【INTERVIEW】『VANILLA.6』/ ook-boy

大阪のVANILLA.6が3月にリリースしたセルフタイトルの1stアルバム『VANILLA.6』。
SoundCloudに「90’s Milan」を公開してから約5年目かつ、2019年に大きく体制を変更してから制作されたこのアルバムは、これまでのVANILLA.6の集大成にして数多くのリスナーから過去最高の音源であると指摘されている。
苦難の2019年を乗り越えての大きなチャレンジである今作についてバンドの中心人物ook-boyにインタビューを申し込んだ。

今は5人編成でステージを演れてますし、最高にいい状態です

–:2018年の3月以来のインタビューとなりますが、その間VANILLA.6、色々ありましたね。
ook-boy:ほんと、いろいろありました。前回は、初の流通EPですげえキラキラした気持ちでインタビューを受けたのを覚えています(笑)。この2年の間にバンド自体もバンドを取り巻く環境も俺自身の思考や環境も大きく変わりましたね。良くも悪くもほんと変わっちゃった。
–:現在はどのような編成になってるんでしたっけ?
ook-boy:以前から正規メンバーは4人だったんですけど、2018年の暮れに前キーボードメンバーが抜けて、一時メンバーが3人になって。それからしばらくなんとか続けてはいたんだけど、その頃俺が精神的に参ってて到底未来のことに目を向けられるような状態じゃなかった。ひとまず俺たちの今のステージパフォーマンス上5人がベストなので昨年の年明けごろからキーボードメンバーを募ろうとなって、その時加入したのがKANAです。ギターはサポートメンバーに助けてもらって今は5人編成でステージを演れてますし、最高にいい状態です。



–:新体制になってどんなところが変わりました?また、変わらなかったものはありますか?
ook-boy: KANAの加入はバンドにとても大きい影響を与えました。
特に彼女のボーカルは今までVANILLA.6にはなかった要素としてすごく新鮮で。昨今の国内シーンでは見ないタイプのボーカリゼーションで、とても叙情的な側面と若さを併せ持っているし、加入するまで彼女洋楽はからっきしだったらしいんですがある意味すごく洋楽的な印象を受けたんです。コーラスワークでも既存楽曲の空間が大きく色を変えたし、彼女の歌を主軸に楽曲を作るのが今すごく楽しい。あとは、彼女すごく純粋で、故に無知ではあるんだけど、純粋に音を鳴らしたり歌声を出すことを赤ん坊のように楽しむ様がバンドの中の空気を清浄してくれてますし、初期衝動のようなエネルギーを分けてもらっています。
–:新体制ではKANAさんの存在が本当に大きいんですね……KANAさんとはどのように出会ったんですか?また、加入に至る経緯を教えてください。
ook-boy:メン募サイト?みたいなとこに出してたら逆ナンされました。他にも数名候補が居て全員とスタジオに入ったんだけど、KANAが一番伸び代を持ってると思ったんで決めましたね。



曲毎のコントラストがめちゃくちゃ強くて、全体で1つのストーリーや情景を構築するには生半可なファンファーレではてんで駄目なんで、かなり難産でした

–:先ほど、「精神的にまいってた」というお話があったんですが、どのような状態でした?
ook-boy:2018年秋からとにかく無気力で何の作業も手につかないので曲も書けないし、メンバーの数も足りずライブもまともに出来たもんじゃないし、日がな家で放心してたらいつのまにか翌日になってるみたいな。自分の中で音楽が鳴らなくなって「もうやめたほうが良いんじゃないか」だなんてどんどん自暴自棄に陥って思考停止してたら数ヶ月経ってました。完全に生活も意識も社会と乖離してたし、でも音楽作ったり演ったりせず生きていくってのが想像できなくて、死ぬか演るかずっと考えたんですけど、「俺まだ何も遺せてないなぁ」と思って。それが今作を作るに至った経緯です。
–:そういう焦燥感や孤独感といった感情が、既発の曲の頃からずっとあったように見えるんですが、この辺はVANILLA.6のテーマ性として意識をしていますか?
ook-boy:俺自身、愛だとか恋だとかそういう人生の華やかな部分のみ切り取ってまるで他の糞から目を背けるようなインスタグラムじみた歌にあまり心を動かされてこなかったんで、自然と自分の中のありのままの情景を歌にするようになりました。なので特段テーマとして意識したことはないです。別に大声で伝えたいメッセージなんてないし、でも歌いたいことは山程あって、言葉にはし難い心ん中をできるだけ濃く多く打ち込んだ結果がVANILLA.6の詞です。ある意味今作の詞世界には俺の全部が詰まってるように思うし、今作を構築していくにつれて究極的に俺は楽観的な人間なんだな、と思うようになりました。自分の曲に救われたりなんかするし。云わばこれ「人間讃歌」なんですよ。



