【INTERVIEW】ミカヅキBIGWAVE『海辺のSENTIMENTAL』
「ミカヅキちゃんだから欲しい」ということができれば、僕がどんな音楽を作っても、ジャンルに縛られず幅広いジャンルで活躍できるのではないかと思った(ミカヅキ)
- –:1年ほどたったときに、「Aquamarineの恋心」を発表しています。正直、初期の楽曲からは考えられないほどに音が洗練されていますし、いま2020年に発表されていても通用するサウンドだと思います。この曲は「ピンクネオン東京」名義(コレクティブ)のなかから発表されています。で、ピンクネオン東京とは……?という方もいらっしゃるかと思いますし、ミカヅキさんからみて、「ピンクネオン東京とはこういうコレクティブなんだよ!」というご説明をしていただけると、非常に助かります……!
- ミカヅキ:この時にはすでに。海外ではFuture Funkコレクティブというレーベルのようなものを立ち上げていて、プロデューサー同士でこのジャンルを盛り上げていましたし、カセットテープなんかも既にリリースされていました。こういうムーブメントにとても憧れていまして、僕もどこかに所属したいなと考えていました。で、日本の楽曲をサンプリングして盛り上がっているのに、何故その日本にはFuture Funkのコレクティブがないのかと思って、自ら立ち上げちゃおうと動いたんです。
ピンクネオン東京というのは、Future Funkを日本でも盛り上げていこうというムーブメントを起こすために、Future Funkプロデューサーを集めて立ち上げたチームのようなものだったんです。Kawaiiという部分に特化したコレクティブがなかったので、アニメ、Kawaii、サブカルチャー、日本のようなものをふんだんに盛り込んで、元のFuture Funkという枠から外れすぎない所をコンセプトにしています。 - –:なるほどです。
- ミカヅキ:海外のコレクティブは、渋いFunky Discoをコンセプトにしているものが多かったので、僕たちはむしろそのビジュアルイメージである「うる星やつら」や「きまぐれオレンジロード」などの80’sアニメ、カワイイ路線を進みました。何故なら……
- –:なぜなら?
- ミカヅキ:僕たちはオタクなので……(笑)
- –:はは!なるほどです(笑)最初はメールかDMで連絡を取り合っていたんでしょうか?
- ミカヅキ:もともと結成しようと話していた初期メンバーというのは、僕、ネクラさん、キスミナ(kissmenerdygirl)さんでした。3人でDiscordのチャンネルを作りまして、メンバーを集めようと話し合い、その頃に既にSoundcloudにFuturefunkを公開していた日本人アーティストさん達にメールをして今のメンバーが揃いました。
- –:すごい行動力……!でも、素人目で恐縮なんですが、どうやって日本人か海外の方かを見分けていたんでしょう……?soundcloudを見ているだけだと全然分からないですよね?
- ミカヅキ:初期メンバーの皆さんがそれぞれ「この人日本人だったような気がします」みたいな感じで候補あげていただいて、そこから芋づる式に繋がっていった感じなんです。確かに拠点を日本にしていたり日本の名前で活動している外国の方とかいるのでわからないですよね……僕も外人だと思われている事がとても多いです(笑)
- –:実意はぼくは外人だと思ってました、去年の途中まで……友人が日本人だよと教えてくれたんです。
- ミカヅキ:ええ……そうだったんですね(笑)ほとんどの方がそうみたいで、名前的にも日本人的なセンスではないと良い意味なのか悪い意味なのかわかりませんが……よく言われますね。良い意味で捉えるようにしてますよ。
- –:でもそういった無国籍感が、ここまでジャンルを大きくしたというのはあるのかもしれないですね。ミームをうまく使いながら、ファンク&ディスコな曲を出すというルールの音楽スタイルという。ピンクネオン東京のメンバーとして活動を開始しはじめた2016年から2017年のころ、個人的に目標にしていたことなどはありましたか?
- ミカヅキ:目標は正直なかったですね……楽曲を公開すればするほど反応してくれる方が増えていったので、それが楽しくてFuture Funkを作っては公開し、作っては公開を繰り返していたってだけですね。ここまで大きくなるとも思っていませんでしたし、ただただ……好きで作っていただけっていうのが最初の頃の気持ちです。
- –:ミカヅキさんにとっての最初のヒットナンバーといえるのが「Aquamarineの恋心」や「感情的なプリズム」じゃないかと思うのですが、ピンクネオン東京開始時に制作していた楽曲で思い入れのある曲はありますか?
