【INTERVIEW】壊れかけのテープレコーダーズ『End of the Innocent Age』
壊れかけのテープレコーダーズがニュー・アルバム『End of the Innocent Age』を来る5/20にリリース。3年前のメンバー・チェンジを経た新体制で作り上げたこのロックンロール・アルバム。結成13年目を迎えた通算6枚目となるアルバムでありながら、また「イノセントの終わり」とタイトルに冠しながら、成熟というよりは不思議にフレッシュな輝きを放っているのは、狂気の沙汰とも思える。
現在、新型コロナが音楽を含むエンターテインメント業界に及ぼしている影響は多大なもので、イベントの中止や作品リリースの延期などニュースとして拾われているもの以外にも、今後もさまざまに波及していくだろう。壊れかけのテープレコーダーズの今作のリリース・ツアーも延期が発表されたばかりだ。そんなバンドの現在の状況も伺いながら、全楽曲の作詞・作曲を手掛ける小森清貴(ボーカル/ギター)と、近年はHave a nice day!など他活動も充実させている遊佐春菜(ボーカル/オルガン)にメール・インタビューを試みた。
このアルバムが、新しい時代にむけてのひとつの突破口となれば幸いです
- –:こんにちは。まずは現在のお話から訊かせてください。新譜・旧譜に関わらず、最近聴いた音楽で印象的なものはありましたか? もしあれば、気になった理由と併せておしえてください。
- 小森清貴:Cloud Nothingsのファースト『Cloud Nothings』(2011年)ですね。特に日本盤にはボーナスCDでデビュー前の作品『Turning On』も付いておりお得で、双方共に名盤で愛聴しています。このバンドのCDはセカンド以降は全部持っているのに、なぜかファーストだけ未聴でしたが、このファーストが一番好きですね。圧倒的に全てがへなちょこでしょぼく、が故に、制御不能の向う見ずなエネルギーがほとばしっており、それがたまらんのであります。ロックンロールかくあるべし、と唸りましたね。
- –:コロナ以降の、現在の制作状況はどうですか? どのような気持ちで音楽を作ったり、音楽に向き合ったりしていますか。
- 小森:まず、現4月末時点ではライブはおろか、スタジオも休業でバンドのリハも入れない状況でして、バンドとしては特に何も動けていないに等しいですね。リモートで曲作りとかも、現状はしていないです。メンバーには「いつコロナが収束してもライブができるよう、準備を怠らないでおくれ」とメッセージを送りました。
個人的にも、あまり今はアウトプットに心が向かわないというか……、アルバムも作り終えたし、新しい曲をどんどん書き溜めたい時期ではあるんですが、あまり能動的に動けていないですね。2011年の震災の直後もそうだったんですが、こういった有事の状況下を切り取り、音楽で何か表現しなければというような「意志」、悪い言い方をすれば「囚われ」が生じてしまう。ただ、そうやって生みだされたものは、これは自分自身の作品に対する、あくまで私個人の見解ですが、どこか嘘のようなものに感じてしまう。
なので、何も生まれないのなら、それはそれで、そういう時期もあってもよいのかなと。現在を生きる中で、やがて自然とこぼれ落ちるもの、剥がれ落ちるものが、いずれ音楽になるのかなと、そう思いながら、日々を生きています。 - –:遊佐さんの「先の見えない、不安定な世の中ですけど、今出るべくして出るアルバムだと強く思っています」というTwitter投稿を見かけました。
壊れかけのテープレコーダーズ6枚目のアルバムが、5/20(水)に出ます。
— 遊佐春菜 (@yusa_haruna) March 31, 2020
先の見えない、不安定な世の中ですけど、今出るべくして出るアルバムだと強く思っています。
タイトルは
「End of the Innocent Age」
1st「聴こえる」でジャケットを描いてくれた秋永悠さんが今回また描いてくれました。嬉しい。 pic.twitter.com/lDnI2mdDg6
- 本作はコロナでここまで世界が混乱する以前に作られたアルバムかと思われますが、遊佐さんがそう思われたことについて、おしえてもらえますか。
- 遊佐春菜:ライブハウスの運営やなんかもそうですが、何となく目を背けていたことやものに改めて向かい合い、この世の中全体が本当に良くなるよう、ひとりひとりが今までの幼い自分に別れを告げ、変わっていく時なのだ、と、録音していた頃はまだ自分の中ではぼんやりしていたアルバムの曲たちが、次第にくっきりと今この時代に生きている人たちに向けて歌われているように感じたんです。コロナウイルスの収束にむけて、音楽が具体的な解決策を打ち出すことは不可能ですが、このアルバムが、新しい時代にむけてのひとつの突破口となれば幸いです。
