【INTERVIEW】あらきなおみ /「1964」
曲そのものが、自分が作った楽曲の方が大事で、歌っている人のパーソナリティはそれほどでも、というのがあるかもしれないですね
- –:アルバムが発売されて、今後、ライブなどの予定についてはどうですか?
- A:色々と難しい状況ではあるのですが…。あ、アメリカの「タイニー・デスク・コンサート」(アメリカの公共ラジオ放送NPR(National Public Radio)の音楽部門の事務所で開催されている。普段は事務所で使われている場所でミュージシャンがアンプラグドを基本にした演奏をする番組)、あれは大きなショー・ビジネスを作りあげられるアメリカだからこそ実現している企画だと思うのですが、音もいいし、親密さもあるからあのようなカタチだったら録画して配信。それなら面白いかもですね。コロナの時期ですからライブハウスでの再開する時期としては難しいですけれど。
- –:アルバムから離れた質問を少しさせてください。今回のアルバムでは弾いていないのですが、あらきさんと言えばベーシストとしても素晴らしいミュージシャンだと思っています。ツイッターであらきさんのファンから是非聞いて欲しいと言われた質問ですが「好きなベーシストとその理由」を教えてください。
- A:イエスのクリス・スクワイアは曲のラインを作るようなベーシストで、音色もふくめて影響受けましたね。後は、自分がベースを弾き始めるきっかけになったバーナード・エドワーズ。1980年にリリースされたダイアナ・ロスのアルバム『ダイアナ』。シックの2人、ナイル・ロジャーズとバーナード・エドワーズのプロデュースですが、好きですね。初めて意識してベースラインを好きになったアルバムかもです。モータウンのジェフ・ジェマーソン、キャロル・ケイも当然好きです。
- –:あらきさんが曲を作り始めたのはいつ頃からですか?
- A:中学生の頃かなあ。今もですが、曲を作るときは最初から最後まで歌詞もふくめて完成させますね。10年くらい前までは発表する場がなくても毎月1曲は、仕事用ではない自分の曲を作っていました。ライブでも発表していない曲が数百曲はあると思います。全部残しています。
- –:うわ!それは聴きたいです!今回ニューアルバム用の曲をデモで数曲聴かせていただいたのですが、イントロのフレーズふくめて構造としては完成形が出来上がっていますね。
- A:曲を作る段階で、最初から教科書の譜面化されている曲のようにイントロや間奏ふくめてすべて仕上げます。途中までとか、メロディだけとか、歌詞だけとかはないですね。
- –:これも自分の印象なのですが、あらきさんはシンガー・ソングライターではありつつ、なんというか、生き方やパーソナリティをも含めた(生き方としての)シンガー・ソングライターというよりも、なんというか「自身が書き上げた曲のために音楽家として準ずる」イメージがあるのですが。
- A:確かに。そうかもしれないです。
- –:独特な本人の個性、その魅力込みのシンガー・ソングライターにも当然好きな人はいるのですが、そのパーソナリティが苦手でどうも音楽にも正面から向き合えないこともあるのです。職人的なタイプの、例えばトッド・ラングレン、ヴァン・ダイク・パークス、ランディ・ニューマンなどに魅力を感じます。自分があらきさんの音楽から影響を受けて、惹かれているのもそういう「楽曲へ自分を寄せていくシンガー・ソングライター」のイメージがあるからです。
- A:曲そのものが、自分が作った楽曲の方が大事で、歌っている人のパーソナリティはそれほどでも、というのがあるかもしれないですね。誰が歌っても「いい曲」はいいですからね。
- –:自分の作った楽曲に音楽家として準ずる、曲の可能性とその魅力を信じているからこその「あらきなおみ/1964」。だからこそ、信頼できる音楽家に編曲ふくめて(ベースも弾かずに)渡した結果である最良の楽曲たち。
- A:今回のアルバムは自分のキャリアやタイミング、色々が重なって出来たアルバムです。仕上がりにはとても満足しているし、これが評判良ければ、また、次の可能性も。
26年ぶりのあらきなおみの新作を聴いた後ではその次をも期待してしまう。音楽そのものへの驚きと楽しみを共有している人に、このアルバムと楽曲が届くことを期待している。
インタビュー/宮崎貴士 2021年9月、オンラインで
【あらきなおみ/荒木尚美】
中学の頃から多重録音を行い、ギター、ピアノ、歌を1人で作った自主カセットがクラスで評判に。大学からエレキベースを始めバンド活動をするうちに京浜兄弟社の人々と出会い、「もすけさん」、「コンスタンス・タワーズ」にベーシストとして参加。 その頃、もりばやしみほ、近藤研二の「ハイポジ」に山口優とともに参加、メジャーデビューし2枚のアルバムを経て脱退。1992年よりソロとして活動、当初はホーン・セクション、パーカッションとベース&ボーカルという実験的な編成でライブを行っていた。1995年から鶴来正基(Key.) 今堀恒雄(Gt.)岡部洋一(Per.)の編成になり、同年、ソロ・アルバム「東京トラッド」を発表。以後はテレビCMの音楽と歌、幼児番組のためなどの音楽制作を中心に活動。印象的なメロディ、真似出来ない作曲センスや歌声には定評があり、さまぁ~ずが歌うプロミスCM「ヤリヤリクリクリ」がCDリリース。2015年NHKみんなのうたに「ひげヒゲげひポンポン」は大評判になる。ベーシストとしては京浜兄弟社人脈の多くのライブやCDに、またムーンライダーズの岡田徹「LIFE GOES ON」にも参加。音楽を作り自ら演奏し歌う、これをライフワークとして続けている。
【宮崎貴士】
1965年、東京生まれ。 作、編曲家。ソロ名義で2枚(Out One Disc)、2つのバンド「図書館」「グレンスミス」(ともにdiskunion/MY BEST!RECORDS)で共にアルバム2枚リリース。2020年よりポニーのヒサミツ氏との2人ユニット「Flozen Japs」活動開始。岸野雄一氏のバンド「ワッツタワーズ」にも在籍中。 2015年、第19回文化庁メディア芸術祭エンターティメント部門大賞受賞作(岸野雄一氏)「正しい数の数え方」作曲。
『1964』
/ あらきなおみ
2021年10/6リリース
フォーマット:CD
レーベル:MY BEST! RECORDS
カタログNo.:MYRD145
【Track List】
1.Suwaru
2.嘘
3.さらば小さな太陽
4.この歌
5.遠い日
6.静かな生活
ディスクユニオン
あらきなおみ/1964 特設HP
【クレジット】
All songs written and sung by
あらきなおみ
Produced by 横川理彦
Mastered by 竹内一弘
at Wareabout Record
2021.9.18 19:00
カテゴリ:INTERVIEW, PU3_ タグ:JAPAN, あらきなおみ, 宮崎貴士
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