【INTERVIEW】CLISMS座談会

最強最速最凶!あるいはエレクトリック・マイルス・ミーツ・キャプテン・ビーフハート!と00年代、そのライブを知った者に今も熱く語り継がれているポスト・ロック・インスト・ガレージ・ロック・バンド、CLISMS(クリスマス)。2002年から09年のライブ音源から未発表曲8曲含み選曲されたベスト・ライブ・アルバム「BUT!」が発売されたのを機に、オリジナル・メンバー6人が久々にオンラインで再会、そこで座談会を行った。

前越啓輔(2000年~)
吉田隆人(2000年~)
久徳亮(2004年~)
牛尾健太(2005年~)
樋口一裕(2000年~2008年)
越川律幸(2000年~2005年)

自分たちでTシャツをハサミで切って学校行ってましたからね(樋口)


樋口一裕


–:ついこの間、編集とマスタリングで、実は、CLISMSを初めて聴いたんだけど、真っ先に思ったのが『NO NEW YORK』(1978年)、聴いてたんじゃないかと、97年の世界初CD化の。





吉田:めっちゃくちゃ聴いてました。
樋口:99年、大学1年の時。有馬(和樹)君のインタビュー記事に出て来た石神(甚)君からみんな借りてました。
越川:僕が入る前ですね、CLISMSにはその空気を感じてました。そのころ映画もあって、「DOWNTOWN 81」(2000年)でしたっけ、バスキアが主人公の。プラスチックスも出て来たり。周りと違ってるのがカッコいいっていう感じ。この方向はいいなって思ってました。



樋口:自分たちでTシャツをハサミで切って学校行ってましたからね。
–:ではまず、ここに至るまで、つまり大学のサークルでみんなが出会う前の中学・高校のころの話を知りたいので、その90年代の話をそれぞれお願いします。前越さんは元々、歌とギターをやってたと聞いてますが、大学入ってからドラムを始めたんですか?
前越:そうです。僕はB’zから始まって、ハード・ロックを経てパンク、セックス・ピストルズですね。そしてニルヴァーナ、ミッシェルガン・エレファント。その3rdアルバム『チキンゾンビーズ』が好きでギター買ってコピーしてましたね。
越川:最初買ったCDは森口博子のガンダムのテーマ曲のシングルで、アルバムは「ドラゴンクエストV」、その後、僕もB’zにいって中学になるとビートルズで「リボルバー」聴いて、ギター買いました、エピフォンの。同時にアルフィーやチューリップが好きでしたね。高校のころがブリット・ポップ全盛でオアシスやブラーにオーシャンカラーシーン。それでモッズに憧れてジャムからスモール・フェイセスなど60年代の音楽まで、そんな感じでした。
樋口:僕も似てるんですよね、ミッシェルのルーツを聴いたりブリット・ポップから遡ってエルビス・コステロやフーも。高校のときはレディオヘッドがど真ん中で中学のとき友達がブルーハーツのコピーバンドやってたんでそこでギター始めました。で、忘れられないのが大学の入学式で越川君と初めて会ったときビートルズの「ホワイト・アルバム」の話をしたことですね。
越川:そうそう!それからフーのボックス(The Who/BOX 1994年)の話をしたんじゃない?
樋口:東京に来るとこんな人がいるんだってびっくりしたの覚えてますね。
吉田:僕はブランキー・ジェット・シティとミッシェルガン・エレファント。雑誌で知ったジーザス&メリーチェーンの1stがすごく好きでした。高校のときミッシェルのコピーバンドやるんでベース買ってもらいました。次、久徳君。
久徳:えーと、90年代にダウンタウンがやってたゲイシャガールズが好きで聴いてたら父がもっと面白いのあるよってスネークマンショーを教えてくれたんです。そこからYMOにハマって、その影響でピアノ習わせてもらって。ギターは王様が好きで面白いと言ってたら買ってもらいました。
樋口:最初からロバート・フリップじゃなかったっけ?
久徳:その後にキング・クリムゾンを聴いてハマって……。牛尾君、どうぞ。
牛尾:ギター始めて最初はハード・ロックから、レッド・ツェッペリンやディープ・パープル。中学2年からビートルズのCDを1枚ずつ買い集めました。まあ、ビートルズ中心に60年代70年代のロックを聴き始めたのと同時にやっぱりブリット・ポップですかね。
越川:日本のは聴いてないんだ。
牛尾:小学生のときは聴いてましたよ。最初に買ったCDはB’zでした。

まず、前越君と樋口君が昼休みにバンドやるって言い出して。その2時間後に俺、誘われたんだよね(吉田)


