【REVIEW】seaside / yoshinao miyamoto (Ano(t)raks)

seaside



シティポップに寄り添う作品が増えてきたAno(t)raksから、タヒチ80、ベン・ワット、AORというキーワードを携えてリリースされたのが、このEPだ。sugarpotやTHE DIVERSで活動してきたyoshinao miyamotoのソロ作だが、ささやかに美しく、何度も繰り返し聴きたくなるような作品を届けてくれた。

1.seaside
さりげなく上品なドラミングに細やかなカッティングとダウンストロークのギター。繊細な歌声。メジャー7thを美しく響かせ、透明感あふれるままに駆け抜けるトラック。サビは颯爽と登場するディミニッシュと言葉をのせたブレイクが印象的。強い日差しが作る濃い影を見ているようなリラックスしたアップテンポな作品。

2.nightwalker
続いて、物憂げなコードを奏でるギターとオルガン、その合間からこぼれるヴォーカル。やはり陰影の作り方がとても気持ちいい。シーンの切り替えに合わせたキックの切り込み、ファルセットのコーラス、エンディングに登場するエレピの出過ぎないフレーズは、饒舌ではないが多くを語る大事な役割を担っている。

3.morning call
再びメジャー7thが誘う明るく輝く景色。目が覚めて、、と始まる歌詞に前の曲からの時間の流れを感じる。ストリングスが慎重な旋律を奏で、リズムに合わせた歌詞がサビを軽やかに駆け抜ける。軽快なリズムとともに疾走する眩い世界が美しい。

4.なんていそがしい
アンニュイな、あるいはサウダージ感を湛えたギターに導かれてはじまるこの曲は、サビを聴く事で全貌が見えてくる。ささやかなメロディーを支える8ビートのドラム、鍵盤楽器がギターのカッティングを飾り立てる美しいコード。すべてが折り重なって世界を組み立てている。


どの曲も多くの余韻を残して楽曲を終える。曲間に微熱を残したまま次の曲がはじまる。時間の経過をゆっくりと刻む陰影のようなコンセプトEPともとれるし、あるいはとてもリラックスした心象風景をばらばらに刻んだ曲集ともとれる。いずれにしても今のAno(t)raksらしさを軽快にさりげなく、ささやかに示している。

テキスト:30smallflowers(@30smallflowers

2014.11.7 1:38

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