【INTERVIEW】alicetales『UNION』
indiegrabでのalicetalesインタビューも、今回でもう3回目となる。
足掛け2年に渡り、彼らのライブや音源を見聞きしてきたが、おおよそこのタイミングで発表された『UNION』は、彼らのこれまでをコンパイルしたベスト・ディスクになるだろう。
だが、インタビュー冒頭に明言されているように、今では違うモードへと移り変わりつつあることを白状してもいる。時の流れは凄まじい、時間の経過と自身の変化により、『ベスト』とは違った形の『ベスト』を求める、オルタナティブな形を模索しはじめた。
ということで、確かに最新作『UNION』の内容にも触れながらも、変化していく自身らのモードについて、そして「alicetalesとは?」ということにも真正面から答えてもらった。シリアスながらも、忌憚のない言葉の数々を、焼き付けてほしい。(草野)
僕ら4人は、一つのバンドが好きだから「alicetalesを組もう」という風に結成してないんですよ。目指している音像やバンドのあり方とかが見えづらいのかもしれない(ichikawa)
- –:2017年9月にインタビューをしたとき、「E.P.のあとにもアルバムリリース考えてます!早ければ年明けの1月には出します!」って言っていて、ライブの感触も僕としては好印象で、これは良い作品になるだろうなと思ってい……蓋を開けてみれば、2018年1月どころか、2019年1月までガッツリと空いてしまいましたね(笑)
- 全員:ははは(笑)
- –:一度時間を巻き戻したいんですけども、E.P.を作っているときにはアルバムを前提にして作っているという話で、漠然とどんなことを考えていましたか?
- kyosuke:難しいことは考えてなくて、とにかくたくさんある曲を1枚にまとめようというのを考えてました。前回のE.P.を作った段階で、アルバムの曲もほとんど出来上がっていたんですよね。
- –:ん?ということは、今回2019年1月に出すアルバムは、2017年夏頃にはすでに録音し終えていたものになる、ということですよね?
- kyosuke::そうです。
- –:それ、結構重要ですよね?いきなり話の核心に触れてしまったような気がするけども(笑)いまではかなりマインドが違いますよね?
- ichikawa:ええ、なので、覚えてないことも多々あります(笑)
- kyosuke::モードとしては違うモードに入りかけているんですよ。表立って言うにはダメな部分が多々あったりします。
- ichikawa::2017年にE.P.を出すときに10曲分録音していたんですよ。そのあとに2018年に入ってから録音して、今作に入ってますね。なので、アルバムの半分はE.P.を作っている時点で出来上がっていたんですよ。
- shuntaro::ベースとドラムは2017年にほとんど録っていた気がしますね。
- kyosuke::ギターはE.P.と違うものを録音しなおしているものが多いですね、「inverse」はまさにそうです。
- ichikawa:プリプロを録音したのが2017年5月だったりするので、そこから考えたら前に出したE.P.もアルバムも含めて、1つの作品になるのかなという感じです。
- –:「Never Gonna Give You Up」は?
- kyosuke:……あれ?なんでこれとったの??
- ichikawa:え!?忘れたの!?あんなに盛り上がったのに!?(笑)
- task:2017年のサマソニでFoo FightersとRick Astleyがこの曲でコラボしたからでしょ?
- shuntaro:あんなに盛り上がったのに忘れてるよ(笑)
- –:忘れちゃいけないですよね、かなり大事だとぼくも思います(笑)今作を渡されたとき、ものすごくスケールが大きそうだなって思ったんです。だって、『UNION』ですよ?どんだけスケールデカイことやるんだ!?ってちょっと期待しましたし、『SSSS.GRIDMAN』に先んじたのか!?とすら思ったんです。
- ichikawa:ははは(笑)
- kyosuke:そういう意図はないですよ(笑)あ、でも「アイドルマスター シンデレラガールズ」に同じタイトル曲はありますよね?そっちに合わせたという意図もないですけど(笑)
(『アイドルマスター シンデレラガールズ』ではなく『アイドルマスター ミリオンライブ! 』の楽曲)
- –:なんで『UNION』というタイトルにしたんでしょうか?
