【INTERVIEW】THIS IS JAPAN『FROM ALTERNATIVE』
今までは「曲が良くないとダメだ」という風に思っていたんですけど、「曲の良さではなく、エネルギーや熱意、パワーが伝えたい」という風に考えられたのは、大きいと思いますね(koyabin)
- — 本作の『FROM ALTERNATIVE』について話をしたいんですが、単刀直入にお聞きしますが、各々メンバーのなかで、インスピレーションをもらった作品や出来事はありますか?
- 杉森:これ!というのがありますよ
- かわむら:教えてくれよ
- 杉森:THEE MICHELLE GUN ELEPHANT(以下ミッシェル)の『ギヤ・ブルーズ』ですね
- koyabin:言ってたね、結構前から言ってた。
- 杉森:草野さん、ミッシェル知ってます?(笑)
- — もちろん知っていますよ!(笑)
- 杉森:俺がミッシェルを初めて聴いたのは中学生の頃で、その頃からずっと聴いていたんですけど、去年のいつごろか、13年ぶりくらいにアルバム1枚目から全部聴き直したんですよ。バンドって生き物なので、ちょっとずつ変わっていくんですけど、ミッシェルでいうところの『ギヤ・ブルーズ』が、俺らにとって『FROM ALTERNATIVE』のいまなんじゃないのか?っていう風に思ったんですよ。ロックど真ん中、もう好きな事以外はやりません!という風に響きましたね。
- — それは作っている最中ですか?それとも作り終わった最近のことですか?
- 杉森:んー・・・去年の年末・・・いや今年に入ってからかな?
- かわむら:去年の末ぐらいから、ずーっと「ミッシェル!ミッシェル!」って言ってたよ(笑)
- 杉森:そっか、じゃあ去年の年末ぐらいからずっと感じていたんだと思います。バンドのスタンスや方向性って色々あると思うんですけど、そこがものすごく参考になったし、共感しましたね。
- — かわむらさんはどうでしょうか?
- かわむら:俺も一個ありますよ、『ズートピア』をみて・・・・ (全員大笑い)
- かわむら:いやいや、本当なんですよ。草野さんは『ズートピア』はご存知ですか?
- — そちらももちろん知っていますが、あの『ズートピア』の感じと、THIS IS JAPANがあまりにも重ならなくて(笑)なぜなんでしょうか?
- かわむら:俺は、あのレベルの人たちが、たくさんの時間と労力とお金をたくさんかけて、バッチリと仕事をしてきたら敵わないなぁ・・・ものすごい恐ろしいものをみてしまったな・・・って思ってしまったんですよ。「いったい俺はズートピアの何分の一になるんだろう?」って本当に思ってしまって。そこから、『ズートピア』はエンタメの最高峰だとしたら、「俺たちは一体何ができるんだろう」と考えるようになったんですよ。俺たちのライブ代と、『ズートピア』を一回見るためのチケット代、それに見合う音楽をやれているのか?あの長いスタッフロールのなかには、通行人のウサギの毛並みを丹念に描いているひとがいるわけで、俺たちはそのスタッフに勝てるか?とかね。
- koyabin:確かに言ってましたね。
- かわむら:ネタでもなんでもなく、みんなに言ってたもんね、「ズートピアみたか?」ってね。
- — なるほどです。水元さんはいかがでしょうか?
- 水元:なんだろう、この作品とかこの音楽という感じじゃなくて、一回一回のライブで得てきた経験が大きいかなと思います。「こうしたらお客さんが盛り上がる」「これをするとすごく良い」というものをどんどん分かってきてたので、それを音源で出せたら良いなと漠然と思っていました。
- — 形にできましたか?
- 水元:結構できたと思ってます。音源を聞いてもらうとわかると思うんですが、「これがいまのディスジャパです!」という1枚だと思いますね。
- koyabin:僕も水元と同じかんじですね。ちょうどアルバムを制作しているとき、MC5にハマってよく聴いていたんですけど、彼らのアルバムで一番有名なのが『Kick Out The Jams』っていうライブ盤なんですよね。僕らもよく「ライブが良い」という言われ方をするので、「ライブ盤のような音源が良いんじゃないか?」と個人的に思ったんです。なので、ライブ盤のようなスタジオ盤を作りたいと思って制作しました。今までは「曲が良くないとダメだ」という風に思っていたんですけど、「曲の良さではなく、エネルギーや熱意、パワーが伝えたい」という風に考えられたのは、大きいと思いますね。
- — ありがとうございます。今回の『FROM ALTERNATIVE』を聴いて、まず端的に音が良い、ミキシングやマスタリングを含めて、koyabinがおっしゃったようなエネルギーを感じられるようなサウンドになっていて、これまでの音源とは違ったものになったと思えたんです。曲作りはこれまで同様、ライブで披露しつつ、ちょっとずつアレンジを変えていったという流れなんでしょうか?
