【INTERVIEW】『Pandora』/ 武田理沙
自分のターニングポイントに試聴室が出てくるというか、ソロをやりはじめたのもあの店なんですよ
- –: (黄金町)試聴室その3界隈に出入りして長いんですか?
- 武田: 私、当時「カマクラくんバンド」ってバンドをやっていたんですが、当時何回か出演するきっかけがあって。雰囲気がとても好きでしょっちゅう飲みに行くようになりましたね。自分のターニングポイントに試聴室が出てくるというか、ソロをやりはじめたのもあのお店なんですよ。店長の三沢(洋紀)さんが「やりなよ!」って言ってくれて。
- –: その頃からピアノソロでライブを?
- 武田: そうですね。最初はちょっとしたオリジナルや即興。その頃からFrank Zappaの曲をやったりしてました。そういうライブを2回やった頃に「真夏のビアホールワンマン」っていう試聴室の企画に呼ばれて演奏した時に何かこう……ぱーっと開けた感じが。
- –: YouTubeで公開されている『FRANK ZAPPA Piano Medley』はいつ頃のライブになりますか?
FRANK ZAPPA Piano Medley
- 武田: あれは「ビアホールワンマン」の1ヶ月後に神保町(試聴室その1)での映像ですね。沢田穣治さん企画のピアノナイト(2016年9/21開催)という出演者全員ピアニストっていうイベントでした。Zappaの曲のストックが4〜5曲ぐらいあったんですけど、これをZappa本人がやってるようにメドレーにして繋げて弾こう!って思って30分ぐらい通して演奏したら楽しくて。それ以来毎年やっています。
- –: Zappaは思い入れが深いんですか?
- 武田: そうですね。東京に来てからZappaの日本語カバーバンドに誘われて。
- –: それまでZappaはどの程度はまっていたんですか?
- 武田: それまでも聴いてはいたんですけど、Zappaはとにかくリリース数が多いじゃないですか。最初に勧められて聴いたのが3枚組のギターソロだけが入ってるやつ(黙ってギターを弾いてくれ)を貸してもらったんですがよく分からなくて。そこから1〜2年経ってから……そのZappa・バンドのリーダーが人に音楽勧めるのがうまい人だったんで、そこで上手く誘導されて入り口を掘られてしまいました(笑)
- –: Zappa以外だとどんな音楽聴いてました?
- 武田: クラシック全般、あとはイタリアのプログレや、カンタベリー系と呼ばれている音楽が本能的にすごく好きです。単純にとにかく熱量がある音楽が好きなんだと思います。
- –: それらの音楽って今回のアルバムにどんな影響与えていると思いますか?
- 武田: これもすごく感覚的な内容なんですが、特に近代のクラシックや現代音楽など絶妙な調和の上で成り立っている音楽に対して美しいと感じる時にどのような部分をそう感じたのか探るようにしています。具体的に言葉で表現するのは難しいですが、実際に即興演奏を行う際にピアノでそれを表現したいと思っていて、曲を作る際のMIDIピアノ即興演奏もそのような感覚で弾いているので、自分の中での美しい音楽を追求するための指標になっていると思います。
普通に叩いた綺麗な音だと全然意図と違う音になっちゃって……
- –: (注:この時点ではプレス工場に発注したところでした)現在プレス待ちという状態ですが、現時点でのお気持ちはいかがですか?
- 武田: 凄く楽しみなのと……不思議な気持ちですね。自分から切り離された瞬間に自分の作品とどう距離をとっていいのか分からなくなって(笑)この間久しぶりに聴いて見たら「あれ?こんな感じだっけ??」って気持ちになってます。「意外と音大きくないな」って(笑)
音量自体はそんなに大きくしてないんですけどディストーションとかコンプレッサーをアホみたいにかけてるんですよ。もうどこのタム叩いてるのかわかんなくなるぐらいにしたかったんですよね。でも普通に叩いた綺麗な音だと全然意図と違う音になっちゃって……。 - –: 感情の起伏を表現しきれていないみたいな感じですか?
- 武田: 安直かもしれないなとは思うんですけどね。ここで遠慮しても仕方がないと思って(笑)
- –: そういえばアートワークは何パターンか出ていたみたいなんですが、これは何転かしたんですか?
- 金野: ジャケットはもともと写真で行こうと思ってたんですけど、どういうものを作りたいかってのがあったようで無かったですよね。カメラマンと武田さんと私とデザイナーと4人で全員考えが違って。
- 武田: 曲の方向性がとっ散らかっているのであまり内容を特定されないようにするって方向性は一致してたんですけど、じゃあ特定されないジャケットとはってところで意見が分かれましたね。
- –: 黄金町試聴室の中で色々置いて撮影したパターンもありましたよね?
- 金野: 表紙は内容がわからないものにしようってものがあったんですけど、中身がわかるようなものもブックレットで見せなきゃいけないってのもあって。とっ散らかった写真があればいいなと思って試聴室で写真撮ったんですよね。
- 武田: プログレとかサイケを意識して、私はどっちかというそういうイメージを浮かべてたんで試聴室のイメージが強かったんですよ。だから最悪顔出しなしでも大丈夫って思ってたんですよね。でもそれだと中身を強くイメージされちゃうっていうのもあって難しかったですね。
- –: 今のアートワークに落ち着いたというのはどういう経緯で?
