。アレンジはどうやって決めていったのですか。
網守:その後は基本的に僕一人で、生楽器の音もそれ以外の音も含めアレンジをフィックスさせ、歌と各楽器をレコーディングしました。なので楽曲制作においてはインタープレイ的な作り方はしていないんです。譜面も書いて、ワルツ調の伴奏フレーズや音域も基本的に僕が指定したものを、完成されたアレンジにオーバーダブさせる形で演奏してもらいました。とはいえ、やはり古川麦が弾いたギターは古川麦の音になるので、その絶対性みたいなものは信じて作った記憶があります。またこの楽曲にはヴォーカルが入っていますが、自分で歌うと同時に古川麦に「歌わせない」ことでも、ギターの絶対性を担保したかったんです。
–:時折のデジャブ感がアルバムを通貫するキーとして、例えばノイズから次第に和声が見えてくるアプローチであったり、リズムの配置であったり、そういったところに感じました。Mare Songのようにトラックが完全に独立して存在するもの、atc17〜env Reg.のように、曲間が曖昧なもの、Pool Tableのように冒頭とリズムトラックとのつながりが断片的なもの、と様々ですが、フィーリングは統一されているように感じます。デジャブ感と申し上げた要素です。製作は短い期間に集中的に行われたものなのでしょうか?あるいはかなり時間をかけたものなのでしょうか。
網守:作品全体の制作期間は一年以上はかかりました。楽曲単位だと一番制作に時間がかかった曲は一ヶ月くらいかな。この作品はアルバムという形態を取りつつトータリティを志向していないんですが、そんな作品でも突発的にデジャブ感みたいなものが感じられるとすれば、「トータリティを志向しない」というある種のレギュレーションみたいなものに、無意識に自ら反発して、テクスチュアルなレベルにおいて統一感をもたらしにいったのだと思います。
–:トータリティを志向しないことへの反発という内面と結果としてのデジャブ感というのは面白いです。
網守:ある曲を制作している段階で、数ヶ月前に完成しそのまましばらく聴きもしなかった曲の素材やアルゴリズムを、ほんの一部だけトレースしてみたりとか。なので事後的に「デジャブ感」という印象についてお聞きできたことは、自らがどのように作品を作ったのか振り返るにあたって非常に興味深いです。


>>良くも悪くも、正統な形でポップスをやっている音楽なのではないかなと思っています

2016.12.24 21:00

【INTERVIEW】VANILLA.6 オオクボーイ 12/3(土)にEPリリース & 渋谷LUSH主催イベントに向けて

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大阪でPost Modern Team.のサポートギターをつとめていたオオクボーイが「VANILLA.6」というバンドを始めたという情報には強いインパクトを感じていた。2015年6月に発表した初の音源「90’s Milan」の80’s的なキラキラ感と過剰なまでにスタイリッシュなビジュアルからくるインパクト。
同年12月には大阪NOON+CAFEにて自主企画、さらに音源OWLSのリリースや3ヶ月連続のカバー動画企画等で周囲の耳目を集めていき、今年10月には東京での初ライブを果たす。
そして最初の音源の公開からわずか1年半、この12/3に彼らはEP『VNLGRL』をデジタル配信開始と共に東京での主催イベント『VANILLA NIGHT vol.2』を開催する。
その勢いは転がる石の様に加速していき、そのスタンスは挑戦的である。
そんなVANILLA.6 = オオクボーイにインタビューを試みた。

多幸感はVANILLA.6の活動のテーマの一つでもあるので

–:EP『VNLGRL』リリース決定おめでとうございます。
今回のEPを配信でリリースしようとした理由は?
オオクボーイ:自然な流れでそうなったというか、特に深くは考えずに決まりしたね。でも後々考えたらこれでよかったかなとも思います。僕たちって良くも悪くも周りから少し浮いた存在だと思っていて、いろんな人から「東京でやった方がいいんじゃない?」みたいなことも言われますし、僕自身首都圏や地方や海外でももっと知ってもらいたい気持ちがあるので、今回のEPに関してはCDを作るよりも配信で広く届けるって方がいいんじゃないかなと今は思っています。
–:EPを聴いて思ったのですが、現在公開中のMV「Old Friend」のをはじめとして、今までのVANILLA.6とも少し違うイメージを押し出そうとしているように感じます。その辺りは意図的なものですか?
オオクボーイ:今回、『VNLGRL』を作るにあたって、“多幸感”というテーマがあって、その一端をビデオで体現しようとしたのが「Old Friend」のMVなので、EP全体にもカラフルな雰囲気は漂っていると思います。4曲それぞれ違ったカラーを持っているけど、どの曲もとても自分達らしい仕上がりですね。
元々、多幸感のある音楽や映像が僕は好きだったし、多幸感はVANILLA.6の活動のテーマの一つでもあるので、MVも音も個人的にはバンドイメージとかけ離れるどころかむしろ狙い通りになったと思っています。
あと、MVのイメージは完全にThe Cureの「Friday I’m In Love」のMVですね。あのビデオが死ぬほど好きで、所狭しに用意されたセットを最後めちゃくちゃにして終わるってのを一回やってみたかったんですよね(笑)。


–:“多幸感”がテーマと聴いてEPを聴いた時の感覚が腑に落ちました。このテーマが強く出ているのはバンドの知名度が上がっていることや、バンド自体が回転しだして次のステップに行こうとしているという高揚感とリンクしている気がしますが、いかがでしょうか?
オオクボーイ:制作自体はすごくシンプルで、バンドの立ち位置とか周囲からの期待とかは特に考えることなく好奇心と探究心に任せてやるようにしていますね。外から見た自分達の見え方をいつもすごく意識しがちなので、それが頭にあると制作で変なプレッシャーや雑念になると思いますし。
僕小学校の工作の授業とか、アイデア練ったり作りに拘り過ぎて時間内に終わらないから、お昼休みや放課後もずっと独りで作業してるなんてことしょっちゅうあったんです。結局未完成のまま持って帰ったりしたんですけどね…。今も全然変わってないというか、曲作りや録音ミックスマスタリングに関しても単純に楽しく拘りを持ってやっています。
ただ、曲をバンドの肉体を経由して作品に落とし込む過程で、メンバー達のテンションとか今のバンドの雰囲気みたいな要素が思いがけず添加されていった部分もあると思いますし、結果的にそれらいわゆるバンドの化学反応によって僕が一人で思い描いていた以上の作品になったと自負しています。ほんと、みんなに聴いてもらうのがクソ楽しみで仕方がないです。
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–:今回『VNLGRL』のリリースパーティー『VANILLA NIGHT vol.2』を東京で開催しようと思ったのはどうしてですか?
オオクボーイ:もっとデカいステージでショーがしたいので、その為にはまず東京で名を上げるぞ。って思いですね(笑)。
ちょうど去年の年末大阪で開催した「VANILLA NIGHT vol.1」がバンドとしてはほぼ初めてのショーだったんです。それが最高に楽しいパーティになって、バンドとしてとてもいいスタートが切れたし、またやりたいなとは思っていたんです。それから今まで丸一年活動してきて、たまにクソ喰らえって事もあったけど、嬉しいことに今ではいろんなイベントに呼んでもらったり関西ではたくさんの人が知ってくれたり期待してくれるようになって。まだまだこれからだけど一年でバンドとして成長したなぁって思ったんですよ。でも目指しいてるのはもっと上だし、関西で認知されたからってなんだって思う自分もいる。なので次の一年は関西以外の人にもたくさん知ってもらって、もっとデカいステージでやってやるぞっていう、決意表明というか宣戦布告的な位置付けで、今回東京での開催に踏み切りました。
–:今回の『VANILLA NIGHT vol.2』での出演バンドを選んだ基準があれば聞かせてください。
オオクボーイ:「オオクボーイがかっこいいと思ったかどうか」で選びました。本当はトゲがありつつも幸福感が感じられるようなインディ・ロックバンドで固めたいって思いや、ポップさを追求してるバンドを集めたいって思いがあったり、他にもたくさん候補のアーティストがいたりしたんですが、結局はシンプルに僕がかっこいいと思うかどうかで選んで今回のメンツになりました。
共演したことのあるFor Tracy Hydeやcattleは初めて観たときに涙出るくらいハッピーな気持ちになって最高だったし、大阪から来てくれるMississippi Khaki Hairはぎらついたスター性があってすごくいかしてる。17歳とベルリンの壁、Fun House.は今回初共演なんですけど、両バンドとも音源や動画ですごい衝撃を受けてオファーしたのでステージを観るのがとても楽しみなんです。この日出てくれる5バンドは最高のバンドばかりだし、最高にいい塩梅で全編楽しめるイベントになったと思います。楽しみにしていてください。


>>次ページ「既存の音楽ジャンルを名乗ったところでその看板に誇りも拘りも持てないと思ったんです。」

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『VNLGRL』/ VANILLA.6
2016年12/3リリース
フォーマット:デジタル配信
レーベル:セルフリリース
価格:¥800
【Track list】
1. Getover
2. Old Friend
3. VNLGRL
4. Euphoria

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『VANILLA NIGHT vol.2』
2016年12/3(土)渋谷Lush
ACT:VANILLA.6 / For Tracy Hyde / Cattle / 17歳とベルリンの壁 / Fun House. / Mississippi Khaki Hair
Open 17:30 / Star 18:00
Adv ¥2,500 / Door ¥2,800(+1d)
【Time Table】
18:00〜18:30 17歳とベルリンの壁
18:45〜19:15 Fun House.
19:30〜20:00 Cattle
20:15〜20:45 Mississippi Khaki Hair
21:00〜21:30 For Tracy Hyde
21:45〜22:15 VANILLA.6

2016.11.27 21:00

【INTERVIEW】Gi Gi Giraffe『Gi Gi Giraffe』

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ジャンルレスに、シームレスに、まさに壁を乗り越えていく・・・その刺激的な爽快感、もしかすれば聞く人が聞けば、今回の主役Gi Gi Giraffeによるデビューアルバム『Gi Gi Giraffe』は椅子から転げ落ちるほどに刺激的な作品だろう。

今回、Gi Gi Giraffeの山本に直撃インタビューを行なった。音楽的源泉/己のバイオグラフィ/各作品群に答えるとき彼は、左手でアゴをさすりつつ、言葉を明晰に選んで、今回で2回目だというインタビューにも真摯に答えてくれた。

彼は、<音楽をいかに刺激的に響かせようか?>という苦闘を話してくれた。もしかするとかなり裏話っぽく読めるかもしれないし、このバンドや彼自身の音楽センスが持つ多様な可能性にも触れているのかもしれない。彼らのもつ可能性は、後出しジャンケンのようにはめ込むジャンル性を飛び越えていける、今回のインタヴューでその一端を感じていただけると嬉しい。



「オレがやれることっていえば音楽しかないんじゃないのかな?」とも思えたんですよね(山本)

草野:新作『Gi Gi Giraffe』や『Home Made Works』を聴いてまず最初に思ったのは、英語の発音が非常に良かったことなんですけど、海外にお住まいだったんですか?
山本:いやぜんぜん、海外に行ったこともないですね。生まれは東京です。もともと学生の頃から英語が得意で、大学では英文学科で、英会話にも1年ほど通っていたんです。宅録も高校1年のときくらいから始めたんですけど、「日本語で歌詞を作るのが難しい、英語で作れないか?」と悩んでいたとき、当時通っていた英会話の先生がバンドをやっているのを知って、先生に添削してもらってましたよ(笑)
草野:あの流暢な英語にはそういった秘密があったんですね(笑)どんな感じで音楽と触れ合ってきたんですか?
山本:中学2年生のときにギターを触り始めたのが大きいですね。父や兄の影響で、家に何十本もギターが置いてあったんですが、そこからですね。最初は独学で始めたですが、その頃にGreen Dayの『American Idiot』が発売されてたこともあって、最初はパンクな曲からはじめました。「オレが知ってるあの曲も、こうしてコードを弾くだけでできるなら、オレでも音楽作れるんじゃないかな?」と思わせてくれたのはとても大きいですね。
草野:他にはどんなバンドを聴いたり弾いていたんでしょう?
山本:その時はメロコアなバンドばかりですね。Sum41、New Found Glory、Good Charlotteはパっと思いつきます、この辺は兄の影響が大きいですね。兄もどんどんとそういった音楽から、違う音楽へ・・・ロックンロール・リバイバル世代や60年代ロックバンドの音楽を聴くようになって、僕も聴くようになりました。The Vines、The Strokesみたいな、The○○sみたいなバンドはだいたい好き!みたいな感じで(笑)




