【INTERVIEW】三輪二郎に聞く『しあわせの港』全曲解説
5. スライディング・マドロス
- 三輪二郎:これは伊賀さんがインストを作ってきたんです。
- –:打合せの時にインスト・ナンバー入れようって。
- 三輪二郎:その直後に作ってくれたコードが、一応進行してるんだけど、もう何も起きない虚無的なコード進行で、それがすごく面白い展開でした。もう難しくてそれを膨らますのが。それでこのコードのままテンポ落して、どっしりした重たいファンクにしてみようか、となって。
- –:北山さんのドラムが他にはあんまりない感じで。
- 三輪二郎:こういうドラムは北山さんが関わっているバンドでは演ってないんじゃないかな。
- –:そして歌メロが最後に出来た?
- 三輪二郎:そう、言葉と同時に。最初はファンクだったのがだんだんブルース・ロックみたいになっていきました。伊賀さんの乾いたコード進行があったんで他にはない不気味なブルース・ロックになりましたね。
- –:それからやけにドラムの音がいい。
- 三輪二郎:スタジオでバスドラに鉄アレイとか入れてました。
- –:歌詞が面白いです。
- 三輪二郎:(横浜)石川町辺りの川(中村川)にダルマ船が浮いているのをずっと見ているのが好きで、沈みかけの朽ち果てた船を。そこに水兵の幽霊が座ってギター弾いている姿を想像して書きました。
6. ギターを弾く犬
- –:柴田(聡子)さんが書き下ろしたのはいつごろ?
- 三輪二郎:2年くらい前ですかね。1曲書いてよって言ったらすぐ送られてきて歌詞読んだら、柴田さんの引越し手伝った時のことが書かれてました。ダンボール運んだらその上でずっとギター弾いててほとんど役に立たなかった。
- –:柴田さんの曲は画を描くように上手いですね。
- 三輪二郎:柴田さんのデモの仮歌はすごいキレイなメロディーで、この曲の録音の後にメンバーに聞かせたら全然違うよって。おれが全然コピー出来てないんですけど。
7. ハロー・マイ・ジェラシー
- –:カバー曲入れるというのはアルバム作るには曲が足りないというところからなんだけど。
- 三輪二郎:とにかくデカい声で歌えって金野さんから言われて。
- –:それはこれじゃなくて、BOROの「海に架かる橋」。
- 三輪二郎:そうでした。カバー候補はもう1つ、泉谷しげるの「土曜の夜 君と帰る」も、これはおれのリクエストで。
- –:この3曲から「ハロー・マイ・ジェラシー」にした決め手は?
- 三輪二郎:もともとショーケン大好きだから、ですかね。それに、♪愛を歌えない男が一人、って歌詞、コレはおれだな、おれが歌わないでどうするって、ね。
- –:速水清司の曲はいいですよね。
- 三輪二郎:男の言い訳、最高ですよね。
- –:そしてここに時代錯誤なギターソロ入れました。この曲は間奏ナシで一気に歌だけでいってほしかったんだけど、だんだんこのギターソロが好きになってきた。
- 三輪二郎:いまどき誰も演らないピッキング・ハーモニックス、ピッキングが強すぎてハーモニックスが鳴っちゃう、それが出たのはうれしかった。(エンジニアの)中村さん、多分イヤそうにしてたと思います。
8. グッドラック・ブギー
- –:これも結構前からのレパートリーで「しけたブギー」って、よくライヴで演ってました。
- 三輪二郎:これは、三沢(洋紀)さんが黄金町に住んでた時その家で酔っぱらって適当に作った曲で、♪宵越しの金持たねえ、ってフレーズが最初に出来て、それから三沢さんと黄金町や横浜の町をフラフラ歩いてた時のしけた情感をだんだん形にしていったんです。スカスカしたブギー、キャンドヒートみたいな軽い感じに出来ました。カタカナの軽さみたいなのが気持ちいいというか。
9. くわえ煙草の夢
- 三輪二郎:これはけっこう思いがあって書いた曲です…、うん。伊賀さんがチェロを入れてくれて。それは走馬灯のようなエンディングにしよう、と3人で決めて、一生の最期みたいな。おれのハミングと伊賀さんのチェロと北山さんのもっこりしたバスドラが上手く絡み合ってくれて、凄くいいエンディングになりました。
- –:リハの時にはこのアイデアはなかった。
- 三輪二郎:そう、ベーシック録音と歌も全て録り終えてから、伊賀さんのアイデアでダビングしたものです。この曲もホーン・セクション入れたかったんですけどね。ヴァン・モリソンの「ヒーリング・ゲーム」、このホーンが好きでコレみたいにしたかったんですよ。ホーンが歌と関係ないところから絡んできて、そして盛り上がる。
- –:3人で、それをやってしまったとも言えるいいアレンジです。
- 三輪二郎:鬱気味の男が、ある時なんの解決もしてないのに、どうでもいいやと晴れた気持ちになった、落ち込んでた時から脱却出来たのは理由もないんだけど、まあこんなもんかと開き直った歌です。
10. ターニングポイント・ブルース
- –:おれは長い歌詞、ブックレットに2頁分の歌詞が。
- 三輪二郎:これはずいぶん前に出来た曲、でも言葉がずっと出来なくて。ライヴでも演ってたけど毎回適当な歌詞を乗せてた。
- –:レコーディング直前まで歌詞が出来なかったね。
- 三輪二郎:もはやターニングって意味もさ、なんでターニングポイントなんだって面倒くさくなってきて何を歌いたいのかもわからくなってきた。転機はあったのに、それに乗れなかったうだつの上がらないトーキング・ロックです。
- –:でも、このバンド・アンサンブルが…。
- 三輪二郎:最高です。この8ビートは最高に気持ちいい。
本当に、伊賀さんと北山さんに助けられました。この2人で再び歌う気持ちになったわけです。自分で作りながらくだらない曲だと思ってたのを甦らせてくれましたね、言葉もノッてきたし。
(2019年2月2日、横浜で)
聞き手・まとめ:金野篤(diskunion DIW)
『しあわせの港』/ 三輪二郎
2019年2/20リリース
フォーマット:CD
レーベル:MY BEST!RECORDS/DIW/diskunion
カタログNo.:MYRD127
価格:¥2,500(税抜)
【Track List】
01.犬と煙草
02.おもいで
03.バージンギター
04.翌朝
05.スライディング・マドロス
06.ギターを弾く犬
07.ハロー・マイ・ジェラシー
08.グッドラック・ブギー
09.くわえ煙草の夢
10.ターニングポイント・ブルース
ディスクユニオン
iTunes/Apple Music
Spotify
三輪二郎:ボーカル、ギター
伊賀航:ベース
北山ゆう子:ドラムス
録音、ミックス、マスタリング:中村宗一郎
写真:宇壽山貴久子
デザイン:ダダオ
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2019.2.14 17:00
カテゴリ:INTERVIEW, PU3_ タグ:JAPAN, 三輪二郎, 伊賀航, 北山ゆう子
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