【INTERVIEW】CLISMS座談会


フレーズというか、誰かがリフを持ってくるっていうか、あえて持ってきましたとは言わないけど、なんとなくリフを引き出すとかそこから始まるのが多いんじゃないかなと思います(越川)


越川律幸


–:さて、話を戻して、さっき話も出たけどツイン・ドラムでいこうとしたのは?
樋口:吉田君が言ってましたけど、サークルで夏合宿に行くと部屋がいっぱいあってドラムがいっぱいあった、だからいっぱい使おうっていうところからです。
越川:そのころ、マイス・パレードとかトータスはまだ見てなかったっけ?
樋口:いや見てる。だからドラムが2つあるっていうのがもう普通なんだよね。
吉田:さらに言うとピンク・フロイドの『ウマグマ』の裏ジャケ。パーカッションがたくさん並んでる写真ね、そのハッタリの効いたことをやりたかったんだよね。ツイン・ドラムがやりたいというよりは、何か変わったものの前でやりたい、変わったシステムでライブをやりたいということだったと思う。特にリズムに興味あったというわけじゃないよね。
前越:そうそうそう。
樋口:ウマグマのジャケットはよく覚えてるわ。
越川:僕は、なんかシルバーアップルズみたいでカッコいいなって。
–:揃いの衣装というのは?
吉田:そこもね、それこそミッシェルガン・エレファントがそうだし揃いのスーツとか。揃いの衣装っていうのは昔から憧れがあったり。だから自分が提案したわけじゃないけど、すぐに受け入れた記憶があります。
樋口:一番最初は全員ボーダーのTシャツ着てるんですよ。
前越:自分で手書きでボーダーの線を書いてるんだけど、そうそう。
樋口:それは『FANTASMA』(CORNELIUS)の影響ですね、白赤のボーダー。
越川:CORNELIUSはすごいあると思う。クラシック・ロックやジャーマン・ロックを今に紹介できているのがすごくよかったです。
吉田:そうだね。『FANTASMA』のインナーでミュージックマシンのパロディの写真あったもんね、黒のタートルネックの。
–:ところで曲作りはどのように?
前越:セッション。
–:誰かが作曲して譜面書いて、ではない?
前越:そんなことできる人いなかったですね。
越川:フレーズというか、誰かがリフを持ってくるっていうか、あえて持ってきましたとは言わないけど、なんとなくリフを引き出すとかそこから始まるのが多いんじゃないかなと思います。



吉田:久徳君と牛尾君が入るまで、ずっとその作り方だったよね。
樋口:前越君がドラムを叩き始めて、これに何か乗せろや、って脅しをかけてくるみたいなこともあった(笑)。
越川:そういうのもあったね、リズムからね。
樋口:マイルス(・デイヴィス)のコレかっこいいから、これになんか考えて、みたいな。
越川:それは中期ですね。
吉田:(樋口)靖志君が辞めて久徳君が入るころは、エレクトリック・マイルスがあったね。
樋口:でもさ、『BUT!』のディスク1に入れた「KISS US I」なんかさ、どうやって出来たのかよくわかんないんだよね。複雑でさ、誰があんなの考えたんだろうと思って。
吉田:あれ、当時の自分たちでは多分完成してないと思ってるんだよね、だからあまり演ってない。今聴いたらすごく面白かった、聴き所たくさんあって。
越川:そう。これ自分で弾いてるのかなと思うぐらいもう自分じゃないみたいな感じが今回の音源聴いてすごくあった。もう今じゃ弾けないなっていうのがすごいいっぱいありました。
吉田:この時期、牛尾君はお客さんとしていつも見てくれてたもんね。
牛尾:めっちゃ見てましたよ。だって自分の人生で一番見ているのCLISMSですからね。
越川:ライブ終わりに有馬君と牛尾君がすごいよかったって言ってくれるのにはすごい嬉しかった。
牛尾:新曲聴けるたびにワクワクしてました。それぐらい追ってましたから。
越川:スタジオでみんなで作ってたんですけど、譜面もなかったし誰もメモも取らなかったし、だからすごく時間がかかってた記憶があります。何回もスタジオ入って作っていくという。少ししか進まない時とかがあってそれは苦しかったなっていうのを覚えてますね。

最後の4人になって活動が減ってきても責任感はなかった気がします(前越)


