【INTERVIEW】箕輪政博 interview
実は初めてイルボーンのライブ(2024年3/17 高円寺ShowBoatイルボーン再結成ライブ第2弾 ボーカル:中田潤、ドラムス:箕輪政博、ギター:川上啓之、ベース:山崎怠雅、ギター:ヴァイオラ伊藤)を見た。ドラミング、特にシンバルの鳴りが尋常じゃなく凄かった。1978年に中田潤との造反医学でバンド・デビュー、1982年それがイルボーンとなり、そのアルバム「死者」(1985年)をプロデュースした北村昌士とCanis Lupusを結成、町田町蔵(町田康)の人民オリンピックショウでも活躍した。その箕輪政博が約30年ぶりにシーンに復帰、造反医学とイルボーンのCD発売も重なり、そこで、ドラム・スタイルの進化に焦点を当てながら話を訊いた。(取材:金野篤)
軽音楽部でたまたまドラムがいないからという理由で
- 箕輪政博(以下、箕輪):仕事の関係で長らく音楽活動を完全に封印してきましたが、昨年12月にイルボーンに復帰し、NON BANDのノンさんとのバンド、Norminでライブをやったり、今年2月の山崎怠雅君とセッション・ライブを経て、3月にイルボーン復帰第2弾ライブがあって、現在進行形で復調しつつあります。5月2日には高円寺HIGHでCanis Lupusの復活ライブも控え、当時の箕輪攻機(造反医学~イルボーン期)や扇太郎(人民オリンピックショウ期)が目指していた細かいシンバルワークやスネアのルーディメンツが進化して、新たなドラム・スタイルが確立しつつあることを実感しています。
- ―:最初に手にした楽器がドラムだったんですか?
- 箕輪:60年代70年代の高度経済成長期の一般的な家庭に育ち、ビートルズ全盛期ですね、テレビではGS。住んでいた団地の友人で、ジミヘン好きでエレクトーンをこなす変わり者で若きヒッピーの殿岡滋朗君(後にフリージャズ系ギタリストとして知られる)と2人でギターをかき鳴らしました。さらに同じ団地のドラムを持っていたお兄さんに誘われ、クリームの「ホワイト・ルーム」を叩いて快感だったのがドラム初めです。
- ―:そして本格的にドラムを始めたんですか?
- 箕輪:通っていた高校では、進んだ同級生が多く、プログレや当時のクロスオーバーに親しむ中、今でも続いている中野フラワーレコードを後に経営する峰岸昭彦君とよくレコードを聴き音楽談義に花を咲かせ、私の好きな頭脳警察のコピーにも付き合ってくれました。そのころジャズのレコードを漁るようになるんです。ドラムを始めたのは、武蔵境の日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)に進学してから。軽音楽部でたまたまドラムがいないからという理由で。そのサークルの軽さに嫌気がさし硬派なジャズ研に鞍替えしました。立教大に進んだ峰岸君が「大学にすごいやつがいるんだよ」と中田潤君を紹介され、造反医学の一員となったのがドラマーとしてのスタートですね。時はパンク、ニューウェーブ全盛そしてレゲエ。パンクの8ビートには一切興味がなく、スティーブ・リリーホワイトがプロデュースしたXTCのドラム・サウンドには魅力を感じていました。レゲエも好きでジャマイカからUKレゲエまでレコードを聴き漁ってました。造反医学から現在に至る私のドラミングの特徴であるリムショットはここが源流だと思います。ジャズが好きなんですが、オーソドックスな4ビートにはあまり興味もないし出来ないんですね。フュージョンの16ビート裏打ちビシビシというスタイルも色気がないので好きではないです。元々プログレが好きなので、スタイルの根本なのはロバート・ワイアット、マイケル・ジャイルズ、ビル・ブラッフォードなどで、イルボーン創成期にCANに出会い、ヤキ・リーベツァイトのドラムが決定的でしたね。
売れようが売れまいがイルボーンのアルバムをリリースするためにトランス・レコードを作ったとのことでした
- ―:カセットテープで自主発売した造反医学の「青空」(1982年)、一発録音と思いますが、それが信じられないくらい音がいいです。
造反医学
- 箕輪:録音はセッションの真似事をしていた日獣大ジャズ研の六畳ほどの木造の部室ですよ。70年代半ばの生録ブームで買った私の宝物、ソニーのカセットデンスケでね、一発録音のはず。中田君がベースを弾きながら歌ってましたから、ボーカルがクリアすぎて謎なんです。オーバーダビングしたのかな。ドラムのディレイはバンド・マネージャー河内聡雄君が適宜オンオフしたと思います。
- ―:イルボーンがトランス・レコードから出たのは?
