【INTERVIEW】もりばやしみほが語る、ハイポジ今昔物語


「天下のハイポジ」というキャッチコピーがバカ殿っぽくてピンときてつけました

–:ハイポジはデモ・テープ「天下のハイポジ」を1989年に発表し、1991年には東芝EMIからメジャー・デビューを果たすという、順調なペースで活動をしていきます。メジャー・レコード会社と意見が衝突したりするようなことはありましたか?
M:なんだかラッキーなことに、わたしは、あんまりレコード会社からどうこう言われた記憶がなくて(*^_^*)、もしかして言われてたのかもしれないけど。どのみちアレンジにも作詞作曲にも自分が作ったものは一音たりとも変えれない!というスタンスだったので、衝突はなかったと思います(笑)



–:活動を続けていくうちに、音や方向性が変化していったという自覚はありますか?
M:あまり自覚がなかった。「身体と歌だけの関係」でウィスパー・スタイルに落ち着くまでは、とにかく仮歌感覚がぬけなくて。それでもベストを尽くそうとがんばって、あーでもない、こうでもない、とボーカル・スタイルを模索していました。
アレンジに関しては、その時代時代で、狂ったようにハマる傾向がありました。例えば「天下のハイポジ」時代は、ヘタウマのブラス・バンド、「バカザル」時代はチンドン楽隊行進ブームで、「身体と歌だけの関係」~「HOUSE」までは重低音トランス系、「4n5」~「性善説」がテクノ・ポップなど、です。
–:重低音トランス系、テクノ・ポップにハマったのは何がきっかけですか?
M:重低音トランス系は、23歳位から修験道の修行にはまって、日がな一日マントラ三昧だったので、それに一番しっくりくる音が、大音響の重低音トランス系だったからかなぁ? テクノポップは、これは中学生の頃、まさに王道YMOからです。
–:CDのブックレットに掲載されたインタビューでは、「天下のハイポジ」におけるワールドミュージック的路線を、ヨーロッパのポスト・パンクのバンド(リップ・リグ&パニックやアクサク・マブールなど)からの影響を指摘されていますが、それらのバンドのどういうところに魅力を感じていたのでしょうか? 無国籍なところですか?
M:カオス、実験的、パンク魂、無国籍も! 移民の人が多いバンドが好きだったかも…。
–:ハイポジというバンド名は、マクセルのハイポジション・カセットテープの広告を見て直感的に決めたそうですね。かつてカセットテープには「ノーマルポジション」「ハイポジション」「メタルポジション」の3タイプがあり、一般的によく使われていたのがノーマルポジションのテープでした。深読みするなら、ハイポジというネーミングには、自分たちの音は「ノーマルではない音だ」という意味が込められているようにも感じられるのですが。
M:わわー!そんなことは意識してなかったけど、結果ノーマルではなかったので、おもしろいですねー。「天下のハイポジ」というキャッチコピーがバカ殿っぽくてピンときてつけました。
–:ハイポジがメジャーデビューした1991年、世間ではハウスやテクノなどのクラブ・ミュージックや渋谷系などの新たな音楽の動きが盛んでした。そうした音楽についてはどう思っていましたか?
M:ほとんど知りませんでした。当時のアイドルはじゃがたらで、わたしはほぼ修験道の修行にハマっていた頃で、末はチンドン屋さんかなぁと本気で考えていた日々でした。



当時は8chのオープンリールで録音していて、エディットが余りできなくて、ほとんど一発録りに近いかたちでした

–:もりばやしさんは伝説のショップ、CSV渋谷でアルバイトをしていたそうですが、どのような業務をされていたのでしょうか?
M:1階のチケットぴあの受付。レジ締めが大変でしたー(笑)
–:CSV渋谷の2階の楽器売り場やスタジオには京浜兄弟社の面々が関わっていましたが、京浜兄弟社との交流はそこから始まったのでしょうか?
M:森林倶楽部の頃にライブハウスでエキスポの2人に出会い、そこから京浜との合流がはじまり、CSVを紹介してもらいました。
–:「ハイポジ・カセット~ hi-posi early days 1988-1993」のこういうところを楽しんでほしい、みたいなものがありましたら、教えてください。
M:当時は8chのオープンリールで録音していて、エディットが余りできなくて、ほとんど一発録りに近いかたちでした。なので、それぞれのミュージシャンの荒削りの凄さがいっぱい詰まっています。例えば、けんちゃんの変幻自在な弦楽器(ギター、バンジョー、ウクレレ)プレイ。あらきん(あらきなおみ)のグルーヴィーなベース。菊地成孔さんの嘶くサックス。松前(公高)君と山口(優)君のMC-500による革命的なヘタウマな打ち込みトラックとか聴きどころはたくさんあると思います。それと、「バカザル」の方は、栗原正己さん、川口義之さん、関島岳郎さん、それから駒沢裕城さん、横銭ユージさんも!みなさん参加してくれて、これがきっかけで栗コーダー・カルテットが始まったわけですが、その以前のレアな演奏も楽しめます!
–:ハイポジは、もりばやしさんのソロ・ユニットとなっていますが、もりばやしさんは今後どのようなことを計画されていますか?
M:すべての壁を溶かす音楽をテーマに、教会や聖地での演奏をやっていますが、今後は更に深めていけたらと思っています。

(聞き手、まとめ:小暮秀夫)




『ハイポジ・カセット~hi-posi early days 1988-1993~』
/ hi-posi
2020年8/19リリース
フォーマット:CD
レーベル:SUPER FUJI DISCS
カタログNo.:FJSP399
価格:¥2,500(税抜)
【Track List】
01.さかさまの世界地図
02.君の成分表示
03.デンワ DE デート
04.セミ・ヌード
05.エヴァ エヴァ ペー
06.じのじの
07.すてきな GOGO
08.あべこべカタコンブ
09.POOL’S PARADISE
10.だんご虫の歌
11.だんご虫の歌 カラオケ決定版!
12.隠しトラック
13.僕でありたい
14.体重分の愛
15.いいわけ
16.Moon River
17.All You Need Is Circle
18.悲しいことなんかじゃない
*1-12:天下のハイポジ(1989)
*13-18:バカザルテープ(1993)
ディスクユニオン
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【ハイポジ】
もりばやしみほ:vocal, keyboard, percussion, chorus
近藤研二:guitar, banjo, ukulele, chorus

・1-12 Members
松前公高:MC500
菊地成孔:tenor sax, baritone sax
西岡弘之:trumpet
増井朗人:trombone
荒木尚美:bass
池松由美子:chorus
佐藤園美:chorus
渡辺等:contrabass
夏秋冬春:drums
神戸誠:chorus
石井ミンコ:chorus
山口優:MC500
engineer:山口優
Sep.-Dec.,1988

・13-18 Members
栗原正己:bass. recorder. keyboard, programming
横銭ユージ:drums.
ピノ晃:accordion, keyboard, percussion, chorus
川口義之:sax. recorder. percussion, chorus
関島岳郎:trombone, recorder.
駒沢裕城:pedal steel guitar
engineer:坂井利徳、栗原正己(M18)
Autumn, 1993

words:もりばやしみほ
music:もりばやしみほ、Henry Mancini(M16)
arrangement:もりばやしみほ(M1-12)、ハイポジ & Members(M13-17)、栗原正己(M18)
produce:ハイポジ


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2020.10.20 12:00

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