【INTERVIEW】ミカヅキBIGWAVE『海辺のSENTIMENTAL』
コロナウィルスの影響で、多くの音楽イベントが中止に追い込まれている。
同じように音楽制作の面でも多大な影響を及ぼしているのは想像にがたくない。
ミカヅキBIGWAVEによる今作『海辺のSENTIMENTAL』は、今年1月に発表された作品で、そういった影響をまともに受けていない……ように見える。
だが彼に話を聞いてみると、ちょっとした影響を受けていることに気づけるはずだ。
架空が現実を、現実が架空に、追い越され、追いつかれたような。倒錯的な錯覚を覚えるかたが出てくるかもしれない。
そういった部分を抜きにしても、ミカヅキBIGWAVE本人を大きくとりあげたインタビューは、実はこれが初めてとのこと。
彼をよく知るファンならびに、彼を初めて知る方にも、彼の人柄や音楽、その思考と嗜好が読めるものになったと思う
とくに、日本に住まうFuture Funkラヴァーは必見だろうと思う。
Future Funkで育ち、そこから飛び越えていこうとするトラックメイカー、日本には、彼がいる。
たまたま陽神Lordsunの「あなたは知らMagic City」という楽曲を聴いたのが、最初のFuture Funkだった(ミカヅキBIGWAVE)
- –:さっそくなのですが、「ミカヅキBIGWAVE」というお名前の由来とはなんでしょうか??
- ミカヅキBIGWAVE(以下 ミカヅキ):なぜ自分が『BIGWAVE』という名前を選んだのかは、実は『海辺のSENTIMENTAL』のカバージャケットに由来していているんです。このミカヅキちゃんのいる場所、ここは自分が最初にFuture Funkに触れた場所で、今でも自分の1番お気に入りの場所なんです。だからこそ今回はミカヅキちゃんに行ってもらいました。 名前そのものの由来というと……Future Funkという世界を知る前にVaporwaveを知ったのが大きいです。
- –:なるほど、たしかにその前に流行ってましたからね。
- ミカヅキ:「変な日本語」がカッコいいという世界観に魅力を感じたのも、それが最初ですね。そのため自分のアーティスト名にも日本語を入れようと思っていましたが、なかなか「変な日本語」をネイティブの日本人の感覚から故意に生み出すのは、正直難しいなぁと悩んでいましたね。結局、そのとき大好きだったアニメ「KissxSis」のキャラクターである桐生三日月ちゃんの「ミカヅキ」にしようと適当に決めてしまいました。BIGWAVEの部分は、地元に江ノ島があったり海辺によくいたのでBIGWAVEを使いました。
実はなぜ私が BIGWAVE という名前を選んだのかはこのアルバムカバーに由来していて…
— ミカヅキBIGWAVE (@mikazukiBIGWAVE) January 7, 2020
このミカヅキちゃんのいる場所こそ私が最初にFuture Funkに触れた場所で今でも私の1番お気に入りの場所です
だからこそ今回はミカヅキちゃんに行ってもらいました🌊
実際に存在するので聖地巡礼できます✌️✨ pic.twitter.com/4kUxjjgo3m
- –:ちょっと失礼ですが……神奈川のお生まれですか?
- ミカヅキ:生まれは1996年、横浜に住んでいました。今は東京ですが、引っ越した理由のもFutureFunkなどの音楽制作のためです。
- –:ありがとうございます。音楽と出会って、一番思い出深い出来事を教えて下さい。
- ミカヅキ:2015年頃は今ほど活発に日本でFuture Funkを見かける事もなかったのですが、同じAestheticsを持っていてこのジャンルを日本でも広めようとしている人たちに出会い「ピンクネオン東京」というコレクティブを作ったことはとても思い出深いですね。特に最初の顔合わせの時なんかは会ったこともないし年齢や性別もわからない見知らぬ他人でしたが、最初から不思議な親近感を感じてお互いに謎のハグを交わした時の事を凄く覚えています(笑)。このコレクティブを作って活動出来ていることはとても良い刺激になっています。
- –:Future Funkと出会う前の(おそらく2014年とか2015年以前)までに、音楽とご自身はどういった距離感でしたか?
