【INTERVIEW】『Asylum Piece』Fragile Flowers





本作品の歌詞は僕が聞きたい/見たい/感じたい風景/場面を歌詞にしました。

–:リリース時の印象的な発言の中に「これが僕の「文学」であると同時に「セカイ系」です」というものがありました。セカイ系というカテゴリーはかなり人によって定義が異なるという印象があるのですが、Nakamuraさんの中で、特にこのEPの中での「セカイ系」はどのようなものか聞かせてください。
Nakamura:「セカイ系」については東浩紀氏の批評や前島賢氏著書の『セカイ系とは何か』を読んだ上で言いますが、こんな曖昧で分類し難いジャンルは無いんです。だから誰かが自分の価値観を元に、ある作品を自分が考える「セカイ系」と分類していくか、自分で作品を「セカイ系」だと名づけるしかない、だから上記の発言をしました。では僕の考える「セカイ系」とは何か?と聞かれると、それは「ぼく、きみを中心とした小さな関係性の問題が、具体的な中間項を挟むことなく、「世界の危機」「この世の終わり」などといった抽象的な大問題に直結する」ことではなく、家みたいなものなんです。その作品に触れると安心する、懐かしい匂いがする僕の求めていたものがある、だけど少しずつ変わっていったりもする、ただ何が起ころうが、絶対的に帰って来れる作品なんです。だから「セカイ系」=「僕が帰る場所、理想の家」と僕は定義します。だから本作品の歌詞は僕が聞きたい/見たい/感じたい風景/場面を歌詞にしました。だから聞いていただいて、聞き手が感じたことが「セカイ系」です。
–:ブックレットの中でtabikenさんが「セカイ系とロキノン系バンド」について書かれていましたが、Nakamuraさんの中でその二つについての関連性はいかがでしょうか。
Nakamura:僕は小学高学年位の時にリアルタイムで「セカイ系」と呼ばれる作品と当時のロキノンバンド、(ACIDMAN、アジカン、バンプ、藍坊主等)を同時に触れていたのでそこは本人達が否定しようが切っても切れない関係があったと思います。当時のあの空気感は上手く表現できませんが…。その空気感を今回のEPで再現したいという気持ちはありました。
–:このEPはBad End / True Endの2種類が存在していますが、この形式はマルチエンディングのゲームから?
Nakamura:そうですね。ふだんノベルゲームとぼかしていますがかなりのエロゲーマーですので…(笑)エロゲ脳が…(笑)
–:リリース当初、Nakamuraさんの発言で「Bad End → True Endの順番で聞いてください」というものがあったかと思うのですが、True End盤のラスト「向日葵のジュリア」からはそれまでの重さや絶望感からの解放であり、素晴らしき日々への希望を感じ、とても素晴らしい締めくくりだったと思います。
今作のラストをこの曲で飾っているのは、「破滅の美学」を通り抜けた先にはハッピーエンドが用意されている事を望んでの事でしょうか。
Nakamura:僕自身は苦しんだ分だけ幸せになれる世の中では無いと考えているので、「破滅の美学」を通り抜けた先にはハッピーエンドがあるという意図で発言をした訳では無いです。ただ僕が今まで触れてきたマルチエンディングにおけるBad Endを通過した上でのTrue Endを読むというカタルシスを聞き手に与えたかった、だからその様な発言をしました。
–:なるほど、Nakamuraさんがゲームで感じた感動やカタルシスを提示して共有するという作業があるわけですね。

