【INTERVIEW】OHTORA

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ほんと、ちゃんとした人間らしい生き方ができるようになっていきます

–:そんななかで音楽レーベル・ササクレクト/SASAKRECTに入って活動をスタートさせることになるわけですけど、なにがきっかけだったんですか?
OHTORA:僕のことをずっと気にかけてくれていた地元の友だちがいたんです。幼稚園の頃からの付き合いなんですけど、「そろそろやらなきゃダメなんじゃないの?」と彼から釘をさされてしまったんです。彼に「自分の曲でMV撮ってみない?」とすすめられて、その曲をYouTubeにアップしたんです。



ちょうどその頃に4s4kiちゃんの「おまえのドリームランド」のMVをたまたま見て、「こんなカッコイイ音楽があるんだ!」って驚かされたんです。その流れで所属事務所のササクレクト/SASAKRECTにデモを送ってみたら、「うちでやってみないか?」と言われて、そのまま所属していまに至るという感じです。



–:……さっきまでの話から、とんでもない逆転ホームランじゃない?(笑)。
OHTORA:いや、本当にそうで(笑)。なにが引っかかったのか詳しくはいまも知らないんですけど、当時言われていたのは、ササクレクト/SASAKRECTは4s4kiちゃんを含め、ハイパーポップなどの尖った音楽をやられる方が多いので、僕みたいなシティポップな楽曲やエッセンスを作れる人といっしょにやってみたかった、と伺いました。
–:何もしないでフラっとしていた時期が数年あって、ようやく音楽活動が本格的に始まったと。
OHTORA:ほんと、ちゃんとした人間らしい生き方ができるようになっていきます。
–:実際OHTORAさんの初期の楽曲を聴くと、チルなヒップホップなサウンドやシティポップな楽曲が多いんですけど、意外とラップされているパートが多いじゃないですか。でもさっきまでのお話を聞いているとヒップホップやラップについてはほとんど話していなくて、その辺はどういったところから?
OHTORA:K-POPのなかでのラップパートを聴いていたり、Charisma.comという2人組ユニットを聴いていましたけど、たしかに日本語ヒップホップは当時聴いていなかったですね。でも、日本語でヒップホップやラップをする、特にCharisma.comは女性2人でこんなにカッコイイことをやっているんだって触発されて、ちょこちょこラップのフロウだったり韻を踏むラインを作るようになってました。今ではそのChrisma.comのいつかさんとたまに仕事で一緒になる機会があったりして不思議な人生です。



そのあと「フリースタイルダンジョン」とかでグッと盛り上がって、いまでは日本語ヒップホップはめちゃくちゃ聴くようになってて、そう考えると、徐々に自分の中で影響が大きくなっていったんだなと改めて感じてます。
–:そうだったんですね。とはいえ初期の頃からかなり自然にラップをされてるなと思います。
OHTORA:そうですか? それこそ所属してからリリースした「ドラウニングヒル」という曲は、自分が初めてトラックメイクもラップもしっかり備えた曲として世に出した初めての曲なんですけど、いま聴くとちょっと恥ずかしいですけどね。こんなフロウするんか!? みたいな(笑)。



–:その辺はOHTORAさんとしてはどういった意識で制作などしていたんでしょう?
OHTORA:先程の話にもありましたけど、当時はチル・ヒップホップが流行っていた時期で、最初のアルバム『EMPTIE LAND』は収録曲の半分くらいがチル・ヒップホップな曲だったはずです。

当時そういった曲が良いなと思っていた、それでいて自分が欲していたものを作ったら、ああいった作品になったという感じなんです。このタイミングで「ツレナイズム」が台湾で大きく反響を受けて、「そういう曲をもっと作ったほうがいいのかな」と思って作り始めていた部分もあるし、それを見た周囲から「いや、もっと自分がやりたい曲を作ったほうが良いよ」とアドバイスを受けていた時期でもあり、という感じでした。

ただ、そういった言葉を受け止めていなければ、僕はいまでもチル・ヒップホップを作り続けていたのかもしれないなと思います。なのでアルバムのなかには自分のルーツに合わせた楽曲もいくつか制作して、収録させてもらってます。そのときの流行りに乗っかったといえばその通りで、結構流されやすい性格なんですよ、自分。



つねに「完成しない」という感覚はありました

–:うん、ここまでのお話でたしかにそういう一面を感じます。一方で「TIGER POP」とはどうだったんでしょう?
OHTORA:「ツレナイズム」以降の楽曲で大衆に刺さったと言える楽曲がないと自分で感じたので、「大衆向けにいちど全部作ってみようかな」とやんわり思っていたんです。なので、自分の中で作れる音楽をジャンルレスに作って、「どの曲が大衆に刺さるかな」「自分なりのJ-POPとは」ということを念頭に入れたんです。なので、ある意味では実験的な感じで制作したともいえるかな。

「ポップスを作る」という意識は持ちつつ、自分の曲の中でもどういったタイプの曲が大衆に刺さるのか、そういう模索をしている時期にこのアルバムが完成したんです。

なんだかネガティブなイメージになっちゃいそうですけど、アーティストとして活動をしていると、然るべきタイミングでこういうことも考えて制作する時期もあるのかな、と思ってます。



–:なるほど。そういった模索の時期だったということは、自分がトラックメイクをする、歌う、ラップをするということに、疑いの目を持ちながら制作していた側面がかなりあった?
OHTORA:ありましたね。それこそ、1つの曲を出したら何かしらの反省点や課題が見えてくるのが当たり前だと思うんですけど、つねに「完成しない」という感覚はありました。