吉田隆人


–:そんな皆さんが99年に大学に入って、どのようにバンドが始まったんでしょう。
吉田:2000年の夏。まず、前越君と樋口君が昼休みにバンドやるって言い出して。その2時間後に俺、誘われたんだよね。
前越:確かね。
樋口:NBA(アメリカのプロ・バスケット・リーグ)の何だっけ?(デトロイト・)ピストンズにすごいのがいるって。
吉田:デニス・ロッドマン?
前越:違うよ。誰だっけな?ロッドマンじゃないな。
樋口:だよね。ビンス・カーター、違うか?
前越:ピストンズに悪いヤツがいるって、誰かが言い出した。
吉田:あの時のデトロイト・ピストンズってバット・ボーイズって呼ばれてて不良ばっかだったんだよな。
樋口:そうそう、それでデトロイトがかっこいいとか言い出したの。まだハウスやデトロイト・テクノとか知らないころ。それでデトロイト・ファッキン・シティ(DFC)ってバンドを作ったんです。
吉田:で、そのスリー・ピース・バンドで何回かライブやってるはずなんだよ。そこにもう1人ドラム(北山徹也)が加わって、DDJCっていう名前になったでしょ。ここでツイン・ドラムになったんだよね。
樋口:いやいや、DDJCでは北山君はシンセしか弾いてないはずなんだよね。
吉田:初期は確かにそうだ。そのシンセで録音もしてるはずだよ。
樋口:変なキーボード弾くからってシンセで入れたんだもん。



吉田:で、このバンドでサークルの夏合宿に参加したときに、いろんな部屋でドラムが余ってて、だったらツイン・ドラム出来るってことになって、他の部屋からドラムを運んできて、スタジオでやったりライブをした記憶があるね。
樋口:そうだね。
吉田:そして初代ドラマーが抜けて樋口君の弟(樋口靖志)がドラムで入って、越川君が入るんだよね。
樋口:この辺り2000年ぐらいになると聴いてる音楽がだいぶ変わるよね。トータスのライブ行ったり、マイス・パレードとかレディオヘッドとかも来日して。色んな音楽を聴くようになってきてね。
吉田:ソフト・マシーン、みんなで聴いたり。
樋口:カンとノイ!とかね。ジャーマン・ロックめっちゃ聴いたし。
越川:ゆらゆら帝国やDMBQ聴いてたのはCLISMS結成前?ライブ一緒に行ったよね。
樋口:前だと思う、1年生のとき。
吉田:けど、そのDDJCっていう名前自体に明らかにDMBQの影響があるもんね。
樋口:あー、確かにそうだね。
吉田:P-VINE経由のDrag Cityやキャプテン・トリップからラ・デュッセルドルフやアモン・デュールの再発、徳間が配給してた音響系とかめちゃくちゃ聴いてる時期だよね。
越川:カンはビデオが付いてるボックス買って、Youtubeまだ無かったからみんなで集って観てたんだよ、ヤベーって。ダモ・スズキが歌ってるやつ。ジョイ・ディビジョンのビデオもブートで8000円ぐらいの買ってきて盛り上がってね。
樋口:画像の粗いやつね。
–:90年代から2000年前後、高くて買えなかったマニアックなものまで一気にCDで再発されて。
吉田:一気に聴きましたね、友達からも借りれたし。
樋口:あと、大学には、(サークルの先輩である)フィッシュマンズが好きな連中が一定いて、彼らと仲良くなると、その辺のルーツも結構出てくるんです。ムーディーマンとかクラブっぽいのを教えてもらったり、マシュー・ハーバートも。
吉田:フィッシュマンズ好きからポップ・グループ教えてもらったね、エイドリアン・シャーウッドも。こうやって色んな音楽と出会ったんだと思います。
–:このころの同世代のバンドというと?
吉田:一番近くにいたのは、おとぎ話とMUDDY WORLD。
樋口:MUDDY WORLDも今もやってますね、後輩の村上啓太、在日ファンクのベースの。よく一緒にライブをやりました。
吉田:学内だと、あとはレシーバーズポンポンヘッド。長州ちからの十代暴動社からアルバムが出た。
–:後輩の長州はバンドやってたの?
牛尾:なんもやってないですよ、踊ってただけ。
吉田:(高円寺)UFOクラブ出たとき、ワッツーシゾンビがカッコよくてね、すぐ仲良くなったよね。
樋口:UFOの店員で武蔵さんって人がやってた COCOON PIT、それが本当にかっこよかったんですよね。カンとノイ!とイギー・ポップを混ぜたらこうなるって感じの。
越川:同志というか、先輩だけど。