自分は生まれ変わるんだという気持ちもあったからですね。

–:これまで曲を発表してきたSeagull Travelsではなく、Fragile Flowersというプロジェクト名でEPを制作しようとしたのはなぜですか?
Nakamura:完全に音楽性も歌詞の方向性も変えたことが1番の理由ですが、私生活で大きな変化が訪れまして…。自分は生まれ変わるんだという気持ちもあったからですね。あとは前述のアンナ・カヴァンは、最初は別名義で違った作風の小説を書いていたのですが、何度も深刻な精神的危機、自殺未遂を繰り返して、その影響から作風を一気に変えた作品『アサイラム・ピース』を始めてアンナ・カヴァン名義で発表したんです。それになぞるという気持ちもありました。
–:実際にEPをリリースした後で、どんなものが変わりましたか?また、変わらなかったものがあれば。
Nakamura:やはりひとつの作品を形にできたということは自信に繋がったと思います。それがどんなに拙いものでも形にするということは大事だな…と思います。変わらないものは自分の描きたい世界をこれからも描き続けようという気持ちですね。
–:今作は多くのゲストミュージシャンが参加していますが、多くの方が参加するスタイルは制作のどの辺りで決まったのでしょうか。
また、多数のゲストの方が参加する事で得られた事について聞かせてください。
Nakamura:「ラピスラズリ」のデモが出来た段階で、どうしてもシンセアレンジが上手くいかなくて、日頃良くして頂いているnayutanayutaのwataruさんに相談したことが始まりでした。凄くいいアレンジをして頂いて…。それで味をしめてしまい色んな人にオファーさせて頂きました。
ただそれはちゃんとこの人なら僕のイメージ通りのアレンジ/歌唱をして頂けるはずの人だから、人間的にも音楽的にも信頼している人だからオファーしました。アレンジの打ち合わせで1対1でお話する機会が多かったのですが、その際アレンジの話だけではなく皆さんの趣味や音楽に対する姿勢、思いなども聞かせて頂いて、得るものはたくさんありました。何度も言いますが、皆さんには感謝しかありません。
–:逆に多数のゲストが参加する事で苦労した事などはありましたか?
Nakamura:その点は全く無かったです。皆さんはどう感じられたかは分かりませんが、僕自身は本当にやりとり自体が楽しくてしょうがなかったです。
ただ今振り返るとよく同時期に19名の方とやりとりしていたなあ、凄い躁状態だったんだなあ…と思います…(笑)
–:現在Fragile Flowersのメンバー編成はどのようになっていますか?
Nakamura:固定メンバーとして僕(Vo,Gt,Key,Syn&Prog)、ex.Lemon Cult Kissの玉木くん(Ba,Cho)、大高さん(Syn&Prog,Cho)、シーツの林さん(Vo,Key)となっています。
曲によって僕が外部の力が必要だと感じた際には、そのつどサポートをお迎えする形にしようと考えています。
–:今回きいろれこーずの『千葉SHOEGAZER vol.2』への出演が決定しましたが、こちらは固定のメンバーでの出演ですか?また、どのようなステージを作りたいかというような展望があれば。
Nakamura:固定メンバーの玉木くんは香川に住んでいるため参加が難しく、Tenkiameからの付き合いが長いmintさんをベーシストとして迎え、加えてリードギターに雨の中の馬さん(Gt.)、ふにゃっちさん(Dr.)を迎えして出演させて頂きます。ライブに関しては初ライブにしておそらくラストライブなので正直に言えば演奏の完成度は高くないと思います。その分、刹那的でエモーショナルな演奏が出来たらと思います。僕自身も淡々と演奏するのではなく衝動的に演奏したいです(笑)
–:来春を目標に2nd EP、1stアルバムをリリースするとのことですが、こちらの進行はいかがでしょう。
Nakamura:合計14曲を書き下ろす予定で既に全曲のデモは仕上がりました。ほぼ曲作りは終わっています。あとはメンバーのアレンジ待ちであったり、外部の方にアレンジ/演奏依頼を進めていくことが中心となります。あとは本当に歌が下手なので鬼のピッチ補正作業の腰が重い状態ですね…笑
–:アルバムは今作を暴力的に再構築するとの事ですが、イメージ的にエヴァンゲリヲンで言う所のTV版と劇場版のようなもの?
Nakamura:​そうですね。アルバムを制作するに当たり、旧劇を見返したんですが正に僕がやりたいことで、特に『DEATH (TRUE)²』 の時系列をバラバラにしてTV版を再構築した点や『まごころを、君に』の地獄絵図の様に映像が流れ込んだり、メタ視点になるシーンやシンジくんがサードインパクト後にレイやカヲルくんと精神世界で対話するシーンは僕がやりたいことで、これはカットアップの手法と親和性が高いと思うので、そう思って頂ければ。今回のEPは2つのEndを用意しましたがアルバムではまた違ったEndを用意しています。
–:最後に今作を聴いたリスナーへのメッセージがあれば。
Nakamura:​今作を聴いて頂きありがとうございます。今作を聴いてどう感じられるかは、聴き手次第だと思いますが、もし引っかかるものがあれば、元ネタの音楽や小説等に触れて頂いたり、この位だったら自分も作れるぞ!っていう自信を持って頂いて、それが発表に繋がるいい連鎖が生まれたらこれ以上の喜びはありません。今作に関わって頂いた全ての方に多大な感謝を。


