【INTERVIEW】ミカヅキBIGWAVE『海辺のSENTIMENTAL』
インターネットミームとしてあるべき姿ではあるのですが、それでも僕はジョークで終わらせたくなったんですよ(ミカヅキBIGWAVE)
- –:貴重なお話をありがとうございます。おおよそ時系列的にお話を薦めてきましたが、2019年にリリースされた「星空ROMANTIC』についてお聞きしたいです。
- ミカヅキ:はい!
- –:Future Funk、Anime Groove、Kawaii Pop アルバムの第5弾!ということで、かなり気持ちの入ったコメントを読みました(Bandcampの下段にあるコメント)。それに加えて、実際サウンドの鳴らしかたや、さきにお話にされたようにミカヅキテイストを追求した1作じゃないかと思います。
突っ込んで話すと、ボーカルチョップとカットアップの切り貼りがムチャクチャ精度あがっていて、「こんな組み立て方ある!?」っていうようなフレージングがかなり増えていますよね。それまでは元ネタをあまり崩さないような曲が多かったり、「魔改造」したような曲は少ないようにも感じたんですが、この変化には驚きました。 - ミカヅキ:ありがとうございます……!
- –:実際この作品を作るとき、ご自身のなかでどういった部分を意識されたのか……制作している実作業の面、マインドの面でも、教えて頂けたら嬉しいです。
- ミカヅキ:そうですね……このアルバムをリリースする頃には、Future Funkが普通にクラブで流れるようになり、大きなムーブメントが起きるようになっていて、それに伴って新しいFuture Funkアーティストみたいな方達が沢山現れました。「作ってみた」みたいな方もいれば、新しいアカウントを作って実際にアルバムをリリースする方などもいて、正直言ってジャンルとしてはオーバーフローでしたし……正直いうとクオリティが凄く悪いものも溢れていました。
- –:なるほどです。上物をエフェクトだけ変えて、ボトムの方はあまり変えなかったりとか、言い方はよくないかもしれないですが、「これはそれっぽくリミックスした」だけなのでは?みたいなのもあったり、玉石混淆なのはとても感じてました(笑)
- ミカヅキ:まぁ、それはインターネットミームとしてあるべき姿ではあるのですが、それでも僕はジョークで終わらせたくなったんですよ。ドラムを足しただけのありふれたFuture Funkではない、代表的なCity Popや80s歌謡曲などからのサンプリングは避けたり……今後の方向性などを意識しながら、楽曲を組み立てた思い出があります。ミカヅキちゃんらしさを追求することで、僕の音楽が広がっていくだろうと思い、そのクオリティをあげていこうと思えました。
- –:ほかにはございますか?
- ミカヅキ:制作面ではありがたいことに、ファンの方々から沢山のサポートを頂けるようになっていたので、スピーカー・ヘッドホン・ドラムパッドなどの機材も、より良いものへアップグレードできたので、制作環境を向上できましたし、それが音楽の質を上げることに繋がったのは間違いないですね。もっと曲をつくって欲しいからサポートしてもらっている、というのが直にわかるので、モチベーション的にも制作環境的にもかなり励みになっています。
クラブイベントにもちょくちょく呼ばれるようになり、クラブハウスでの音響システムを意識して楽曲制作するようになりました。重低音やイントロ、アウトロをしっかり作ったりと……なのでよりクラブミュージックに近くなったかもしれませんね(笑) - –:はい(笑)例えば、それまでよりもハッキリとしたEDMらしいビルド&ドロップがありましたよね。タメの時間も長くて、音も一気に減って、そこからドンと爆発するような流れは、それまでの楽曲よりも明確にでているなと思いました。あと特筆すべきなのは、Future Girlfriend 音楽や悲しい ANDROIDとのコラボです。かれらとはどのような流れで楽曲を製作したのでしょうか?
