【LIVE REPORTS】『ジャパン死神サミット2023』

2023年10/8(日)、死神紫郎×池袋手刀企画『ジャパン死神サミット2023』が開催された。

池袋駅西口(北)を出て、肌寒い空気の中、飲み屋や風俗店が軒を連ねる歓楽街を通り抜ける。ラブホテルが立ち並ぶ脇道に、ネオ東京池袋手刀ドームは今日もひっそりと看板を出していた。地下へ続く階段を降り、赤黒白の市松模様で彩られたフロアへ入ると、BGMとして死神紫郎の不気味な歌声が延々と流れ続けている。ステージを覆い隠すロールスクリーンに映し出されるのは、不穏な映像と「地獄」の文字。そう、この日観客を待っていたのは、3つの地獄だった。

ACM:::

最初に登場したのは、“コラージュによる精神的縫合と再生”をテーマに始動した総合制作集団 ACM:::(エーシーエム)。暗闇の中、まるでホラー映画の始まりのような不穏な音がいくつも重なっていき、空気は一気に重たくなる。そこへ、凛とした美しい歌声が響きわたる。まるで舞台を観ているかのような感覚でぼんやりと照らされたステージを眺めていると、突如ドラムとギターのすさまじい轟音と共に眩い閃光が走り、暴力的なまでの刺激に襲われる。観客は、その迫力に圧倒されながらも、ダークな世界の中で繰り広げられる狂乱の宴に身を委ねた。

西邑卓哲(FOXPILL CULT)の感情を揺さぶるボーカルと激しく歪んだギター、十三月紅夜(ATELIER十三月、虚飾集団廻天百眼)による迫力満点の照明演出と威風堂々としたボーカル、こもだまり(昭和精吾事務所)の美しくも畏怖の念を抱かせるような神聖な歌声と語り、そしてこの日のサポートメンバーであるShintaro(MUNIMUNI)の熱いドラム。ステージへ一列に並んだACM:::が生み出す劇的でカオスな表現に触発され、フロアでは観客が腕を振り上げ踊り出す。

本公演は配信も行われていたが、ライブ中盤で披露された新曲「奇妙な聴衆」では1曲丸々暗闇の中で演奏するという尖った演出も。ACM:::がどんな表情を浮かべているのか。次はどんな音や言葉が飛んでくるのか。どんな激情が突きつけられるのか。一切予想不可能なライブは、まるで暗黒のミステリーツアーに参加しているような緊張と高揚を感じた。

悪夢のような物語を抒情的に語る「詩人になる夢」から、FOXPILL CULTの「DEATH DISCO」「ファウストと異邦人」へなだれ込み、「Starvation Poetry2(Insane in the Train)」で再び轟音と狂気を生み出し、鮮烈な印象を残したままACM:::のステージは幕を下ろした。

カラビンカ

続いて登場したのは、3人組バンド カラビンカ。スクリーンを下ろしたまま、覗きをしながら自慰行為に明け暮れる男の物語「天井裏発電機」をねっとりと歌い上げるという衝撃的な幕開けに、会場はシンと静まり返る。曲のクライマックスでスクリーンが上がり、ようやく姿を現したカラビンカは、白塗りに学生服という出で立ち。中でも、学生帽に和装を合わせ、首に太いロープを括り付けたギター&ボーカルの工藤鬼六は、この世を彷徨う亡霊のようだ。

続く「鉄風雷火」では、狂暴なロックサウンドに合わせて観客が激しいヘッドバンギングをはじめる。中には、セーラー服を着て長い髪を振り乱すファンの姿も。さらに「与太郎哀歌」では自暴自棄に負の感情をぶちまけるような迫力のあるステージを見せた。「東京都豊島区池袋乙女ロードから来ました、カラビンカです」という挨拶から始まったMCでは、工藤が東北弁で危険なワードを連発。絶妙な空気の中、再び演奏へ。

真っ赤なライトに照らされながら、不気味で陰鬱なサウンドと共に始まったのは「クチナシの花」。<産婦人科待合室で>から始まる少女の物語は、思わず耳を塞ぎたくなるほど惨たらしくて絶望的なのに、観客の視線はステージに釘付けになったまま動かない。続く「不浄」では、鬱屈とした精神を和テイストの旋律にのせ叫ぶ。松島ティルは淡々とした表情で不気味にベースを奏で、悠介は高ぶる感情をそのままドラムに叩きつけるようにプレイした。

「ずっと昔ね、本当に好きだった人の歌です。あの人は春に逝ったんです」。そんな言葉から始まった「春を逝く人」は、これまでのドロドロとした世界観とは一線を画す、どこか温かみを感じる美しい楽曲。疾走感のあるストレートなギターサウンドが心地よく響き渡り、フロアは一転してエモーショナルな空気感に包まれた。

