【INTERVIEW】Hibiki Ueda『The Fog Had Cleared Up』

1994年生まれ東京都出身、ニューヨーク市立Queens College Aaron Copoland School of Muiscにてジャズ作曲を専攻したプロのジャズピアニストHibiki Uedaによる、緻密かつ優雅に奏でられた秀逸1stアルバム『The Fog Had Cleared Up』がリリースされた。そこで本人に話をうかがってきた。

今作は自分の挑戦的な部分が大きく、色んな表現にチャレンジしました

–:リリースおめでとうございます!『The Fog Had Cleared Up』はジャズとエレクトロニックをベースに様々な要素が加わりとても素敵な響きのアルバムに仕上がっていますね!まずはHibiki Uedaさんの作曲を含む創作への発想の源的なところを教えて下さい。
Hibiki Ueda(以下、Hibiki):ありがとうございます。大変嬉しいです。発想の源はみなさんが持っているものと同じだと思います。表現をしたいという単純な人間の欲求です。誰かと話したいなどの延長で、自分の考えや想いを音にしたいという欲求だと思っています。
ただ少しだけ普段生きていて、感じること、気付きには敏感に反応したいなと思って過ごしたいなと思っています。
みなさんは普段どんなことを感じて考えて生きていますか?
–:本作『The Fog Had Cleared Up』で聴いて頂きたいポイントを教えて下さい。また全体でも個別でも何かコンセプト的なポイントはありますか?
Hibiki:ありがとうございます。今作は自分の挑戦的な部分が大きく、色んな表現にチャレンジしました。ジャズピアニストとして活動してきた前作「Inner Thoughts」はジャズのクインテットでしたが、今作を聞いてギャップに驚いて頂けたら嬉しいです。
自分なりにジャズの要素は残しつつもオーケストラのアレンジ、コラージュなど現状出来るDTMの技術を全部詰め込みました。
作品全体のコンセプトはニューヨークで過ごした体験を曲にしています。ニューヨークでこんなこと感じたのかなと音から感じて頂けたら嬉しいです。



–:アルバムタイトルの『The Fog Had Cleared Up』はとても興味深いワードのように感じます。このタイトルにした意図や思いといったところを教えて下さい。
Hibiki:ありがとうございます。聞いて頂けて嬉しいです。このタイトル曲はニューヨーク時代の気持ちが強くこもっています。
音大卒業後、22歳の時にアメリカへジャズピアニストとして自分の音楽の挑戦をしに行きました。
根拠の無い自信を持ってニューヨークでも自分の音楽は通用すると意気込んでいました。
何もわかってなかったと思います。
ニューヨークには正直すごい人達だらけで、わかりやすく挫折しました(笑)
自分を騙しながら自分はできる!と思い込ませてましたが糸が切れてしまってピアニストとしてプレイヤーとして自分の技術と才能と努力では彼らに追いつけないと思いました。
音楽を辞めようかととても悩みました。
その時、周りの人達、家族や友人に「響の音楽いいじゃん」と言って貰えて本当に嬉しくて音楽を続けることができました。
それ以前の技術ある人間が正義で、上手いことが音楽を続ける条件だった価値観が大きく変わった気がしました。
表現することはもっと自由で近くの人たちが良いじゃんと言ってくれることで十分だという事に気付かされました。
その時の気持ちを「Then I felt the fog had cleared up」その時霧が晴れた気がした、と感じました。
その一部を曲名とアルバムのタイトルにしました。

アメリカ、世界について知らないことばかりです

–:では幾つかの収録曲についてお聞かせ下さい。佐々木詩織さんをフィーチャーしたアルバムタイトル曲「The Fog Had Cleared Up feat. Shiori Sasaki」は素晴らしい出来ですね! 佐々木詩織さんの簡単な紹介を含めつつ聴きどころなどお聞かせ下さい。
Hibiki:佐々木詩織は僕の日本の大学の同期で学生の頃から活躍していました。今では井上陽水や松任谷由実、KinKi Kids、Beverly など様々なアーティストのコーラスとしてラ イブやレコーディングに参加していたりなど、本当にすごいです。まずその彼女が快く僕の作品に参加してくれてとても嬉しくありがたかったです。
もうこの曲は彼女の歌を聞いて欲しいです(笑)
もうこれ以上ないものを歌ってくれました。
もしよかったら僕のコラージュやアレンジもこだわったので聞いて貰えたら嬉しいです(笑)
色んな仕掛けを沢山入れていてトラック数は180以上ありました(笑)
楽しんで頂ければ嬉しいです。