草野:僕も当時高校生くらいだからそのあたりも聴いてました。The White Stripesとかはどうでしょう?
山本:もちろん好きですよ。彼らとGreen Dayのようなメロコアバンドに比べると、スリーコードでガンガン押していくのは変わりがないんだけども、ちゃんとメロディに沿って歌うんじゃなくて、変なメロディをテキトーな音程で唄っても、むしろガナったり叫んだり構わないんだというのを教えられたと思います。僕自身は歌が上手いほうじゃないので、非常に勇気づけられましたし、モチベーションにもなりました。そのころ僕は高校生だったんですが、自宅にあるパソコンは兄と兼用している状況で、iTunesには僕が聞きたい曲と兄が聞きたい曲が同じようにiTunesに入っていて、「これは良い曲だ!」「これはないなぁー」と色々聞ける環境だったんです。無理やり聞かされているような状況ではあるんですけど(笑)そうして聴いていくうちに「オレならもっと面白い曲がつくれる」「こうしたほうがいいんじゃないのか?」という気持ちがドンドン芽生えていったんです。


草野:なるほど、その後に大学へ入学し、その時にメンバーとも出会えたわけですね。
山本:いまのメンバー・・・・ドラムの上村とは青山学院大学のビートルズ訳詞研究会というところで会いました。好きなバンドも結構被っていたし気が合うので、そのまま結成しましたね。Gi Gi Giraffeの名義を最初に使ったのはその頃だったので、正確にいえば2011年暮れのころだったかなと思います。そのときはドラムと2人と2ピースバンドだったんですが、ゆらゆら帝国が好きだったので2人でゆらゆら帝国のようなサウンドでやってましたね(笑)さっき言っていた宅録の音源は全部英語詞だったんですが、「あまり英語にこだわるのもおかしいよな」という思いもあって、この頃は日本語歌詞の新しい曲でやってました。
草野:ライブを回ったりしたの?
山本:さきに言ってしまうと、この頃ってライブハウス事情が全くわかっていなかったんですよね(笑)オープンマイクで誰でも参加できますよーという感じの場所を見つけて、「やってみようぜ」と思って勇んで行ってみると、おっさんが店主のカラオケスナックバーのようなところで(笑)
草野:そこでやったの!?
山本:演者スペースが2人でギリギリ入れるし、ライブ費用は1000円だけだし、「これは武者修行だ」という気持ちで何回か出ましたよ。僕らと常連のおっちゃんとアニソン歌うお兄さんという出演順、ものすごく浮きましたね(笑)
草野:曲作り自体は高校の頃から始めていて、どのような感じで作っているんでしょうか?
山本:基本的にはGarage bandで使ってます、10年くらいずっとこいつでやってますね。ギターは家に何本もあるし、ベースも家の中にある、ドラムに関しては打ち込みにはなりますが、ずっとバンドサウンドを1人で作っていくスタイルで10年作り続けてきましたね。
草野:なるほどです。大学2年生3年生まで続けていた活動が一旦止まったのはなぜなんでしょう?
山本:一つは就職活動ですね。もう一つは、ライブ活動を続けるのも大学生としてみると金銭的に厳しくなってきたので、ライブ活動をやめる方向になりました。ただ、そこで音楽を作ること自体をやめなかったのは、もしも自分が就職して人生を生きていくとなると、ものすごくつまんない人生を歩んでしまう、本能的ですがそんな気がなんとなくしたからなんです。なので、高校の時みたいに宅録で音楽を作るのはやめずに続けたんです。そのまま2年ほど経って大学も卒業したあと、たまたま遊びでドラムに音源をきかせたら、「やっぱり面白そうだし、バンドを復活させよう!」となって活動再開したんですよね。
草野:転機と言えるのは、そのまま音楽を続けて、バンド活動をも再開したことですよね。2年ほどの時間が空いて、大学も卒業して社会人にもなった、端的に言って、なぜだったんでしょう?
山本:うーん・・・日々過ごしていくうちに強くなっていったんですが、「オレがやれることっていえば音楽しかないんじゃないのかな?」とも思えたんですよね。正直言って僕の家庭は、父は役者として活動をしていて、母もダンスを教えているんですが、僕自身はサラリーマンとして生きていける姿を想像できなかった。しかも両親はぼくがどう生きていくかにまったく何も言わないし、僕は僕で好きに生きていける、これは両親と僕の間の利害は一致しているぞ?と気づいたんです。
草野:ちょくちょく思うんだけども、山本くんは聡い、鋭いですよね。論理的というか(笑)
山本:そうですか?(笑)僕は自分の家庭が他の家庭と明らかに違うというのをすごく感じていて、子供の頃からコンプレックスだったんですよ。親からは叱られたりすることもほとんどないのに、社会に出て叱られたりするのに耐えられるわけがないよなって思っていたりして。そうならば、自分が自由に生きたほうが、周りの人間のためにも有効に働くよな?と思ったんです。



2016.11.16 12:00

【INTERVIEW】しずくだうみ 1stフルアルバム『都市の周縁』

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闇ポップシンガー・ソングライター、しずくだうみ。
自主流通盤として3枚のミニアルバムをリリースした彼女が待望の1stフルアルバム『都市の周縁』をNARISU COMPACT DISCより11/16にリリースする。
シンガー・ソングライターの現場のみならず、時にアイドルの現場に、時にハードコア中心のイベントに出演し、強い印象を残す「誰にも似ていない音楽」を紡ぎ出す彼女のアルバムに期待を寄せるリスナーも多いと思う。
そんな しずくだうみ にインタビューを申し込んでみた。

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『都市の周縁』/ しずくだうみ
2016年11/16リリース
フォーマット:CD
レーベル:NARISU COMPACT DISC / HAYABUSA LANDINGS
カタログNo.:HYCA-3058
価格:¥2,300(税抜)
【Track List】
1.いじわるなきみのこと
2.ぐるぐる
3.さみしさのABC
4.部屋
5.ゲーム
6.パラレルワールド
7.水色
8.選ばれない
9.さようなら
10.夜の海の夢
11.おしまい
全作詞・作曲:しずくだうみ
アルバム特設ページ




「やったー!」って感じです(笑)

—:1stフルアルバムの発売おめでとうございます。今回のリリースはなりすレコードさんからのリリースということですが、どのような経緯で?
しずくだ:えっと…これまでミニアルバム3枚を自主制作で出していて。流通は通していたんですけれど。「柴田聡子さんが好きで…」みたいな話をしたら「柴田さんのアナログをリリースしている、なりすレコードを紹介できるよ、話だけでもしてみれば?」と言っていただけたので連絡をしてみたら「アルバム出しませんか?」って言ってくれたので。「やったー!」って感じです(笑)
—:とんとん拍子だったわけですね(笑)しずくださんがなりすさんからアルバム出すって聴いて「ああ、イメージ通りのところから出すな」って思ったんですがその辺りは?
しずくだ:私もそう思いますね。自分のやりたい事をやらせてくれるし、なりすから提案していただく事も自分の中で許容範囲というか…「これなら」って思える事なので。
(ドリンクが運ばれてくる)
—:レモンスカッシュお好きなんですか?
しずくだ:レモンスカッシュが好きというか…カフェインがダメで飲めないんです。それで自動的にこういうものに。
—:イメージ的にコーヒーとかすごく飲んでそうな感じなんですけどね。
しずくだ:好きなんですけどもね。飲めない(笑)
—:一番辛いパターンですね。好きな人で中毒気味だと一日中飲んでたりするんですけどね。
しずくだ:逆の意味で中毒なんですよ。カフェイン飲むと中毒症状が出て…。
—:あ、そんなレベルで…じゃあ紅茶とか日本茶も厳しいですね。
しずくだ:烏龍茶とかもダメですね。炭酸系もコーラにはカフェイン入ってますし。
—:本当に選択肢無いですね。ずっとそうなんですか?
しずくだ:ずっとそうでしたね。なんか好きで飲んでたらずっと調子が悪くて。なんだろうってずっと考えていたらこれだなって。抜いてみたら一気に調子がよくなって。
—:見えなかった苦手なものが転がっていたわけですね。
しずくだ:まだいっぱいあると思いますけどね(笑)
—:そういうものをどんどん抜いていってシンプルライフに?
しずくだ:そうでもないですよ。ジャンクフードとか食べますし。カップ焼きそばとかも食べますよ(笑)





どうせ暗い曲しか書けないし、一方で「意外とポップだよね」とも言われるから「闇ポップ」かな?って

—:しずくださんといえば「闇ポップ」というコピーが定着してますが、このコピーっていつ頃から使い始めたんですか?
しずくだ:…どれくらいだろう?
—:前のEP(3rd E.P.『透明コンプレックス』)の時には使ってましたよね?
しずくだ:1枚目(1st E.P.『届かぬ手紙のゆくえ』)の時にはまだ使ってないですね。
—: ということは2nd(2nd E.P.『泳げない街』)ぐらいからですかね?最初にしずくださんが印象に残ったのって「闇ポップって何?そういうジャンル?」って思った辺りからなんですよね。Googleで他にやってる方いるのか検索したりして。
しずくだ:なんか私が使い始めてから、Twitterで検索するとたまに出るようになりましたね。
—:闇ポップのオリジネーターですね…どういうところから出てきたコピーなんですか?
しずくだ:高校生頃から曲を作ってきて、「明るい曲ができない!!」って。フルアルバムに収録されている「ぐるぐる」は比較的明るい曲だと思うんですけども、ああいう曲はたまにしか書けなくて。曲を作っている友達とも冗談で「ゴーストライターやってくれよ!」って言い合ったりしてましたね。
「明るい曲を作らなきゃいけない!」みたいな強迫観念に囚われてて、売れ続けているのは明るい曲だしって思うと…こう…普段もああいうような曲を作んなきゃいけないのかなって思っていて。
2ndの「オーカー」とかもすごくポップなんですけど、あれ初めて作った曲なんですね。で、あれが初めての曲だとあれ以上を作んなきゃいけないような気になるんですけど、実際私の声にもあまりあってないような気がして。
で、なんかキャッチコピーがあったほうがわかりやすいんじゃないかって思って、どうせ暗い曲しか書けないし、一方で「意外とポップだよね」とも言われるから「闇ポップ」かな?って。
—:当初そのコピーだけでイメージ膨らませてた時は、どういう方なんだろうって思ってましたが、実際会ってみると非常に話しやすい方で安心しましたね。確か初めてしずくださんと会ったのはharpsと対バンの時だったと思うんですが、今日しずくださんに会えるのかって思った時すごく緊張した記憶があります。
しずくだ:すごく色んな人にそう思われてますね(笑)ライブに行ったことはないけどなんとなく曲を聴いている遠巻きに見てる人たちに「あいつ正気なのか」って思われてると思います。


>>次ページ「弾き語りにこだわる事はないと思っていて、歌にあったアレンジをすれば良いと思っています」

2016.11.15 12:00

【INTERVIEW】THIS IS JAPAN『DISTORTION』

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関東、特にここ東京には多くの音楽シーンがある。
ここindiegrabでは、多岐にわたる音楽シーンの中でも、よりディープなものを届けてきたと思う。
彼らTHIS IS JAPANは、東京における音楽シーン・・・いわば東京のロックシーンの中でも異質の存在だったようにみえる。
インタビューした当日は、メンバーが明かしたように『バンドが誕生した』日。
5年間で積み重ねてきた彼らの成長記となった今回、彼らが描いてきた成長線は、
オワリカラやSuiseiNoboAzらによる『Tokyo New Wave』から始まり、さらなる変化を遂げていることをはっきりと口にしてくれた。
東京のロックシーンのネクストステージは、彼らのような変化で始まるのかもしれない。
ぜひ読んでいただきたいインタビューだ。

オレが映画にのめり込むきっかけになったのは『タクシー・ドライバー』なんです(杉森ジャック)

今回発売された新作『DISTORTION』から1ヶ月、先日はTHIS IS JAPAN企画の「NOT FORMAL vol.2」があり、ライブでの反応も受け取れることも多いかと思いますが、ざっくりとどのように感じていますか?
杉森ジャック(Gt/Vo 以下杉森):ウケている、というより、伝わっているな、というのを感じますね。
this is かわむら(Dr 以下かわむら):方向性が一つバシっと出たからね。
THIS IS JAPANの楽曲や音楽の点に触れる前に近しい話題からお聞きしたいのですが、映画のタイトルを引用した楽曲がありますが、どんな映画が好きでしょうか?。


