【INTERVIEW】「ぶっ恋呂百花」で胸張っていく――ぶっ恋呂百花『幽霊のように』インタビュー

『幽霊のように』ぶっ恋呂百花アートワーク


無駄を削ぎ落とすことで際立った「耳鳴り」

imdkm:今回のアルバムでは、アレンジでCwondoさん(No Busesのメンバー、近藤大彗のソロ名義)が入っていますね。最初に告知を見たときは意外に思えましたが、実際に聴いたらめちゃくちゃよかったです。
ぶっ恋呂:Cwondoさんに参加してもらった「死体」は、たとえばサビのコード感についてだったり、サビはシンプルにサビらしくしたいという要望だけ伝えていました。でも、Cwondoさんのアレンジは歌詞に沿っているうえに、自分のなかにあったこの曲の「水」のイメージにすごくぴったり合っていた。それがすごく嬉しかったですね。



imdkm:Cwondoさんに依頼することになった経緯は?
ぶっ恋呂:きっかけはなにも覚えてないんですけど、急に初対面でお茶をすることになって。そのときにCwondoさんから「私の曲のいいところ」みたいな、身に余るようなお言葉をいろいろいただいて。歌とトラックをこのバランスでやれる人はなかなかいない、とか。そこで、もしよかったら一緒に曲をつくりたいですとも言ってくださって。私もCwondoさんの曲を聴いていたし、いつか一緒にできないかなとずっと思っていたので、アレンジをお願いしようと。
imdkm:1曲だけ浮いている感じもなく、アルバムのなかにぴったりハマっていますよね。
ぶっ恋呂:多分、ほんとにCwondoさんが私の曲をちゃんと聴いてくださっていたんだろうなと思います。
imdkm:今回のアルバムは、ドリーミーで、あまり派手な音が入っていない落ち着いたサウンドが多いと思います。トラックをつくるにあたって考えていたことはありますか?
ぶっ恋呂:まず、連続リリースの頃の曲ってDAWのトラック数がえげつなかったんですよ。わけわかんない音を5つくらいならべてひとつの楽器として使って、さらにそれを重ねて、みたいな。今回はなにがなんだかわかるようにしたかった。「シンセが鳴ってる」とか、「ドラム・キック・スネア・ハイハットが鳴ってる」とかがわかるように。そういうふうに余計な要素を取り除いておくことで、ひとつどこかに変わった音を入れたら、そこが際立って聴こえてくる。そのために、できるだけ無駄を削ぎ落とすことが今回の目標でした。

現在の制作環境

現在の制作環境(photo by ぶっ恋呂百花)


imdkm:それこそ、タイトル曲の「幽霊のように」には最後の方に一瞬ハウリングみたいな音が入りますよね。あれがすごくおしゃれだと思って。実際、無駄をそぎおとすという方針が効いているなと思いましたね。
ぶっ恋呂:あれは耳鳴りの音なんです。「幽霊がいるときには耳鳴りが聞こえる」っていうイメージがずっとあって、最後にその音は必ず入れようって。そういうのも、今までだったら余計な音が鳴りすぎてて聞こえなかったと思うんですけど、今回のアルバムだからこそ聞こえてきたんだと思います。



imdkm:もう一曲、最後の「貴方を誘う」がすごく好きで。ラストの曲だから地に足をつけて終わるのかなと思ったら、一番サイケデリック。
ぶっ恋呂:私、小学校の5,6年くらいからCD買ったり借りまくったり、アイドルになってからもファンに方にいっぱいもらったりしていて。CDをウォークマンやコンポでずっと聴くのが、友達のいない私の楽しみだった。そういうCDのなかには、一番最後に隠しトラックとして変な曲が入っていたりして。あれがめっちゃ好きだったんです。私もそういうノリをやりたくて、最後は雰囲気を変えて、変な曲をつくりました。
imdkm:じゃあ、「貴方を誘う」がボーナストラックだとして、このアルバムのラストは実質「ラーメン替え玉ヒキニート」っていうことですか?
ぶっ恋呂:歌モノっていう点でいえば、本当にあの曲で終わる感じですね。「貴方を誘う」は最後に2~3分経ってから流れてくる曲みたいなイメージです。
imdkm:「ラーメン替え玉ヒキニート」も、どんな曲なんだと思ったら素直にいい曲で。
ぶっ恋呂:一番キャッチーですよ。
imdkm:キャッチーだし、しみる歌でしたね。
ぶっ恋呂:嬉しい。鬱だったときの自分を結構反映させてる曲なんです。美容室に行けなかったりとか、自炊もできないからボロボロの状態でラーメン食べに行ったりとか。