- 杉森:そうですね。そこは前作と大きくは変わってないです。ライブで披露して、こういう曲を作ったなら次はこういう曲を作ろう、そういう連鎖というか、順番に作っていった感じです。前作でいうところの「D.I.Y.」みたいに、制作していてギュッと出てくる曲も多くて、今作では「Talk Back」「Z.Z.Z.」がそれになりますね。例によって、俺とkoyabinで原案を作って、みんなに投げて、みんながそれぞれ考えてきたものを組み上げてみるというやりかたで作ってますけど、一番変わったのは歌詞だと思います。俺が歌詞を書いてきたら、koyabinとかわむらでディレクションしたり、逆にkoyabinが書いてきたら、俺とかわむらがディレクションしてみたりと、そこは大きく変わったかなと思います。
- — そう聞くと、クレジットは杉森さんとkoyabinさんとなっているけども、THIS IS JAPANというクレジットになってもおかしくはない感じですよね
- かわむら:とはいっても、やっぱり杉森とkoyabinですよ。俺と水元は、曲や歌詞に関して「これは伝わらなくない?」というのを口出ししていく感じですよ。
- koyabin:僕の中では、デモの時点で完成度は50%なんです。各々が練習したりして、スタジオで合わせても80%くらい。最後の20%は、ライブなんですよね、ライブでやらないと完成度100%にならないんです。
- 杉森:ああ、うん、そうだわ。
- koyabin:さっきもライブ盤のような感じでというような話をしましたけど、曲のすべてがスタジオワークなどで出来上がるわけではないんですよね。
- — ライブでやることで、いい意味でのラフさや勢いを曲の中にいれるわけなんですね。
- koyabin:そうですね。体に曲が馴染んでいく感覚、それがとても重要なんですよね。
- — その話を聞くと、やっぱり今作はわりと一発録りのように聞こえますよね。ちょこちょこズレてるんだけども、勢いとエネルギーでガツンと聞くので、変な風にも聞こえないというか。
- koyabin:今回のレコーディングでは、各々のパートを別々で取るんじゃなくて、最初に一発録りしたあと、オーバーダビングで僕のギターを録りなおすという風になっています。かわむらさんのドラム、水元のベース、杉森さんのギターは、ほとんど修正されてなかったですもんね。
- かわむら:俺のドラムと水元のベースは、「いっせーのせっ!」で一発録りですね。もちろんその後に調整はちょっとだけしますけど、そのテイクが音源になっているんですよ。
- 杉森:俺のギターも、オーバーダビングは少しだけなので、基本的には一発録りのテイクが使われているはずです。
- — レコーディング自体はかなり短かったんですか?期間が空いてしまったのか、それとも一気に録音してしまったんでしょうか
- 杉森:2回に分けて録ったよね。
- かわむら:作業日数的には、3日くらいですね。
- — え、3日ですか!?
- かわむら:はい。1日で大部分をとりきって、残りでオーバーダビング部分をとっていく、という流れでしたね。
- — なるほど、もうすでにライブでやり慣れている曲ですし、その時点で何かを変えようということもほとんど・・・
- 杉森:なかったですね。これいいんじゃないか?というアイディアをすこしだけ取り入れるくらいですよ。
- —そのお話を聞いてみると、やはり一発録りの勢いやラフさがバッチリと決まった1枚だと言えますよね。その質感をしっかりとミキシングやマスタリングで表現できていて、渾然一体となったロックサウンドで、カッコイイ1枚だと思います。
- koyabin:ありがとうございます。それはとても狙っていたことなので、嬉しいですね。
次ページバチコーンとぶち壊していく力・・・ロックですね。
2018.5.26 12:00
カテゴリ:INTERVIEW タグ:JAPAN, THIS IS JAPAN, ポップしなないで