- ミカヅキ:もともと彼らの曲のファンだったのもあったり、彼らも僕の楽曲をDJなどでかけてくれていたりというのもあって、こちらから声をかけてお願いしました。制作方法はお互いにサンプルを決めて、交互にデータを渡しあって編集し合う感じでしたね。悲しい ANDROIDとは、去年のイベントでついに会うことができて、会ってすぐにお互いにハグして……感動しましたね(笑)
- –:2019年から2020年にかけてもう一つ注目すべきなのは、VtuberのsomuniaさんとEMMA HAZY MINAMIさんとフューチャリングした2曲をリリースしていることです。どういった経緯で共作するようになったんでしょうか?
- ミカヅキ:Somuniaさんは、僕がDJとしても活動を始めた頃に知り合ったんです。その縁で……という感じですね。Emmaさんは、僕がVtuberさんと関わってることとEMMAチームさん側の希望の音楽スタイルが同じだったという事で、直接ご連絡をいただき、オリジナル曲とEMMAさんのワンマンイベントに出演させていただけました。貴重な経験でしたね。
今までやってきたこと、やってこなかったことに取り組んでみた作品で、「ミカヅキBIGWAVEのFuture Funk」として新たにアップデートして制作したかったんです(ミカヅキ)
- –:ありがとうございます。いよいよ、『海辺のSENTIMENTAL』についてお聞きしたいのですが、さきにあったように、「実際に存在する江ノ島の岬にミカヅキちゃんがいるというコンセプトで、近いけど遠い(80s音楽だけど2020年)というFuture Funkという世界観を表したかった」ということなのですが、このアイディア自体はいつごろから温めていたのでしょう?以前の作品郡でも、そういったコンセプチュアルな部分はあったのでしょうか?
- ミカヅキ:『星空ROMANTIC』をリリースした後に、次は江ノ島をテーマに作ろうと決めていました。やっぱり海をテーマにしたいなというのは、かなり漠然と思ってはいたんですよね。このアルバムが唯一。実際に音楽を作る前にコンセプトが先に立っていた作品だと思います。
以前の作品は、曲をいくつか作りながら、その時の気分だったり曲調だったりでまとめていって、アートワークにそれまで溜め込んでいたイメージを落とし込む……というような感じなんです。曖昧な言い方になってしまいますが、制作時期の気分や感情に任せて作ってるといっても……良いのかも知れないです(笑) - –:ありがとうございます(笑)実際聴いてみても、「Take Me Up Higher」を筆頭に爽快感があるナンバーが並んでいると思います。こいつおかしなこと言ってるな??と思われたかも知れないですが、今作ではサンプリング重視というよりも、ビートもベースもご自身が作られ、使われている音素材も「いまの音」で魔改造を重ねた曲が集まっているので、クラブミュージックやエレクトロを聴いてるのとかわりないように思えました。
EDM的なビルド&ドロップだったり、フィルターハウスやフレンチハウスらしいエフェクト使い、ファンクなグルーヴ、オーケストラヒットなどなど、Future Funkのマナーにも忠実なのですが、それを飛び越えて「カッコいい曲」が揃ってる印象があります。まさにドライブにピッタリなアルバムだと思いましたし、かなりオリジナリティーのある……「ミカヅキBIGWAVEの音」になったサウンドなのではないかと。 - ミカヅキ:ありがとうございます。クラブミュージックというか、Future Funkというものを懐かしさやLo-fiさに焦点をおかずに、ダンスミュージックとして尖らせたアルバムになってるかなと思います。今までと同じ手法に加えて、Future Bassのような手法を取り入れたり、僕の初期のころにしていた編集やエフェクトを取り入れたり……みたいな。
2019年のFuture Funkシーンがどんどん進化していって、個人的にもクラブイベントで得てきた発見や新しい魅力もあって、そういったのを自分なりの解釈で、「ミカヅキBIGWAVEのFuture Funk」として新たにアップデートして制作したかったんですよ。とにかく、今までやってきたこと、やってこなかったことに取り組んでみた作品でもあったんです。ヴァイナルの帯にも書いたんですが、まさに過去と未来の交差のようなイメージですね。 - –:Future Funkのダンスミュージックとしての側面、言い換えてダンスミュージックの機能性みたいな部分を、うまく組み上げたのは間違いなく感じました。この作品がやはり秀でているのは、架空のキャラが実際の場所に行くと仮定された音楽であり、それをリスナーは追体験的に聴けるというコンセプトで、やり口が2.5Dっぽいんですよね。