- ミカヅキ:『トキメキTONIGHT』と『彼女はLonelyGirl』というアルバムです。Future Funkをサウンドクラウドで公開し始めて、一番最初にArtzie Musicというチャンネルに取り上げられたのが『トキメキTONIGHT』でした。Future Funkプロデューサーなら誰もが一度は憧れるチャンネルで、もちろん注目度はすごく高いんです。これがきっかけで<ミカヅキBIGWAVE>という名前を認知してくれた方も多かったと思います。
そのあとリリースした『彼女はLonelyGirl』というアルバムは、当時あまりFutureFunkシーンでは見られなかった80’sアイドルなど、日本の楽曲のみにフォーカスしてサンプリングしました。これにはKeats Collectiveという、Saint Pepsiなどが当時在籍していた海外コレクティブがリポストしてくださって、視聴回数が爆発的に伸びて、ここでも認知度が上がったように感じます。ここでうまく彼らにも知られたようで、Keats Collectiveさんから『Love Communication 恋通信EP』をリリースすることになるんです。 - –:80’sアイドルとFuture Funkというと、Night Tempoさんが現在では日本で有名になってます。Future Funkはディスコナンバーだけでなく、いまではアニソンや80’sシティポップからの引用もおおいと思うのですが、ミカヅキさんにとって、制作するさいにインスピレーションを受けたアーティストはいるんでしょうか?
- ミカヅキ:僕がFuture Funkを制作するさいにインスピレーションを受けたアーティストとしては、ADRIANWAVE、Future GirlFriend音楽、Android Apartmentなどがあがりますね。彼らとは後にコラボもするので、とても嬉しかったです。
- –:そういえば……自身の曲でミカヅキ☆と可愛く名乗るボイスは、どこからサンプリングされているのでしょうか?初出はそれこそ『Love Communication 恋通信EP』の「kawaii Dreamer」のように思うのですが……。
- ミカヅキ:最初使用していたのは、艦これの三日月と「KissxSis」の三日月ですね。今では実際にレコーディングをして作ったものを使用しています。
- –:なるほどです。ありがとうございます。2016年8月と10月に2作をリリースのあと、2017年の6月には『わたしのYUME DIARY』が発売となります。EPと名付けてますが、ほぼファーストアルバムのような立ち位置になってますね。soundcloudやyoutube、bandcampやストリーミングサイトで1曲ずつ配信しても良いのにも関わらず、『アルバムを作ろう』とお考えになったのは、なぜなのでしょうか……?
- ミカヅキ:『彼女はLonelyGirl』の反響がとても大きかったので、これに続くアルバムを制作しようと思っていたのが初めにありました。そこに、へるしうむさんというイラストレーターの方と出会ったのが非常に大きかったんです。この方がミカヅキちゃんのファンアートを描いてくださって、そのイラストがとても好きだったので、アルバムのジャケットをお願いしたいとお話しさせていただきました。
- –:これはミカヅキさんの諸作品全般に言えるのではないかと思うのですが……ミカヅキさんの楽曲は、「ミカヅキちゃんのBGM」のような角度で制作されているように思えます。それがアルバムに収録される楽曲に、顕著に出ているように思えます。Future Funk関係のプロデューサーで、ここまでオリジナルキャラを前面に出した方はいませんし、まさしく『自分とは違う側面を擬人化した』ようにも見えますが、「ミカヅキちゃん」というコンセプトは、いつ頃から考えていたのでしょうか??