前越啓輔


–:そして2003年にCDデビューします。(『Golden Time』)この時のいきさつを教えてください。
越川:リトル・クリーチャーズとポラリスの2マンを観に行ったんですよ。そこでもらったフライヤーにそのレーベルであるchordiaryのニューカマー募集とあって、そのころ録音したMDを送りました。それで見事に選ばれて。そのレーベルのイベントのオープニング・アクトで出演できますっていうという特典があったんですよ。
–:それが新宿リキッドルームですね。
牛尾:2002年の11月、その日はサークルの総会で絶対参加しなきゃいけないやつをブッチして観に行ったから覚えてますよ。新宿着いたらリキッドルームが水の事故でイベントが中止で延期になった。
久徳:じゃ、僕は行ってないってこと?総会に行ったからね。
–:アルバム制作が青柳拓次のプロデュースで鈴木惣一朗がエンジニアで、というのは?
越川:青柳さんがプロデュースというのはレーベルが考えてくれてたけど、僕らもそうだと嬉しいなと思っていました。エンジニアは惣一朗さんでと樋口君がお願いしたんじゃなかったっけ?
樋口:お願いしてないよ、でもワールド・スタンダードも好きだったからすごく嬉しかった。ドイツのエレクトロニカ、WUNDER が惣一朗さんと一緒にアルバム出しててそれもすごく好きで。
–:では、ライブ活動について。毎月何回ぐらいやってたんですか?
吉田:ほぼ誘われブッキング。それで月に2回から多いときで4回。
牛尾:結構やってましたよ。最初が高円寺UFOクラブじゃなかったかな。それで新宿MARSとか。それから渋谷O-Nest。当時、ネスト系みたいな言われ方あったじゃないですか、nhhmbase(ネハンベース)とか。
樋口:CD出したら色々声掛けてもらえるようになったんだよね。
久徳:代官山UNITやりませんでした?
吉田:それはサケロックとかリトル・クリーチャーズも出てたchordiaryのイベントで。
越川:自主企画はMUDDY WORLDとやったくらいだったよね。
吉田:ワンマンも結局やらなかったしね。
樋口:どうやっていいかよくわかんなかったからね。



–:アルバムがわりと大きなレーベルから出て、これで上に行くぞとか売れたい欲はあったんですか?
越川:僕はありましたけどね。
吉田:ここがスタートラインなんだろうなっていうのは考えてました。フェスに出たいというのはあったと思うけど、でも思ってなかったかもしれない。それは現実的じゃないと。
越川:フジロックに出たいというのはあったよね。
吉田:ROOKIE A GO-GOね。クリーチャーズのオーディションで味占めてるから、3回続けて公募に送ったけど引っ掛からなかったね。でも対バンしてきた連中が出てたから、僕らは縁がなかった。
–:活動も中期くらいになると就職の問題があるかと。
吉田:就活は一切考えてなかったですね。バンドやりながらバイトやって暮らしていくだろうなって。よく考えたら、このメンバーの中で一番最後に卒業してるんだよね。
前越:何年生だっけ?
吉田:7.5年。夏卒業だから。
前越:8年じゃないんだ。
吉田:そのとき25、6歳だったけど周りで就職してる友達ほとんどいなくて焦りもなかった。
越川:僕は、売れたいと言うと直接的すぎるけど、もうちょっと活躍したかったという気持ちは強かったかもしれないですね。
樋口:越川がそういうことを言ってたのは覚えてる。逆に僕は今のままでいいと思っていて、その時は結局越川が抜けたんだよね。で、その後牛尾が入ってしばらくしてバンド2つ掛け持ちはキツイってなったときにまた今後どうする?って話が出てきて、そこで僕は辞めることにした。現状維持じゃ難しいのかなって。
–:2000年代後半になると、おとぎ話がライブで忙しくなってくるんだよね。
牛尾:2007年にCD(『SALE!』)でデビューするんですけど、直後からフェスとか出るようになってきて。それが樋口君が辞めたのと被ってるかな。
樋口:『理由なき反抗』(2008年 おとぎ話2nd)が出る前に、前越君の家で聴かせてもらったとき、めっちゃいいなと思ったのを覚えてる。ちゃんとやるということって、こういうことなんだなって。このアルバムの11曲目「Festival Express」の牛尾君のスライドギター、小さいアンプでダイレクトに録るとこういう音になるのか、とか。
吉田:そういうの近くで見ててそうなんなきゃいけないなとか、それを目指さなきゃとか、そうなるとキツイよね。バンドはその適性もあるじゃないですか。CLISMSみたいな音楽で、しかもボーカルがなくてポップじゃない。でも、フェスに出て若い人にも聴いてもらいたいというのは当時は思ってたんだけど、やっぱりそれはちょっと今から考えても難しい話だなと思うよ。まあ、それをやらなかったから自分たちが楽しく出来たところではあるよね。フェスに出ないようなバンドだったからこそ自分たちが面白かったと思う、もちろん人気もほしいってその葛藤もあったんだけど。
–:前越さん、おとぎ話が忙しくなって、CLISMSとのバランスはどう考えてましたか。
前越:力の入れ具合は同じでしたよ。でも精神的ではなくて単純に体力的にキツかったですよね。でも、メンバーの中では活動休止にしようとか、そういう話は無かったと思う。



