【INTERVIEW】IX/ON『Wanderer』インタビュー

UKベースミュージック、アンビエント、ポストロックといったサウンドを自在に行き交うプロダクションを得意とする神奈川在住22歳のトラックメーカー兼DJのIX/ON(イクシオン)、最高にクールなビーツミュージックのエッセンスが詰まった一枚であり初となるフルアルバム『Wanderer』をリリースしたIX/ONにアルバムを中心に話を伺った。

ファンタジー物の作品を観てインスピレーションが湧くことはよくあります

–:まずはリリースおめでとうございます!今回の『Wanderer』はIX/ONさんの音楽についての深い造詣が感じられ、全編凝縮された素敵な曲が詰まっていますね。まずはIX/ONさんの作曲を含む創作への発想の源的なところを教えて下さい。
IX/ON:ありがとうございます!創作への発想の源的なところは、ファンタジー物の映画やゲームが昔から好きでそれの劇伴をよく聴いていたことが大きいかなと思います。実際ファンタジー物の作品を観てインスピレーションが湧くことはよくあります。
それと中学高校とギターを弾いていて、今でもコードやフレーズをギターで考えてから広げて曲を作るって方法は良くやっています、「Wanderer」の曲もギターから考えて制作した曲がほとんどですね。
–:本作『Wanderer』で聴いて頂きたいポイントを教えて下さい。また全体でも個別でも何かコンセプト的なポイントはありますか?
IX/ON:UKベースミュージック、特にFutureGarageっぽさは全体を通して意識して制作しましたので、FutureGarageというジャンルを知って聴くとまた新しい視点で楽しめるかと思います。
ビートはGarageやDubstepっぽく、上物はAmbientの要素を入れるFutureGarageを自分なりに解釈してプラス色々付け足してみよう!って感じで制作したのでFutureGarageであってFutureGarageではない、みたいなコンセプトで制作しました。



–:「Wanderer」は直訳すると放浪者という言葉です。このタイトルにした意図といったところを教えて下さい。
IX/ON:アルバム名で悩んでいる時に、自分がやってるオンラインゲームの「FF14」というゲームで別のサーバーに行ける機能があって、別のサーバーに行くと元からそのサーバーにいる人と分ける為に名前の横に『Wanderer』って文字が付くんですよね、それがなんか色んなサーバーがあって景色とかは全部同じなのに、そこにいる人とかは全く別なんだなってのがアルバムとかのジャンルは同じだけど曲は人によって違うってところとなんか繋がったのと、アルバムを通しで聴くのがなんだか旅とか散歩してる気分になるな~って思ったので、Wandererにしよう!と決めました。



是非うわー!!ってなってください!

–:では幾つかの曲についてお聞かせ下さい。オープニグを飾る「Physis」はギターとストリングスが優しく奏でられているのが印象的でした。聴き所など簡単にご紹介をお願い致します。
IX/ON:この曲は去年に個人でリリースしたEPに収録していた楽曲なんですけど、当時生楽器をクラブミュージックに入れるのめちゃめちゃ良いじゃん!って思っていた時期で、上物全部生楽器にしたらどうなるんだろ……っていう好奇心で録音したギターを原型無くなるくらい加工してシンセっぽい音にしたり遊びまくったら完成した曲です。

PROGRESSIVE FOrM · IX/ON "Physis" from "Wanderer" PFCD99

–:M2「Current」は深いギターの音色とリムショットがとても味わい深く聴こえてきます。聴き所など簡単にご紹介をお願い致します。
IX/ON:この曲も去年リリースしたEPに収録されている曲で、すごく落ち着いた感じなのですがビートをよりしっかり聴かせるような曲になってます。ギターをコードでそのまま入れることはあまりないのですが、コードで入れたことで浮遊感を感じられる曲になっていて個人的にはとても気に入ってますね。

PROGRESSIVE FOrM · IX/ON "Current" from "Wanderer" PFCD99

–:M3「Flowers For The Broken Spirit」は洗練されたスペイシーとダウンビートが渾然一体となって異空間へと誘う様が非常に格好良かったです。どのような発想の元に制作されていったのでしょうか?
IX/ON:専門学生時代にアンビエントに関する授業があってそこで見せられた動画にサンプリングや録音した音を引き伸ばして加工するという手法を使っていたのを応用し制作しました。曲中の心臓の音もiPhoneのマイクを自分の胸に当てて録音したもので、それもあってとても思い入れがあります。



–:M9「Mirror」は朝焼けのようなギターをはじめとしたサウンドにポストロック的解釈が非常に魅力的でした。聴き所など簡単にご紹介をお願い致します。
IX/ON:前半はゆったりとしたベースミュージックで後半で激しくエモーショナルなポストロックというイメージで制作しました。
後半の展開で聴いてる方々がうわー!!ってなってるのを想像しながら作りましたので是非うわー!!ってなってください!



