【INTERVIEW】transpose1周年記念インタビュー k-over

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transpose—「所属にとらわれない自由な発想のポータルとして誕生した」集団である。
月に一度のペースでアーティストの楽曲と映像のコラボを発表していくというスタイルで活動を続け、Arisaka Tomoe(阿佐ヶ谷ロマンティクス)、canooooopy、Couple、soejima takuma、空也MC、菊地紗矢、行方不明 等々の印象的なアーティストのチョイスと相まって独特の存在感を放ち続けている。
そして彼らは7月に1周年を迎えると同時にScarab Sacre + k-overの『Out of focus』をリリース。
1周年の節目となる楽曲にふさわしい印象的な作品となっている。



そこで今回この楽曲の参加者であり、transposeの中心人物の一人であるk-overにインタビューを試みた。

「ようやく1年か、といった感じです」

k-over
はじめまして。簡単な自己紹介をお願いできますか。
k-over(以下k)k-over(ケーオーヴァー)と読み、歌と作曲をしています。ミックスやリミックスのお仕事、イベント「comogomo」のオーガナイズを時々やっています。15年前、バンドをやっていた時に“Fragment”と知り合い、以降『術ノ穴』のメンバーとして活動しています。
まずはtranspose1周年おめでとうございます。1周年を迎えてみての感想をお願いいたします。
k:ありがとうございます。ようやく1年か、といった感じです。僕らはレーベルではないですが、アーティストと連絡をやりとりしていたので、毎月リリースするレーベルのオーナー、イベントのオーガナイザーの大変さをほんの少しだけ感じることができました。いい経験が出来ています。
ありがとうございます。transposeを始めるきっかけはどのようなものでしたか?
k:僕の経験上、ミュージシャンって音楽は時間をかけて作るけど、ジャケットやフライヤーは割とさらっと作っているのが気になってまして。実際自分もこんな感じかな?とあまり考えずに作って、数日経って「失敗したな」という経験がありまして。もちろん中には全部できちゃう凄い人もいるし、味のある絵を描く人もいますけど。
僕は絵やマンガを観るのが好きですが、絵を描くのはひどく苦手で。“EMDEE1”は油絵も水彩もスプレー画もマンガもと色んなタッチの絵が描ける人だし、こういう人がもし自分の曲に絵を描いてくれたらどうなるんだろう?っていうのがきっかけです。
その時にすでに現在のような形で運営する事が決まっていましたか?
k:これを始める前、ライブハウスとクラブでイベントを二人で何度か打ちました。絵の展示とライブペイント、バンドマンによるDJ、バンド、ラップ、小さいフェスのようなものをやらせて頂きました。身近にいる“Fragment”が主催している《ササクレフェス》や、元“s-explode”の今井くんがフェスを打ってたことに触発されたということもあります。

実はその時、絵の見せ方について意見をもらって、イベント運営は一旦離れ一つずつでもいいから何か作品を出さないかという考えを話し合っていました。数ヶ月後、自分のソロ曲(「むやみやたら」)の配信がありまして、彼に曲をじっくり聴いてもらった上でデザインをしてもらいました。今はEMDEE1の絵がうちの色になっていますが、その時は他のデザイナーにもどこかのタイミングでコラボレーションしたいな、という考えもありましたね。
“bugfics”時代のMVを見ていると現在のtransposeのMVのセンスと通じると思うのですが、当時もk-overさんがMVの制作をしていたのですか?
k:本当ですか(笑)bugficsの「飲石」というMVは術ノ穴の“Shohei Fujita a.k.a Wyte Cymmba”が制作してくれました。
彼も何度もこの曲を聴いて、彼がたくさんアイデアを出してくれました。ソロ活動を始める前に作った“空也MC”の「独走」という曲のMVも彼が制作しています。そう考えると今と作り方は近いのかもしれません。

「凄く分かりにくいものが作りたかった」

次に新作の『Out of focus』について質問させてください。この作品では“Scarab Sacre”さんとの共作となっていますが、どのような手順で作品作りが進みましたか?
k:この質問に関してはScarab Sacreより回答してもらいます。

Scarab Sacre(以下s)Scarab Sacre(スカレベサクレ)です。k-overさんも僕も、お互いたくさん音を重ねて曲作りするスタンスだったので、シンプル路線で行きましょう!とスタートしました。歌詞をつけるかどうかは後々決めようということで。k-overさんから試しに送られてきた言語不明の引き語りが素敵だったため、方針が決まり、曲をかいていきました。次第に気持ちがエスカレートし、最終的にはシンプルでない曲が出来上がりました。映像については、ほとんど曲が出来上がった段階から作り始めました。
「言語を失くして字幕で表現をする」という手法をとられています。ソングライティングとしてはかなり先鋭的な手法だと思っていますが、この作品でこのような手法を取ろうと思ったのはいつ頃決められたのでしょうか。また、そのような手法を取ろうと思われた動機はどのようなものでしょうか。
k:この形を提示してくれたのはScarab Sacreでした。彼とtransposeのマインドが合致したこともあり、彼に委ね、思う存分試してもらったところが大部分で、いついつにこの形でやろう!と決め打ちして始めたのではなく、偶発的に導かれたところがありますね。

s:分かり易いものがどんどん表にでてくる時代において、まじまじと説明してるのにも関わらず、凄く分かりにくいものが作りたかった、というのが動機です。大体のミュージックビデオがよく考えたら全然よく分からないってものばかりだと思ってたんで、あえてそこを分かり易く視覚化させました。映像の内容に関してですが、曲名を日本語にすると「ボケ」です。言ってることもやってることもどこかピントがズレてて、なのに一生懸命前に進もうとする。
そして同時に拒絶ポーズ(首のスイング)をとる。
願望と拒絶、伝えたいのに伝えたくない、そんな気持ちの表れです。
前作である「鍵をかけて溺れよ」が非常にはっきりと歌詞を聞かせるようなスタイルだったことと対比していると思いましたがk-overさんの中でこの2作はそれぞれどのような立ち位置にいますか?
k:今だからお話すると実は「鍵をかけて溺れよ」より先に出した「ルーパー」という曲があるのですが、そちらの方が後に作った曲なんです。
「鍵をかけて溺れよ」は自分が今までバンドでやってきたこと、共作してきたことの総決算のような思いがありまして、自分の今出来る範囲で稚拙ではありますが映像、パラパラマンガ、全部やってみました。EMDEE1にもかなり無茶を言って歌詞の内容に合わせるように絵を描いてもらいました。そのため前後しての発表になりました。

