【REVIEW】There is always light behind the clouds. / Sij Med
http://mayoware.seesaa.net/article/409445333.html
フィジカルのリリースもはさみつつ、mayoware record 173回目のリリースは、前作(The air is a medium for sound)で丁寧な音色と配置が印象的な美しい電子音楽を聴かせてくれたSij Medの新作。優しげな電子音はそのままに、5弦ベースを操る彼の本領とも言える弦楽器も活躍する上品でカラフルな作品だ。
1.Good mornig Captain.
冒頭のブラジリアンテイストも感じさせるアコースティックギターのリズミカルなアルペジオはとても印象的だ。ピアノはいつも通りシンプルで美しいフレーズを刻み、出過ぎないリズムトラックと柔らかな電子音が軽快にトラックを進めていく。音を重ねていく事で盛り上がりを作っていく手法ながら音は重なり過ぎる事なく、時折あらわれるストリングスを含めてとてもバランスよく配置されている。オープニングにふさわしい朗らかな楽想のトラック。
2.new day.
続くトラックは、ノイズをうまく重ねたリズムトラックにエレピのメロウなコード進行と電子音の粒子がとてもピュアな世界を展開するストイックな世界観の楽曲。短いフレーズや音符の一つ一つがリズムやメロディーを相互に担っている。どのパーツもリズムを刻み、メロディーを刻む。後半、短いタッチのメロディーのブレイクをはさんでベースラインとリズムが登場した所でそれぞれの役割が次第に明らかになっていく。とても実験的なアプローチを美しくまとめあげている。
3.Kitsuneno Yomeiri
和風音階のピアノアルペジオに、ゆったりしたドラムトラック。雅楽を思わせるパッド系の音色と能のサンプリング、曲のタイトルを含めて明確に映像がイメージされる作りながら、やはり強く全面に出過ぎないオーガニックなスタイルがとても上品だ。遊び心あふれる余裕さえ感じさせるトラックだ。
4.!!!
冒頭のトラックに続いて、再びアコースティックギターが印象的なトラック。今度はカッティングを通じてやはりブラジリアンテイストを漂わせつつ、ヴォイスサンプリングとリズムトラックはファンクも連想させるクロスオーバーなアプローチ。チョッパーが力強いベースラインも登場して純粋にインストゥルメンタルトラックとして楽しめる作品だ。中間部でリズムトラックが抜けてギターのアルペジオとピアノが重なり合うブレイクから一気にエンディングになだれ込む。
5.Shanti
最後の楽曲は、エレピの淡いフレーズとパッドのアンビエント風アプローチ、メロウなブレイクビーツに時折はさみこまれるディレイ、電子音で構成されたトラック。折り重なるコード、浮遊感あふれる音響処理、逆回転、ダブ、リバーヴ、電子音楽の伝統的なアプローチを織り込みつつ、エレピを軸にミニマルに展開していく眩いトラックでこのEPは終わる。
電子音楽の枠を超えて、インストゥルメンタルを楽しめる楽曲構成を支える、例えばブラジリアンテイストや和テイスト、ダブなど、伝統的なアプローチも随所に埋め込まれた音色と旋律。とても幅白く音楽を網羅しつつも上品で出過ぎない世界観にしっかりとおさめていく作風は前作までの枠組みを活かして、楽器の音色や旋律に少しばかりの色を添えた意欲的な作品に仕上がった。
テキスト:30smallflowers(@30smallflowers)
2014.11.24 22:28
カテゴリ:REVIEW タグ:electronica, folktronica, sij med, 迷われレコード