【INTERVIEW】『光』ほたるたち / 『世界へ』穂高亜希子

穂高亜希子のソロアルバム『世界へ』と、彼女を中心に松尾翔平(Super Ganbari Goal Keepers/ハカラズモ!)、吉川賢治(ハカラズモ!、山口やまぐと地獄少年)で構成されるバンド ほたるたちの1stアルバム『光』が10/24に同時リリースされた。
ソロ・シンガーとして2枚のアルバムをリリースし、各所で高い評価を得る彼女がほぼ一発録りで制作したというソロ・アルバムと、バンドとしてのアルバムを「同時に」リリースするという形態に込められた意味やソロとバンドに対する意識、メンバーとの空気感といった興味を満たすべくインタビューを申し込んでみた。



とにかく楽しくてスタジオ入ってましたね

–:ほたるたちの結成っていつぐらいなんですか?
穂高亜希子(以下 穂高):2016年の11月ぐらいに初めてスタジオに入りました。
–:スタジオに入ることになったきっかけは?
穂高:まず、前の年のブラックナードフェス(松尾翔平と山口やまぐが毎年開催しているイベント。自称「日本一ジメっとしたお祭り」)に私がソロと山口やまぐと地獄少年というバンドにベースで出演したんですが、その時に同じバンドで吉川君もいて、呼んでくれたのがショウヘイマン(※松尾翔平の呼び名)で、それがきっかけで友達になって。
–:それまでに面識は?
穂高:共通の知り合いはいるけど、挨拶する程度で……。
松尾翔平(以下 松尾):顔を知ってる程度でした。
穂高:ブラックナードフェスの次の日(2015年9/1)に、“レコードの日”という企画でなりすレコードの平澤さんに誘われて7インチレコード(「あの頃のこと/風、青空」)を録音しているんです。それまではアコギとコントラバスとか室内楽編成ばかりだったんですけど、エンジニアを務めてくれたピースミュージックの中村宗一郎さんが「エレキギター入れてみたら?」と言ってくれて。その時は「自分の曲でエレキとか入れていいのかな?」と思ったんですがそのアドバイスがきっかけでけっこうロック寄りの7インチが完成したんですよね。その時に中村さんが「バンドでやってみたら?」って言ってくれて。それくらいから「ロックバンドか、ちょっとやってみたいな」という気持ちがどんどん膨らんでいきました。
で、その年にゴールデン街にある新宿裏窓という店の福岡(俊樹)さんが、高橋幾郎さんとと西村卓也さんと即興でセッションを組ませて頂いたりして。それでエレキギターを弾くようになったんです。
–:それまではエレキは弾いたことってありました?
穂高:25歳ぐらいまではかなりエレキギター弾いてたんですが、封印してました。自分は静かな歌を歌う人だというイメージをみんな持ってるんじゃないかと思い込んでしまってたので「そういうこと私がやっちゃいけないんじゃないかな?」と思ってやっていなかったんですけど、その7インチでエレキギターを弾いてから自分の曲をエレキでもやってみたいと思うようになりました。
でも、幾郎さんは北海道に住んでるから定期的にはバンドやセッションはできないし。だから「バンドやりたいなー」とは思ったけどちゃんとバンドを組んだりはしていなくて。
そんな時にショウヘイマンに7インチのPVを録ってもらったのがきっかけで仲良くなって、その次の年のブラックナードフェスに誘ってくれた時に、あの時のPVの曲のギターを弾いてほしい、という依頼をして2人でスタジオ入ったんですよ。
そしたらギターも良かったしスタジオの感触も結構良くてこれは続けたほうがいいんじゃないかと……やるならバンドがいいよねって話から、ドラム誰にしようかって話になり、吉川君を10月のブラックナードフェスの時に誘ってまたスタジオに入ったんです。最初、私がアコギを持っていったんですけど、そこでショウヘイマンが「穂高さんはベースって聞こえた」と言い出したのでスタジオでベース借りてやってみたらこれだ!って。それでスリーピースバンドとしてハマったんですよね。「楽しい!」って。その後も2週間に1回くらいはスタジオに入って。もう6回くらい入った頃かな?「人に見せられるようになったけどライブが決まってない!」っていう。
松尾:ライブがないのにスタジオ入る、という。
吉川賢治(以下 吉川):とにかく楽しくてスタジオ入ってましたね。
穂高:これはいける!いいよね!という感じで
松尾:爆発力があったよね
穂高:最初からね。
松尾:「朝焼けの夢」とか一番最初のスタジオで合わせた時にもう全体像が見えましたね。ギターソロもその時のイメージをずっとなぞってやっていますね。
–:最初の段階からみなさんの中のイメージが合致していた感じですか?
穂高:3人で合わせると自然とかなり熱い感じになっていきましたね。これは今までにないな~という感じで。
松尾:最初はスローな曲が多くて、今よりはもっとサイケデリック寄りで抽象的で、ジャムセッションの雰囲気を引きずったバンドという印象があったんですけど、だんだん変化していったという感じですね。そのあとのライブを経て変わっていったと思います。最初のライブの時はけっこうアバンギャルドで即興感が強かったんですけど。
–:最初のライブは2017年2月のやさしい悪魔企画でしたよね?
穂高:そうですね。無理やりオープニングアクトで入れてもらいました。やさしい悪魔でベースを担当していたので、「誰呼びたい?」と聞かれて自分たちをねじ込みました。
–:その時はライブをやりたいという思いは強く持ってたかんじですか?
穂高:持ってました。
–:それからは、1〜2ヶ月に1回はライブをやっている感じですよね?
穂高:月1でやっていますね。
–:そこから、今回アルバムのリリースということなんですけど、アルバムを作ろうというような話になったのはいつ頃ですか?
穂高:おそらく、去年の夏頃にはなりすレコードの平澤さんを呼び出して決めたんですよね。1年前かな?
–:呼び出したんですね(笑)割とグイグイいっている感じですね。
穂高:ほたるたち観たことないのに呼んで。
–:かなり強引ですね(笑)
平澤直孝(なりすレコード、以下 平澤):確か観たこともないのに「わかった、何とかする」って言ったと思います。
–:聞く方も聞く方なら、受ける方も受ける方ですね(笑)
松尾:同じグルーヴでしたね。