杉森:このなかだとオレが映画を一番見てるんじゃないのかな。オレが映画にのめり込むきっかけになったのは『タクシー・ドライバー』なんです。それまでは映画って大衆娯楽的なものなんだと思っていたんですけど、『タクシー・ドライバー』は大衆向けとかそういうのではなく<オレこういうのが好きなんじゃ!お前らどうだ!>というのを提示されたように感じたんです。そういった流れで『ゴッドファーザー』や<アメリカン・ニューシネマ>のような、映画のなかでも自分のやりたいことをやりきった<オルタナティブ>な作品があるということに気づけて、そういった作品は多く見てますね。
フランス映画はどうでしょう?
杉森:フランス映画は、自分の中で完結している感じがするんです、「わたしはこうです」で止まってる感じというか。オレはもうちょっと踏み込んで、「オレたちはこうだぜ!おまえらどうだ!?」っていう距離感が好きです。なのでオレはゾンビ映画とかも好きなんです、「わたしこうなんだけど、大丈夫かな・・・?」みたいなね(笑)
問いかけてくる感じですね(笑)「死霊のはらわた」とか?
杉森:「死霊のはらわた」は好きですね。「悪魔のいけにえ」も好きで、最近はホラー映画が好きですよ。
koyabinさんはいかがでしょう?
koyabin(Gt,Vo 以下koyabin):ぼく変な映画しかみないんです、ヒューマンドラマみたいな映画は見ないんですよ。
杉森:この前、たしかそんな話したよな。
koyabin:そうだったね、「ノッティングヒルの恋人」とか「ブリジット・ジョーンズの日記」みたいなのは見ないんですよ。
杉森:こ映画を架空世界体験型アトラクションみたいに感じてるんじゃないのかな
ベタにいうと『スターウォーズ』とか?
koyabin:基本SFは好きですけど、もうちょっと違くて。スタンリー・キューブリック、デヴィッド・リンチ、デヴィッド・クローネンバーグとかが好きなんです、頭おかしいなこれ!とか言って楽しむと。
杉森:映画に刺激を求めているんだよね、共感ではなくて。感情を押し付けるものより、ザクっとドライな作品が好きで。
koyabin:うんうん、そうですね。

シンガーソングライターがいない、それがこのバンドのバランス感に大きく影響を与えてるのかもしれない(杉森ジャック)

バンドの始まりは、大学のサークルからだったということですが、当時はどんな風に絡んでいたんですか?
杉森:オレとかわむらが同じ学年、2つ下にkoyabinとベースの水元がいました。サークル自体がコピーバンド主体のサークルだったんですが、固定メンバーで活動をつづけるんじゃなく、ワンショットで1回組んで1曲やったら解散して、次は違うバンドで組んで・・・というような感じだったんです。
4人でやるようになったのは、大学を卒業したあとからだったんですか?外バンで組まれていたとか?
杉森:外バンっていう言い方、すごく懐かしいですね(笑)オレは外バンも組んで曲を作ってやっていたんですが、そのバンドが空中分解してしまったんです。「なんかやりてぇなぁ・・・」と思ってかわむらとkoyabinに声をかけて、最後に水元に声をかけて以来、今年で5年目ですね。
かわむら:実は今日(インタビュー当日)、5年目の誕生日なんですよ、THIS IS JAPANにとっての。
おめでとうございます!。そんな日にインタビューを受けていただいてありがとうございます。
かわむら:なんにも覚えてなかったんですよ。
杉森:先日のライブが終わって今日一日ポカーンと過ごしていて、言われるまで気づかなかったしね。
koyabin:スタッフに言われるまで、全然気づきもしなかったんですよ。
かわむら:言われてもピンとこないですよ(笑)
杉森さんが3人を集められたということですが、その時までになにか共通していた音楽があったんですか?
かわむら:この4人でコピバンを組んだのは一回だけなんです。それがFugaziだったよね。そこで一つの共通見解はあったんだと思えます。
杉森:いかにコピバンとはいえ、クオリティに差が出るもので、このメンバーのときにはあまり良くなかったけど、このメンバーのときはビシっとくる!みたいな感触がコピバンでもわかるんです。このメンバーにあと1人メンバーがいたんですが、その5人でFugaziをやったときは物凄くビシっと決まったし、楽しかったんですよね。
かわむら:そんな感じで4年ほどやっていると、相手に趣向も分かるし、どういうプレイをしたいかもわかってくる。
杉森:オレとかわむらは100個くらいコピーしたよね?
かわむら:それは多いね(笑)、50くらいじゃないかな。
杉森:まぁそれくらい密にやっているんで、かわむらはオレがどういう音楽が好きでどういうプレイをしたいのかもわかってくれていると思っていたし、koyabinにしても水元にしても、コピーしているバンドが俺ら2人と被ったりしているから、悪くはないというのはわかっていたので、声はかけやすかったですよ。



ということは、このバンドが始まる最初のタイミングを考えてみると、9年近い時間が有るわけですよね。
杉森:かわむらとやり始めたのは考えると9年くらい、水元とは一緒にあまりやる機会はなかったけども。
水元(Ba 以下水元):僕はkoyabinとブッチャーズやナンバガを一緒にやることがあったので、そこから多分声がかかったんでしょうね。
少なくとも6年くらい互い見てきているんですね。曲作りでは杉森さんとkoyabinさんが主導していくんですか?。
杉森:僕らの場合、最近ではオレが原案をもってきて、かわむらとkoyabinと3人で「これがいい」「こうならどうだろう?」と色々と考え、水元にベースラインを作ってもらって完成させる、という感じになってますね。なのでバンドのイニシアティブという点では全員が限りなく平等になっているんじゃないのかな?とも思ってますね。
一人がプリプロで作って、「アイディアはこんな感じだから弾いて!」とメンバー全員に投げて、集まったものを再構成し調整をして作る、という作曲のバンドも多いと思うんですが、それに比べると非常にバンドマンらしい作りですよね。
杉森:オレが原案をもってきた段階で、「この曲はこういう音が鳴る」というのがほぼほぼ誤差なくメンバー3人に伝わる、このバンドはそういうバンドなんです。他のバンドだと、「こうだ!」と言って出すと他の人の意見とか入ってくると邪魔なものになってしまうかもしれない、このバンドの場合「こうだ!」と出すと「それだよね」という答えが3つ返ってくる感じです。
かわむら:制作進行上、それが一番早く進むしね。
koyabin:『このフレーズで』というものじゃなく、『この感じ』というものをデモから受け取って、自分にとって弾きやすいものにして弾く、という感じですね。
杉森:逆に一人で悶々としちゃって良い曲にならないことが多いですね。元々オレはギタリストでずっとやってきて、このバンドをやるということでkoyabinと共にボーカルを始めたので、元々はボーカル不在のバンド。たぶん、元々弾き語りでずっとやってきた人は「オレがこの曲を一番わかってる」「自分の曲を邪魔されたくない!」という自負や創作的なエゴも出でくるんだと思うんですよ。
koyabin:シンガーソングライターがいないということにもなるよね。
杉森:そうだね。シンガーソングライターがいない、それがこのバンドのバランス感に大きく影響を与えてるのかもしれないです。
・・・そういえばという感じでふっと思ったんですけど、なぜTHIS IS JAPANというバンド名だったんでしょう?
杉森:大学の卒業旅行の帰りだったかな。
かわむら:「オレらのコピバンも終わりだなー」みたいな話になったとき、杉森が「オレ、バンドやろうと思うんだけど」って急に言いだしたんです。そして「バンドの名前は、THIS IS JAPANか、Project Jack Knifeかだ!」と言ったので、「THIS IS JAPANで」と即答して、そこから決まってます(笑)
杉森:さっきの映画の話にも近しいんですけど、バンドっていろんなスタイルがあるじゃないですか?そのなかでも真面目に真摯に感情をぶつけられるよりも、ちょっとシニカルな感じが好きなんです。「THIS IS JAPANってどこまで本気で言ってるんだろう?」と思わせるという感じで、それは聞いてみて判断してください、みたいな感じでね。
かわむら:そういう「意味わかんない」というのは良いなと思うね。最初の頃はアメコミのTシャツを着てやったりしてるし
杉森:JAPANって言いながらアメリカンな感じを出したりしたからね。まぁなんだろ、あんまり意味がないってことですよ(笑)





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2016.10.21 12:00

【INTERVIEW】ワニウエイブ『Contempo-Rally Championship 2016』

waniwave_jaket
不可思議/wonderboy、daoko、Jinmenusagi、GOMESS、YAMANE、EeMuらを輩出してきたLOW HIGH WHO?、期待の新人春ねむりがCDデビューを迎える中、次なるリリースはワニウエイブ『Contempo-Rally Championship 2016』だ。
Go-qualia、y0c1e、mochilon、Silvanian Families、吉田ヨウヘイ(吉田ヨウヘイグループ/Ellipse)という豪華なトラックメイカーが参加した本作、主人公となったワニウエイブとは一体どんな人物で、今作から漂う濃密な空気感とその源泉とは・・・?これまでの彼といまの彼を捉えてみた。(インタビュアー:草野虹)

