【NEWS】tamao ninomiya アルバム『we are different』『she always looks so confused』を同時リリース 松永良平によるコメントも到着
レーベル 慕情tracksのオーナーとしても活動する宅録作家のtamao ninomiyaは19日、2年ぶりのアルバム『we are different』『she always looks so confused』を同時にリリースした。
2017年より”ローファイ・チル・ベッドルーム・ポップ”をテーマに活動を行う宅録作家、tamao ninomiya。
今回リリースされた2作は異なるコンセプトで分けられながらも「夏 / 二人の終わりの予感」「冬 / 追憶、そして次の旅路」というイメージの対を成しており、双方を通してフルアルバムとして視聴することができる。
『we are different』では夏の思い出を回想するかのようなノスタルジアに富んだローファイな楽曲が眠りに落ちる最中の時間を彩り、『she always looks so confused』ではオブスキュアな浮遊感に溢れるシンセ・ポップな電子音が迫る冬の気配を捉える。
5曲ずつのコンパクトな造りでありながら、その余白が作品の殻を破り現実と楽曲の壁を中和していくような深淵を感じさせる仕上がりとなっている。
音源はBandcampと各種サブスクリプションサービスのほか、fumika kobayashiがデザインを手掛けるアクリル素材のポストカードとデジタルデータが封入された特殊なフォーマットでのフィジカル・リリースも行われる。
両作のアートワークを重ねることで「第三の視点」が浮かび上がる仕掛けが施されており、聴覚だけでなく視覚にも訴えかけるアプローチが試みられている。
過去に発表された作品はデジタルリリースやカセットテープが主だったが、本作ではまったく異なるアプローチからフィジカルの価値を問うこととなる。
また、本作のミックス/マスタリングにはSoundCloudなどを主戦場に活動するアーティストYatchanを迎え、全体のサウンドデザインを大きく見直す試みもなされている。
tamao ninomiyaはシンガー・ソングライター 浅井直樹の33年ぶりの新作『ギタリシア』への参加、自主レーベル「慕情tracks」のコンピレーション・アルバム『minami no shima』のリリース、『オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド』『bu紙』でディスクレビューを執筆するなど、閉塞の時代と目される2020〜2021年にマイペースながら勢力的な活動を続けてきた。
その集大成として『we are different』『she always looks so confused』を視聴することで、2年という月日のなかで更新された新たなムードを伺い知ることができるだろう。
『we are different』
『she always looks so confused』
/ tamao ninomiya
2021年11/19リリース
フォーマット:デジタル音源+クリアカード、クレジット、QRコードをジップロックに同封
カタログNo.:
tmo-003(we are different)
tmo-004(she always looks so confused)
価格:¥1,320(税込、2作同封)
【Track List】
・we are different
01. we were so different
02. 魔術師の弟子
03. eazy maze
04. attendance record
05. 夏のページ
・she always looks so confused
01. fictional farewell
02. 唇は純粋無欠
03. mouillette
04. elescope
05. chiisanabinn
・Spotify
we are different
she always looks so confused
・Apple Music
we are different
she always looks so confused
・Bandcamp
we are different
she always looks so confused
【フィジカル取扱店舗】
・ココナッツディスク池袋店
・バサラブックス
・pianola records
・JETSET
【松永良平よりコメント】
遠に季節外れの手紙、あるいは
tamao ninomiyaの新作は2枚組ですよと、知人の編集者が教えてくれた。どうして教えてくれたんだろう。彼とtamaoさんの話とか前にしてたっけ?
それからしばらくして、ご本人から作品を送っていただいた。事前に「2枚組」と聞いていたものだから、さぞやすごい大作が来るのだと思い込んでいたから、封をあけてみて驚いた。「2枚」とはアクリル板にプリントされたイラストとクレジットにすぎず、音源はQRコードからダウンロードする。しかし、作品は確かに「2枚」だ。
『we are different』と『she always looks so confused』。異なる時期に出された2通の手紙のようでもあるし、自分を両側から写す合わせ鏡のようでもある。実際、前者の曲には夏の、後者の曲には冬のイメージがある。だが、その季節に聴かれることを意識したというよりは、届いたことを忘れていて積まれたCDや本の山から偶然発見した、差出人もにじんで見えなくなった手紙のような「季節外れ」感が永遠につきまとっている気がする。それは、彼女が自分のレーベル「慕情tracks」で作ったカセット・コンピレーション『minami no shima』(21年)にも感じたこと。最先端の音楽を的確に配置した現代の縮図、というより、地図には載っていない音楽家たちの部屋を訪ねて歩くフィールドワークのような感覚があった。彼女のことを作品を通じてしか知らないはずなのに「tamao ninomiyaらしいな」と、勝手にぼくは思った。
それとも、これは現代のメッセージ・イン・ア・ボトル。誰かに漂着することを願っているけれど、その誰かをわたしは知らない。そもそも受け取った人もわたしが誰なのか決して知らないだろう。だけど、2枚合わせても20分に満たないこの小さな大作は、詠み人知らずの五七五よりもバンクシーよりも近くであなたに語りかける。あなたはわたしですよと。ドキッとして振り返っても、そこには誰もいない。合わせ鏡みたいなこの2枚組があるだけなんだけどね。
– 松永良平(リズム&ペンシル)
2021.11.19 20:00
カテゴリ:NEWS タグ:JAPAN, pop, tamao ninomiya, 慕情tracks