【INTERVIEW】『all sheep sleep in yours』/ soejima takuma
音楽家・soejima takuma。
福岡を拠点として活動していた彼が、1stアルバムのリリース後に東京へと拠点を移す。
そのうちに彼が担当し提供する音楽が耳に入ってくるようになり東京での基盤を築いているのだなと実感し出した頃に2ndアルバム『all sheep sleep in yours』リリースの報が飛び込んできた。
ディストピアを生きる人々をテーマにしたという今作は、どのように産まれてどのように制作されたのか。
ディストピアを通して彼が目指した表現はどのようなものだったのか。
それらの疑問をぶつけてみるため、約1年半ぶりに彼にインタビューを申し込んだ。
これからは各々の創作性や活動、生活基準にフォーカス当てて、音楽を作っていけばよいのではないでしょうか
- –:ご無沙汰しております。アルバムのリリースおめでとうございます。約2年ぶりのアルバムですが、今作はいつ頃から制作を始めたのですか?
- soejima takuma(以下、soejima):ありがとうございます。今作『all sheep sleep in yours』は9曲目のunknown wordsという楽曲のみ4年ほど前の楽曲を少しリアレンジして収録しましたが、それ以外は東京に活動拠点を移してから書き始めました。トータルの制作期間は途中SEA LEVELの活動や他の仕事があったので、だいたい半年程度だったと思います。
- –:上京後初となるアルバムかと思いますが、東京に出てきて制作環境に変化はありましたか?
- soejima:制作環境については福岡時代のものをほぼ完全な形でそのまま持って来たので、上京をきっかけに機材を追加したり、減らしたりとかは一切なかったです。
東京に来た理由は単純にイベントやクリエイターの総数が圧倒的に多いので、そういう点に価値を見出しました。
会いたいと思った瞬間にすぐに直接会えるというフットワークの軽さは非常に大事なことなので、1stをリリースした時点で名刺代わりになると判断し上京を即決しました。
いまはSNSの普及でプロモーションのチャンスがフラットになりつつあるのに加えて高品質で低価格な機材が増えてるので地方創生とは言われてますが、僕の実感としてはそれが唯一無二の正解ではないように強く感じてるので、これからは各々の創作性や活動、生活基準にフォーカス当てて、音楽を作っていけばよいのではないでしょうか。
ディストピアという舞台は人々の葛藤や抵抗、心の動きなどが非常に掴みやすく、またその舞台における廃墟のような退廃的世界はある意味で幻想的だったり、耽美であったりするので自分の音楽観と非常に近いと感じてます。
- –:前作『Bouquet』と比べるとエレクトロニクスの比率が上がり、少しそちらに比重が向いた楽曲が多くなっていると感じましたが、その辺りはいかがでしょうか。また、前作と比べてギターサウンドの扱いやラッパーとのコラボといった音楽の幅の広がりを感じますが、その辺りも意図的なものでしょうか。
- soejima:そうですね。今作では意図的にクラシカルな要素は削いでます。
これは年々増加傾向にあると思うんですが、SoundCloudの登場以降、Bandcamp、Apple Music、Spotifyとあらゆる音楽を殆ど無償に近い形で楽しめる時代になったことから、昔のようにCDを買ったらまずは通して聴くという形は主流ではなくなっていて『話題になってる人を30秒ずつくらい掻い摘んで聴いてみる』という傾向が強くなってると思います(散々指摘されてることだと思いますが)。実際Bandcampの配信では各楽曲がどのくらいの時間、試聴されたかのデータを取れるようになってるんですが、だいたい7~8割位が半分程度しか聴かれてないのが分かりました。つまり最初の試聴の触りでダウンロード(購入)するかどうかをリスナーさんは判断するのでこの時間をどう有効に使うかが制作の鍵になってると思いました。
特に若手はイメージが固定されてない状態で試聴されることが多いため、どうしてもそういった部分に比重を置かざるを得ない状況になってるんだと思います。なので、今作では各楽曲を出来るだけ短くし、展開をコンパクトにまとめることで時間当たりの情報密度をより高め、各楽曲間もバラエティ性を重視して意図的に変えています。クラシカルな作品は聴き手に集中力を求める場面も多いので、そういった要素はどうしても削がざるを得ませんでした。 - –:今作は「ディストピア」をモチーフにした作品との事ですが、「in a cube」「where i am」「numbers」と、ディストピアをイメージさせるタイトルが並んでいます。soejimaさんの中でイメージしたディストピアとはどのようなものでしたか?
- soejima:そうですね。今作の各楽曲には明確なテーマというより元ネタにあたるディストピア作品が存在していて、タイトルが直接的もしくは間接的なヒントになっています。制作にあたって、人間の内面にフォーカス当てたものを作りたいと感じてたこともあって、作品のテーマ設定をどうするかすごく悩んでたんですが、ディストピアという舞台は人々の葛藤や抵抗、心の動きなどが非常に掴みやすく、またその舞台における廃墟のような退廃的世界はある意味で幻想的だったり、耽美であったりするので自分の音楽観と非常に近いと感じてます。
- –:M12の「hailsham」はカズオ・イシグロの『Never Let Me Go』から?
- soejima:まさにそうです。この作品はごく静かで控えめな抵抗の物語なのですが、興味あれば是非小説を手に取ってもらえたらと思います。
- –:今作を制作するにあたってインスピレーションを与えてくれたものなどがあればきかせてください。
- soejima:前の質問でも触れましたが、今作『all sheep sleep in yours』ではすべての楽曲にそれぞれモチーフになる作品が存在しています。前述の小説しかり漫画だったり、映画だったり幅広く影響を受けてます。今作ゲーム向けに書き下ろした楽曲も収録してますが、そちらも偶然ディストピア(ポストアポカリプス)が舞台になっていたので、ゲーム作者のところにょりさんの許可を得てアルバムに収録させて頂きました。
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通常の制作とは視点を変えながら書くので、新しい発見が常にあり楽しくやれています
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2017.6.30 19:00
カテゴリ:INTERVIEW タグ:electronic, JAPAN, koji itoyama, post classical, progressive form, sea level, soejima takuma, あゆ巫女, 線描, 香月