–:救いと言うと本編のラストにあたる「Wasted Song Ⅲ」は思い切り救いの歌になってますね。この曲は最初からアルバムのラストにするつもりで制作された楽曲になりますか?
ook-boy:「Wasted Song Ⅲ」は、VANILLA.6始める前から「90’s Milan」などと並行して制作した曲で、アルバムどころか音源化すらするつもりなかったんですよ。前身バンドからのブランクを取り戻すためのリハビリ的位置付けで軽い気持ちで着手したし、曲名の通り当初はどこにも出さずに没にする予定でした。それが形にしてみたら案外良かったし、VANILLA.6にぴったりハマって。ライブでも演るようになってバンドと一緒に曲がだんだん成長していったような気がします。バンドを映す鏡みたいな曲になったなと。なのでセルフタイトルでアルバムを作るってなったとき、「最後は絶対この曲!!」って譲りませんでした。駄々こねる餓鬼みたいに。(笑)
逆に、M1「Prime」はアルバム構想後に1曲目を想定して書きました。サブスクで2〜3分の単曲を聴く時代に敢えてアルバムという体裁を採るんだから、アルバムでしか出来ない表現をしたくって、8曲を完璧にパッケージングしようと思って書いた曲です。ただ、曲毎のコントラストがめちゃくちゃ強くて、全体で1つのストーリーや情景を構築するには生半可なファンファーレではてんで駄目なんで、かなり難産でした。
–:VANILLA.6で歌詞の和訳って初めて見た気がするんですが、今までにありました?
ook-boy:確かSNSか何かでポロッとつぶやいたことや「Side Effect」のMVに出したことはあったけど、リリックカードに載せるのは初めてですね。



–:今回和訳をリリックカードに載せようと思ったのはどうしてですか?
ook-boy:今までメンバーにさえあまり歌詞の意味なんて伝えて来なかったんだけど、なんでだろう。ひとつは好奇心かな。リスナーの大半が日本人なんで、今まで詞に着目せずに聴いてきた曲の詞を読み取っで、みんながどんな反応するんだろうって。抽象的な表現もあるし、直接的な表現もあるし、それを感じ取ったリスナーがどんな解釈をするんだろうって。それを知るのがすごく楽しい。拒絶反応出る人もいるかもだけど。それが面白い。
あとは、俺めっちゃ欲張りなんですよね。もちろんサウンド面については最高の出来でみんな着目してくれるんだけど、詞も含めて曲を正しく愛してほしいって思ったんです。決して華やかな言葉ばかりが並ぶものじゃないけど、全部愛してほしいんですよ。
これは今後のVANILLA.6のあり方にも影響していくと思っています。これからも和訳は出そうと思ってるし、それも踏まえてどう魅せていくのか考えるのは楽しいし自分がこれからどんな詞を書くのかも楽しみ。


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『VANILLA.6』/ VANILLA.6
2020年3/18リリース
フォーマット:CD/デジタル配信
レーベル:VNLDOSE RECORDS
カタログNo.:VNL-0003
価格:¥2,500(税込)
【Track List】
01. Prime
02. OWLS
03. Side Effect
04. Nightfall
05. CRUSH
06. DONT SING
07. Rose My Shadow
08. Wasted Song Ⅲ
09. CRUSH (Bathroom Mix)*
10. Rose My Shadow (A Letter to Rose)*
11. Goodbye Golden Girl*
* CD bonus tracks
mabaseshop (+cogitodistro)
HOLIDAY!RECORDS
配信URL一覧

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2020.4.15 19:28

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