【LIVE REPORT】「コロナ禍世代のロックが鳴らした夜――Oaiko Fes、簡易ライブレポート」

Oaiko fesフライヤー

2026年6月7日、渋谷で開催された『Oaiko Fes』へ足を運んだ。

いま日本のインディシーンやロックシーンにおいて、新たな萌芽ともいえるレーベル Oaiko。関連するバンドたちが今年開催された『Synchronicity 2026』に出演したが、多くのファンが詰めかけており、筆者もちゃんと見たかったのに見られなかったアクトがいくつかあったのだ。

加えて、2018年頃から音楽プレイリストチーム「Pluto」の一員としてプレイリストセレクターとして8年近く活動しており、そのなかで多数の新曲を聴いてきたなかで(本当に非常に多い)、日本のインディシーンで久しぶりに印象的なシーンが形成されていることが伝わっており、「ぜひ見てみたい」と思っていた。

6月7日に足を運んだ際の感想を、簡単ながらにまとめてみた。






すこしぐずついた天候だったが、WWW、WWWX、TOKIO TOKYO、FOWS、SHIBUYA XXIで開催された同イベントは非常に活況のままイベントを終了した。

Oaikoのロゴ

さきに明かしておくが、当日はルサンチマン、hardnuts、Enfants、colormal、笹川真生、Blume popoと6組を見た。

HomecomingsやKOTORIといったバンドもいるなかに、えんどあ。、tiny yawn、Trooper Salute、Hammer Head Shark、urema、downt、揺れるは幽霊、sidenerds、yeti let you notice……いまメンツを見直しても「いやぁ、みてぇ……」と思わせてくれるバンドが揃っていた。

基本的にはポストロック、マスロック、パンク~ハードコア色つよめ、金管楽器や管弦楽器らしいネイロうまくつかったソフトなインディポップまで、Oaikoと近しいバンド群が集まった。

寄せ書き1
寄せ書き2

そのなかでルサンチマンとhardnutsは最初に見れたのは嬉しかった

前者が残響レーベルのte’やcinema staffを思い出させてくれる轟音&変拍子アンサンブル、hardnutsはよりポップかつキャッチーでJimmy Eat Worldを思い出させるオルタナティブ・ロック。2組とも初見ではあったが、音源なんかよりもパワーと勢いを感じさせてくれるライヴアクトだった。

拍手や歓声よりも無言で見守る人が多かったように思う。客の反応としては厳しい反応のようにみえるかもしれないが、だからこそ、この瞬間ならではの魅力をより深く味わうことができたと思う。

このライブの中で、hardnutsの坪田さんが「最古参です。2年経過して、ようやく実現して嬉しい」とMCをして拍手がワッと生まれていたが、続いて見たEnfantsの松本さんが「Oaiko fes、呼んでくれてありがとう!……なにか関わりってあった?(笑)」と思わずこぼしていて、他の観客とともに笑ってしまった。

EnfantsとOaiko、たしかにキャリアや経緯はまったく重ならないロックバンドとレーベルではある。だがEnfantsのポストパンク然としたソリッドなギターサウンド、エッジの効いたクリーンもしくはオーバードライブを活かした質感はダークで、その空気感はOaikoと親しいバンドと近しい冷ややかさがあるように感じられた。

ポストパンク、エモ、ポストロック、1つ1つは別の時代で生まれたものだが、感性やフィーリングが通じるようにかんじていた。



その意味では、colormalと笹川真生も連なっている。2組とももちろんロックやインディロックへの偏愛を持っているし、ボカロミュージックも視野に入れてのDTMerという一面で活動していた。

筆者はindiegrabのインタビューとしてcolormalことイエナガへインタビューをしたことがある。あれから約8年経過し、じつはようやくcolormalのライブを見ることができた。

colormal

colormal


このインタビューを行ったときは、そもそもライブをするのもどうか?といったタイミングだった。数年後、イエナガはバンド編成を組むようになり、コロナ禍を経て関西を中心にライブをしている。Oaikoから3rdアルバム『夜に交じる人たち』をリリースするなど、 その距離感はとても近しい。

そんなイエナガと近いのが、笹川真生である。インターネットを通じて仲良くなったと語っており、イエナガはアルバム「生きてる方がかわいいよ」の音源が送られ、いたく心揺さぶられて自身の曲を制作へとつなげたという。2019年にcolormalと笹川として対バン企画を行なって以降、これまで何度もライブで共演している。

バンドミュージックとラップトップミュージックの繋がりを色濃くのこしている2人だが、自身の心の葛藤や危うさ、不安感を描いたものが多い。エコーが掛かったギターを遠くへ響かせるように鳴らし、中空を見つめてねじれた心模様を歌っていく。その姿は、このフェスに参加するどのバンドもどこかで持っている原風景のようにみえた。

Blume popo

笹川真生


最後に見たのはBlume popo。じつは昨年の末頃に初めて知ったバンドだが、「ここで見れないときっと見る機会がないかもしれない」と感じたので、しっかりと楽しませてもらった。

今更になるが、Oaikoはシンマチダさんが主宰を務めるレコードレーベルで、2022年から運営がスタートし、コロナ禍前後で活動をスタートさせた全国のロックバンドらの音源をリリースしてきた。

コロナ禍。いまでは忌まわしき言葉のように触れ回り、ちゃんと声に出して呼ばれることもなくなってしまった”失われた季節”である。

現在開催されているワールドカップに引っ掛けて考えてみれば、日韓ワールドカップが開催された2002年に生まれた18歳が、2020年には高校3年をむかえ、大学を迎えた2020年春からコロナ禍が完全に晴れる2022年途中まで制限された状態で生活しており、2026年には24歳となった。

その少し上である1999年生まれの大学生から、2005年生まれの中学3年生から高校1年生の世代まで、彼らはインドア生活を余儀なくされ、あるべき学生生活が送れなかったのだ。

有り余るほどのエネルギーをさまざまに発散するはずの時期を、ちゃんと発散できなかった季節。やりきれなかったあのときの感覚が、どこまでも抜けない不完全燃焼な世代。出演者は20代が中心だが、この日集まった観客も30歳にも満たない20代が多いだろう。

Oaikoは、”コロナ禍から1歩ずつ前へ進んでいくために、「元に戻す」のではなく「適応」していくことをコンセプトにしたレーベル”と掲げている。コロナ禍という言葉が忌み嫌われて声にすら発せられなくなったポストコロナの時代において、「適応」していくとはどのような意味を持つか。

今回のイベントは、Oaikoのイベント興行として雛形となる一面があった。運営上の問題点、出演バンドの選出などいろいろとSNSで声が上がっていたが、概ね成功と言えるライブイベントとなったのではないだろうか。

Oaiko fesにとても共感していたのが、ほかでもないSynchronicityの主宰をつとめる麻生さん。東京を中心にしたオルタナティブミュージシャンを毎年多く選出しているSynchronicityだが、Synchronicityの中心にあったのは残響レコードをおもにしたポストロックやエモのバンドたちだったことを思い出すと、Oaiko fesに東京のみならず全国に点在する若いポストロックやエモといったバンドが、この日この場所に集まったことは大きな意義があったように思う。

そういった意味でも、日本のロックシーンにおいて大きな影響を及ぼしていきそうなパワーと勢いが、レーベル・Oaikoには……いやいま若きロックバンドたちにはあるのだ。




テキスト:草野虹

2026.6.27 21:00

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