『千葉SHOEGAZER vol.2』
2017年4/1(土)本八幡Route Fourteen
ACT:Fragile Flowers / 雨の中の馬 / 未来電波基地 / 冷牟田敬 / and more…!!





『Asylum Piece』
/ Fragile Flowers
2016年11/17リリース
フォーマット:CD / デジタル
価格:Free
-Bad End盤-
-True End盤-

Fragile Flowers are
Ryuichi Nakamura a.k.a 青鷗
(ex.Al-Kamar,Batman WinksBoyish,Easel Easel
Seagull Travels,Tenkiame)
Vocal,Guitar,Bass,Keyboard,Glockenspiel,Percussion
Synthesizer&Programing,Sampling

Additional Musicians “15SOULS”
M-1 Chorus:Eriko Takano(17歳とベルリンの壁)
Percassion:Yusuke Takamoto(Batman Winks
Yüksen Buyers House)

M-2 Song Write:Azusa Suga(For Tracy Hyde,ex.Tenkiame)
Bass:mint(junebouvier,ex.Tenkiame)
Percassion:Yusuke Takamoto(Batman Winks,
Yüksen Buyers House,ex.Tenkiame)
Synthesizer&Programing,Sampling:Kensei Ogata
Chorus:GrayNightly a.k.a Chelsea Terrace

M-3 Guitar Solo:しろいるか(Al-Kamar,Uyu)
Bass:サナトリウム^q^
Synthesizer&Programing,Sampling Guitar:Yusei Tsuruta
(17歳とベルリンの壁)
Chorus:midori(WTPMCC,Kensei Ogata Band)

M-4 Bass:サナトリウム^q^,Chorus:Yumi Hosaki(Michiganized)

M-5 12 Strings A.Guitar:Iwasawa(Boyish),
   Bass,Chorus:Mav.(For Tracy Hyde,ex.Boyish)

M-6Synthesizer&Programing:Wataru(nayutanayuta)
Chorus:GrayNightly a.k.a Chelse Terrace
Guitar Sound Advice:U-1

All Lyrics and Songs Written by Ryuichi Nakamura
expect M-2 Song Written by Azusa Suga,Ryuichi Nakamura

Arranged by Ryuichi Nakamura,”15SOULS”
expect M-7 Arranged by Ryuichi Nakamura

Mixing&Mastering by Ryuichi Nakamura
Recoding Studio:My Small Room,SOUND STUDIO CRUE
ai-line music studio

Desing:Honoka Katayama
Illustratin:Honoka Katayama
Photography:Wataru(nayutanayuta),Ryuichi Nakamura

True End盤 Liner Notes:tabiken(Happy Valley Rice Shower)
Bad End盤 Liner Notes:Yoshitomo Okazaki(hasu-flower)
Common Liner Notes:Siori Kitade



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2017.2.8 22:00

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