久徳:してなかったと思うんですよね、覚えてないくらいだから。
牛尾:越川君が辞めて僕が入って樋口君が辞めて4人になった時点で変わったとは思う。個人的にはどこに向かっていけばいいか分らなくなってきた感じでしたね。
前越:僕はそこまで真剣に考えてなかったかもしれないですね。最後の4人になって活動が減ってきても責任感はなかった気がします。吉田君は何か言ってたっけ?この時期。
吉田:いや、この時期ね、曲がポンポン仕上がってきて結構楽しかったんだよ。
前越:吉田君が、これまでと違って普通に1曲仕上げてきた曲あったね。
吉田:今回のCDで言うと「SO SWEET YOUNG BOY」がそう。これまで1割くらいで仕上げてたのが3割4割にまで出来るようになった。スタジオで5、6時間リフ弾き続けても1カ月何も曲が出来ずに他に出来たフレーズとくっつけて曲を作ったり、それはそれで面白かったんだけど、ディスク2の渋谷LUSH(2009年)の音源あたりが曲がどんどん出来たころのもので面白いなと思った。メンバーが新しくなって、そこでバンドがリセットされた感じはあった。
牛尾:2009年の渋谷LUSHは、かなり久々のライブでしたよね。だから盛り上がってたというのもありますけど。
越川:吉田君からしたら、もう終わるんだっていうのがあったの?
吉田:いや、おとぎ話が忙しいからちょっとその休もうかみたいな話し合いはあったかな。でも別に2年とか3年とかのスパンでまた復活するだろうなとは思ってた。だから、このベスト盤が出るって話になったとき、まあ時間は経ったけど、CLISMSは続いてるから、発売されるのは当り前だよな、って思ったよ。
樋口:いい話だね、連続してるんだね。


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『BUT!』/ CLISMS
2023年11/1リリース
フォーマット:2CD
レーベル:SUPER FUJI DISCS
カタログNo.:FJSP486
【Track List】
DISC 1:
01. GO!!!!! (Smash Hits Version)
02. GARREL
03. SPIA
04. 汐 (WHAT’CHA GONNA DO?)
05. KISS US Ⅰ
06. NEW MOON, NEW MOON
07. DEVIL
08. RED WITH PURPLE FLASH
09. LABA CA VA?
10. JUMBO ON
DISC 2:
01. OK OK OK
02. BIG HAMMER
03. STEREO TWIN
04. KISS US Ⅱ
05. GIRLFRIEND
06. SO SWEET YOUNG BOY
07. KISS US Ⅲ
08. SMILEBEAT WEEKEND FENDER JAZZ BASS RUNNING HOMERUN
09. GO!!!!! (Primitive Version)
10. RUNNING FUTURE FROM NOW
ディスクユニオン
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【クレジット】


Vocal, Drums:前越啓輔(CD1 M1-10, CD2 M1-10)
Drums:樋口靖志(CD1 M1, 7, 9, CD2 M3, 8)
Drums:久徳亮(CD1 M2-6, 8, 10, CD2 1, 2, 4-7, 9, 10)
Vocal, Piano:越川律幸(CD1 M1-10, CD2 M2, 3, 8)
Vocal, Bass: 吉田隆人(CD1 M1-10, CD2 M1-10)
Guitar:樋口一裕(CD1 M1-10, CD2 M2, 3, 8)
Vocal, Guitar:牛尾健太(CD2 M1, 4-7, 9, 10)

CD1 M1 Recorded live in 2003 at 渋谷 club eggsite
CD1 M2, 4 in 2005 location unknown
CD1 M3, 10, CD2 M2 in 2005 at 高円寺 U.F.O. CLUB
CD1 M5 in 2004 at 白金 明治学院大学2202教室
CD1 M6 in 2005 at 渋谷 O-nest
CD1 M7, 9 CD2 M8 in 2002 at 白金 明治学院大学2202教室
CD1 M8 in 2004 at 渋谷 CYCLONE
CD2 M1, 4-7, 9, 10 in 2009 at 渋谷 LUSH
CD2 M3 in 2002 at 池袋 Live Garage Adm
編集・マスタリング:George Mori
デザイン:坂村健次
ライナーノーツ:吉田隆人(CLISMS)、有馬和樹(おとぎ話)






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2023.11.24 12:00

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