【TALK】伴瀬朝彦アルバム『エモノ』発売記念トーク・ショー「エモノガタリ」
今年3月に、5年ぶりとなるソロ第2作『エモノ』をリリースしたマルチプレイヤー、シンガー・ソングライターの伴瀬朝彦。
多重録音で1人で作った前作『カリハラ』とは異なり、服部将典(ベース)、田島拓(ギター)、みしませうこ(ドラムス)をサポートに迎えたバンド録音により、さらに独特なアコースティック・ソウル・ミュージックを生み出した今作。
以下のテキストはそのリリースにあたって今年3/8に阿佐ヶ谷Rojiで行われたアルバム『エモノ』の発売記念イベントでの鼎談である。
伴瀬朝彦アルバム「エモノ」発売記念トーク・ショー「エモノガタリ」
出 演:伴瀬朝彦、片岡敬(本作エンジニア)
聞き手:松永良平
自分の好きな曲やアーチストの影響をモロに受けたのがソロ。だから自然とバラつかないのかなあと思います。
- ——:今日は、伴瀬朝彦「エモノ」発売記念のトーク&ライブ「エモノガタリ」というイベントを組んでみました。伴瀬君と、このアルバムのエンジニア、片岡敬君に話を聞いていこうと思います。
- 伴瀬:松永さんにこのイベント誘ってもらったんですけど「ひとりだと怖いな」と思って、相棒に片岡君を連れてきました。忘れてしまったこともあるので、その補足を片岡君にお願い出来たら。
- ——:では早速はじめましょう。「カリハラ」から5年です。
- 伴瀬:5年とは思ってなかった、気がつけばという感じです。その間にも片想いというバンドをやってたり、cooking songsを立ち上げたり、自分のことをやる時間がなかった。いや、時間はあったんだけど考える時間がなかったし、自分のことについては怠けていた。そういう5年なんですね。
- ——:そんな中でも「これは次のソロ・アルバムの曲になるな」という曲はなかった?
- 伴瀬:3年前くらいから、2、3曲、これは次のアルバムに入れたいな、というのはありました。それがちょっとずつ出来てきて、2年前に「出そう」という話にはなりました。
- ——:出来た曲が、片想いやcooking songsではなく、ソロになるという区分けというか「この曲はソロに向いてるな」という自分の基準はどこにあるんですか。
- 伴瀬:それはないですね。区分けはしてないです。cooking songsでも自分がやることははっきりわかってる。だからソロは「それ以外」ということです。
- ——:そこは面白いですね。役割を決めることがバンドの曲になり、決めないことが自分の曲になっていくということですかね。
- 伴瀬:そうですね。結果的にソロはジャンルが固定されてしまっていますね。自分の好きな曲やアーチストの影響をモロに受けたのがソロ。だから自然とバラつかないのかなあと思います。
- ——:たしかに、以前に伴瀬君のインタビューをしたときに、ビートルズの影響が大きいと聞いてました。僕は、『カリハラ』は生まれ育った風土が感じられるいいアルバムでしたが、『エモノ』は育った音楽を感じてます。
- 伴瀬:いや、そこは自分は変わってないです。そう感じていただいたのはジャケットのアートワークかもしれません。『カリハラ』のジャケットの画は加藤休ミさんという画家に描いてもらったんですけど、それは自分の実家の田舎の風景を口頭で説明したんです。写真を見せたとかじゃなくてですね。その伝わりかたですかね。あと今回、ファーストと違うのは、バンドでやったことですね。ひとりでやると故郷への愛とかが色濃く出るかもしれませんね。
- ——:たしかに『エモノ』はバンドで取り組んだアルバムで、録音の面白さやハーモニーの重ね方とかが印象的でした。「人とやることで面白さを発見している作品かもしれない」と思いました。
- 伴瀬:人とやると「それは違う」と言えるんですね。ひとりだと、自分の中に4人作ることが出来ないので。「違う」と言ったところで違う答えが返ってくるのがまたいいところで。このやりとりで研磨されていく、この良さがあります。ここがモノ作りをしていて面白いところです。
モデルがないことの面白さがあると思う。
- ——:今回はバンドでやろうと決めていた? それとも、成り行きでそうなったんですか。
- 伴瀬:決めてました。2年前にこのメンバーでライブをやったんですけど、そのときからアルバムは見据えていました。
- ——:そこにはエンジニアの片岡君がいて、アルバムのミックスまで目一杯やってもらったわけですね。
- 伴瀬:最後まで付き合ってもらったというか付き合わせたというか。こっちの話を全部聞いてくれて、面倒くさい顔を一切しないんですよ。こっちが不安になるくらい徹底的に付き合ってくれました。
- 片岡:でもそんなに面倒くさい話はなかったですけどね。すごく楽しかったです。
- ——:さっきふたりとの雑談の中で聞いた話ですけど、『カリハラ』を作ってるときに伴瀬君が片岡君に制作途中の音源を聴かせたことがあった……?
- 伴瀬:たまたま会ったときにミックス中のデータを聴いてもらったことがありました。1曲だけ「コレいいですね!」と言われて、その記憶が強くあります。
- 片岡:全く覚えてないですね(笑)
- 伴瀬:もちろんそのやりとりがあったから今回頼んだわけじゃなくて。ライブでPAしてもらったことがあって、その佇まいと姿勢がよかった。
- ——:片岡君はアルバム作りにどういうアイデアがありましたか?