「TIGER POP」をリリースしたのは2024年1月で、収録した曲はすごく良い曲ばかりで、今も大好きだとは思うんですけど、自分の普段のスタイルとしては、未完成なものを作ってしまったなっていう感覚はちょっとあります。
–:いま2作を振り返ったとき、「ここは良い部分」と「ここは反省したい部分」とで分けるとしたら、「良い部分」ももちろんあるけども、「反省したい部分」のほうがより多いということでしょうか?
OHTORA:そうなんですよね。もしかすると90%くらいは「反省ポイント」かもしれないです。好きな曲を見つけてくれるファンの方ももちろんいらっしゃいますし、もちろんリリースしたことに対して後悔なんてまったくないんですけど、これからの課題がよく見えたアルバムでしたね。

あのアルバムのなかでも、1曲だけ今でもものすごく良いなと思う曲があるんです。
–:その曲は?
OHTORA:「アイランドスキン」ですね。あの曲だけ、今の自分がやっていることにも繋がっている曲になっているんです。そういう意味で、とても納得できる曲ですね。



–:なるほど。なんだか意外でもあるし、納得できる部分もあります。この2枚のアルバムは、正直言うとジャンルややりたいことに大きな違いがなく、やろうとしているサウンドにかなりフォーカスを置いた作品だと思うんです。だからこそ、こだわって制作をされているのだろうとは思っていました。でもそうですか、そこまでこだわっているとは。
OHTORA:でもいま振り返ってみると、当時はこだわりを持って制作していましたが、いまは少し別の方向性になっているし、より自信があったんだとも思います。
–:個人的にOHTORAさんの楽曲で好きなのは、「182」という曲です。イントロがとても印象的な楽曲ですが、こちらはmaeshima soshiさんとの共作ですよね。
OHTORA:あのE.P.(E.P.『共犯』のこと)も、maeshimaくんと共作していたとか関係なく、ほんっとーーーーに! こだわった作品です。あの頃にようやく「1枚の作品としてどう出すか?」ということまで考えて、E.P.とアルバムを作れるようになったなと思います。



あのE.P.ではコンセプトE.P.ということで制作していて、特に「感傷的前夜」という曲は譜割の使い方や息遣いも含めて、だれが聴いても「救いようがない」と感じられるように作ったんです。歌詞とリンクするように丁寧に作れたなと。

E.P.のために曲をたくさん制作して、言葉のニュアンスひとつでトラックと溝が生まれてしまう感覚が徐々に分かるようになったんです。この曲はその溝が埋まるように極限まで整えて作りましたね。E.P.としてのコンセプトや一貫性を保ちつつ、どうやってその曲だけの世界観の奥行きを広げていくかかなり考えました。



自分の作品も作りたいですけど、なかなか進まないです!(笑)

–:個人的にもあのE.P.は好きな作品です。一方で、OHTORAさんのお名前をより知らしめることになったのは、職業作曲家・コンポーザーとしての仕事かと思います。現在はかなり多いですよね。
OHTORA:そうですね。自分の作品も作りたいですけど、なかなか進まないです!(笑)。
–:じつはOHTORAさんよりも先にmaeshimaさんのお名前を見ることが多かったんです。というのも、自分はアニメ関係やVTuber関係のお仕事をすることが多かったうえに、楽曲を聞くとなるとやっぱりコンポーザーさんのお名前をチェックすることが多いんです。そんなときに龍ヶ崎リンさんのデビュー曲が出ると知って「こんな曲か!」と驚き、コンポーザーを見てmaeshimaさんとOHTORAさんと知って「あの2人が手掛けてるのか!」とまた驚いたという(笑)。そこからお2人のお仕事を見ることが一気に増えたなと。
OHTORA:そもそもVTuberさんというと、にじさんじの方々の配信などは見ていましたけど、自分の仕事として関わることがあるなんて夢にも思わなかったですよ。それこそ龍ヶ崎さんへ楽曲提供したことで、自分もよりVTuberさんを見るようになったし、実際にオファーをいただく機会が増えましたしね。
–:電音部含めてアニメソングやアイドルへの提供ももちろんありますけど、VTuberへの提供はかなり多いですよね?
OHTORA:うーん……下手すると半分近くはそう、なのかもしれないですね。

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–:龍ヶ崎さんを皮切りに、ROF-MAOさん、ジョー・力一さん、ReGLOSSさん、あおぎり高校さんもやった。有名なVTuber事務所はぜんぶやったまである(笑)。
OHTORA:いやいやいや……まだまだやらせていただきたいですよ。
–:これはちょっと答えづらいと思うんですけど、スタッフさんからの逆指名でオファーをいただくのか、それとも他の流れからお仕事として決まるのか、どういった流れが多いんでしょう?
OHTORA:とてもありがたいことに、指名していただいてお作りさせてもらうことが多いですね。龍ヶ崎さんのときは、もともと彼女の配信を見ていたので、とても驚きました。配信を見ていても感じてましたが、めちゃくちゃ良い声なんですよね。



–:龍ヶ崎さんの「Twilight Stream」はどのように制作していったんですか?
OHTORA:龍ヶ崎さんにとって初めてのソロ曲ということで、とにかくガサキさん(龍ヶ崎の愛称)の想いを自分のフィルターを通して詰め込もうという気持ちで進めました。OHTORAとしてのエゴはできる限り削って、ちゃんと忠実に描いていこうと思いました。自分もR&Bやソウルが好きだったので、そういったエッセンスはメロディに入れつつ、って感じで。

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2026.4.8 12:00

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