音楽って情動が不安定な人間のためだけにあるわけじゃないんで

インタビュー始めちゃっていいでしょうか?
ワニウエイブ:大丈夫ですよー!
ついさっきツイッターで書かれていましたが、どれだけ虚(ホロウ)をアタラクシアできるのか、というインタビューでいきましょう(笑)今回の作品が云々という話の前に、そもそもwaniwaveさんってどんな人ですか?というバイオグラフィ的な話をしたほうがいいと思うんですけども
ワニウエイブ:アタラクシア、一体どういう意味なんだ・・・はい
LHWに入ったのは、2013年ごろ・・・でしたよね。それ以前はロックバンドをくんでいたり、自宅録音で音楽を作ったり、という流れだとお聞きしているんですが、どんな感じで音楽と触れ合ったんでしょうか?
ワニウエイブ:そうですね、LHWには2012年の末に加入決定して2013年頭から所属だと思います。音楽とのふれあいは、そもそもで言うと、小学校のころピアノ習ってましたね。それから中学二年生で打ち込みをはじめて、高校で軽音楽部に入って。その流れで宅録などするようになり、インターネット上に音源発表したりして、今に至るという感じです。
以前からツイッターでお世話になっていて、ロックバンドに造詣深いなーと思っていたんですけど、軽音部のときにかなりガッツリやられていたんですか?
ワニウエイブ:高校から大学ぐらいまでは完全にロックで、宅録も18歳から22歳ぐらいまではロックな曲ばかり作ってました。
そんななかでヒップホップやラッパーになっていくという。転機になった出来事があったんですか?
ワニウエイブ:なにかきっかけがあって急にそうなったっていうよりは、まあバンドでなく宅録でやっていく過程で、徐々にシンセとかサンプリングが増えて、楽器の音が減ってくみたいな感じで今のスタイルになりました
なるほどです。ヒップホップやりたい!とかいう気持ちよりも先に、流れとして今の形になって、それがヒップホップ流儀だと
ワニウエイブ:カットアップやらサンプリングやらヒップホップ的な手法が当時(オレにとって)すごいフレッシュだったのでヒップホップ寄りになっていったという感じだったんです
ちなみにワニウエイブさんのなかで、ヒップホップといえばどなたが思い浮かびますか?
ワニウエイブ:ヒップホップといえば~(4分経過)~カニエ・ウェスト!
長考でしたね(笑)ちなみに理由はなぜでしょう??
ワニウエイブ:オレが想像するなかでもっともヒップホップらしい人物なのかなと、オシャレですしね
ちなみに、ロックバンドといえば、どのバンドを思い浮かべますか?
ワニウエイブ:レッド・ツェッペリンですかね。ロックバンドの理想形だと思います。好き嫌いはもう関係ないですよね。
ワニウエイブっていうお名前、なんでこの名前なんですか?
ワニウエイブ:いまとなっては思い出すことも難しいんですが、精一杯誠実にお答えしますと。見た目がwaとwaでグラフィカルで良いというのと、その時思いついたからというのが一番大きい理由かと……。検索性が高く、なおかつキャッチーなものに変えようという意識はあったと思います。中学生のときは「もんち」というHNで、BMS……当時流行してたビートマニアのPC版みたいなやつですけど、そういうの作ったりしてましたよ。
最近ではそこをはじめにしてトラックメイカーになられたかたがかなりいると知って驚きました
ワニウエイブ:BMS出身の人や、BMSを経過した人には有名になられた方も多いですね。日本のネット音楽史においては相当重要だと思うので、誰か本とか書くといいですね。
もしかしてですけど、BMSやビーマニからゲームにハマっていったんでしょうか?歌詞にはゲーム単語や関連する語句がバチバチ入りますし、ゲームやアニメの方からの影響が大きそうな気がします。
ワニウエイブ:それ以前からもゲームはやっていますよ!今でもゲームが好きですね。ゲームや映画から受けた影響は計り知れないと思いますね。でもまあゲームが上手というほどには上手ではないですよ。あと小説も好きです
徐々に趣味と作風とがリンクしているところに話を移していきたいのですが、好きなRPGと好きなキャラは?
ワニウエイブ:好きなRPGは、いま答えるならFallout3です。好きなキャラ・・難しいなあ。クロノトリガーのカエルですかね。つきなみな感じですが。あとサガフロ2が大好きで、サガフロ2のギュスターヴですね。スクエアゲーになってしまいますね、世代的にね。
クロノトリガーすっごい懐かしいですね・・・87年生まれなので世代ドンピシャです。お好きな小説家と作品はなんでしょう?
ワニウエイブ:好きな小説家は舞城王太郎で、一冊選ぶならやはり「煙か土か食い物」です。「世界は密室で出来ている」というのを文庫で読んだのが最初ですね。きっかけも覚えてないんですけど。たぶん名前は知ってたんだと思います。誰かに勧められたのか、ネットで評判を読んだのか、芥川賞絡みのニュースで知ったのか……みたいな
となると、メフィストとか読まれたりしました?
ワニウエイブ:メフィストを買って読んでたわけではないんですけど、いわゆるメフィスト系みたいな人は結構読んでると思います。まあでも他の作家には、舞城王太郎ほど大きい影響を受けてるわけではないと思います
好きなエロゲはありますか?
ワニウエイブ:好きなエロゲだらけですよ。一番好きなのはリトバス(「リトルバスターズ!」のこと 美少女ゲームメイカーkeyが制作したノベルゲーム)です!以上です!
ワニウエイブさんは、以前かなり大掛かりな麻枝准(key所属の脚本家 先述の「リトバス」で脚本を手掛けた)を中心にした同人本に参加されてましたし、これまでの楽曲の歌詞にも参照してますしね
ワニウエイブ:麻枝准にはまあほんと強い影響を受け続けていると思います
ちなみに、僕はエロゲそこそこやっていて、型月(美少女ゲームメイカーTYPE-MOONのこと)はだいたいやってますね・・・。過去の曲で言うと、「ゲーム的リアリズムの死亡」と「高校生とはレディオヘッドを聴く」の2曲は、インターネットやSNSが好きなオタク系のギークやナードに刺さる曲で、こういった心性をワニウエイブさんが持ち合わせているように思ったりもします。いまの自分からして、過去の曲はどう聞こえますか??
ワニウエイブ:それらを作ってるときどういうことを考えていたのかを思い出しますね。ところで「ゲーム的リアリズムの死亡」は、実はあんまり「ゲーム的リアリズムの誕生」(現代評論家の東浩紀氏による著書)とは内容が関係ないんですが……。ひとつ言えることは、オレの根本的な語彙はインターネットによって構成されてるので、それがまあ世代感として現れているのだと思います
2014年に「ワニウエイブのCDは呪われた!」を出して以来、フリーEPをバンドキャンプで出し続けて、今年の頭には「Super Ultra Best on The WWW」をフリーとしてリリース、一気にこれまでの自分を精算するような感じに見えたのですが、その辺はなにか意識するような点だったのかな?と思いまして
ワニウエイブ:ベスト盤に関しては、LHWのサイト充実させてえからなんかフリーダウンロードの音源はないか?と要請がありまして、
「それだったらセカンドもあるし、まあ予習しやすいようにWEB既発音源をまとめるみたいなのがあると便利かな」って感じでつくりました。bandcampやサンクラでいちいち聴くのって面倒だし、「いい機会だし」ってのはありましたね
「Super Ultra Best on The WWW」から、この曲はワニウエイブらしい曲だなといえるような1曲を選ぶとしたら、どれになりますか?
ワニウエイブ:やはり「怨念の虹」かなと。曲調もメランコリックな感じでよいと思います。



ワニウエイブさんの歌詞って、物凄く達観したところから言葉を発しているようなところがあって、冷酷なところもありつつ、一つの視点から見て徹底的にぶっ叩くサディズムを感じられるんです。「怨念の虹」にもそういうフレーズがあって
「でっかい口を叩いて 溜飲を下げる理由は ウォーリーみたいにそこらに あつらえられたように潜む その怒りは本当に 君の内側のものなんだから 宝物みたいに大切に 餌をやって育てればいい」
というフレーズとか
ワニウエイブ:自分でいうのもあれですけど、アイロニカルですよね。でもまあ達観しているということではないんですよ。諦観している、あるいは諦観しているフリをしているということであって。それと「怨念の虹」ぐらいから、自分の根本的なテーマのようなものが明確に見えてきたなあと思ってます
ワニウエイブさんは諦観がキモになっている・・・ともおっしゃっていましたが、一貫して憤怒と覚悟を唄ってきたんじゃないのかな?とも思ったりしていて
ワニウエイブ:「怒り」というほど怒ってはないんですが、まあ悪意はありますよね!
「衆preme 愚oods」、ここには入ってないですが「さよならロッキングオン」などなど、自身に愛がある題材をモチーフに唄うからこそ、怒りも表に出てくるんだなと思ってますよ
ワニウエイブ:覚悟や選択というのも、特にファーストアルバムの頃はそういうテーマだったような気がします。さっきの「ゲーム的リアリズムの死亡」とほとんど全く同一のことを歌ってますね
ワニウエイブさんが好きなKeyとロックについて2曲とも唄ってますが、その実、これからを生きる覚悟をもて!という非常に前向きなメッセージなんですよね。
「散らかしたままの部屋を片付けて 窓を開け、服を着替える 僕らの愛した時代は死んだ。襟を正し、そして生きてく。」(「ゲーム的リアリズムの死亡」より)
ワニウエイブ:すごくざっくりまとめるとオワコンについての曲なんですが、そこにはどうしたって郷愁がついてまわるんですよね。自分の曲をさっき「諦観してるフリ」と言いましたが、強がってるということ、寂しくなんかないぞ、っていうことですね。これも世代感かもしれないですけど、正面からエモく表現するということがあまり信じられないんですよね。試みることはあるんですが。
なるほど
ワニウエイブ:世代という話でいえば、VIPイズムなのかもしれないですね。 VIPど真ん中世代なので、まあ人格形成に一役買ってるのは間違いないです
素直に、ストレートに表現して、受け入れられるかわかんない不安感とか、それ自体がかっこよく見えない・・・上の世代はそうやっていたしかっこよく見えていたけども・・・僕らはどうだろう?みたいな
ワニウエイブ:音楽って情動が不安定な人間のためだけにあるわけじゃないんで!

自分の目線から「現代」を切り取って、そのパーツパーツを楽曲に落とし込んでいった感じですね



(先行配信された「ブルーインフェルノ」)

いよいよ「Contempo-Rally Championship 2016」に話を移したいのですが、今作ではワニウエイブさんはあまりトラックメイカーとしては参加しておらず、ラッパーに徹していて、代わりに多くのトラックメイカーを招集しましたね。なにか意図はあったんでしょうか?
ワニウエイブ:そもそも、あんまりアルバム製作ということに興味がなかったんです。そんな折、2015年末に今回トラックメイカーとして参加していただいたGo-qualiaさんが、年間ベストみたいな企画でオレの曲を褒めてくれてたんですよ。そこで「いろんな人とコラボレーションしたいという理由ならアルバムが作れるのでは?」と思いついたのが最初です。その後、派遣で働いてるときに、<これはなにか音楽かなんかをやっているという実感がないと狂ってしまうぞ!>と思いまして、製作を開始したという感じです。
なるほど。以前ライブ現場でお会いした際には、トラックメイカーは有名な人に声をかけまくったんだよね~~なんて話を冗談めかしてましたけど、どんな曲を作って欲しいかはある程度トラックメイカーさん各々に任せっきりだったんでしょうか?
ワニウエイブ:最初に企画書を書いたんですよね。どのような流れでどんなアルバムになるかっていう。で、この曲なんですがどうでしょう?と一人ひとりにまずテーマを伝える形で作っていきました。
かなりコンセプチュアルに?
ワニウエイブ:今回のアルバムはかなりコンセプチュアルですね。企画書段階から変更点もあるんですけど、TMが決定して以降はほぼ変更なくそのまま作りました。トラックも最初の段階で、こういう曲を頼むならこの人かな、みたいなのを考えてオファーしてました
どの曲も、どの曲とも違いますよね、ギターポップ、オールドスクールなヒップホップ、電波ソングぎみ、エレクトロニカ、ジャジーなもの…
ワニウエイブ:そうですね、よい感じにちらけたと思います
これまでだと、一貫したトラックメイキングにワニウエイブさんの声が乗る、というのが常だった。そうじゃなくて、他人が作ったトラックに自分がどう言葉を乗せるか?というチャレンジでもあるし、そうすることで自分の周りの現実からも逃れられる感じもあると
ワニウエイブ:あとまあ、やはり、自分以外の視線とか視点が入ってくるということですよね。テーマを伝えてトラックをつくってもらうわけですから。
作り終えてみて、いまの気持ちはどうでしょうか??
ワニウエイブ:もうだいぶ経ってしまったんで、早くでねえかなと思いながら寝転がってますね。作り終わったときは、とにかく「長かった」と思いましたが。
製作期間、どれくらいだったんですか?
ワニウエイブ:半年ぐらい作ってたような気がしますね。コンセプト考えたり歌詞考えたりするのはまあ大変でした。トラック作るみなさんも結構苦慮なされていたようですね
先日のライブに来られていた吉田ヨウヘイさんにもカンタンに話を伺ったんですけど、悩んだんですよねーと話されてましたね
ワニウエイブ:いやいや、いきなり無理難題を押し付けて申し訳ない限りでした
今作でもワニウエイブさん自身いろいろ歌詞を深く考えたと思うんですけど、なんというか、Twitterで見られるあらゆる騒動を俯瞰的にみて悪態をついている、ような感じの言葉がすごい多いとまず思えました。
ワニウエイブ:ツイッター含めたインターネットのあちこちですね
VIP時代から生きてきたワニウエイブさんからみて、ココ数年くらいのツイッターやネットニュースで目につく話しに何か言いたいことや不満がグシャメシャに溜まっていったんですか?
ワニウエイブ:ああ、そういう風に感じましたか。別に怒ったり不満に思ってるってわけじゃあないですよ!今回のアルバムの一番最初のコンセプト、というかとっかかりが、タイトルの一部にもなってるように「現代」というものでした。なので、自分の目線から「現代」を切り取って、そのパーツパーツを楽曲に落とし込んでいった感じですね
いままさに「コンテンポラリーチャンピオンシップ2016」の歌詞を読んでいたんですけど、まさにそういったことを歌われていますよね
「コンテンポラリーチャンピオンシップ “今一番アツい”という御旗を掲げる 良い悪いが何度も回転し “逆にいい”となる中盤を迎える」
ワニウエイブ:現代とは何かということを考えたときに、やはり一番最初に出てくるのは、価値多様世界であるということですよね
客観的な序列がなく、色々な視点や価値観の併立・共存があって、それぞれの視点と価値観に立って複数の主張ができることを容認する、みたいな
ワニウエイブ:もっとミクロな話を突っ込んでいくと、もちろん最終的には大きくなるんですが、今回取り扱っているものだと、音楽の聴かれ方、とかそういうものですよね。これはこれでいい、いやむしろコレがいい、というような。
だからこそ、楽曲の毛色もバラバラですしね
「多種多様な定義の“現代的” 各自勝手に設定する仮想敵 種目数も増えていく兆候が で自分以外誰もいない表彰台」
という歌詞にもまとまってますよね、そのあたりの感覚は
ワニウエイブ:そうですね。今回のアルバム製作を通じてすごい自覚的になったんですけど、オレのテーマってのは多分、大げさに言えば「価値多様世界における孤独、孤立、疎外」だと思うようになったんです。言葉にすると短いんですが、それって実はあんまりシンプルじゃなくて。いろんな目線から描きうるテーマだなと思いますね
「ロスト・イン・ジ・イオンモール」が本作の2曲目に入ってますけど、イオンモール自体が多様な商品を取り扱うスーパーマーケットの代表格で、その中で<ロスト>する感じとかは、まさに<価値多様世界における孤独、孤立、疎外>ですよね
ワニウエイブ:はい。あとイオン自体が「郊外」にあるものですからね
僕の中で現代的とは・・・と言われると、そもそも答えがないのに、答えらしきものを設定して、答えじゃないものをも設定すること、だと思っているんですよ
ワニウエイブ:それってなんか禅問答みたいですね(笑)でもいいたいことはわかります。すげー最初にもどりますけど、それってホロウですよね。ホロウとか、スタンドとか、なんでもいいんです、ポケモンでもいんですけどね、
まさにホロウをアタラクシアする感じですね
ワニウエイブ:実際存在しないものに、意味を付与しようとしている感覚ですね。
まさにSNS絡まりで炎上するのとかでもいいんですけど、
「各自勝手に設定する仮想敵」
と歌われているじゃないですか?これまでは社会的な風潮などで<仮想敵>が決まっていたんですけど、いまだと個々人それぞれが勝手に生み出してる気がするんですよ
ワニウエイブ:わりと自分の立場が正義であるという大前提をもとにそれが行われますね
疎外感とか孤独とかもそういったものから生まれたりしますしね。価値が多様になり認めつつ、各自に敵を設定することで、阻害と孤独を深めていく流れを歌っている。
ワニウエイブ:手を開けないまま局面が進むポーカーみたいなものです。オレはロイヤルストレートフラッシュだぜ、って口先で言い合ってるんですよね
でも札をオープンにする瞬間は訪れないわけで
ワニウエイブ:そもそもそんな札なんて本当にあるかどうかもわからない、と。ただ、俯瞰する、とか、客観的になるってことは、孤立することでもあるんですけど、自分を保つということでもありますね。さっきから価値多様世界みたいな話してますけど、じゃあそれが全体主義みたいな。価値単一になればいいかっていうとそれはぜったい違うわけですし。
この作品を仕事していてすり減っていく中で音楽を作らないと自分を見失う中で作り始めたと仰っていていましたが、「おしゃべり」や「会話」の先にラップがある、そういった根源的なところもすごく感じられますね。今作から物凄い悲しさを感じ取れもしましたが、今日のお話などを聞いていて、なるほど働いている自分の身だからこそなのかもと。
ワニウエイブ:今回はすごく悲しいですよね。その悲しさと向き合うときに、ユーモアだったり、たとえば俯瞰だったり、ちょっとバカにしてみたり、そういうことを使うのが知恵ってもんですよ。だから本当に、怒ってるというわけではないですね
最近発売になった宇多田ヒカルが新作に纏わるインタビューで、「ユーモアって、どうにもならない状況に対して唯一できること」と仰っていたのを思い出します、それを踏まえると、今作はワニウエイブ全身全霊のユーモアとコンセプトによって疎外感や孤独感による悲しみを込めた・・・という作品ではありますよね
ワニウエイブ:そうですね。宇多田ヒカルは育ちいいですけど、オレらみたいなもんは育ちが悪いのでユーモアだけじゃなくて、毒も悪意も使うということです
ブラックユーモアも、インターネットミームも、ネットスラングも、全てをまとって生まれるリアルなラップミュージック、みたいな感じですね、本当に。だからこそ刺さると
ワニウエイブ:ヒップホップの誕生という話でいうと、ここがオレらにとってのストリートですからね