エンジニアを務めた片岡敬
- 片岡:行程の話で言うと、最初からある程度録音方法は決まっていたんです。バンドの録音のときは「せーのっ!」で4人で一緒に録る方法だったり、最初にドラムとベースを録って、そこにギターや歌を重ねたりする方法だったり、いろんなやり方があるんですけど、今回はずいぶん前に録音方法については打合せをしましたよね。
- ——:伴瀬君からこういう音にしたいとかリクエストは片岡君にあったんですか。
- 片岡:最初はなかったですね。録りながらですね。
- 伴瀬:「こういう音にしたい」とサンプル聴かせて、それに近づけることが出来る人はいますけど、その素材を最初に投げちゃうのは違う気がするんです。片岡君は『カリハラ』をちゃんと聴いていてくれてたし、理想がわかった上でちゃんと料理してくれる、お互いに築き上げていってくれるタイプの人ですね。
- ——:片岡君なりの汲み取り方というのは、今回はどういうことでした?
- 片岡:当初はキレイに録ろうと思っていました。音の質感って、昔っぽいとかキレイっぽいとかあるんですけど、伴瀬さんのバンドのライブのPAやったとき、キレイがいいなと思ったんですね。で、録音の最初の日、ドラムとベースを録りながら、そんな話を伴瀬さんとしました。
- 伴瀬:でも、俺はドラムの録り音を聴いて「これは違う」と言いました。スネアの音がすごく気になったんです。それでいろいろやってもらって、これならイケるというところまでやってもらいました。
- 片岡:その場その場で録りながら話し合いながら変えていったりしましたね。
- 伴瀬:やっぱり自分が好きな音楽の音に近づけていったと思うんです。例えば「リンゴ・スターのスネアの音にしてくれ」って言ったかもしれない。(同じにしたいんじゃなく)コレじゃないコレじゃないって探っていってそうして残ったものが面白いんですよ。
- ——:それがさっき言ったモデルを置かないということですかね。
- 伴瀬:置かないというか置けないんでしょうけど、モデルがないことの面白さがあると思う。
- 片岡:そうやって話しながら進めたので、大きく逸れることもなく無理なくいきました。
- ——:そうやってスッといった曲もあれば、逆に苦心した曲もあると思うんですけど。
- 片岡:苦労した方から言うと、まず「フューリーフューリー」ですかね。これはドラムのみしま(せうこ)さんがパーカッションもやっていて……。
- 伴瀬:この曲は鐘モノがほしかったので。
- 片岡:でも、それをどう録るかは決まってなかったんですね。
- 伴瀬:鐘モノの鳴り具合がどうかという大変ではありましたけど。この曲はもともと鳴りモノで成り立つ曲にしたかった。間を出来るだけ空けて、その間に鳴りモノがいかに鳴っているか、ですね。具体的には、バシャーンって音がほしかったんです。『カリハラ』では家のゴミ箱を叩いたことがあったんですけど、ドリフのタライの音みたいな、それでみしまさんが持ってきたお菓子の缶のフタがとてもいい音を出したんです。そこに段ボールの音を組み合わせたくて、そしたらちょうどベースの服部(将典)さんの車の中に段ボールがあって、それはNRQの物販用のTシャツの箱なんですけど、それを使わせてもらいました(笑)。このアルバムにNRQが一役買ってる、いい話じゃないですか!
- ——:では、すんなりといった曲は?
- 伴瀬:タイトル曲の「エモノ」は最初から頭の中ではっきりと音が鳴ってたので迷いはなかったですね。それに向けてどう進むしかなかった、時間はかかりましたけど。アルバム・タイトルにするつもりはなかったんですけどね。「エモノ」という言葉が使いやすいというか、いろんな意味に捉えられるし、文字ヅラがカタカナだとデザインしやすいし。曲が全部出揃ってからのアイデアだったんですけどね。決めるまではすごく考えたんですよ。
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伴瀬朝彦 BAND LAND
『エモノを探して』ワンマンライブ
2019年8/12(月・祝)武蔵野公会堂
ACT:伴瀬朝彦バンド【伴瀬朝彦 (Vo./Pf./Key./Gt.) 服部将典(Ba.)、田島拓(Gt.) 、みしませうこ(Dr.)】+ ゲストミュージシャン【遠藤里美(T.s)、上運天淳市(A.s)、松村拓海(Fl)】
Open 16:00 / Start 16:30
Adv. ¥3,000 / Door ¥3,000(+1d)
・一般発売
CNプレイガイド 0570-08-9999
CNプレイガイド専用ページ
アオイチケット(会員登録不要)
e+
問い合わせ:アオイスタジオ 03-3585-6178(平日10時~17時)
『エモノ』/ 伴瀬朝彦
2019年3/6リリース
フォーマット:CD
レーベル:MY BEST!
カタログNo.:MYRD128
【Track List】
1. エモノ
2. ぬけがら
3. ジプシーブギー
4. 針と糸
5. フューリーフューリー
6. パラレルストーリー
7. 水をぶっかけて
8. 哀愁ロボ
9. 夢のあと
ディスクユニオン
2019.7.23 12:00