3人と4人ではぜんぜん違う気がする。一人一人が薄まる気がするので。

穂高:その時、もう録れるって思ってたけど、じゃあぽんぽん進めようという感じにはならなかったですね。
平澤:「ライブをもうちょっとやってから録音したい」って言ってたんだよね。
穂高:そうでしたね。もうちょっとやってからにしようって。
吉川:結果的にライブをやってよかったよね。
穂高:ちょうどよかったよね。今がベスト。秋にブラックナードフェスなどがあって。
–:節目節目に、ブラックナードフェスが出てくるんですね。
穂高:そうですね。ほたるたちは全然知られてなかったので、それまではお客さんも少なくて。その年の9月の七針のライブも、お客さんほとんどいなかったんですけど、その時のライブがかなり良いライブが出来て自分達も自信をつけて。そのあと10月にブラックナードフェスに出て、その時は100~200人ぐらいいて、ほたるたちを全く知らない人たちも「ほたるたちよかった」とTwitterに書いてくれたりしてて。そのあたり位に自分達のやりたい方向がわかりました。それまではよっさん(※吉川の呼び名)とかドラムすごく迷ってたし、私もただ楽曲がロックの為に作ったものじゃないから、歌を壊さないようにするのが難しくて。
吉川:どちらにしても歌が特徴的なので、その歌にどうやって合わせていけばいいかが段々わかってきた感じですね。
穂高:みんな「もっとやっていいんだ!」ということに気づいて、もっとライブが激しくなっていきましたね。
松尾:ストレートな部分と抽象的な部分のメリハリが出てきましたね。激しいところはより激しく、静かなところはより静かに、という。振れ幅が大きくなってきた感じがありますね。
穂高:私のソロのファンではなく、ほたるたちのファンがつき始めてきたのもその頃からでライブのあとに「CDありませんか?」と聞かれるようになって。私のソロだとアコースティックのソロしかなくて、ほたるたちとは全然違うから早く作りたいなという気持ちが出てきて「作ろう」と。
松尾:作らなきゃだめだって。
–:レコーディングに入った時期は?
穂高:4月から夏ぐらい。
–:曲とかはどうやって作ってますか?穂高さんのほうで作っていった曲を、バンドに共有していくというような感じですか?
穂高:今のところは大体そうです。
–:そうなると後は、曲を渡されて、松尾さんと吉川さんがアレンジという感じでしょうか?
穂高:いや、スタジオで作っています。あと、ショウヘイマンのギターは家で。
–:じゃあ、割と合わせていく過程でできていく形が多いというか。
穂高:そうですね。適当っていうか。私の曲でこれやってみようよ!という感じで2人に私のCDを渡して。これはロック調に変えたら面白いかも、とかそういうことを話しながら。
–:では、そういう流れでアルバムも作られているのですね。
穂高:そうですね。
–:やっぱり、最初の頃のようなジャムっぽい方向は引き継いでる感じなんですね。
穂高:即興演奏は最初はかなりやっていて、だんだん固まってくると自分の気に入ったフレーズを弾くようになるんですけどお互い話し合って決めているという感じですね。
–:バンド内での役割分担は非常にちゃんとしてて、各パートがすごく仕事をしているなというのが聞いてて面白いという印象を持っていました。
松尾:正しいロックバンドみたいな感じで、個人のアレンジのこだわりよりは全員で合わせてみた時の雰囲気が素直に反映されているように思いますね。
–:じゃあ、作っていく過程であまりぶつかり合いもないですか?
穂高:それはないですね。
松尾:今ってみんなDTMとかでデモを作って全体像を最初から把握してるバンドが多いと思うのですが、僕らは完全真逆のヴィンテージなロックバンドですね。
穂高:自画自賛(笑)
松尾:ヴィンテージって言いたかった(笑)
穂高:もっと来ていいよ!もっと激しくしていいよ!っていうのは最初の方はけっこう言ってましたね。
–:指示を出さなくても大丈夫になった?
穂高:そうですね。最初だけでしたね。
–:楽器持ってスタジオ入って、じゃあ今日はこれをやってみよう!って感じは楽しそうでいいですね。スリーピースから編成変えたりとかは考えたことは?
穂高:ショウヘイマンはメンバー増やしてもいいかも、キーボード入れてもいいかもって言ってくれてたけど、私は別に。この3人でいいなって。きっちりしすぎたりとか、あんまり好みじゃなくて。すかすかなものを埋めていくのが好き。
吉川:3人ならではの緊張感みたいなのがあるんじゃないかなーと思って、そういうところもいいなと思いますね。
穂高:3人と4人ではぜんぜん違う気がする。一人一人が薄まる気がするので。
–:ライブを観ていると、曲の中で見どころというか視線の行きやすいところがくっきりしていて、間奏のギターソロとかやっぱり目が行きますよね。皆さんそれぞれ自分のパートなりに気を使っているというか、こういうところを出したいとかって意識していることあったりしますか?
松尾:ギターに関しては、歌を立てつつもギターで隙間のメロディーを埋めていくというスタイルが好きで、ボーカルの人がギター弾いていることも多いと思うんですけど、穂高さんはベーシストなので、沢山ある隙間にもう一つのメロディーを自分が重ねていくというイメージで弾いてますね。そういうスタイルのギタリストが好きなので。
–:具体的に名前をあげると?
松尾:ジョニー・マーとか。テレビジョンのギターの感じも好きです。そういう、ギターで常に歌ってるイメージでやっていますね。
穂高:ドラムはどうです?
吉川:ドラムは、ボーカルをすごく意識してて。ドラムってベースに寄りそったりすることが多いと思うんですけど、そうするとカチッとしすぎてしまうというか、自由な広がりがなくなってしまうような気がするので。ボーカルを意識して、合わせたり、逆に意識的にずらしたり、みたいなことをしていますね。やっぱり穂高さんの独特のタイム感がすごくあって、それを意識すると面白い感じになるなあというのがあります。
穂高:私はそんなに何も考えてないな(笑)自由にやらせてもらっています。多分2人がちゃんと考えてくれてるから。

