【対談】yagihiromi × 佐藤優介(想像力の血)

yagihiromiアー写

NITRODAYやCruyffなどバンドのメンバーとして、同時にソロ即興演奏など幅広く音楽表現を展開しているギタリスト yagihiromiが昨2025年11月に初めてのソロ・アルバムを発表した。以前からyagihiromiのソロ活動に注目してきたという佐藤優介は、その新作「lemma」をどう聴いたのか、それをうかがうべく対談を行った。

想像力の血アー写

佐藤優介(想像力の血)


宅録に関する知識がなさすぎて……(yagihiromi)

佐藤優介(以下、佐藤):アルバムよかったです。率直に、音がいいなと思いました。音質がクリアとかって意味じゃなくて、ちゃんとyagiさんの音がするっていうか……どういう環境で録音したんですか?
yagihiromi(以下、yagi):ほとんどLogicで。ドラムだけスタジオでマイクを立てて録音したけど、それも結局Logicに入れてミックスして。
佐藤:ドラムはマイキングとかも自分でやったんですか。
yagi:一応、御苑スタジオの大きい部屋で録ってはいるんですけど。マイクも立てたけど……立てただけみたいな(笑)。
佐藤:何本くらい立ててたんですか。
yagi:2本。近くと遠く、みたいな感じで。
佐藤:ちゃんとした、いわゆる製品的な音ではないけど、めちゃめちゃローファイってわけでもない、今のyagiさんの音だなって感じがして。ギターもスタジオですか?
yagi:ギターは宅録で、もうラインで直で刺して。プラグインとかも元々入ってるやつを使いました。
佐藤:ボーカルも、吹かれの音、ボフッみたいな音も入ったままだったりして。そういう、普通だったら取り除いちゃうような音とかが残ってるのがいいなと思って。その辺はどのくらい意識して残してるんですか?
yagi:宅録に関する知識がなさすぎて……消したくても消せないっていうのもあるし(笑)、もう開き直ったって感じです。
佐藤:それがいい方向に出てると思いましたよ。いま、宅録でも音がちゃんとしてる人が多いっていうか……耳障りはいいんだけど、結構みんな同じような感触になっちゃってる感じがして。yagiさんのアルバムは、たとえばアコギでも結構ピーキーな、ちょっと耳に痛い音が残ってたりして。なんかこういう音、ひさしぶりにCDで聞いたなと思って(笑)。
yagi:EQでどうにかなるかなと思ったら、どうにもできなくて(笑)。限界を感じて開き直りました。ここから先に進むには知識がないと無理だなって。全部感覚では難しいんだなと。
佐藤:今、みんなYouTubeとかで見て勉強したりするじゃないですか。そういうEQだったりミックスの知識とかも……だから、そもそも勉強する気がなかったんじゃないかなと思ってるんですけど……(笑)
yagi:そもそも録音環境も悪ければ、マイクも5千円とかのやつだし、頑張っても無理かな、みたいな(笑)。いい音響の音楽みたいなのは好きだけど、自分では無理だなって。
佐藤:でも、納得して今の形にはなってるんですよね。
yagi:いつも通りの感触というか……高校生のときから環境的には変わってないし。ソフトがGarageBandからLogicになったくらいです。
佐藤:そうなんですね。yagiさんのアルバムは、曲なのか即興なのか、あんまり境目がわからないようなものが多くて。どれくらい決めてるんですか?
yagi:あんまり決めてなくて、一旦ギターでまるっと弾いてから、それから歌を考えるみたいな。
佐藤:最初からメロディーがあるわけじゃないんですね。小川美潮さんのカバー(「denki」)も入っててびっくりしましたけど、何がきっかけで知ったんですか?
yagi:高校生の時に働いてたバイト先で、小川美潮さんと同名のお姉さんがいて、彼女から教えてもらいました。
佐藤:いいですね。あのアルバム(『4 to 3』1991年)すごく好きなんだけど、このカバーは最初聴いたとき、カバーだってわからなかった(笑)。
yagi:メロディだけもらったような感じですね。

長生きしたい。思いつめすぎず。(yagihiromi)

佐藤:今回のアルバム、歌ものにしたいっていうのは最初から明確にあったんですか。
yagi:あんまり意識してなかったけど……自分的には、ギターだけの曲の方がハードルが高くて。
佐藤:うん、難しいですよね。
yagi:それこそいいスタジオとか、いいアンプとかが使えればやってたかもしれないけど……。
佐藤:やっぱり音勝負になりますからね。でも、歌ものといっても、さっきの話だと、いわゆるシンガー・ソングライター的な作り方ではないわけですよね。
yagi:コード進行みたいなのがわからなくて。
佐藤:いろんなバンドだったり、サポートとかも結構やってると思うけど……。
yagi:自分で作ったりするときには全然その頭を使わない……あと、変則チューニングでやってるので、それも相まってわからないですね。
佐藤:ああ、これどうやって押さえてるんだろうとは思ってました。メトロノームが入ってる曲(「tobari」)もあったけど……。