- 箕輪:北村昌士さんが造反医学をどこかで知りコンタクトしてきたのが始まり。フールズメイトの編集長でいわば有名人、片や大学生の生意気なバンドマン、マネージメントされるという関係でした。後に知ったんですが、売れようが売れまいがイルボーンのアルバムをリリースするためにトランス・レコードを作ったとのことでした。
イルボーン
- ―:中田潤さんによれば、北村さんはティアーズ・フォー・ティアーズのような売れ線をイルボーンに求めていたフシもあります(FJSP245「イル・ボーン/死者+」2015年CDライナー参照)。「死者」のエンジニア、藤井暁さんはどうでしたか?4月に発売となった「日本」の1985年の新宿ロフトの録音は素晴らしいです。
- 箕輪:そう、「死者」のレコーディングが初めてです。小柄で長髪、ベルボトムのショルダーバッグというルックスは忘れません。話せば物腰の柔らかい京都弁、しかし反体制で仕事に厳しかった。この乖離も好きでした。中田君がいうように5人目のイルボーンとして、ライブではいつも卓を……、ボランティアだったと思います。その後の人民オリンピックショウもずっと一緒でした。藤井さんは私を買ってくれて、いろいろバンド紹介してくれたり、オーディション的なセッションまで、対外試合が苦手な自分を積極的に引き出してくれました。その延長が近藤達郎さんやPhewとの出会いだったと思います。パール楽器のドラム・モニターも彼の紹介で特注のベードラやタムタムを使っていました。
イルボーン
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Canis Lupu “Vlk je stále naživu TOUR”
2024年5/02(火)高円寺HIGH
2024年5/17(金)難波BEARS
2024年5/19(日)京都UrBANGUILD
詳細情報
Dr.箕輪政博
Ba./Vo.森川誠一郎
Gr.マジカズヒデ
※マスクの着用は個人の判断となります。
『青空』/ 造反医学
2024年3/20リリース
フォーマット:CD
レーベル:SUPER FUJI DISCS
カタログNo.:FJSP495
【Track List】
01. 青空
02. カバラ
03. おやすみ
04. 黄土
05. 天皇
06. 60’s poison
07. 平和
(以上カセットアルバム「青空」より M1-4 スタジオ録音 M5-7 ライブ)
08. 光州
09. ベイルート
10. おやすみ
(M8-10 1982年10月ライブ)
ディスクユニオン
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【クレジット】
Vocal, Bass:中田JUN(中田潤)
Guitar:Lym(石黒浩孝)
Drums:箕輪攻機(箕輪政博)
Sax:TSURU(M1, 2, 4, 7)
編集・マスタリング:George Mori デザイン:ダダオ
解説:中田潤、箕輪政博
『日本』/ ILL BONE
2024年4/10リリース
フォーマット:CD
レーベル:SUPER FUJI DISCS
カタログNo.:FJSP49
【Track List】
01. Jinta
02. 死者
03. アメリカ
04. Christine
05. 住所
06. ネイション・ブルース
07. 霧
08. ベイルート
09. 我等の二月
10. 日本晴れ
11. ひとりの男が殺された
ディスクユニオン
Amazon
【クレジット】
中田潤:ボーカル、ギター、ベース
石黒浩孝:ギター
石川佳世子:ベース
箕輪扇太郎:ドラムス, タブラ
弓削聰:ギター
大熊ワタル:キーボード1. Jinta
M1, 11:1984年12月30日 渋谷ラママ
M2-7:1985年10月27日 新宿ロフト
M8:1983年11月12日 横浜市立大学野外
M9, 10:1983年4月29日 京都大学西部講堂
編集・マスタリング:George Mori デザイン:ダダオ 解説:中田潤、箕輪政博
2024.4.21 12:00
カテゴリ:INTERVIEW, PU3_ タグ:canis lupus, JAPAN, Phew, イルボーン, 人民オリンピックショウ, 箕輪政博