- kyosuke:あんまり意味はないんです。前々のインタビューでも答えているように、文字の並びや形に対して、つながってくるイメージが出てくるっていう共感覚が僕にはあって、今作の曲タイトルをズラっと並べたとき、僕の中で浮かんできた言葉が『UNION』という言葉だったんです。それだけが理由のすべて……というわけでもないんですけど。
- –:なるほど。
- kyosuke:しかも、今回みんなに相談せずに勝手につけてしまったので。
- ichikawa:そこはまぁ、法律を破らない範囲であれば、ね?
- kyosuke:こっからはちょっと蛇足になるかもなんですけど、2年位前にニューヨークに旅行に行って、買い物をしたんです、洋服屋で。The Smithのシャツを着ていったら、店の人に「The Smithのシャツじゃねぇか!」って声かけられて、仲良くなったんです。店の雰囲気も品揃えもものすごく良くて、良い店だったなという思い出があったんです。そのお店は「UNION」という店だったんですけど、帰国したあと調べてみたら、ロサンゼルスで生まれて、ストリートカルチャーに影響がかなりの名店だったということを知ったんです、東京にも初めてショップを出したはずですよ。
UNION TOKYOオフィシャルサイト
UNIONオフィシャルサイト
UNIONのオーナー Chris Gibbsのインタビュー
- –:引っかかりはあったんですか?
- kyosuke:ひっかかりがあったと思います。要は、僕の中で良いイメージのものが、こういう感じで影響が出てくるっていうか、あんまり意味がない意味がないって言ってしまうと、「本当に意味がないんだ!」と思われると、妙な感じが僕の中にもあるので(笑)
- –:たしかに(笑)『UNION』というと、「団結」とか「一体」というような意味がありますよね。
- kyosuke:(「UNION」で何かを検索して)「ユニオンとは、一言でいえば会社で一緒に働く人たちが共に助け合うためのシステムです。互いに助け合い、そして自分たちの要望を会社と話し合うシステムが労働組合であり、そこに働く人たちが集まって作るものなので、主人公は一人ひとりの組合員なのです。いろいろな立場や考え方の人々の集まりでる団体がひとつにまとまり、総合力を発揮することができます。」(福太郎ユニオンのサイトからの引用です)いい意味ですね……。
- –:それは労働組合の話ですよね(笑)でも確かに「UNION」そのとおりだなと思わせてくれる1枚だなと思ってしまうんですよ。これまでのalicetalesを知っている身からすると、やれエロゲのタイトルから派生してタイトルをつけてみました!とか、とあるバンドの曲フレーズをバッチバチに差し込んでヒップホップ的な手法で作ってみました!ということではなく、「良い曲を集めた!」という説得力が強く出てると思えたんです。ちょっと言葉にできないんですけども。
- kyosuke:ありがとうございます。
- –:でも、さっきこのインタビュー場所にくるまでに、kyosukeくんにはちょっと話をしたことなんですけど、「キメ手に欠けてしまった」1枚という風にも感じ取れたんです。「良い曲が集まった!」で終わってしまったような感じが残ってしまったというか。
- kyosuke:その話を聞いて思ったんですよ、つまり突出したものがないと言われてしまったなと。結局突き抜けることが出来てない、とも言えますが。
- –:曲のフレーズや展開の落とし方や絡み方が、ものすっごい渋い感じがあるんですけど、一旦それが解けると吹っ切れたように派手になるんですよね。そのアンバランスな感じがalicetalesの面白さだとは思うのですけども。
- kyosuke:そこが僕らの悩みでもありますし、そこを突き詰めると「友達がいない」っていうことになるんですよ(笑)僕らって対バンが組みやすいバンドがほとんどいないんですよね。結局は、バンドごとに方向性はちょっとずつ違うし、音楽性としてのゴールが違うからこそなんでしょうけどね。
- task:僕ら自身から切り出すのも変ですけど、偏屈な人間が4人揃ってしまったと思うんですよね。好きな音楽やバンドが合えば、カルチャーとしてのファンの繋がりで仲良くなれるんでしょうけど、そこが合わないとすぐにプイッとしちゃうので。
- ichikawa::僕ら4人は、一つのバンドが好きだから「alicetalesを組もう」という風に結成してないんですよ。目指している音像やバンドのあり方とかが見えづらいのかもしれないですね。大学生の時から組んでいると、「ナンバガが好きだし、ナンバガ好きなメンバーで組んだ」「アジカンが好きで、アジカン好きなメンバーで組んだ」というような成り立ちじゃない。alicetalesは4人それぞれ、芯になっているバンドが違うんです。
- task:その背後にあるインディカルチャーが共通言語としてあるとは思いますけどね、これがバンド1つ1つとなるとかなり違いますもん。それで4人とも飽きっぽいので、この作品に入っている曲も、どうせすぐにやらなくなってしまうかもしれないですしね。
- –:そのへん、shuntaroさんはどう感じてます?