『Contempo-Rally Championship 2016』/ waniwave
2016年10/19リリース
フォーマット:CD
レーベル:LOW HIGH WHO? PRODUCTION
【Track List】
01. 人とは違う音楽が好きな人のための音楽 [Prod. ツマー]
02. ロスト・イン・ジ・イオンモール [Prod. 吉田ヨウヘイ]
03. ここがヘンだよはちまjin [Prod. Silvanian Families]
04. 嘘だドンドンドン [Prod. waniwave]
05. ブルースクリーンインフェルノ [Prod. 4sk]
06. ガールズアンドパンツ [Prod. y0c1e]
07. 神話カンパニー [Prod. mochilon]
08. ノーカントリーフォースキッツォイドメン [Prod. Go-qualia]
09. コンテンポラリーチャンピオンシップ2016 [Prod. kumorida]
10. 1分でわかるワニウエイブ2ndアルバム「Contempo-Rally Championship 2016」


<インタビュアー:草野虹 10月6日 Twitterにて>

2016.10.16 12:00

【INTERVIEW】塚原啓によるソロ・プロジェクトrakia 新作『Eclectic Color』インタビュー



サウンドクリエイター塚原啓によるソロ・プロジェクトrakiaが6年ぶりにリリースしたアルバム『Eclectic Color』。
坂本龍一によるオーディション番組での紹介や、前衛舞踏・演劇への楽曲提供、スペイン国営テレビ主催のクラブイベントへの参加といった経歴を持つ彼が、ブランクの間に訪れたヨーロッパの風景や芸術作品、そして日本国内の厳しい景色をモチーフとして作り上げたというこのアルバム。
彼にインスピレーションを与えたもの、そのインスピレーションをどのように吟味し、作品を形作っていったのか。
これらを掘り下げるべく塚原啓=rakiaに行ったインタビューを行ってみた。

美術で培ったノウハウが音楽制作に置き換えられているイメージかもしれません。

:6年のブランクですが、本作のトラック制作はいつころからスタートしたのでしょうか?
rakia:最初の2年間はネットが繋がらない環境に身を置いて居たため、充電期間といいますか…一旦音楽から離れ、旅行と絵画製作等を行い展覧会に出品したりしておりました。その後、震災で実家や東北の親戚が被災した為2年程,DIYのツールを一式揃えてリフォームや再建へのボランティア活動を行っておりました。生活全体が安定するに従って、一度は処分した機材を海外のオークションサイトを利用して買い戻したりして…リペアやメンテナンスも含めて、海外の人とのコミュニケーションをとるのに相当な時間とエネルギーを費やしました。
:確かに6年というと間に震災もありましたね。。機材を買い戻すといっても結構大変だったのではないですか?
rakia:当時は多少円高だったのでタイミングとしては恵まれて、憧れのビンテージシンセをコレクターの方から入手できたり、急激に安価になったサンプラー等の機材も購入する事ができました。又、新しいMacに加え0.S9にしか対応していない使い慣れたアプリケーション用に敢えて古いMacを買い戻したりしました。…そんな感じで、漸くセットアップ期間に入ったのが2014年秋頃で、トラック制作を再開できたのは2015年初旬からです。
:一貫したサウンドの統一性に圧倒されました。すべてのトラックが揃った後で、もう一度全体を見直して整合性をとるといったことを行っているのでしょうか。あるいは、サウンドを組み立てる前に精密に計算したものなのでしょうか?
rakia:僕の場合、義務教育だった頃から絵画(水彩、日本画)版画(ドライポイント)を制作していた時期が有り、無意識といいますか体感的にその制作過程そのものが刷り込まれておりまして。恐らく、美術で培ったノウハウ(組み立てる前に計算、完成型から逆算する習慣)が音楽制作に置き換えられているイメージかもしれません。
:完成型から逆算する習慣、というのはものすごく分かる気がします。
rakia:故に、幸か不幸か…DTMならではのポピュラーな制作手順は行っておらず、絵画制作に於ける“取材~スケッチ~パネル作り~構図/下図作り~本描き=納得がゆく迄描き込む”スタイルがそのまま“取材~モチーフ制作~ベーシックトラックを構築~マテリアル単位での解体~再構築を繰り返す”過程にピッタリと重なり合う感覚で制作を行っております。建築家が模型作りをバインドする流れと全く同じフローです。そのようなアプローチを試みているせいか自ずと一貫した世界観を表現する事が出来ました。

Y.M.Oの“テクノデリック”の様なアルバム構成が理想だったりします。

:アルバムは、1-4曲目までで小さく一周、その後5曲目からは最初の1-4曲目を踏まえて大きく構成を辿るといったような2部構成のような印象も受けました。曲順について意識されているところはありますか?
rakia:曲順に関してはnikさんとのやり取りで決めました。正直、1曲目の選考は非常に悩ましかったです。耳から入る情報は無限ですが、実際リスナーの立場で考えると連続して同系列のトラックが重なると恐らく脳の処理の仕方が漫然とするでしょう。その辺りは起伏を考慮して曲順を変えたセットを幾つか用意して相当に吟味しました。
:かなり慎重に配置されたんですね。オープニングはとてもスムーズで、素晴らしいと思います。
rakia:冒頭としてのスタートダッシュ的な躍動感を持たせる、楽曲としてのフックを提示する、示唆したいイメージを持続させる、持続したイメージを落ち着かせる…といった1サイクル。要するに、DJ的掟のような起承転結を、曲同士の前後関係を通じて役割を持たせている事は確かです。In Blossomで明確に切り替ります。
ご指摘の通り、5曲目からsideBに移行するニュアンスです。おこがましいですが、Y.M.Oの“テクノデリック”の様なアルバム構成が理想だったりします。

美術館等で、工芸品や肉筆絵画をダイレクトに見る行為そのものが、トラックメイキングの発展に繋がる重要なファクターであると考えております。

:ヨーロッパと日本のEclecticというコンセプトですが、例えば「ヨーロッパ的な役割」はすべてこの音響、といった音色による役割指定というよりも、和声感覚であるとか旋律であるとか、伝統的な音楽の部分に静かな折衷を感じました。それはとても抑制された美しさだと思います。ヨーロッパ、日本、それぞれで印象に残る景色というのはありますか?
rakia:確かに、音色あるいは音響で「ヨーロッパ的な役割」は表現そのものが困難かもしれません。音楽的な部分、すなわちコード感及び旋律的な音列(インターバル)を適宜設置する事により平均率に対してよりヨーロピアンだったり、ジャポニズムな折衷感を醸し出していると思います。
:表現そのものが困難というのは確かにあるかもしれませんね。そこに絵画の役割も自然と折り重なるようなところがあったのでしょうか。
rakia:景色に関してですが、ヨーロッパは逆光を差して黄金色を帯びた広大なドイツの麦畑や、朝霞がかったスイスのルツェルン湖がとても印象的でした。そのイメージで当初“Swan”のタイトルでインストとして制作しましたが、後になってリリックとvoiceを作って頂いた為、真逆なモチーフをそのまま“The Desert Of The Moon”として発展させました。日本では、青森県白神山地沿いの夕暮れ時の日本海が絶景でした。さらには奈良の吉野山から見下ろした山桜も圧巻でした。青森、奈良それぞれ晩秋と早春の時期に訪れ“Tidal Flow” 及び“Cherry Petals Falling”のモチーフ制作のインスピレーションの源となっております。
:音楽がキーになって記憶が蘇るということをよく聞きます。ここれはむしろ逆で(音を制作する訳ですから当然ではありますが)、景色がキーになってサウンドを具象化する、ということになりますが、トラック毎に明確にこの景色、といったような分離があるのでしょうか。あるいは大きな物語のようなものが作品全体を覆っているというようなイメージでしょうか?
rakia:前述したものは景色や心象がトラックに具象化されておりますが、曲によっては完全に“無”の状態からモチーフを作りつつ(往々にして季節感は影響しますが)、一旦クールダウンさせて、再度別解釈で構築しトリミングを施した結果、ベクトルが明確になり作品として成立したものもあります。今年の1月にモチーフを作った…White Landscapesはその試みの典型です。逆に、2月に入ると早朝や夕方に“渡り鳥の群れ”を多数見かける様になり“Migratory Birds”のベーシックな部分を作ったり…と身近な日常からヒントを得てます。ですので、トラック毎にこの景色という分離よりも、その後の“高みに昇華/発展させる処理”に重心を置く事が、結果として景色と結びつくのではないかと思われます。
:景色、心象、無、日常、そして再び景色…と。
rakia:更に、個人的な経験則としては美術館等で、工芸品や肉筆絵画をダイレクトに見る行為そのものが、トラックメイキングの発展に繋がる重要なファクターであると考えております。理由は通常の音楽(当然、主軸であり影響もある)からの刺激と比べ、より気分がフラットになり、客観的に“イケてるか、否か?”分別が付き易くなるという空間的な感性が備わる様な気がします。尚、作品全体に関しては、それほど俯瞰しておらず、偶然の賜物とでも言えますが…トラック単位で臨んでいる為、大きな物語といった括り等は特に意識しておりません。
:rakia名義では今後、どのような活動を考えているのでしょうか?
rakia:音の質感やトラックメイキングのスタンスは今まで通りですが、個性的な女性ボーカリストをフィーチャーしたメロディアスな楽曲にもトライしてみたいと思います。機会があればライブ活動も視野に入れたいと思います。