そう思ったのも束の間。最後に披露した「思春期」で、観客は容赦なく再び地獄の底へと突き落とされたのだ。工藤が語りと叫びを交えながら表現する、性と暴力への欲望を爆発させた鬼畜の物語はどこまでも残酷で、歌詞が進むにつれて、その先はもう聞きたくないと本能が拒絶を始める。最悪の結末を観客が知った時、おもむろにスクリーンが下り、強烈な後味の悪さを残したままライブは終了。フロアの照明がついたときの心底安堵したような空気感は一生忘れられないだろう。

死神紫郎バンド

最後に登場したのは、主催である死神紫郎バンド。普段はフォーク歌手/ラッパーとしてソロで活動する死神紫郎が、この日はベーシストに六(大島朋恵:りくろあれ)、ドラマーに英太郎を迎え、1年ぶりのバンド編成でステージに挑む。「どうも皆さんこんばんは、死神紫郎バンドでございます。どうぞよろしくお願いします」と演説のように丁寧な挨拶から始まったのは、MC死神紫郎として初めてリリースしたラップソング「執念のラップもういっちょ」。エレキギターを掻き抱くように構え、華麗なソロを披露した後は、まるで読経するかのような独特の節回しで尖った言葉を嵌めていく。ピンと張り詰めたような緊張感がフロアに充満する。<不気味でも気になる個性になるから もういっちょ>というキラーフレーズにはバンドメンバーのコーラスも加わり、さらに迫力を増している。憂いと情熱を湛えた死神紫郎の瞳は鋭く光り、観客の心を射抜いた。

MCパートでは、『ジャパン死神サミット』が今年で8回目となること、ACM:::やカラビンカとの関わりなどを丁寧に説明した後、「今日はタフ&ハードな人たちに囲まれているので、ここから先、タフ&ハードな曲をやっていきたい」と意気込む。そして始まったのは、「共喰いの未明」だった。静かな狂気を孕んだ歌詞を、哀愁漂う旋律にのせて届ける。死神紫郎の楽曲は独特の間合いが特徴だ。観客は、彼が自在にコントロールする静寂に引き付けられ、緊張感や殺気を味わってきた。その間合いはバンド編成のステージでも決して鈍ることなく、メンバーと死神紫郎が以心伝心しているかのように見事な静と動を作り上げていた。

タイトルコールで歓声がわいた「牛は屠殺を免れない」では、六と英太郎の作るダンサブルなリズムにのり、フロアは揺れ動く。続く「独白」は、死神紫郎が「この曲で日本のミュージックシーンをひっくり返す」と堂々と宣言した新曲。繊細でエモーショナルなピアノのトラックのせ、“弱いままの君でいい?”、“弱いままでもしぶとく太く”と、自身の生きざまを叩きつける。その魂の叫びに、観客たちは一心に耳を傾けた。



バンドの演奏が際立つロックソング「アンドロイド」で再び会場を盛り上げた後は、「生きるかな死」で本編ラストを飾る。演奏が始まると陰鬱な旋律と悲痛な歌詞によって、観客は壮大な悲しみの渦に飲み込まれ、絶望へと突き落とされた。

やまないアンコールに応えて再び登場した死神紫郎バンドは、最後に「逃げろ!」を届ける。ギターを弾きながら、ひらひらと泳ぐように動き回る死神紫郎。彼にとってステージは、魚にとっての水中のように、最も生きやすい場所なのかもしれない。

大歓声と共にライブは終演を迎えた。階段を上り、外の世界へ出る。大きな負のエネルギーを受け止めたことにより、心身共に心地よい疲れを感じていた。翌朝、社会生活を営む中で、この夜がふと恋しくなって気づいた。あの地獄の中でしか見えない光、あの地獄の中でしか救われない感情が確かにあったのだと。

テキスト:南明歩
写真:荒川れいこ[zoisite]



「ジャパン死神サミット2023」
2023年10/8(日)池袋 手刀
ACT:ACM::: / カラビンカ / 死神紫郎バンド(Gt./Vo.死神紫郎/Ba.六/Dr.英太郎)
Open 17:31 / Start 18:00
Adv. ¥3,800 / Door ¥4,400(+1d)
配信 ¥2,800


【セットリスト】
・ACM:::
Invisible Hands(Ergosphere ver)
Hostile Architecture
Needle Buds
D
Control
奇妙な聴衆
詩人になる夢
DEATH DISCO
ファウストと異邦人
Starvation Poetry2(Insane in the Train)

・カラビンカ
天井裏発電機
鉄風雷火
与太郎哀歌
クチナシの花
不浄
春を逝く人
思春期

・死神紫郎バンド
執念のラップもういっちょ
共食いの未明
牛は屠殺を免れない
独白
アンドロイド
生きるかな死
En.逃げろ!

2023.12.13 18:00

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