- shuntaro::みんな好きなものがバラバラなのは本当にそうです。でも、1人が「これ良くない?」って言ってくると、だいたいみんな「良いな」と言って聴き始めたりするんです。
- task:Apple Musicとかで聞いていると、メンバーがなに聴いているとかすぐわかっちゃうんですよ。それで探ってみるのもありますよ
- –:ありがとうございます。今の話から転じてみると、alicetalesってマニア向けなバンドだと思うんですよ。「ナンバガ好きな人が集まったバンド」なら「それなりにナンバガっぽい曲」が生まれるし、ファンもわかってくれるし、理解者も増えやすいですよね。「アジカン好きな人が集まったバンド」なら「それなりにアジカンっぽい曲」が生まれるし、「バンプ好きな人が集まったバンド」なら「それなりにバンプっぽい曲」が生まれるわけで。それってファンや理解者がつきやすいの当たり前だと思うんです。だって分かるんですから(笑)
- task::そりゃそうですね
- –:でも、alicetalesって、野暮ったく言ってしまうとパワーポップなバンドじゃないですか?良い曲をドーンとパワーコードで制してしまうバンド。それでいて、ものすごくメタルなフレーズは弾くし、いきなりNirvanaを弾くし、わかりやすくThe Beatlesをやるし、むっちゃくちゃ分かりやすい、でもゴッチャゴチャなんです(笑)
- 全員:(笑)
- –:その繋がりって、分かる人にしか分からないものとして、もっと言えば、4人の共通言語そのものがフィルターなしでドーンと出てしまっているからだと思ったんです。今回のインタビューで聞きたかったことを先に言ってしまうと、「4人にとって、ポップスとは何なのか?」ということなんです、極端に言い切ってしまうと。「ポップってなんですか?」と。
- task::まず、先行PVを出している「Monday Morning Belle」はポップな曲ですよね。
- kyosuke:そりゃそうだね。というかそれ言い出すと、The Beatlesの「Revolution 9」とかポップスになるんですかね?
- –:アヴァンギャルド・ポップになりますね。というかそこを言い出すと、アート・リンゼイだってポップスになりますからね。
- kyosuke:ああそうか、そうなるとDNAがポップスになりますか(笑)
- –:僕はこの作品を聴いて胸躍るのは、Foo FightersがカバーしたRick Astley の「Never Gonna Give You Up」を、そのまんまやって締めてることだと思うんだよね。
- ichikawa::あれってさ、もうあのカバーを聴いた直後のスタジオでやってたよね?
- kyosuke:そうだね。
- ichikawa::まえにインタビューしてもらった9/2のとき、あの前にスタジオに入っていたんですけど、「オレ、コピーしてきたよ!」ってめっちゃはしゃいでましたからね。
- task::ほんとにずっとその話ばっかりしていたんです、その頃って。
リックxフー のスペシャルネバゴナ!!!
— nk (enu-kei) (@kysknk) August 20, 2017
ちょっとマジでやばかった。これだけにチケット代全額払っても良いくらい!!!#rickastley #foofighters pic.twitter.com/mwA1tMDPCU
- ichikawa::kyosukeくんが結婚したときの式でも、バンドでこの曲を演奏したりしてね。
- shuntaro::そうだそうだ。
- kyosuke:感動したね、あれは。でも「誰?」みたいな反応されてしまったけどね(笑)
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『UNION』/ alicetales
2019年1/23リリース
フォーマット:CD
レーベル:VACANCE!
カタログNo.:VCNC-001
価格:¥1,500(税抜)
【Track List】
01. zeramellia
02. inverse
03. Monday Morning Belle
04. meguru
05. ange3
06. Don’t Let Me Down
07. try to hold on
08. in the jost
09. sigtuna
10. Naga
11. Never Gonna Give You Up
『UNION』リリースツアー
2019年4/13(土)東京 下北沢Basement Bar
ACT:alicetales / SonoSheet / and more
2019.2.22 12:00
カテゴリ:INTERVIEW タグ:alicetales, caucus, float down the liffey, JAPAN