【INTERVIEW】Boyish岩澤が語る新作『STRINGS』「いままで僕が聞いてこなかった音楽を発見して、昔と今の音楽がつながっていく、そういうのが楽しくて」
人は成長する。
音楽の話なのに何を書いているんだ?と思われるだろうが、本当にそう思えるのだ。
東京のインディバンドBoyish、彼らを知る人はこの記事を読む時、これまでの作品と新作『STRINGS』とを聴き比べながら読んで欲しい。一人の人間が生み出し、多人数で奏であう音楽が、これほどに変わることができるのか、と。
その驚きをもとにして今回のインタビューでは話を聞かせてもらった。今作を生み出すまでにいたった経緯はもとより、音楽を生み出す上での彼自身の信条と、これからの彼が目指していく未来像が少しだけ垣間見えると思う。
おかげで「What’s going on」のベースは全部弾けますよ(岩澤)
- —お久しぶりです。
- 岩澤:お久しぶりです。前のお話っていつでしたっけ?
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—僕が1年前に『Bad apple』を作った時ですね。あの時はFor Tracy Hydeの管くんと一緒に話をしてくれたんですよね。
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岩澤: そうでしたね。セカンドが出た翌年のすぐでした。
- —あの時は、バンド結成のいきさつや、For Tracy Hydeの管くんと一緒にバンド組んでいたという話、好きな音楽とかその時見えていたヴィジョンについて、お互いの作品についていろいろと話してくれたんですよね。でも、実はあの時、僕の口からはセカンドアルバムについての話をそこまでしていなかったんですよね。
- 岩澤: はい。
- —Boyishの『Sketch For 8000 Days Of Moratorium』については、Belong Mediaにて僕とKalan Ya Heidiのおかざきくんとでディスクレビューを書いたんだけども、要約すると、<BPMが早くて、ウォールオブサウンドなギターサウンド、これまでよりもロックバンド然としつつもシューゲイザーっぽさもあって、メロディの良さが際立っている>というような話でした。いまの岩澤くんから見てみると、前の作品はどういうふうに映りますか?。サウンドとしての変化、制作したのも2年前ということで立場や感じ方もいまとは思うのですが。
- 岩澤: うーん・・・当時やりたいことはちゃんと詰め込んだし、それなりにできた作品だとは思うんだけども、録音とかはやっぱり当時から納得はいってないですかね。ファーストのときは、メンバーそれぞれが録音したものをミックスした作品だったんですけど、前作はバンドっぽいノリにプラスして宅録風な要素を詰め込んでいて、ある意味では実験的なアルバムといえるんですよね。ギター1つにしてもかなり重ねてて重ねて・・・という作業もあったので、無理がある作品というか
- —なるほど。それは制作にも響いたりしましたか?
- 岩澤: いえ、この時はむしろ制作費は抑えられてると思います。ただ今回の作品を作ったあとのいまにしておもえば、ギターをたくさん重ねることが必ずしも正解にはならない、ということに気づけましたね。
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—ありがとうございます。メンバーの交代やライブ活動を経て、なにかバンド内での変化などはあったんでしょうか?
- 岩澤: ギターリフとかアレンジメントで「これはこうしたほうがいいんじゃないのか?」とかちょこちょこと話をする程度で、ライブを重ねていくことでの変化は実はあまり多くなかったですね、むしろCDやレコードを漁って聞くことでかなり影響を受けてると思います。
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—まさにその話に繋がるようなお話をお聞きしたかったんですが、ストレートに言って今回発売する『Strings』はこれまでの作品とは一線を画すような作品になったと思います。聴く音楽が変わったんじゃないのか!?と疑うくらいんだったんですが、どうだったんでしょう?。
- 岩澤: USインディやオルタナとかネオアコみたいなものを嫌いになったわけではないんです。RASAというソウルミュージシャン・ユニットがいるんですけど、いまのミュージシャンじゃないし、かなりレアでマイナーな方なんですが、その人達を聴いて、「おっ、面白いな、ソウルミュージックを聴いてみよう」と思えたんです。そこから、マーヴィン・ゲイ、カーティス・メイフィールドとか、あとはフィリーソウルとかもよく聴きました。
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—ダニー・ハサウェイとか。70年代ソウルですよね。
- 岩澤: 川崎にTOPSっていうソウルやジャズ系のレコード屋があるんですけど、帰り道とか用事がある時にはそこに入っていろいろ探しましたね。ちょっとお値段が張るから必ず買うということでもないですけど、知識とか興味を継続して保つ意味でも。
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—なるほど。前作を出してから今作を出す間で、東京のインディが大きく変化したといえば、ロックバンド然としたサウンドではなく、ポップバンド然としたサウンドとしたバンドが大きく受け入れられたことにあると思いますし、そういったバンドがどんどんと増えていっているのも事実です。もしかして、Boyishの変化は、そういった流れに乗っかろうという軽い感じだったんでしょうか?