–:M3「Voyage」はHibiki Uedaさん音楽的エッセンスが詰め込まれたような展開で、晴れやかさと高揚感も感じ取れ素敵です。どのようなアプローチや発想の元に制作されていったのでしょうか?
Hibiki:ありがとうございます!まさに晴れやかさと高揚感を出したかったです(笑)
アメリカに行って想い描いていた高揚感をシネマティックなサウンド感で表現したかったのが一番最初のモチーフです。
僕の個性はジャズ的なコード感とピアノだと思っているのでその雰囲気も活かしつつそこにボーカルのカットアップと特徴的にしてみました。
ニューヨークで演奏にボーカルのカットアップを多用しているアーティストがいてそこに影響を受けました。
終盤はそれらのアイデアをうまく合わせられたかなと思っています。



–:M6「Guns And Child」もM3「Voyage」と同様に本作のリードトラックとも言える抜群の楽曲ですね! 聴き所など含め楽曲の紹介をお願い致します。
Hibiki:ありがとうございます。嬉しいです。
きっかけは僕がニューヨークにいた頃にもパレスチナの方での戦闘があったり、日本は集団的自衛権行使容認が認められたりなど、何も出来ないのに悶々と考えていました。
そのタイミングで友達に子供が生まれて、世界では人が人を殺していて、友達には子供が生まれて、何もできないくせに悶々と考えて、自分に何かできるのは音楽ぐらいだったので曲を書くことにしました。
子供の声が聞こえるのはその友達の子の声です。
戦争をモチーフにしましたが、良い方向に進みたくて地球に生きてる実感を持ちながら生きたいと思って後半の展開にしました。
よく聞くと前半のメロディーを後半のメロディーにも使っています。
「変えられる」という意味も含んでいます。



–:M9「Meaning Of Freedom」はキング牧師による演説を引用した楽曲とのこと、楽曲制作の上でのコンセプト等どのようなアプローチや発想の元に制作されていったのでしょうか?
Hibiki:この曲は個人的にアルバムのハイライトです。
アメリカに住んで当然日本人以外の人達と一緒に生きる事になりました。僕の一番最初の相手はホストファミリーのミシェルで彼女は黒人の女性でした。本当に良くしてもらってアメリカの姉のように思っています。
僕は今だにそうですがアメリカ、世界について知らないことばかりです。
アメリカに住んでいるのにアメリカのことを知らずに生きて、人種差別の問題やこの国の歴史に対してあまりに無知で知りたくなりました。
中学の授業でやったのですが、その時初めてキング牧師の演説をちゃんと見ました、恥ずかしながら。
今こうして自由に生きていることは多くの人たちの努力があったからで、それは胸に留めておきたいと思って書いた曲です。
沢山の人たちのおかげで自由にソロ沢山弾いています。後半のピアノのソロの箇所はアルバム1の聴きどころと思っています。



–:コラージュを用いられた『The Fog Had Cleared Up』のアートワークも凄く良いですね! クレジットに、Artwork & Layout by Naoki Sasamura / Directed by Yoshihei Ueda とあります、それぞれの簡単な紹介と共に本作アートワークに関してお聞かせ下さい。
Hibiki:アートワークは元から関わりのある人にお願いしたかったのと彼と仲良しで快く引き受けてくれてとても良い作品にしてもらいました。

【Naoki Sasamuraプロフィール】
大阪うまれ。美大出身。吉祥寺大好き。本職はクリエイティブ系。プライベートはコラージュアーティスト。


Hibiki:アートワークについてNaokiから本当に最高のコメントをもらいました。

「響さんのこれまでの人生の積み重ねを表現したく、何度も何度も構想を2人ですり合わせ、完成させていきました。その象徴として真ん中には積み上げられたブロックがあります。その上にあるデスクライト、太陽、猫、キャリーケースなど、全てのモチーフが彼自身やアルバム曲にちなんでいます。またテーマの内のひとつにニューヨークがあって、僕自身もニューヨーク好きなので現風景を思い出しながら高いバイブスで作ることができたし、どこか遠い懐かしさみたいなものを意識しながら構成しました!、僕の作品のスタイルそのままで、カラーリングや構図も響さんがお気に入りのものを選択できたので、このアートワークは響さんそのものです!!」

ディレクションしてくれたYoshihei Uedaは、僕の12個上の実兄です。
兄は、劇伴作曲家として多くの映像作品を手がけています。
兄に作品を聴いてもらいアドバイスをもらいながら作品を仕上げました。
兄弟で話しながら作品を作り上げられたことは本当に幸せなことです。