- ミカヅキ:「オリジナルキャラが欲しいなー」というようなツイートしたところ、だてるーにゃんさんという方がミカヅキちゃんの原案をくださいました。そこから色々な方がファンアートとして描いてくださって、今に至ります。そもそも、楽曲自体がサンプリングを軸にしているので、もっと違うところで自分の音楽をブランディングをしたいと考えていました。なので、早いタイミングでこういったキャラクターを制作できて、彼女と出会えたというのは、とても嬉しかったですし、非常に幸運だったとも思います。
Future Funkのカセットやレコードだから欲しいというところから、「ミカヅキちゃんだから欲しい」という部分ができてくれば、僕がどんな音楽を作っても、ジャンルに縛られず幅広いジャンルで活躍できるのではないかと思ったんです。ちなみに、魔法少女ミカヅキちゃんが存在する世界線と、自分たちのいる世界は違っているみたいなイメージが根底にありますね。説明しづらいですが……(笑)振り返ってみると、『WAVESウェーブス』の「魔法少女ミカヅキちゃん!! 」が決定打になったのかな?とは思います。
- –:実はつい先日から、初期の楽曲をききなおしていたのですが、かなりDaft PunkやJusticeといったエレクトロサウンドからヒントを得ていたんだなと気づかされます、『わたしのYUME DIARY』や『彼女はLONELY GIRL』頃の音源です。その後の作品、2019年の『星空ROMANTIC』あたりから、ハッキリとサウンドや音色が変化したように思えます。
このあたりについてお聞きしたいのですが、インスピレーションを受けたアーティストとして、ADRIANWAVE、Future GirlFriend音楽、Android Apartmentなどを挙げられていましたが、「Future Funkというサウンド」を構築する、ないしは「Future Funkを作る」うえで、どのような部分を大事にしていますか? - ミカヅキ:そうですね……少し突っ込んで話すと、Future Funkはサンプルをもろに使うスタイルと、完全に違うテイストに仕上げるスタイルとに分かれると思うんです。そのなかにあって、僕はその中間辺りを目指してます。サンプルに元々ある好きなフレーズやメロディを抜き取って。切り刻んでみたり、チョップしたり、新しいメロディを書き込んでみたり……素材の良さを活かしつつ、ミカヅキテイストのような物を組み込めればとおもって制作してます。
- –:ありがとうございます。楽曲をどのように製作をされているのかがとても気になります。エフェクトをかなり効果的に使っているのはわかるのですが…いったいどこで「ここで使える」と気づけるんでしょう?、ただ単純にイジリ倒してるだけでこんなカッコいいものが作れるの!?本当に!?と驚かされます。
- ミカヅキ:ははは!(笑)そう言ってもらえると嬉しいです。僕の大まかな制作の流れとしては……<サンプル探し→BPMを選択→ドラムサウンドを乗せる→楽曲を切り刻む・チョップする→効果音とエフェクト足す→音圧の調整→ファイル書き出し>みたいな流れです。
ドラム、切り刻み、効果音とエフェクト足しに時間をかなりかけていて、エフェクトなどはPush2というAbleton Liveの機材を使っているので。アドリブで足して引いての繰り返しですね。製作中にイメージで湧いてきたものをうまく足していく感じです。『彼女はLonely Girl』をリリースしたときはFL Studioでしたが、その後からずっとAbletonを使っています。 - –:なるほどです。サンプル探しなのですが、初期はアニメからの引用が多かったように思えますが、徐々に徐々にシティポップや90年代初期女性ソロシンガーさんの曲が多くなりつつ、J-POPの王道ともいえよう宇多田さんやTUBEさんの曲もいれてますよね?どのような部分で「この曲!」とチョイスしているのでしょう??
- ミカヅキ:初期の頃は、当時のアニメの世界観を感じたいので、Netflixなどを利用して昔のアニメを見まくっていました。気になったアニメのサントラCDを購入して、サンプリングなどしてました。サンプル探しとしては、大体ブックオフにある300円以下くらいのものを目安に大量に買い漁っていました。
ジャケ買いと気になるアーティストの在庫を全部買い占めたりなんかして、とにかく集めてました。あとは自分は犬を飼っているのですが……買い漁った曲をBGMにしてその子を散歩しているときに、ピンときた曲をサンプリングに選んでますね。
>次ページ:インターネットミームとしてあるべき姿ではあるのですが、それでも僕はジョークで終わらせたくなったんですよ(ミカヅキ)
『海辺のSENTIMENTAL』/ ミカヅキBIGWAVE
2020年1/6リリース
フォーマット:デジタル配信
【Track List】
01.Take Me Up Higher
02.Bayside Blue 新しい日
03.純STAYPURE粋
04.netsurf *.○・.:
05.逢いたい 2 YOU ゚
06.☆ Nyan Da Core ☆
07.Change My Mind
08.Hold My Hand 手を握ってね
09.With You あなたと
10.Enoshima Island 江ノ島
11.LOVE In Question サラ
12.KWII魔法 (Outro)
Bandcamp
2020.7.6 22:00
カテゴリ:INTERVIEW, PU3_ タグ:future funk, JAPAN, ピンクネオン東京, ミカヅキbigwave
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