- ミカヅキ:ありがとうございます!コロナウィルスさえなければ、アニメでいう「聖地巡礼」みたいな感じで、このジャケットの所で色々撮影とかしようと思っていたんですが……少しタイミング悪くてまだできてないです。アニメが好きというところから、自分のオリジナルキャラクターを持っているいま、聖地巡礼などアニメオタクの文化みたいな物を再現したいという気持ちもありますね。
- –:ですが、実際今年の夏は、コロナの影響でおおよその方々は江ノ島にいけないし、遠慮してしまうと予想されてる。それは「江ノ島へ行きたい、それ自体がみんなの夢になる」という状況になるわけです。ミカヅキちゃんは江ノ島に行く!という空想と、実際の僕らは江ノ島に行けることはないという現実が、転倒してしまう。想像が現実を追い越してしまってるんですよね。
ぼくが無茶苦茶盛り上がったのはこの部分なんですよね、『まるで未来の予言だ!』なんて盛り上がってしまったわけですが(笑)。本作がほぼ満点と言えるほどに、コンセプトアルバムとしてのストーリー性や、ダンスミュージックのエッジさを尖らせることに徹したからこそだと思えるんです。実際、今作を作り終えたであろう昨年の年末ごろは、今作をどのようにとらえてましたか?? - ミカヅキ:なるほどです。結果的に、2020年の江ノ島は行きたくても行けない場所になってしまったのでそう言った見方もできるかもしれませんね……(笑)正直、エッジの効きすぎたダンスミュージックで、Future Funkという枠からだいぶ離れしまったのではという心配もあったんです。例えばサンプルをそのまんま使った初期のFuture Funkか、楽曲をチョップして切り貼りするようなFuture Funkか、僕の中で迷ったことがあるんです。以前、どういうスタイルで楽曲を作るべきか、Twitterで純粋に知りたくて聞いてみたんです。
- –:……変な回答とかされたりしないんですか?
- ミカヅキ:いやいや全然!ファンの方からは「ミカヅキが作りたいと思ったスタイルで作るのが、一番聴いていて楽しい」と意見をいただいて、かなり心に残っているんです。今も、この時も、その言葉がとても背中を押してくれましたね。だからこそこういった作品が作れたんだと思います。
- –:実際制作し、公開されたいま、手応えはありましたか?
- ミカヅキ:そうですね、実際に「試みや試行錯誤を感じるし。とても好きなアルバムだよ!」というなポジティブな意見を沢山いただけたので、そう言った意味では手応えは感じました!
- –:そこから間髪入れず、新作『Cutie Dance 音楽』をドロップしました。スピード感が異常に速いのはトラックメイカーらしいなとは思いつつ、この曲数となると『海辺のSENTIMENTAL』とほぼ同時期に作ってたのではないか?と思うのですけど、制作はどのように薦めたのでしょう?
- ミカヅキ:時期としては『海辺のSENTIMENTAL』の制作期間の後半辺りと若干被りながら制作してました。このEPの半分は、2016年頃リリースした『カワイイDANCE音楽』の楽曲でして、このアルバムのフィジカルが作りたいなと考えていたので、せっかくリリースするなら新しい音源もセットにしよう!と思ったんです。
- –:なるほどです。ここで揃えてきた新曲も、これまた素晴しい曲を揃えてきていると思ったんです。「El Dorado 魔法少女伝説」は、それまでの2作でのダンスミュージックのエッジさもありつつ、「ミカヅキちゃん、カワイイ!』の熱量で押し切っていくパワープレイな曲で、「TOKYO SAKURA NIGHT 」「WAVE2020」も、少しだけチルで、オシャレさを出している曲で、このままクラブとかでかかりまくっても、なんならカフェでかかっていてもおかしくないくらいのトラックになっている。過去の楽曲にもそういった曲がいくつかありましたが、くすんだようなローファイサウンドから、輪郭がハッキリとしたハイファイな音になったこともあって、よりバッチリとカッコいい曲ですよね。
- ミカヅキ:ありがとうございます……!!このEPには今までのスタイルも残しつつ、よりオリジナリティを入れてみたり、毛色の違うチル要素のあるものを入れてみたりという感じで挑戦しました。
- –:いわば挑戦作、というところですよね。ここ3作で作っていたエクスキューズを大きく言ってしまうと、「Future Funkからは離れつつ、自分の音を模索して、生みだしていく」という部分であって、そこはもうリアクションも含めても成功のものになっているのではないかと思うんです。いまのミカヅキさんにとって、Future Funk・Anime Groove・Kawaii Musicというのはご自身にとって大きな出会いであり、基礎基盤になった部分が大きいと思いますが、いまはどのように捉えていますか?