インタビュー 30smallflowers(@30smallflowers)


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『Eclectic Color』/ rakia
2016年10/15リリース
フォーマット:CD
レーベル:PROGRESSIVE FOrM
カタログNo.:PFCD62
価格:¥2,000
【Track List】
01. Cherry Petals Falling
02. Day Dream feat. Manami
03. Tidal Flow
04. After The Rain
05. In Blossom
06. Reflection feat. Hiroe Baba
07. Migratory Birds
08. Nostalgia
09. The Desert Of The Moon feat. Hiroe Baba
10. White Landscapes
11. Water Drop


30smallflowersによるrakia『Eclectic Color』レビューはこちら
↓↓↓
【REVIEW】Eclectic Color / rakia(PROGRESSIVE FOrM)

2016.10.15 12:00

【INTERVIEW & REVIEW】gift to her / guitarsisyo (PROGRESSIVE FOrM)

2016年1月に3rdアルバムが配信されたばかりのguitarsisyoだが、早くも4thアルバムが届けられた。従来からリズムトラックに乗せた折り重なるアコースティックギターのアルペジオが印象的な安定した作風を保ち続けているが、今作は淡さを残しながらも音色の多様性やリズムトラックの透明感にも配慮されたトラックが多く収録されている。



1.toou
幾重も重なるギターのアプローチは音響的にも前作とも近い感触を持つが、ややダビーなブレイクビーツがとてもクリアな音色を保っている。外観は前作の延長ともとれる。しかしリズムトラックは今作のオープニングとして新しいアプローチをさりげなく、そして下降する美しいコードと共に深く提示する力強いはじまりかたともとれる。ここでの音響処理は以降のトラックでも随所に埋め込まれているようが気がする。静かだがオープニングにふさわしいトラックだ。

Q1このリズムトラックの音響は前作までの作品と比較してとてもクリアにリズムトラックが押し出された気がします。例えば、トミーゲレロのような要素を一層クリアにしたような印象です。前作から程なくして発表されたアルバムの1曲目としてはとても驚きました。このトラックはいつ頃作られたものなのでしょうか?前作とは明確に区別されているのでしょうか?
guitarsisyo作ったのは多分去年の中頃?だったと思います。基本的に曲作りは、時間があるときに断片断片で作って、あとでまとめる作業をするということが多いので、前作がどうだったから区別するとかそういうことはあまり考えていないです。ちなみに、トミーゲレロという名前くらいしか知らないのです…すみません…。
2.tpgk
冒頭のクリアなピアノのフレーズは絶妙に揺らぐことで、Hip Hop経由のサンプリングカルチャーが透明感を伴って昇華したような印象を残す。電子音を重ねながらトラックは進行するが、時折に挟みこまれるアコースティックギターの叙情的なオブリがECMのレコードのような感触を残す。
3.osk feat. hikyo
続くトラックでは非常にクリアでオンマイクなギターとリバーブに淡く揺らめくhikyoのヴォーカルの重なり具合が心地よい。ここでも繰り返されるフレーズは各所に揺らぎが織り込まれている。そこにリズムボックスの端正なノートが挿入されることでフォークトロニカとHip
Hopが入り混じる奥行きある響きを作り出している。

Q2この揺らぎと端正なリズムボックスのバランスがとても好きです。このトラック、どのパーツもナチュラルメイクというのか、丁寧な音響とナチュラルさが同居していて素晴らしいと思います。例えばヴォーカルRECの際には、例えば歌い方や言葉の散らばし方などあらかじめイメージを共有されていたのでしょうか?
guitarsisyo歌については、すべてお任せです(笑)。お互い離れたところに住んでいるので、カラオケ状態の音源をお渡しして、歌トラックをスタジオで録ってもらい、歌ファイルだけを頂いて、こちらですべてエフェクト処理、ミックスをしました。個人的にhikyoさんの声質が好きで、多分自分の曲に合うだろうなとは以前から思っていたので、私的には想定内(笑)の出来です。
4.dbnrm
細やかに配置されたリズムトラックとサンプリング音が印象的な冒頭部分にギターのアルペジが重なる瞬間、リズムトラックがミュートされギターを中心としたオーガニックな音が目の前に広がる瞬間、ピアノとギターが淡く交差する瞬間、シーンが切り替わるごとにそれぞれの美しさが刻まれているとても繊細な楽曲。どの瞬間も音響がとても印象に残る作りになっている。
5.sra
電子音が静かにコードを刻み、ディレイによってリズムが提示され、ギターはゆっくりと端正なアルペジオを刻む。シンプルなコード進行が物語を進めていく。中間部で入れ替わる細かな電子音の美しさに続くリズムトラックは意外にも高速感を持ったキック。シリアスさに寄り過ぎず穏やかなユーモアさえ感じさせる余裕のある表現に成功している。

Q3このトラックはシーンの切り替えが見事だと思います。特に後半に向けてのJUKEの倍速感覚とも違う、ダビーな音楽でもなく、なんとも予想外の展開なのですが、ある種の余裕とユーモアを感じてしまいました。そのような感じ取り方はどんなものでしょうか?
guitarsisyo私的には、あまり凝った展開ではないと思っています。多分ですが、ポストロックとかマスロックとか言われるジャンルの方々の曲を聴いていたからそういう影響からもしれないですね。そういう中だと「ベタ」かなと感じているくらいです。
6.teks
前曲から程なくつながるが、ここでは再び端正なブレイクビーツが再現されている。リバーブに暖められたスネアと透明感ある電子音に寄り添うギターのアルペジオ。静かに7thを入れ込むアプローチや、中間部以降で強調され繰り返される転調、音の動きがとても絵画的なトラックだ。
7.sbe
複雑な和声が示された前曲との対比でシンプルなコード進行が引き立つこのトラックでは、ピアノにMarei
Suyamaを迎えた淡いインタープレイが印象的だ。ピアノを覆うどのパートも大きく出すぎることなく、シンプルなコード進行を印象付けるべく一体となるようなアレンジと音の分離具合の対比がとても美しい。美しさへの配慮の多いトラックだ。

Q4冒頭にも登場する管楽器の音色からもっとvaporwave的な展開を予想したのですが、むしろ自由に広がるピアノや前曲との対比でのシンプルなコード進行が印象的でした。曲の並び方がとても効果的だと思います。(が、曲順が見えてきたのは制作のどの段階あたりなのでしょうか。こうした繊細な並べ方というのは相当時間を掛けて練った構成なのかなと想像しました。そのあたりのお話を伺えたらと思いまして質問させて頂きました)
guitarsisyo曲順については、レーベルの方と相談して決めました。全曲揃ってからですね。今回のアルバムは今までだったら、全て自分で考えないといけないところを客観的に見てくださる方がいたので、大変助かりました。
8.cbmh
リードトラック的な明快さを持ちつつ、ギターが旋律とアルペジオの中間点のようなフレーズを奏でている。複雑さと明快さを併せ持つトラックだが、端正なバランスがそれらを両立させている。ギターの揺らぎはかつてのミニマルミュージックも連想させる。あらゆる要素が織り込まれている。
9.ansl
朴訥なピアノのブロックコードを支えるブレイクビーツ。美しい転調をはさむコード進行、ギター、電子音、オブリとリズムトラック、表情の移り変わりがとても自然で、楽曲の展開を意識せず、つい聴きいってしまう。中間部以降徐々に音が集まり集中力を増す。このゆったりした淡い変化が美しい。
10.slw
朴訥としたピアノとギター、楽曲は静かにレイドバックしたブレイクビーツに乗せて、美しくもシンプルな進行の中での物語のシーンを切り開いていく。ここでも端正で美しい世界はキープされているが、時折みせるギターのオブリをとらえる音響が美しい。ピアノの細かな打鍵、ゆったりしたフレーズ、旋律以外の要素も一体となって淡い世界観を醸し出している。
11.life is dictionary
最後に収録されたこの曲では、淡さはリバーブの中に残しつつ、ダイレクトな音響のギターがそれを引き立てる。陰影を帯びたコードや、静謐なブレイク、サイン波を引き伸ばしたような低音の余韻、どのパーツも自らの短いフレーズをもっており、それらが揺らぎながら寄せては分離するサイクルに包まれていく。soejima
takumaによるミックスがラジカルな側面と叙情的な背景を同居させることに成功している。とても美しい。

Q5soejima takumaさんとの音楽的な相性はとても良いと感じました。シリアスさやアーティスティックな側面が時折ユーモアでうまく包まれていることがあったり、とてもラジカルな部分が時としてむき出しになっていたり。。ミックスによって変わった部分、変わらない部分というのはありますか?
guitarsisyo元々は、ギターとエレピのかなりシンプルなものだったのですが、soejimaさんがピアノを足してくれたり、ミックスしてくれたことで最後の曲に相応しい感じになったかな?と思います。
Q6どうしても伺いたいと思っていたことがありました。それは不思議な曲のタイトルについてなのですが、、逆に最後のトラックだけは明確な単語になっていますね。そして”dictionary”という言葉。前作までのタイトルも含めてとてもdictionary的だなという集約されたイメージをこのトラックに求めてしまうのですが。。(が、そんな深読みはアリでしょか)
guitarsisyoタイトルは付けるのが苦手なのと、dawのファイル名も製作開始年月日なんですよね。で、尊敬する宮内優里さんの曲タイトルも結構適当だったので(笑)、「あ、もうこれでいいや。」という感じで付けています。一応、ある単語の頭文字のアルファベットを取っているんですが、思い付きでつけているので殆ど覚えていません(笑)。
最後の曲だけ明確な単語なのは、昔、音楽的にかなり影響を受けた人とユニットを組んでいたことがあって、そのときのユニット名なんです。もうその人とは音信不通で今どこで何をしているかも分かりませんが、もしこれを見たら思い出して頂ければありがたいなと。なので、楽曲については全く関係無いですね(笑)。
Q7最後に、このアルバムに込めた「家族への想い」というのはどういったものなのでしょうか。(私は、そこにある種のメランコリーと、自我っていうのでしょうか、、そういうものが縦軸、横軸で交錯する、、とても複雑な、肉親ゆえの、、的な想いを感じてしまいましたが、、そのようなものなのでしょうか)
guitarsisyoあんまり深い意味は無いですが、僕のように嫁や子どもがいて、音楽で生業を立てていない人が、音楽活動を続けるのって意外と難しいのかな?って思います。それが出来るっていうのは、やっぱり家族が理解して許してくれているからだと思うんですよね。そこに対する感謝という意味でこういうアルバムタイトルにしました。ま、結局、楽曲には何の関係も無いですね(笑)。
そういう意味から言うと、次のアルバムタイトルは「gift to her vol.2」とかになりますが、それは避けます(笑)。
基本的にはこれまで通り、不思議な曲名と美しいアコースティックギターが織りなす世界観はしっかりと提示されているが、多様性がその世界をさらに押し広げることに成功しているのではないかと感じる。「家族への想い」をタイトルに込めたという本作は、家族故のメランコリーを持った陰影を残しつつ、自己の透明感はキープする。そういったタペストリーを連想させる折り重なった世界を幾重にも提示してくれる作品に仕上がった。


インタビュー 30smallflowers(@30smallflowers)



gift-to-her
『gift to her』/ guitarsisyo
2016年7/17リリース
フォーマット:CD
レーベル:PROGRESSIVE FOrM
カタログNo.:PFCD59
価格:¥2,000(税抜)
【Track List】
01. toou
02. tpgk
03. osk feat. hikyo
04. dbnrm
05. sra
06. teks
07. sbe
08. cbmh
09. ansl
10. slw
11. life is dictionary
amazon
All Tracks Written, Produced & Mixed by guitarsisyo in Japan
Except:
M2 Vocal by hikyo, Recorded by CatooO NO asoviva
M5 & 11 Additional Production & Mix by soejima takuma
M7 Piano by Marei Suyama
Mastered by Yoshio Machida
Model by mirei
Artwork by rieko w, guitarsisyo
Design & Layout by nik
Thanks to: bit, horse ride park, sexy chocolates, selvasupina, CatooO, NO asoviva, My Family & All Friends