(*2004年発売オムニバスCD『U.F.O.CLUB TOKYO JAPAN vol.1』にCLISMSとCOCOON PITが収録されている)

吉田:もうちょっとライブをやるようになったりすると、Kiiiiiiiとかね。一緒にツアー回ったり。
前越:Kiiiiiiiは衝撃だった。



吉田:CLISMSで対バンするのは遅かったけど、オシリペンペンズは早い時期にライブ見に行ってかなり衝撃的でかっこよかった。
樋口:ペンペンズは怖かったよね、見ちゃいけないもの見たみたいな感じで。あふりらんぽや巨人ゆえにデカイ、対バンしたよね。
前越:関西ゼロ世代のバンド、ライブ見てもさ、笑えなかったよね。ギャーギャー笑って騒げばいいんだろうけど、笑っていいんだってことがわかんなくて。
樋口:でさ、そんなにバンド同志仲良くならなかったよね。
吉田:おとぎ話、MUDDY WORLD、レシーバーズポンポンヘッド以外はね。外だとワッツーシゾンビとTHE NOVEMBERSくらいか。
吉田:ライブハウスでの仲良くなり方よくわかんなかった、そのころって。
樋口:1つ思い出したのは、サケロックが流行ってて、それは結構悔しいなと思ってましたね。対バンしたけど人気あったしカッコいいし。
越川:これぐらいじゃないと音楽でやっていけないのかなと打ちのめされましたね。
樋口:ただただすごいなって感じ。
越川:でも当時は誰も言わなかったよね。僕にとっては音楽に対して分岐点になった、それくらいショックが大きい。
樋口:フォーマットとしてのオルタナやパンクが氾濫していたそのころにあって、サケロックは姿勢としてパンク、カウンター的なアプローチをしていた、だからカッコよかった。
吉田:あと、対バンでよかったのは毛皮のマリーズ、『マイ・ネーム・イズ・ロマンス』(2007年)出したくらいのころで、どんどん人気出てきた。


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『BUT!』/ CLISMS
2023年11/1リリース
フォーマット:2CD
レーベル:SUPER FUJI DISCS
カタログNo.:FJSP486
【Track List】
DISC 1:
01. GO!!!!! (Smash Hits Version)
02. GARREL
03. SPIA
04. 汐 (WHAT’CHA GONNA DO?)
05. KISS US Ⅰ
06. NEW MOON, NEW MOON
07. DEVIL
08. RED WITH PURPLE FLASH
09. LABA CA VA?
10. JUMBO ON
DISC 2:
01. OK OK OK
02. BIG HAMMER
03. STEREO TWIN
04. KISS US Ⅱ
05. GIRLFRIEND
06. SO SWEET YOUNG BOY
07. KISS US Ⅲ
08. SMILEBEAT WEEKEND FENDER JAZZ BASS RUNNING HOMERUN
09. GO!!!!! (Primitive Version)
10. RUNNING FUTURE FROM NOW
ディスクユニオン
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【クレジット】


Vocal, Drums:前越啓輔(CD1 M1-10, CD2 M1-10)
Drums:樋口靖志(CD1 M1, 7, 9, CD2 M3, 8)
Drums:久徳亮(CD1 M2-6, 8, 10, CD2 1, 2, 4-7, 9, 10)
Vocal, Piano:越川律幸(CD1 M1-10, CD2 M2, 3, 8)
Vocal, Bass: 吉田隆人(CD1 M1-10, CD2 M1-10)
Guitar:樋口一裕(CD1 M1-10, CD2 M2, 3, 8)
Vocal, Guitar:牛尾健太(CD2 M1, 4-7, 9, 10)

CD1 M1 Recorded live in 2003 at 渋谷 club eggsite
CD1 M2, 4 in 2005 location unknown
CD1 M3, 10, CD2 M2 in 2005 at 高円寺 U.F.O. CLUB
CD1 M5 in 2004 at 白金 明治学院大学2202教室
CD1 M6 in 2005 at 渋谷 O-nest
CD1 M7, 9 CD2 M8 in 2002 at 白金 明治学院大学2202教室
CD1 M8 in 2004 at 渋谷 CYCLONE
CD2 M1, 4-7, 9, 10 in 2009 at 渋谷 LUSH
CD2 M3 in 2002 at 池袋 Live Garage Adm
編集・マスタリング:George Mori
デザイン:坂村健次
ライナーノーツ:吉田隆人(CLISMS)、有馬和樹(おとぎ話)






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2023.11.24 12:00

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