- ミカヅキ:ええ、まさにその通りですね。そこを模索しながら、完全なオリジナル作品を作っても、ファンの方達を置いてけぼりにしないように、グラデーションの様なイメージで最終的にはオリジナル作品をたくさん作っていけたらと思っています。今まではFuture Funkが全てだったんですが、沢山制作をする事で、今ではその経験を活かしてよりオリジナル作品やコラボ作品など沢山制作できるようになりたいと思うようになりましたね。
- –:ありがとうございます。いまはこのような状況ですが、今後についてお聞きしたいです。こういうイベントに出たいとかっていうのはありますか?
- ミカヅキ:いまはイベントとかパフォーマンスより、楽曲制作に興味がありますね。なのであまりこのイベント、みたいなものは今の所ないですね。Future Funkのイベントがこの辺りだとない、みたいな所へ行ってみたり、初めてミカヅキを見ることができた!みたいな所に行けるのが面白いですね。
- –:なるほどです。昨年の中国ツアーに行かれたのは、そういった部分もあるんですね。
- ミカヅキ:そうですね、どれだけ海外が盛り上がってるのか気になったていうのもあって、ぼくは一切中国語はできないのですが、弾丸でツアーをまわりました(笑)楽しかったですね。
- –:ありがとうございます。ではちょっと角度を変えて、ミカヅキさんが今後成し遂げたいことや、「こんなことができたら良いな…」という漠然とした願いや夢がありましたら、教えてください。
- ミカヅキ:初期からずっと思っているのは、アニメ作品に参加したいということですね。アニメのOPやEDなどに参加させてもらえる時が来るまで頑張ろうと思ってます。
- –:ミカヅキさんの作風とテーマなら、まあ間違いなく魔法少女とか戦闘美少女ものですよね(笑)セーラームーン、さくらなどはこれまでにも引用されてましたが、ほかにも好きなのはあるんですか?
- ミカヅキ:80年代だと、らんま1/2、きまぐれオレンジロード、うる星やつらなど沢山ありますね!特にFutureFunkをきっかけに見たものも多いです。時間はすごいあったので、毎日寝る前の3時間くらいをアニメに充てる生活を1年近くしてました。
- –:だいぶアニメが好きなんだな……というのはつかめてきました!(笑)アニメのタイアップが掴めればいいなと、応援してます。
(インタビュー:草野虹 6月中)
『海辺のSENTIMENTAL』/ ミカヅキBIGWAVE
2020年1/6リリース
フォーマット:デジタル配信
【Track List】
01.Take Me Up Higher
02.Bayside Blue 新しい日
03.純STAYPURE粋
04.netsurf *.○・.:
05.逢いたい 2 YOU ゚
06.☆ Nyan Da Core ☆
07.Change My Mind
08.Hold My Hand 手を握ってね
09.With You あなたと
10.Enoshima Island 江ノ島
11.LOVE In Question サラ
12.KWII魔法 (Outro)
Bandcamp
2020.7.6 22:00
カテゴリ:INTERVIEW, PU3_ タグ:future funk, JAPAN, ピンクネオン東京, ミカヅキbigwave