2020年代は、何か私達がこれまで頼り、すがってきた多くの物事に、さよならを告げなければいけない、そんな時代なのかもしれません
- –:『End of the Innocent Age』についてうかがいます。今作の制作のスタート地点は? 歌詞に「5月」「6月」という言葉が複数出てくるなど同じ季節の描写が見られたり、各楽曲のテーマが一貫しているように思ったので、曲よりも先にテーマがあったのかな、と感じたのですが。
- 小森:ジャケットに画を描いて頂いた秋永悠さんからも「コンセプト・アルバムのよう」と言われましたが、特に先立ってテーマがあったわけではなく、単に曲の数がアルバム作る分くらいに達したので、制作に入っただけです。個々の曲は書いた時期もバラバラで、古いものだと恐らく2012年~2013年頃に書いたものもあるかと思われます。あまり自分でもよく覚えてないのですが。
たまたま散り散りの曲たちが集結したら、アルバムのテーマのようなものが浮かび上がってきた感じですかね。「5月」は確かによく出てきますね。好きなんでしょうね、5月が。 - –:『End of the Innocent Age』というダイレクトなタイトル(ともすればテーマ)は、昨年迎えた10周年の節目や、メンバー・チェンジを経たバンドの決意や区切りの意を想像させますが、「イノセントな時間が終わること」は、壊れかけのテープレコーダーズ/小森さんが望んだ/望んでいることでしょうか。
- 小森:望むも望まざるとも、訪れてしまうものなのかな、と思っています。話が飛躍しますが、2020年代は、何か私達がこれまで頼り、すがってきた多くの物事に、さよならを告げなければいけない、そんな時代なのかもしれません。
- –:エンジニアやジャケット・デザインをファースト・アルバム(2009年作『聴こえる』)と同じ方々が担当されていますが、関連性を意図されたものだったのでしょうか。
- 小森:10年以上の歳月を経た上でおなじタッグで作ったら、どんな光景が見えるのかな、と。バンド自身が、その光景を見たかったのではないでしょうかね。導かれるままに、この制作陣しかないなと、直観的に。
- –:そしてジャケット、素晴らしいですね。例えば前EP『FRAGILE E.P.』(2019年)はデザイナーに音から着想したイメージで作ってもらったとのことでしたが、今回、秋永さんにはどのような発注をしたのでしょう?
- 小森:素晴らしいですよね。こんな画を描けるのは秋永さんしかいないです。何度眺めても飽きないし、驚きと発見がある。『聴こえる』のジャケ画をお願いした時もそうでしたが、特に詳細な注文は何もしていません。アルバムを聴いて頂き、秋永さんなりに受け止めたものを、表現して頂けたら、と。何枚か候補の画を描いて頂いたんですが、この画に一番狂気を感じ、一目見てこれだ!と、即決しました。見事に期待を凌駕したものが出来ました。
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『End of the Innocent Age』
/ 壊れかけのテープレコーダーズ
2020年5/20リリース
フォーマット:CD/デジタル配信
レーベル:MY BEST! RECORDS
カタログNo.:MYRD136
価格:¥2,300(税抜)
【Track List】
1. 無題
2. イノセンス・ロスト
3. boys & girls
4. stand by me
5. Hello, Destiny
6. oldman’s dream
7. evergreen
8. 希望
小森清貴:Vocal, Guitar
遊佐春菜:Vocal, Organ
shino:Bass
高橋豚汁:Drums, Percussion
——–
作詞・作曲:小森清貴
編曲:壊れかけのテープレコーダーズ
録音 トラックダウン:狩生健志(YAKEN STUDIO)
マスタリング:中村宗一郎(PEACE MUSIC)
画:秋永悠
デザイン:ダダオ
2020.5.8 19:00
カテゴリ:INTERVIEW, PU3_ タグ:have a nice day, JAPAN, komori+yusa, ミチノヒ, 壊れかけのテープレコーダーズ, 小森清貴, 遊佐春菜