- 岩澤: 僕はそういうのは一番嫌いですね(笑)
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—うん、わかっていて聞いてみました(笑)むしろそういったものじゃなく、岩澤くんの中での変化が如実に現れたということですよね。
- 岩澤: そうですね。でも、確かにそういうサウンドが世の中にも受け入れられているのはわかります。星野源の『Yellow Dancer』は僕もよく聴きました。全部が好きな曲!ということでもないですけども。
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—いろいろ聞いたと言いましたけど、どれくらい聴きました?50枚くらいですか?
- 岩澤: いや、もっと多いです。TOPSで買ったレコードもあれば、僕自身はツタヤでCDをガンガン借りるタイプでもあるので、棚一つ分以上は全然聴いてます。あとは、去年くらいに横浜の赤レンガで行われた『70’sバイブレーション!YOKOHAMA』っていうイベントがあって、70年代や80年代のロックを掘り直そう!みたいなイベントがあったんです。YMOやはちみつぱいとかはっぴぃえんど、当時使用された楽器の展示とか、影響された音楽の展示があったんです。いままでは70年代というところに大きな注目はしてなかったんですけど、ソウルミュージックとかこのイベントの影響がすごく大きかったですね。
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—ソウルへの傾倒は他のメンバーにとってはどう見えていたんでしょうか?
- 岩澤: メンバーもメンバーで様々です、人間椅子好きだったりCOALTAR OF THE DEEPERSが好きだったりする人もいるし。ブラックミュージックと同時進行でシュガーベイブ界隈が影響を受けたミュージシャン・・・例えばシンガーソングライターのアルゾとか(Alzo & UdineのAlzo Fonte、1972年にファーストアルバムを発売)、The Lovin’ SpoonfulとかThe Fifth Avenue bandとか(60年代末のロックバンド)、ああいうバンドのノリを取り入れたかったんです。
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—そこはメンバーと意思疎通してやれたんですか?
- 岩澤:いや、別に
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—岩澤くんの中でということですね
- 岩澤:演奏面でそこまでやってしまうと、モロにそこまで近づけたいわけでもないので、あえて黙っていたんです。
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—インプットの内容がだいぶ変わったことで、創作としてアウトプットする術がだいぶ変わったんじゃないのかな?とは思いましたが、そこはどうなんでしょう?
- 岩澤:音楽理論とかコードでいえば、メジャーセブンスやマイナーセブンス、ちょっと変わったコードを加えていくのは意識しましたね。これまではカポタストつけて分数コードを弾いていくのが主だったんですけど、それだと作れる音楽が限定されてしまうんですよね。
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—そこの変化は、岩澤くん個人の成長がBoyishに大きく影響していくという意味でかなり大きいと思えますが、面白がってドンドンやれたということなんでしょうか?
- 岩澤:うーん、確かにそうですね。
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—いまサラッと仰りましたが、方法論を一気に変えつつ、コード進行のクセみたいなものも気にしてやっていくのは、かなりドラスティックな変化にも思えます
- 岩澤:いや、そうでもないんですよ。ファーストの頃にも同じような形でやっていたりするので、方法論としては未知のものじゃないです、ただまぁかなりの曲をコピーして理解しようと努力はしましたね。おかげで「What’s going on」のベースは全部弾けますよ
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—今作のデモ音源をメンバーに投げた時の反応はどんな感じでしょう?
- 岩澤:「いやーだいぶ変わったねぇ-!」っていう感じでしたね
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—岩澤くんの作曲能力の進化だけじゃなく、「変わったよねー」と言いながらもこの変化についていって表現していく他のメンバー4人、音楽が変わるとベースとドラムは必然的に変わっていくもので、岩澤くんの大胆な変化に対応して表現していこうとするメンバー4人の凄さを感じます。
- 岩澤:ドラムの酒井とベースのMav.がいなかったら、今作は成立していないんですよね。ドラムにしても、「ソウル系のこういうドラムを叩きたい」というとすぐにレスポンスしてくれたりして、この2人の理解力の高さがなければうまくいかなかったです。だいぶ無茶振りだったなと思いますけど、だからこそ、めちゃくちゃ信頼できます。
これまでよりはっちゃけよう!外にでよう!というような意識はあったんですけど、実際歌詞を書いてみると・・・
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2016.5.25 12:00
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