リリースパーティーしたいですね

–:楽曲制作に対するアプローチや、楽曲制作で常に意識していることは何ですか?
Hibiki:気合いですね!(笑)
もちろん色んなところからイメージを膨らませて制作しています。日頃生きている中にあるもの、気付くものからや、世間や社会について思う事などなるべくアンテナ張って生きようと思っています。
ジャズを長くやってきているのでジャズのコード感とソロ、歌心などは意識して作っています。
しかし最終的に自分の中の”良いもの”になるのは気合いと根性だと思っています(笑)(これも兄の影響です。)



–:これまでに影響を受けたアーティスト、また最近のお気に入りのアーティストや作品を教えて下さい。
Hibiki:僕の音楽の世界に入るきっかけは5歳からのピアノと小学生の頃に兄(年が離れています)が車でかけてくれたPat Methenyの『ザ ロード トゥ ユー(The Road To You)』というアルバムです。
初めてPROGRESSIVE FOrM(今作のレーベル)のnikさんにデモをお送りした際にPat Methenyの雰囲気を感じますねと言われて嬉しかったです。
その他はジャズをメインに活動していたのでBrad Mehldau、Oscar Petersonが大好きですね。
最近ではJacob Collierはすごいですね。ちょっとマニアックですが音楽的にOlivier Bogéというサックスの方には学生時代大きく影響を受けました。
–:今後のリリース、その他今後の活動など分かる範囲で教えて下さい。
Hibiki:まずリリースパーティーしたいですね!(笑)
アルバム制作で必死で追い付いてなかったのですが、この作品を生で披露出来ように改良してお披露目したいです!
もちろん次回作の方がいい作品になるので次回作も早く形にしたいです。
また、個人とは別の活動でyosemicというコミュニティをニューヨーク時代の仲間などと運営しておりまして、下北沢でSOY-POYというお店を営業したりイベントをしたりしています。
表現すること、表現を楽しむことがいい世界を作るきっかけになると本当に心から思っているので、アメリカのように表現が身近になり、多くの人と楽しんで表現していければと思っています。
–:2020年から続くコロナの状況もあり、音楽の世界も様々に影響があるものと察します。リリースとしてのフィジカルや配信、また昨今ではライブも配信という形態が増えてきましたが、アーティストの視点でみる今後や将来像的なところを教えて下さい。
Hibiki:難しい質問ですね。個人的にはアーティストができることはそんなに変わっていないと思っています。確かにライブなど表現の仕方は時代によって変化していると思いますが、アーティストがやるべきことは変わらず良いものを情熱を持って作ることだと思っています。それて聴いてくれている人に感謝して頑張ることです。
また個人的には自分の表現したいものを作り続けて行くとこと、その自分の作品で多くの人と関わって一緒に作品を作って行きたいと考えています。
今回はお時間頂きありがとうございました。


『The Fog Had Cleared Up』
/ Hibiki Ueda
2022年7/13リリース
フォーマット:CD
レーベル:PROGRESSIVE FOrM
カタログNo.:PFCD109
【Track List】
01. Introduction
02. The Fog Had Cleared Up feat. Shiori Sasaki
03. Voyage
04. Asahi
05. The Buildings
06. Guns And Child
07. Noticed feat. Shiori Sasaki
08. The Fog Had Cleared Up piano Ver feat. Shiori Sasaki
09. Meaning Of Freedom
10. On The Day, In That Time
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【クレジット】
All Tracks Written, piano, Arranged & Produced by Hibiki Ueda

Except

M2 Lyrics by Hibiki Ueda
???Vocal by Shiori Sasaki

M3 Drums by Toyoaki Sekine
???Bass by Keito Hasegawa
???Alto Sax by Takayuki Sato

M6 Drums by Toyoaki Sekine

M7 Lyrics by Hibiki Ueda
  Vocal by Shiori Sasaki
???Drums by Toyoaki Sekine
???Guitar by Msayuki Sakakida

M8 Lyrics by Hibiki Ueda
???Vocal by Shiori Sasaki

Mastered by?OOO
Artwork & Layout by Naoki Sawamura
Directed by Yoshihei Ueda

And Special Thanks to: ALL

Hibiki Ueda:植田響
Shiori Sasaki:佐々木詩織
Toyoaki Sekine :関根豊明
Keito Hasegawa:長谷川慧人
Takayuki Sato:佐藤敬幸
Msayuki Sakakida :榊田雅之


2022.8.25 12:00

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