2016.7.26 21:00

【INTERVIEW】エレファントノイズカシマシ

interview_enk

ノイズ集団エレファントノイズカシマシ。
パッケージングされた音楽を嫌うかのような激しいパフォーマンスと常識を踏み越えるライブを続け、東京のアンダーグラウンドシーンに大きな歯型を残し続けている。
今回indiegrabでは全体的なシルエットが見えにくい彼らにフォーカスを合わせるべく、メンバーの片岡フグリ、小林ムーク、剤電にインタビューを試みた。

いいですね、パートって。バンドみたいですね(笑)

本日はお集まりいただきありがとうございます。まず、自己紹介としてお名前とパートを教えていただけますか?
剤電:いいですね、パートって。バンドみたいですね(笑)
片岡フグリ(以下片岡):じゃあ剤電からお願いします。
剤電:ノイズ作家の剤電です。
ノイズ作家??
剤電:カルチャーブロスに書かれました(笑)でもけっこう気に入ってます。
片岡:「エレファントノイズカシマシ」って書いてないの?
剤電:書いてない。
私も剤電さんの参加ユニットの全容って、把握しきってないです(笑)
小林ムーク(以下小林):えー、シンセとか モノとかをやっている小林ムークです。以上です(笑)
よろしくお願いします。
片岡:総合司会の片岡フグリです。
一同:総合司会(笑)
片岡:『自分は総合司会です』と、エレファントカシマシの宮本さんが自己紹介で言っています。
剤電:あ、そうなんだ(笑)
インタビューってされた事ありますか?
片岡:いや、ないんじゃないですか?
剤電:1回だけ、youtubeでやってたラジオ番組で、お話しをした事がありますね。
ラジオ出演みたいな?
剤電:MOGIKOJINさんっていう、ドラムソロとか企画とかやってる方のネットラジオに出演させて頂いたことがあります。その時は華屋与兵衛で死んだうちの犬の話とかして、あとイチヤマ君(motherpill)っていうウチらの友だちも何故か同席してて、完全に危ない人たちって感じで…。
あ、あれの後にKLONNSもあって…その時も僕いたんだけど全然話が盛り上がんなくて(笑)モギ(MOGIKOJIN)さん、心折れちゃって…多分。探せばまだMOGIRADIOっていうのが音声で上がってるかと。



G.G.G.G.は重い、巨人系の音楽。

よく私「エレカシ」って略しちゃうんですけど、正式な略称としては「ノイカシ」ですか?
小林:ノイズ…エレカシ?(笑)
片岡:様々な略称がありますね。ノイズエレカシという略称をかつて使ったのは小堺さん(インキャパシタンツ)だけです。バリエーション出しちゃうとtwitterで見つけにくいし、ノイカシが一番使い易いです。
(twitterアイコンなどに用いられている)ノイカシのロゴマークってどなたが作ったんですか?
gFVfyLzJ_400x400

片岡: あれはエイフェックスツインが作りました。
一同:(爆笑)
片岡: いや、俺が作りましたけどね。でもあの会社に頼んだらいいんじゃないかな。デザイナーズ・リパブリック。10万ドルぐらい払って。
剤電:デザイナーズ・リパブリックにお金払って「エイフェックスツインのマークみたいなやつお願いします」って。
小林:断られるんじゃない?普通に(笑)
片岡: (デザイナーズ・リパブリックの)展示会に行った時、オウテカがずっと流れてたんですよ。
小林: オウテカ流れてたの?
片岡: オウテカ流れてた。っで、これなんていう人の曲ですか?って受付で聞いたら、「オウ⤴︎テカ⤴︎っていうアーティストです」って。
一同:(笑)
剤電: オウ⤴︎テカ⤴︎?
片岡: オウ⤴︎テカ⤴︎
小林:イントネーションが(笑)それ、説明してる人も知らないよね。全くそういうのに精通してない。
ノイカシって正式なメンバーは今何人いるんですか?
片岡:5人ですよ。メンバーが出れない時とか、特別な編成の時とかは助っ人が入ります。
一時期すごく人が増えていたような印象があるんですが。
片岡:G.G.G.G.(エレファントノイズカシマシの別名義ユニット)とかやってたからじゃないですか?


(LIVE) G.G.G.G. (a.k.a GREAT GIANT GIGANTIC GRAVITY)

G.G.G.G.はユニットとしてはいつ頃から始めたんですか?
片岡: 半年ぐらい前かな。(2015/8/9 新宿ゴールデンエッグにて初ライブ)G.G.G.Gを組んだきっかけは、ライブに出れないメンバーがいたけど、どうしても出たいライブに誘われて。でも、いないメンバーがいるのに、エレファントノイズカシマシって名義は使いたくないなと思って。G.G.G.Gという新しいバンドで出演することにしました。
剤電:それでやってみて結構良かったんでもう4回ぐらいやってるという。
小林:メンバー全員出れる時も。誰も欠員してないのにG.G.G.G.でやったりする(笑)
剤電:でかい音でやりたい時とかはG.G.G.G.ですね。
片岡:そうですね。確かにね。
今は、使い分けができてるんですね。
片岡:爆音系のイベントだとG.G.G.G.でやろうみたいな感じになりますね。
剤電: G.G.G.G.は重い、巨人系の音楽。
巨人系の?
剤電:アイアンジャイアント…心優しい巨人みたいな。


2016.6.26 20:00

【INTERVIEW】Boyish岩澤が語る新作『STRINGS』「いままで僕が聞いてこなかった音楽を発見して、昔と今の音楽がつながっていく、そういうのが楽しくて」

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人は成長する。
音楽の話なのに何を書いているんだ?と思われるだろうが、本当にそう思えるのだ。
東京のインディバンドBoyish、彼らを知る人はこの記事を読む時、これまでの作品と新作『STRINGS』とを聴き比べながら読んで欲しい。一人の人間が生み出し、多人数で奏であう音楽が、これほどに変わることができるのか、と。
その驚きをもとにして今回のインタビューでは話を聞かせてもらった。今作を生み出すまでにいたった経緯はもとより、音楽を生み出す上での彼自身の信条と、これからの彼が目指していく未来像が少しだけ垣間見えると思う。

おかげで「What’s going on」のベースは全部弾けますよ(岩澤)

お久しぶりです。
岩澤:お久しぶりです。前のお話っていつでしたっけ?
僕が1年前に『Bad apple』を作った時ですね。あの時はFor Tracy Hydeの管くんと一緒に話をしてくれたんですよね。
岩澤: そうでしたね。セカンドが出た翌年のすぐでした。
あの時は、バンド結成のいきさつや、For Tracy Hydeの管くんと一緒にバンド組んでいたという話、好きな音楽とかその時見えていたヴィジョンについて、お互いの作品についていろいろと話してくれたんですよね。でも、実はあの時、僕の口からはセカンドアルバムについての話をそこまでしていなかったんですよね。
岩澤: はい。
Boyishの『Sketch For 8000 Days Of Moratorium』については、Belong Mediaにて僕とKalan Ya Heidiのおかざきくんとでディスクレビューを書いたんだけども、要約すると、<BPMが早くて、ウォールオブサウンドなギターサウンド、これまでよりもロックバンド然としつつもシューゲイザーっぽさもあって、メロディの良さが際立っている>というような話でした。いまの岩澤くんから見てみると、前の作品はどういうふうに映りますか?。サウンドとしての変化、制作したのも2年前ということで立場や感じ方もいまとは思うのですが。
岩澤: うーん・・・当時やりたいことはちゃんと詰め込んだし、それなりにできた作品だとは思うんだけども、録音とかはやっぱり当時から納得はいってないですかね。ファーストのときは、メンバーそれぞれが録音したものをミックスした作品だったんですけど、前作はバンドっぽいノリにプラスして宅録風な要素を詰め込んでいて、ある意味では実験的なアルバムといえるんですよね。ギター1つにしてもかなり重ねてて重ねて・・・という作業もあったので、無理がある作品というか
なるほど。それは制作にも響いたりしましたか?
岩澤: いえ、この時はむしろ制作費は抑えられてると思います。ただ今回の作品を作ったあとのいまにしておもえば、ギターをたくさん重ねることが必ずしも正解にはならない、ということに気づけましたね。
ありがとうございます。メンバーの交代やライブ活動を経て、なにかバンド内での変化などはあったんでしょうか?
岩澤: ギターリフとかアレンジメントで「これはこうしたほうがいいんじゃないのか?」とかちょこちょこと話をする程度で、ライブを重ねていくことでの変化は実はあまり多くなかったですね、むしろCDやレコードを漁って聞くことでかなり影響を受けてると思います。
まさにその話に繋がるようなお話をお聞きしたかったんですが、ストレートに言って今回発売する『Strings』はこれまでの作品とは一線を画すような作品になったと思います。聴く音楽が変わったんじゃないのか!?と疑うくらいんだったんですが、どうだったんでしょう?。
岩澤: USインディやオルタナとかネオアコみたいなものを嫌いになったわけではないんです。RASAというソウルミュージシャン・ユニットがいるんですけど、いまのミュージシャンじゃないし、かなりレアでマイナーな方なんですが、その人達を聴いて、「おっ、面白いな、ソウルミュージックを聴いてみよう」と思えたんです。そこから、マーヴィン・ゲイ、カーティス・メイフィールドとか、あとはフィリーソウルとかもよく聴きました。
ダニー・ハサウェイとか。70年代ソウルですよね。
岩澤: 川崎にTOPSっていうソウルやジャズ系のレコード屋があるんですけど、帰り道とか用事がある時にはそこに入っていろいろ探しましたね。ちょっとお値段が張るから必ず買うということでもないですけど、知識とか興味を継続して保つ意味でも。
なるほど。前作を出してから今作を出す間で、東京のインディが大きく変化したといえば、ロックバンド然としたサウンドではなく、ポップバンド然としたサウンドとしたバンドが大きく受け入れられたことにあると思いますし、そういったバンドがどんどんと増えていっているのも事実です。もしかして、Boyishの変化は、そういった流れに乗っかろうという軽い感じだったんでしょうか?
岩澤: 僕はそういうのは一番嫌いですね(笑)
うん、わかっていて聞いてみました(笑)むしろそういったものじゃなく、岩澤くんの中での変化が如実に現れたということですよね。
岩澤: そうですね。でも、確かにそういうサウンドが世の中にも受け入れられているのはわかります。星野源の『Yellow Dancer』は僕もよく聴きました。全部が好きな曲!ということでもないですけども。
いろいろ聞いたと言いましたけど、どれくらい聴きました?50枚くらいですか?
岩澤: いや、もっと多いです。TOPSで買ったレコードもあれば、僕自身はツタヤでCDをガンガン借りるタイプでもあるので、棚一つ分以上は全然聴いてます。あとは、去年くらいに横浜の赤レンガで行われた『70’sバイブレーション!YOKOHAMA』っていうイベントがあって、70年代や80年代のロックを掘り直そう!みたいなイベントがあったんです。YMOやはちみつぱいとかはっぴぃえんど、当時使用された楽器の展示とか、影響された音楽の展示があったんです。いままでは70年代というところに大きな注目はしてなかったんですけど、ソウルミュージックとかこのイベントの影響がすごく大きかったですね。
ソウルへの傾倒は他のメンバーにとってはどう見えていたんでしょうか?
岩澤: メンバーもメンバーで様々です、人間椅子好きだったりCOALTAR OF THE DEEPERSが好きだったりする人もいるし。ブラックミュージックと同時進行でシュガーベイブ界隈が影響を受けたミュージシャン・・・例えばシンガーソングライターのアルゾとか(Alzo & UdineのAlzo Fonte、1972年にファーストアルバムを発売)、The Lovin’ SpoonfulとかThe Fifth Avenue bandとか(60年代末のロックバンド)、ああいうバンドのノリを取り入れたかったんです。
そこはメンバーと意思疎通してやれたんですか?
岩澤:いや、別に
岩澤くんの中でということですね
岩澤:演奏面でそこまでやってしまうと、モロにそこまで近づけたいわけでもないので、あえて黙っていたんです。
インプットの内容がだいぶ変わったことで、創作としてアウトプットする術がだいぶ変わったんじゃないのかな?とは思いましたが、そこはどうなんでしょう?
岩澤:音楽理論とかコードでいえば、メジャーセブンスやマイナーセブンス、ちょっと変わったコードを加えていくのは意識しましたね。これまではカポタストつけて分数コードを弾いていくのが主だったんですけど、それだと作れる音楽が限定されてしまうんですよね。
そこの変化は、岩澤くん個人の成長がBoyishに大きく影響していくという意味でかなり大きいと思えますが、面白がってドンドンやれたということなんでしょうか?
岩澤:うーん、確かにそうですね。
いまサラッと仰りましたが、方法論を一気に変えつつ、コード進行のクセみたいなものも気にしてやっていくのは、かなりドラスティックな変化にも思えます
岩澤:いや、そうでもないんですよ。ファーストの頃にも同じような形でやっていたりするので、方法論としては未知のものじゃないです、ただまぁかなりの曲をコピーして理解しようと努力はしましたね。おかげで「What’s going on」のベースは全部弾けますよ
今作のデモ音源をメンバーに投げた時の反応はどんな感じでしょう?
岩澤:「いやーだいぶ変わったねぇ-!」っていう感じでしたね
岩澤くんの作曲能力の進化だけじゃなく、「変わったよねー」と言いながらもこの変化についていって表現していく他のメンバー4人、音楽が変わるとベースとドラムは必然的に変わっていくもので、岩澤くんの大胆な変化に対応して表現していこうとするメンバー4人の凄さを感じます。
岩澤:ドラムの酒井とベースのMav.がいなかったら、今作は成立していないんですよね。ドラムにしても、「ソウル系のこういうドラムを叩きたい」というとすぐにレスポンスしてくれたりして、この2人の理解力の高さがなければうまくいかなかったです。だいぶ無茶振りだったなと思いますけど、だからこそ、めちゃくちゃ信頼できます。
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これまでよりはっちゃけよう!外にでよう!というような意識はあったんですけど、実際歌詞を書いてみると・・・

