【REVIEW】吉田ヨウヘイgroup『ar』
吉田ヨウヘイgroupは前作『Paradise lost, it again』を2015年に発売したのち、2016年2月に活動休止した。最大6人まで増えたメンバーは、現在では4人で活動している。
中心人物の吉田ヨウヘイ、片腕的存在のギタリスト西田修大、2014年から加入したコーラス/キーボードのreddam(活動休止したOK?NO!!ボーカル)、2015年からサポートメンバーとして加入していたコーラス/トランペット/シンセサイザーを担当するクロ(TAMTAMにてボーカルとして活躍中)での活動をしている。
2本のギターとコーラスワークが絡み合う「piece 1」で優しく幕を上げる吉田ヨウヘイgroupの『ar』。ピアノによる不穏なハーモニーが楽曲全体を彩る2曲目「トーラス」(意味は円環面のこと、ドーナツの形を差す)、管楽器とバンドサウンドが有機的に絡み合う3曲目「メビウス」(意味としては帯を半回転ねじって輪にした形)を経て、アルペジオのギターフレーズとカットアップされたボーカルがリズムよく散りばめられた「piece 2」。
この序盤の4曲の流れだけでも、すでにひとつのEPとして発表できそうなほどの完成度が在るわけだが、これまでの彼らからいくつかの変化を感じ取れるはずだ。
この4曲がもたらしているのは、ある種のわかりやすさだ。これまでの吉田ヨウヘイgroupの楽曲では、毛色の違ったものが同居した楽曲が数多く披露されてきた、ハーモニーに次ぐハーモニー、グルーヴに次ぐグルーヴ、それらが不思議なバランスで象られていたのが特徴であった。
しかしながら、今作ではその混沌も薄らぎ、よりシンプルに響いているように思える。代わりに耳にするのは、吉田、西田、reddam、クロ、彼ら4人が自身のできうることを適材適所かつ最大限に発揮しようとしている姿だ。
それは「トーラス」ではやくもきけることができる。不穏にハーモナイズされたピアノと並走していく女性コーラスの姿もそうだが、途中2分30秒を超えた時に、それまでの不穏なハーモナイズとバンドの質感から、キーボードによる音色とゆらぎが30秒ほどはさまれ、3分近くなったとき再びバンドサウンドへと変わり、女性コーラスが少しづつ参加していく。
この曲展開は、まさに男性陣2人と女性陣2人の役割を、50:50にキッチリとこなすことで構成されている。同様に、コーラスワークが耳をつよく引く「piece 1」「piece 2」での女性陣2人の活躍もそうだ。
これらは最たる例だろうが、彼女ら女性二人によるアイディアや曲への参加が、目に見えて今作では分かる、これまでの作品よりも風通し良く響くのは、それが理由のように思えるのだ。
この4曲以降、クロによるボーカルとR&B的なグルーヴが特徴の「フォーチュン」、アコースティックギターとreddamの歌声がフォークソング「シアン」などの女性2人が活躍する2曲は、彼らの中でも初めての女性ボーカル曲として収録されている。彼女らの活躍により、これまでの作品よりも彩り深い1枚となっているのは明らかだ。
西田による高いプレイアビリティを活かした「Do you know what I mean?」「1DK」「chance」、吉田ヨウヘイによる現代社会への憂いが詰め込まれた「分からなくなる前に」「拡がった現実」、男性2人が主導するこれら楽曲も輝く。彼ら2人がこのバンドの核であることは、忘れてはいけないだろう。
吉田ヨウヘイgroupの実質的なところを考えると、ロックバンドというより、音楽ユニットであり、その名の通りに「音楽グループ」といったほうが正確に実態をあらわさせると思えるのだが、女性陣によるこういった印象的な活躍があると、不思議と彼らが「バンド」だと幻視してしまいそうになる。今作を聞く限り、まったく吉田ヨウヘイ「グループ」とは思えないのだ。
今作では4人それぞれが強い個性を持っていることを自覚し、どの楽曲でだれを中心に置くか、そのディレクション/コミュニケーションを綿密にできているのがとても良く分かる。それが、今作の風通しの良さにつながっているように思え、グループ(≒集団)としてではなくバンド(≒絆)として彼ら彼女ら4人の強さを感じさせてくれるのだ。
しかしながら、『ar』とはいったい何を意味しているのであろう。
もしも機会があれば、しっかりと話しを聞いてみたいものだ。
『ar』/ 吉田ヨウヘイgroup
2017年11/15リリース
フォーマット:CD
レーベル:P-VINE
カタログNo.:PCD-18826
価格:¥2,650(税抜)
【Track List】
01. piece 1
02. トーラス
03. メビウス
04. piece 2
05. フォーチュン
06. Do you know what I mean?
07. 分からなくなる前に
08. 1DK
09. chance
10. サースティ
11. シアン
12. 拡がった現実
吉田ヨウヘイgroup
4thアルバム『ar』発売記念
インストアライブ
2017年12/2(土)HMV Record shop 渋谷
内容:ミニライブ&サイン会
Start 18:00
『新木場サンセット2017』
2017年12/13(水)新木場STUDIO COAST
ACT:スピッツ / 吉田ヨウヘイgroup / KEYTALK / 空気公団 / GLIM SPANKY
Open 17:15 / Start 18:00
SOLD OUT!!
『ギリシャより愛を込めて』
2017年12/16(土)京都 西院ネガポジ
ACT:吉田ヨウヘイgroup / ギリシャラブ
Open 18:00 / Start 19:00
Adv ¥2,400 / Door ¥2,900
バンドHPで、チケット取置受付中
吉田ヨウヘイgroup 4th Album 「ar」 Release Event
2017年12/20(水)
渋谷 WWW X
ゲスト: People In The Box / CRCK/LCKS
Open 18:00 / Start 19:00
Adv ¥3,300 /Door ¥ 3,800
各プレイガイドで好評発売中!
2017.11.17 22:07
カテゴリ:REVIEW タグ:JAPAN, 吉田ヨウヘイgroup