–:M11「Anemos」は悠久の時を紡ぐかのようなメロディーとコードがベースミュージックとして表現されていてとてもクールです。どのような発想の元に制作されていったのでしょうか?
IX/ON:元々もっと劇伴ぽいストリングスめっちゃ入れた曲を作りたかったんですけど行き詰まっちゃって、試しに音源だけシンセにしたり遊んでたらそっちの方がハマっちゃって……そのまま勢いに任せて出来上がったのがこの曲です。

誰かとフィーチャリングして楽曲制作してみたいですね!

–:アートワークは精密画家のungrochikaさんが制作されたと聞いています。IX/ONさんから簡単にungrochikaさんをご紹介頂きたいのと、アートワークの出来は如何ですか?また実際にCDというメディアを手に取られどのように思われましたか?
IX/ON:ungrochikaさんは精密画を中心にDJやダンスなどでも活動するクリエイターの方です!ungrochikaさんは去年リリースしたPhisis EPのアートワークも制作して頂いていて、今回も頼んで届いた時に予想以上の大作が届いてめちゃめちゃびっくりしました(笑)
CDもungrochikaさんの絵がよく映えていて自分としては大満足の出来でした!
ungrochikaさんほど自分の曲に合う絵を書く人はいないと思っているので今後もお願いしていきたいですね!



–:楽曲制作に対するアプローチや、楽曲制作で常に意識していることは何ですか?
IX/ON:なるべく音源素材をそのまま使わないように意識していると思います。既存のループ音源を元にエフェクトを重ねまくってぐちゃぐちゃな音にしたり逆再生させたり、そこで自分にしか出せないような音を模索しながら制作してますね。ビートもループ素材は生で録音した物以外はあまり使わないで自分で組み上げてます。
ループ素材そのまま使うことになんか抵抗あるんですよね(笑)
–:これまでに影響を受けたアーティストを教えて下さい。
IX/ON:今の自分のDJや楽曲のスタイルを確立させたという部分では、ルーツを辿っていくとJOYRYDEというBassHouseアーティストにとても影響受けましたね。
元々クラブミュージックを聴き始めた頃に好きだったアーティストでBassHouseながらもUKGarage、Basslineっぽさがある楽曲をリリースしていて、そこで自分はGarageにハマり、今現在アンビエントガラージの派生ジャンルであるフューチャー・ガラージを軸に活動しているので、このアーティストが1番影響を受けたかなと思います。
–:最近のお気に入りのアーティストや作品を教えて下さい。
IX/ON:Kazukiiというフューチャー・ガラージのアーティストを最近よく聴きますね。
一昔前はガッチガチのFutureGarageを作っていたアーティストなのですが、最近FutureGarageに歌モノPopsっぽさを織り交ぜた楽曲をリリースしていて、またその塩梅が上手いんですよ、自分もこういう感じのを作りたいとずっと思っていたので目標としてめちゃめちゃ聴かせてもらってます。
–:フィーチャーや共演など、今後一緒にやってみたいアーティストはいますか?また、今後どのような創作を続けていきたいですか?
IX/ON:今後一緒にやってみたいアーティストは特にはいないんですけど、今まで歌モノをリリースしたことが無かったのでボーカルで誰かとフィーチャリングして楽曲制作してみたいですね!
–:これからの音楽シーンについて、特にフィジカル、配信、ライブなど、アーティストの視点でみる今後や将来像的なところを教えて下さい。
IX/ON:今現在表立って自分の曲を披露できる機会がDJしかないので今後ライブセットで出演していきたいなと考えてますね、ライブセットでの出演はずっと考えてはいたのですがなかなかする機会がなかったのでチャレンジしていこうかなと思っています!



『Wanderer』
/ IX/ON
2020年9/9リリース
フォーマット:CD
レーベル:PROGRESSIVE FOrM
カタログNo.:PFCD99
価格:¥2,200(CD、税抜)
【Track List】
01. Physis
02. Current
03. Flowers For The Broken Spirit
04. Dear
05. Citrus
06. Elemental
07. Nomos
08. Daydream
09. Mirror
10. Astrarium
11. Anemos
12. Wanderer
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2020.10.4 22:00

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