2016.5.25 12:00

【INTERVIEW】OMOIDE LABEL主賓ゆずちん、大いに語る『ミュージシャンやDJが陽の目を見る場所を作りたい』

Jukeとの出会いはCRZKNYさんの音源を聴いたことがきっかけです(ゆずちん)


2012年、音楽を愛する日本人の中でTraxmanのあの一作は大きなショックを与えた。
BPM160で細いシンセベースがウネり続け、2拍3連を時たまにはさみながら「一体どの楽器で拍をとってるんだ!?」と注意しても決して解き明かせないシカゴからの新たなマジック、それがJuke/Footworkだった。

だがそれ以上に驚異的だったのは、日本人トラックメイカーからのレスポンスの速さ。次から次へと新たなボムトラックが生まれ、実力のあるDJが台頭、本場シカゴからも一目置かれるようになったのが日本のJukeシーンである。

今回特集するOMOIDE LABEL、その主賓であるゆずちんは、トラックメイカーに陽の目を与える檜舞台を着々と作り、多くのリスナーと同じくこの音楽に魅了された一人でもある。いまの日本のジュークシーンを引っ張る男に惹きつけられた彼にとって、コンピレーション作品『JUKEしようや』シリーズにはやはり熱い気持ちを宿らせていた。彼と彼のレーベルを追いかけながら、日本のJUKEシーンの特異性を封じ込めた今作品を覗き込んでみよう。

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こんにちは、ゆずちんさん
ゆずちん:どうもです。突然だけど、草野さんに聞きたいことがあるんだよ。
はい?なんでしょうか?
ゆずちん:僕はこれまでindiegrabのニュースと言う形でオモイデレーベルをピックアップしてもらい続けてきたし、他のメディアさんでは取り扱っていかないようなフィールドの音楽をニュースにしてくれていて、『indiegrab、すげぇな!』みたいなところがあったの。でね、そこに草野くんが入ることは個人的にすごくデカイニュースだったんだよ
なるほど(笑)でもそこをデカイものとして捉えてくれるのは多分10人もいないと思いますよ(笑)
ゆずちん:いやいやいや。でさ、なんでindiegrabに入ることになったの?
僕は今年で30歳に近い年齢になってきていて、これまでずーっとロックバンドとかを追いかけてましたが、音楽が好きで色々な音楽を聞いてきて、もっといろんな音楽があるんだよーという気持ちでディスクレビューをいろいろなメディアさんに寄稿していたんです、そうしたらindiegrabの方から声をかけていただいたんです。あと、ツイッターなどを介してこういったエレクトロニカやハウスミュージックをdigできるような感じになってきたんです。それまでもテクノとかハウスは聞いていたけど、リスナーがトラックメイカーさんみたいにどんどんdigしていくようになっていけるようになったのは、ネットによるものが本当に大きいと思っていますね。
ゆずちん:ロックバンドしか追いかけてこなかった、というのはオレもそうだね。
僕は1年くらい前に『Bad apple』というジンを作っていました。なぜそれを作ったかというと、東京にはいろんなミュージシャンがいるなかで、様々なシーンが形作られてすごく盛り上がっているのは住んでいてとても良くわかる。でも、横を繋いだりできる読み物やメディアがないよな、そのミュージシャンがいかに面白いか?を答えてくれるメディアがないよな、この雑多さを希釈せずにギュっとまとめあげているメディアがないよな・・・と思ったからなんです。
ゆずちん:それはすごいよくわかるね。うちのオモイデレーベルも、そういうハブになれる存在になりたいと思っているんだよ。
例えば、一昨日はハウス系のDJイベントがあって、昨日はV系のロックバンドのライブ、今日はインディロックバンドのライブ、明日はアニソンのDJイベント、明後日はしんみりとしたシンガーソングライターのライブがある・・・なんてことがザラにあるわけじゃないですか?。でもいま上げた5つのミュージシャンや各々のファンが、残り4つのミュージシャンを見た時に「あ、こいつ知ってる、すげーやばかったんだよね」みたいなことってそうそう起こらない、横同士で知らないんですよ。いや、ライブハウスの人はもちろんみてるから知ってるだろうけども(笑)
ゆずちん:うん、そうだね(笑)
それって、もしも自分が音楽を作る身として考えた場合、インスピレーションが湧くような状況なのかな?と疑問に思えたんです。加えて、音楽っていう不思議な力でハイになりたい人間・・・ファン同士になるとどうだろう?実は凝り固まってるんじゃないのか?、その<知らない>という状況は「音楽を聴いてハイになる」機会を逸してるんじゃないのか?なんて思えたんですよ。
ゆずちん:面白いこと考えてるねー、え、これ草野くんへのインタビューなの?
いや、あの、あとちょっとしたら戻りますよ(笑)そういった感覚があったので、<これは面白い音楽じゃないか?><この人らはヤベーんじゃねぇのか?>という人にインタビューをして、何を考えて音楽を作っているのか?何をきっかけにして音楽を作り始めたのか?というのを聞いてみたい、それを広めることでより多くの人にインスピレーションを与えられればと思ったんです。
ゆずちん:僕もそこは考えてるなぁ、うまくできているかは別としてね
個人的には、うまくできているか?できていないかは置いておいて、「やってるか?やってないか?」に重きを置いてますね。という流れの中で、オモイデレーベルさんから発売された『JUKEしようや Barren Illusion ~ Remember Hiroki Yamamura ~ 』が、いかにして生まれたのか、ないしは、オモイデレーベルの源泉を明らかにできればと思います。よろしくお願いいたします。
ゆずちん:ふふ(笑)よろしくお願いいたします。いやでも、よかったよ、そういう気持ちで草野くんがやってるのが知れて。僕も話しやすくなったよ。賛同してるというか共感してるというか、その気持に近しいところで今回の作品を作ったのはあるので。
         
       <OMOIDE LABEL最新リリース 『Emocute’s Etude No​.​1』>

ざっくりとしたお話なんですけど、ゆずちんさんはこれまで音楽と聞いてきたり触れ合ってきたりしたのかをお聞きしたいんですが。
ゆずちん:高校とか大学もそうですが、大学卒業後もコピーバンドをやっていたんです。もちろんアマチュアだったんですけど、「今日はこの曲やりたいねー」とか話して、その曲の歌詞を読んでコードを書いていくんです。
・・・・え?ちょっと話が見えないんですけども・・・。
ゆずちん:えーっと・・・例えばくるりのこの曲やろうよってスタジオで話しをして、その場で曲を流して僕が聞きながらコードを書いていくんです。「こんな感じかなー」「じゃあここのパートはちょっとむずかしいからこういう風にしてー」と仲間と話して、コピーをするんですよ(笑)
それって巷の楽器屋で売ってるようなコピー譜を買ってコピーするわけでもなんでもないわけですよね。
ゆずちん:そうですね。
普通のコピーバンドとは、ちょっとかけ離れた感じがありますねそれは(笑)
ゆずちん:それは楽しかったですけど、すごくきつかったですね。ベタな曲しかやっていなかったとはいえ。
TOKIOみたいですよね。「家つくろう」「なにからいく?」「木から作ろう!」的なそういう(笑)
ゆずちん:そんな感じです。大学まではバンドとかやってなかったんですけどね。ライブハウスでライブをやろう!という目標もなかったので、その場で集まったらその時のノリでセッションをしてみる、みたいなね。
昔、僕も近しいことをやっていたことはありましたが、それは僕が覚えてる曲をコードで弾いていってコピーする、みたいな感じだったので、ゆずちんさんのようなとっさにできる感じはなかったですね。
ゆずちん:コピーバンドだけどセッションしてるような感じでね。
そこからいまにつながるような出来事があったんですね?
ゆずちん:ツイッターが面白かったんですよ。
いつごろから始めたんですか?
ゆずちん:2009年ですね。コピバンの流れがちょっと食傷気味になったころで、ヒップホップが面白く思えた時期でもありました。オモイデレーベルでも最初はヒップホップの人に声をかけてるしね。なんというか、バンドって大変じゃないですか?
まぁいろいろ理由はあるとは思いますけど大変だとも思います(笑)
ゆずちん:ヒップホップのほうが軽やかに思えたんですよ。連絡とかするのにもいちいち面倒だったりするし(笑)
バンドからは離れてトラックメイクへと没頭していくわけですね、どんなトラックを作るようになっていったんですか?
ゆずちん:最初はマッシュアップを作ってたんです。それまではチープなテクノトラックを作ってたりはしたんですよ、ネットで公開しよう!と思えたのはネットの影響ですね。迷われレコードさんにTHE BEATLESのマッシュアップを乗っけていただいた時に、「ああ、ネットレーベルも面白いぞ」とも思えたんです。Lil’諭吉さんとかを当時聞いたりとかして、センスバツグンで心惹かれてドンドンと聞くようになってハマっていって、そうして今回のリリースに至るわけですよ!
ちょっと待ってください、トビすぎです(笑)。
ゆずちん:いやでも・・・
そこに飛ぶ前に、飛ぶ前にお話をしたいんですけども、いいでしょうか(笑)
ゆずちん:はい・・・
ゆずちんさんの中で、自身が運営しているレーベルでの既発曲以外で、思い出深い1曲をあげていただけますか?
ゆずちん:えー!草野くんだってそれをそう言われたら大変でしょう?
大変ですけど、これだな!という1曲が僕にはあるんです。ゆずちんさんにとってそういう曲があればと思って。
ゆずちん:本当?パッと思いついたのは・・・Weezerの「Tired of sex」かな。Weezerでのセカンドアルバム『Pinkerton』の1曲目だね

         

うわぁーーー!!マジすか。オレもWeezerならこの曲ですよ!。最高ですよね。ブレイクしたファーストの次のアルバム、みんなが期待していた2枚目のドアタマにこの曲!
ゆずちん:本当に衝撃的、すっごいカッコイイですよね。これが本当に思い出深い1曲かどうかはあれですけど、確実に僕にとって影響は大きかったですね。だって、Weezerが好きならスピッツが好きじゃない?。僕はスピッツも好きなんですよ。スピッツが好きならスーパーカーも好きで・・・みたいなファミリーツリーがあって、大学の時にそういう数珠つなぎをずーっとテーブルに書いていったこともありますよ
なにしてるんですか(笑)僕は脳内でずーっと暗唱していくような感じですね。スピッツはハヤブサ以後とフェイクファー以前で結構好みに差が出てしまうんですよ。
ゆずちん:さっきのコピバンの話にも近しいんですけど、バンド毎にクセがあるじゃないですか、ミスチルだと転調が多くて、くるりだとラストに転調がくるとか。スピッツはコードがCかAかDが多くて、シンプルでわかりやすいなものが多くて人を捉えるような曲を生み出し続けられる、そこに彼らの凄さがあると思うんです、日本のロックバンドで一番好きですよ。
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『Jukeしようや』シリーズも同じように海外の人に聴いてほしいと思って作っているんです

2016.5.3 22:00