- 金野: あれはもともと俺がイメージしたパターンですね。メイクを本人じゃないような感じにしようと思って、メイクさんを頼んで。水原希子みたいにしてくれってオーダーしたんですけどそうならなかった。
- 武田: そういうオーダーをしたらメイクさんも戸惑っちゃってて。本人のイメージとも違うし、私も鏡で見ながらやってもらってたんですけど……何回か直してもらううちにああいう形になったんです。時間もいっぱいいっぱいだったので。本人にない感じを化粧で出すのは結構難しいんだなって。メイクさんが一番困惑してたんだと思うんですね。
- –: その方向性の中でも色々模索したんですね。
- 武田: 私にちゃんとしたイメージがなかったからですね(笑)どうしていいか全然わからなくて。でも落ち着くところに落ち着いた気もするんですよね。
- 金野: あれ、カメラマンは気に入ってない写真だったんですよね。
- 武田: そうでしたね。あれ、金野さんが選んだんでしたっけ?
- 金野: そうそう。武田さんにわからないように俺とデザイナーで選んで。左側とか見ればわかるんだけどちょっとモザイクをかけてね。元々帯でJANコードがダブルで見えるようにしたいんだけど、本当にダブルで見せると機械で読まなくなっちゃうんで。裏見ればわかるんですけど、JANコードが焼いたように焦げてるんですよね。
- 武田: へえー!!
- 金野: 見せたじゃない(笑)
- 武田: いや、そのときはよくわからなくて……普段自分がCD買ってもそういうところよく見てなくて……(笑)
- 金野: 俺なんかCD買うとそういうところばっかり見てるけどね(笑)
- 武田: そうなんだ!アートワークとかブックレットしかみてなくて……なんかすんません(笑)
- 金野: そういえばデザイナーさんにマスタリング終わったデータを聴いてもらったんだけど、そこから急にアイデアがどばっと出てきたみたいだよ。
- 武田: そうなんですか!
- 金野: 今回の音源はやっぱり色んな人を焚きつけるんだなって思って。
- –: このアルバム聴くと何かをしなきゃいけないって気分になりますよね。
- 金野: なんかね。本当に珍しいよね。
大げさな物言いなんですけど75億人全員に聴かせたいですね(笑)
- –: デモアルバムから制作が始まった今作ですが、どういうった方に聴いて欲しいと思いますか?
- 武田: 大げさな物言いなんですけど75億人全員に聴かせたいですね(笑)
- –: 世界中に?(笑)
- 武田: 世界中に(笑)私は1円の儲けにならなくてもいいから世界中に聴かせたいですね。もう無理矢理でいいから聴かせたい。
- –: 私もこれは世界中に聴かせたいですね。アルバム通して。途中でトイレ行くのとか禁止して(笑)
- 武田: (笑)「私」っていう有機物の……人間としての……脳とか体とか話している事よりももっと的確に私を表現できている盤になったなって気持ちがあるので。私の存在そのものよりもこの盤があればいいかなって。大げさにいうとそんな感じです(笑)
- –: 先程武田さんからはご自身の変化に対する革命というお話も伺っているんですが、私にはどうしてもご自身だけではなく、このアルバムで世界を変えたいという意識を感じるんですよね。
- 武田: それもありますね。
- –: 私がこのアルバムを聴いて「これはインタビューしないと!」っていう強い目的意識を持った段階で世界は変わっているし、他の方にも結構影響を与えているとかなり広い範囲で世界が変わってるんじゃないかなって思っています。最後にリスナーや読み手の方に何かあれば。
- 武田: なんというか、燃え尽きました(笑)全て出し切ったという感じです。
インタビュー・文:sabadragon
撮影場所:
黄金町 ちゃま珈琲
日ノ出町試聴室その3
『Pandora』/ 武田理沙
2018年8/8リリース
フォーマット:CD 2枚組 / デジタル配信
レーベル:MY BEST! RECORDS
カタログNo.:MYRD124
価格:¥2,500(税抜、CD)
【Track List】
Disc-1:
1. at daybreak,
2. Island
3. Pagoda 2018
4. Idle brain is the devil’s workshop
5. NagaRaja
6. Cursed Destiny -I have opened the Pandora’s box-
7. a time of thaw
Disc-2:
1. 鳴
2. 尋常に狂う
3. 業
4. 涅槃
5. 寄生虫
6. 弟切草
7. 孤高の厭世家
8. 革命前夜
9. ラスト・モーメント
作曲、編曲、録音、演奏、プロデュース:武田理沙
ミキシング:武田理沙、佐藤優介
マスタリング:中村宗一郎
ディスクユニオン オンラインショップ
iTunes
Apple Music
Spotify
2018.8.8 12:00
カテゴリ:INTERVIEW, PU3_ タグ:classical, electronic, JAPAN, jazz, rock, 武田理沙
関連記事
-
【NEWS】イベント情報:小松成彰による主催イベント『Deep Forest』幡ヶ谷Forestlimitにて開催 出演にShiShi Yamazaki 小松成彰 AK.okamoto 金富烈、iVy、vq 他
-
【NEWS】インディーロック・バンド cephalo 1stアルバム『Fluorite code』リリース決定 & 下北沢BASEMENTBARでリリパ開催
-
【NEWS】イベント情報:para de casa主催イベント『ESSLECTION 2025』渋谷WWW/WWW Xにて開催決定 & 第1弾アーティストとしてYONA YONA WEEKENDERS、西恵利香、AFRO PARKER、Kan Sano (Band Set)、 Czecho No Republicを発表
-
【DIG】Landscape Design EP / 響現