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『光』/ ほたるたち
2018年10/24リリース
フォーマット:CD
レーベル:なりすコンパクト・ディスク / ハヤブサ・ランディングス
価格:¥2,200(税抜)
【Track List】
01.あの頃のこと
02.五月の風
03.恋をした男の子
04.街の光
05.緑
06.うそ
07.夜と風
08.風、青空
09.朝焼けの夢




『世界へ』/ 穂高亜希子
2018年10/24リリース
フォーマット:CD(紙ジャケット)
レーベル:なりすコンパクト・ディスク / ハヤブサ・ランディングス
カタログNo.:HYCA-3075
価格:¥2,000(税抜)
【Track List】
1.五月のまぼろし
2.ふるえてねむる
3.出発のうた
4.夜道
5.夜中の話
6.世界へ
7.ぼくの心は空の中
8.夜明け前

録音/MIX:三富栄治
マスタリング:peace music中村宗一郎
絵:前川茜
デザイン:saori


『ミチノヒ「but to do」× ほたるたち「光」ダブルレコ発tour』
2018年11/30日(金)東京 渋谷:(旧 渋谷LAST WALTZ)
ACT:ほたるたち / ミチノヒ / bjons / 冷牟田敬band
Open 18:30 / Start 19:00
Adv. ¥2,500 / Door ¥2,800(+1d ¥600)

『ほたるたち+穂高亜希子同時発売記念イベント』
2018年11/19(月)新宿dues
ACT:ほたるたち / 穂高亜希子
Open 19:00 / Start 19:30
イベント詳細




山口やまぐ&松尾翔平 共同企画
『ブラックナードフェス!vol.4』
~Let’s Go World Nerdy Journey~
2018年12/16(日)墨田区 八広地域プラザ 吾嬬の里(あづまのさと)本館
ACT:オシリぺンぺンズ / 割礼 / RUINS(吉田達也+増田隆一) / ほたるたち(穂高亜希子+松尾翔平+吉川賢治) / 3776 / SAKA-SAMA / xoxo(Kiss&Hug) EXTREME / HOMMヨ / otori / 田島ハルコ / Weekday Sleepers / 吉田和史×夜窓 / Cobalt / 横沢俊一郎 / Super Ganbari Goal Keepers / 山口やまぐと地獄少年 / ロクトシチ / しののめ / 内田るん / 山口やまぐ Another Hell Meeting / and more…
Open 10:30 / Start 11:00(close 20:00予定)
Adv. ¥3,000(+1d ¥500)
高校生 無料

3ステージ制
Foodあり Freeお菓子あり
内装:ヤバイネーション

公式Twitter(@blacknerdfes
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2018.11.14 20:58

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