yagi:あれは、ここらへんでメトロノームの音がしたら、みんな起きるかなって(笑)。
佐藤:目覚まし(笑)。
yagi:でも、買ったメトロノームの音が意外とチープで……。
佐藤:あれは先にメトロノームだけ録音したんですか?テンポが全然関係なくって……。
yagi:メトロノームを鳴らしながら、ギターも弾いて録ってます。
佐藤:一緒に録ってああなってるんだ!ふつう引っぱられちゃいそうだけど。
yagi:鳴らしてるけど全然聞いてない(笑)。
佐藤:でも、自然とそうなったのかもしれないですね。ずれていった方が面白い、みたいな。
yagi:そうですね。しかし単純ですよね、ただずらすっていうのは……。
佐藤:いや、いいずれ方だなって思いましたよ。だからどっちを先に録ったんだろうって思ってたけど、同時って聞いてなるほどなって。ずらすっていうのも、あんまり作為的に聞こえなかったっていうか。自然にずれていくような感じがいいなと思いました。
yagi:あとは、マスターデータにオクターバーをかけてて。低い音が耳の後ろ側で鳴ってるような感じにして。ちょっと気持ち悪いみたいな……。まともじゃない環境で、まともなことをあんまりやってないので……(笑)。チューニングもまともじゃないし。
佐藤:ミックスも全部自分でやってるんですか?
yagi:そうですね。
佐藤:今後ミックスを誰かにやってもらいたい、みたいな気持ちは?
yagi:どうなんだろ、あんまりないかも(笑)。でも、一から全部きれいな環境で録るのも楽しそうだなとは思ってますけど。
佐藤:yagiさんの曲を録ったりミックスしたりするのは大変そうだなと思って。
yagi:めちゃくちゃ重ねてますしね。
佐藤:さっき感覚的って言ってたけど、yagiさんの中に絶対イメージはあるわけですもんね。
yagi:そうですね。自分で勉強する気もあんまり起きないので……多分ずっとこんな感じな気もします。
佐藤:つくりながら、そのときの自分にとって必要な音をちょっとずつ覚えていくんだと思いますよ。勉強っていう感じじゃなくて……。
yagi:なんか勉強とか、練習するのが本当に嫌いで。
佐藤:わかります(笑)。でも、サポートは練習しなきゃいけないんじゃないですか。
yagi:決まったフレーズを弾く、とかは多いですね。ちょっとランニングとか、スポーツにも近い感じです。
佐藤:それの反動で自分の活動ができるっていうのはあるんじゃないですかね。その2つがあると行ったり来たりできて……。
yagi:気分転換できるというか。
佐藤:それが片方ばっかりになってくると、鬱病になっちゃうというか……。
yagi:本当に……そうだと思います(笑)。そうなりたくないから分散してるっていうのはありますね。長生きしたい。思いつめすぎず。
佐藤:自分のことをやってると、他人が恋しくなるし、サポートばっかりやってると、早く帰りたいなって思いますね(笑)。振子みたいな感じで。
yagi:そういう活動の中で、自分を納得させるために今回のアルバムをつくったっていうのもちょっとあります。以前ライブを見にきた友だちに、「yagiちゃんって、部屋にいたのに、連れてこられて弾かされてる感じがするよね」って言われたことがあって(笑)。すごい表現だなと思いつつ、たしかに、みたいな。

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『lemma』yagihiromiアートワーク
『lemma』
/ yagihiromi
2025年11/19リリース
フォーマット:CD/デジタル配信
レーベル:MY BEST! RECORDS
カタログNo.:MYRD164
【Track List】
1. esquisse (about red bird)
2. deadline
3. denki
4. tennessee
5. 6×6
6. tobari
7. foolproof
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【クレジット】
yagihiromi: Electric guitar, Acoustic guitar, Vocal, Noise, Edit, and Mix
ピエール畳: Drums (M4, 7)

ジャケット写真: 有本ゆみこ(SINA SUIEN)
デザイン: ダダオ
マスタリング: George Mori

『siki』/ yagihiromiアートワーク
『siki』/ yagihiromi
2025年9/24リリース
フォーマット:CD(デジタル配信なし)
レーベル:MY BEST! RECORDS
カタログNo.:MYRD163
【Track List】
1. intro
2. klon
3. like ever
4. #152275
5. nagisa (reprise)
ディスクユニオン

【クレジット】
yagihiromi writes all the tunes and plays a lot on this compact disc

ジャケット画: sabaku toumei
デザイン: ダダオ
マスタリング: George Mori




『物語を終わりにしよう』/ 想像力の血アートワーク
『物語を終わりにしよう』
/ 想像力の血
2025年12/24リリース
フォーマット:CD
レーベル:想像力の血
【Track List】
01. ◯◯空洞説
02. UTOPIA(異議申し立て)
03. ゴーストタウンの町長さん
04. ataraxia
05. ふたつのアリア
06. 着いてすぐ帰ることを考える観光客
07. Quaggi
08. Ide
09. こんな仕事はこれで終わり
10. 反時代ゲーム Il Conformista
11. EL TOPO
12. そして音楽はつづく
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2026.2.22 12:00

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