- ミカヅキ:その前はBIGROOMやBass Houseといった、いわゆるEDMを作っていました。音楽を作るのは中学生から興味がありましたが、実際にソフトなどを使用して制作を始めたのは高校1年のときでした!音楽との距離感ですが、子供の時から母親が歌謡曲やジャズが好きで、車の中や色々な所で音楽を聴いていたので、それがだいぶ今に影響しているような気がしますね。
- –:思い出深い音楽アルバムや、アニメ作品や小説などを挙げてください。できれば理由を添えていただけると嬉しいです。
- ミカヅキ:いくつかありますね。思い出深いアニメというと、「アマガミ」ですかね。これは僕がアニメを知らない時に友人に紹介してもらったものなのですがここからオタクが始まったと言っても過言ではないですね(笑)365日アニメを見てるような感じでした。実は最初にアニメ系の楽曲をエディットしたのもアマガミのサウンドトラックからでした。
音楽としては斉藤由貴さんの「Yours」や葛谷葉子さんの「True Lies」ですね。
当時この楽曲に触れた時は気持ち的にも若干落ち込んでいて、こういう少し悲しくて儚い楽曲がとても心に響いて今聴いても当時の感覚が戻ってくるような感じがします。他にもたくさんあるんですが、必ず頭に浮かんでくるのはこの曲たちですね。
- –:個人的に、キミキスとアマガミの原作ゲーはむちゃくちゃ好きだったので、「Dance With Me」のトラックが棚町薫のクリスマスイベントの部分だ……っていう謎の感動とブチあがりが、いままさに起こってます。棚町薫めっちゃ好きなんですよ……(笑)
- ミカヅキ:わかりますわかります……実際に人生で初めて聖地巡礼もしましたが、こういう感動が味わえて本当にアマガミは僕の人生を変えてくれたと思います(笑)アニメってこんなに素晴らしいものなのかと感動しました
- –:ありがとうございます。VaporwaveやFuture Funkとの出会いが2014年頃というと、ミカヅキさんはおおよそ18歳で、いまよりもぐっとアングラよりで、soundcloudやbandcampなどを熱心に漁らないとたどり着けないモノ……という状況だったように思います。出会った当時は、どういったサイトを見ていて、どの方を熱心に聴いていたんでしょうか?
- ミカヅキ:Soundcloudを愛用していたのですが、Stationという自分の聴いている曲からランダムに似ている楽曲を再生してくれる機能が導入されまして、それでたまたま陽神Lordsun(現:LORDSUN)の「あなたは知らMagic City」という楽曲を聴いたのが、最初のFuture Funkだったと思います。それまではHouseなどを漁っていたのですが、突然全く知らない新しい音楽たちに出会えた瞬間でした。なので今でもSoundcloudで新しい楽曲を探すことが多いです。そこからはアーティストというよりはFuture Funkと呼ばれている楽曲単体を熱心に漁っていました。
- –:Future Funk とタグづけされている曲を毎日毎日聴いていくような感じですか?
- ミカヅキ:最初はそうでした!いいなと思った楽曲からStationで似た楽曲へ……のループで、単純にファンでした。ただ、そこから原曲が気になり始めて、原曲をYoutubeから見つけ出して、そのCDが欲しくなってブックオフへ……という流れでした。そこから自分でも制作してみようとブックオフにあるジャンクの歌謡曲CDを買いあさって、「Girl’s Generation」というタイトルでFuture Funkタグを付けて公開したのが、僕の最初の一曲目なんです。
- –:実はつい先日、soudcloudまでいって、その曲を聴いてライクボタンを押したところでした……(笑)この曲が4年前ということは、陽神Lordsunさんの曲でショックをウケた勢いそのままに、見様見真似で作り始めた……という感じなんでしょうか?
- ミカヅキ:そうですね!前にも言ったようにアマガミのせいで……(笑)オタク化の進行が激しくて、いまではAnime Grooveなんて言われてますが、それに近いアニメハウスEditをミカヅキBIGWAVE名義になる前の名義で公開していました。この見様見真似で作ったFuture Funkを新しい名義で公開しようとして「ミカヅキBIGWAVE」をスタートさせました。
- –:なるほど。
- ミカヅキ:当時は「Girls Generations」を公開したっきり、すぐにログアウトして3か月ほど放置していましたが。3か月ぶりにログインしたら思いもよらないくらい反応がきていまして、「なんでこのアーティストはこの曲しか公開してないんだ!もっとこういうのを作ってくれ!」というコメントを読んだ時に、初めてこういうリアクションをリスナーの方から頂いたのでもっと作ろうと決心したんです。そこからは、持て余る時間をブックオフと楽曲制作にすべて使って、2週間に1曲くらいのペースでリリースしていきました。
- –:しかもコメントの大半が海外のかたっていうのは、本当に衝撃をうけますよね……いま2020年でパっとみただけでも、アメリカ、パリ、イタリアとかなり多くの方からコメントを貰っているのがわかります。18歳のときにこういう経験をしたら、間違いなくそういった決心をなさるのもわかります。
>次ページ:「ミカヅキちゃんだから欲しい」ということができれば、僕がどんな音楽を作っても、ジャンルに縛られず幅広いジャンルで活躍できるのではないかと思った(ミカヅキ)
『海辺のSENTIMENTAL』/ ミカヅキBIGWAVE
2020年1/6リリース
フォーマット:デジタル配信
【Track List】
01.Take Me Up Higher
02.Bayside Blue 新しい日
03.純STAYPURE粋
04.netsurf *.○・.:
05.逢いたい 2 YOU ゚
06.☆ Nyan Da Core ☆
07.Change My Mind
08.Hold My Hand 手を握ってね
09.With You あなたと
10.Enoshima Island 江ノ島
11.LOVE In Question サラ
12.KWII魔法 (Outro)
Bandcamp
2020.7.6 22:00
カテゴリ:INTERVIEW, PU3_ タグ:future funk, JAPAN, ピンクネオン東京, ミカヅキbigwave