「Out Of Focus」は10代〜20代前半に聴いていたピーターガブリエル在籍時のジェネシスや、Buffalo’66に出ていた頃のヴィンセントギャロが作り出すフロイドやイエスとは少し違う甘いプログレや、ジョンフルシアンテのソロを作っていくうちに意識して、それをScarab Sacreが汲んでくれたという感じです。
バンドを組んでそのあたりの音楽からしばらく離れていたのですが、今回ようやくといいますか、ルーツが少し出せたのかなと思っています。

僕は日本語でポップスを歌っているので僕の曲はどちらもJ-popだと思っています。
k-overさんにとって映像による表現と音楽による表現の関係性はどのようなものでしょうか。
k:音楽だけで聴く時代は終わった、という方がいます。それはギターミュージックは終わったという話に似ているように思います。少し話はそれてしまいますが、電車での移動、ランニング中は映像は見れません。ですが音楽は聴きますよね。回線が弱ければ、また格安SIMなら容量の都合上音だけ聴くということも多いにあります。transposeからは楽曲はYouTubeのみの配信としていますが、絵と映像、アーティストの情報やtransposeの他の楽曲も見て欲しい、聴いて欲しいということでこのスタイルをとっています。

僕らはレーベルではないので曲の所有権は当然作者にあります。楽曲がサンクラ、はたまた流通音源となったとしても何の報告も必要なければ金銭の授受も存在しませんので自由です。この企画がきっかけで僕らが好きで協力して頂いたアーティストたちに興味を持って頂ければ音楽への希望、少なくとも僕たちは得る事が出来ます。映像は一度みて記憶していることもありますので、読み終わった本を読み返す時のように見たい!と思った時に見て頂ければ、と思っています。

…映像に関しては僕はある程度切り分けて考えています。それは映像作家の方が曲を聴いてイメージを練って、信頼関係とコンタクトがしっかりとれていれば、あまりにも出来上がった作品がかけ離れているということにはならないと思っているからです。逆に音楽をやっている人間があまり口を出し過ぎてしまうと不自然なまま終わってしまう…そんなこともあるのではないでしょうか。僕たちも出来るだけコンタクトをとって、コンセプトの乖離がないように…と思っています。どんどん違うところは言って欲しい…!とは思っていますが、年齢にはなかなか逆らえません。年齢など関係なく、お互いの表現を話しやすい環境作りをしていく、というのが音楽シーンを支える一つだと思っています。謙虚に。大人は特に。謙虚に。

「非日常を日常に持ち込みたいです。」

映像作家として気になる方がいらっしゃれば挙げてください。また、ミュージシャンとして気になる方もお願いします。
k:会社になりますが、『EPOCH』。代表の石澤さんは術ノ穴とも親交がありますし、この会社が関わった作品は常にチェックさせて頂いてます。安室奈美恵さんの「Golden Touch」はこの何年かで一番楽しかったMVですね。会社のあり方としても凄いと思います。あとはお世話になった“大月壮”さん。テクノロジーとノスタルジーを併せ持った作品、“m7kenji”さんとのタッグは何度も楽しんでいます。

ミュージシャンは上げると大変長くなるのでとりあえず“Arca”。見た目も映像も人を寄せ付けないほど飛ばしてます。あそこまで行っている人がいるとワクワクしかしませんね。語弊があるかもしれませんが音楽不況とか割とどうでも良くなります。
2年目に突入しているtransposeですが、今後transposeでやってみたい事があればおきかせください。
k:非日常を日常に持ち込みたいです。
それが絵なのか音なのか映像なのか、それともまったく別の方法なのか。どの手法が最善か、というよりどれが楽しいか、というところかもしれません。具体的なものは実はひらめきに委ねている部分が多いです。曲のアイデアが一睡も出来ていない日やトイレの中やジョギング中に生まれるような…ただ1年間はこのやり方でやっていこうと決めていたので、2年目はちょっと変えていくと思います。
今後コラボレートしてみたい方はいますか?
k:個人ですと、3名。

まず“しずくだうみ”。自分が主宰しているイベントに出演してもらったことがきっかけなのですが、歌だけじゃなくて纏っている雰囲気がとてもいいです。実際にコラボをどうやって実現させたら良いのかまったく見えてこないのですが、それも楽しみたいところです。

コラボというのは恐れ多いですが、同郷でもある“サカナクション”の山口一郎さんとお話をしてみたいです。

あと“the telephones”の石毛輝くん。9年くらい前、一緒に何かできたら、という話をして頂いたのですが出来なかったのが心残りで。いつか何かやりたいと今でも思っています。

transposeとしてはあくまで僕個人の意見だとWEB制作会社、アプリ制作会社の人、イベンター、小説家、映画監督、舞台などに何かアクションを起こしたいと思っています。


k-over プロフィール:
http://transposejp.blogspot.jp/p/blog-page.html

transpose:
http://transposejp.blogspot.jp/

インタビュー/テキスト sabadragon(@sabadragon)

2015.8.29 12:14

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