今の自分だからできたいい曲たち

imdkm:今回は歌にフォーカスが当たっていて、さっきも言っていたみたいに歌詞をちゃんと聴かせようと思っていたアルバムですよね。自分の言葉があって、自分のメロディがあるシンガー・ソングライターだなって改めて感じました。作詞のときに題材や言葉の選び方について考えていたことはありますか。
ぶっ恋呂:私の歌って、自分と「貴方」みたいに、二人称が出てくるものが多くて。恋愛みたいに捉えることもできるんだけど、自分としては恋愛だけじゃなくて、そもそもの人とのつながりを念頭におくようにしていて。ただ、今回に関しては、自分に対して呼びかけていることも多くて。自分で自分に言い聞かせているような。生活のなかで感じたことをそのまま言っちゃうと、一人称の言葉になっちゃうじゃないですか。歌詞に出てくる誰かは、比喩なんです。たとえば「サプリメント」では「私は貴方となら」って繰り返しているんですけど、もともとは「私は私となら」でした。自分だけじゃなくて、物事だったり概念だったりを「貴方」に言い換えしていたりすることが今回は多いですね。

去年がとにかく自分としてはしんどい時期だったので、もがけがもがくほど自分がどこに存在しているかわからなくなったり、たとえ肉体がまだ死んでなくても、忘れ去られたら存在もなかったことになるんじゃないかとか、いろいろ考えることがあって。事務所から離れて、「ぶっ恋呂百花」でやってくにあたって、ぶち当たった壁もいっぱいあるし、ひとりじゃ叶えられないこともある。「木下百花」っていうネームバリューからどんどん遠のいていくなかで、自分が望んでそうしたはずなのに、そこで生まれたギャップに苦しんだり。忘れてほしいと思いながら、忘れられたら私は私じゃなくなるんじゃないかと不安になって。そのせいで曲がぜんぜんつくれなくて、めちゃくちゃ引きこもってて。

「証明」は、テーマ曲の提供というきっかけがよかったんだと思います。自分の曲だけれど重く捉えすぎずにつくりだせたので、そこからは1年考えてきた自分のあり方について、「わーっ」って書きました。
imdkm:アルバムが完成して、リリースするまでに歌詞を読み返したり、もちろん何回も聴き直すじゃないですか。振り返ってみてどうですか?
ぶっ恋呂:……いい曲だなぁ、って。めっちゃいいアルバムだと思います。そもそも自分の曲がめっちゃ好きなんで。歌詞も、自分の歌も好きだし。今回のアルバムはバランスがいい感じだなと思って。いままでいろんなことをやってみたうえで、今の自分だからできることをやれたなと。それを踏まえて、「いい曲だなぁ」って思うかな。

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『幽霊のように』ぶっ恋呂百花アートワーク
『幽霊のように』
/ ぶっ恋呂百花
2025年8/7リリース
フォーマット:デジタル配信
【Track list】
01. 証明 feat. AIR-CON BOOMBOOM ONESAN
02. 死体 (Arrangement by Cwondo)
03. 恋するとしたら
04. 幽霊のように
05. サプリメント
06. 耽溺
07. ラーメン替え玉ヒキニート
08. 貴方を誘う (Guitar by 伊東真一)
マルチリンク





1st Full Album “幽霊のように” Release Tour
『幽霊としての証明』開催決定

2025年9/6(土)東京 表参道WALL&WALL
ACT:ぶっ恋呂百花 / Cwondo / vq
Special Guest/ AIR-CON BOOM BOOM ONESAN / 伊東真一
VJ/ Humungas

2025年9/13(土)名古屋 sunset BLUE
ACT:ぶっ恋呂百花 / 木下百花(弾き語り)

2025年9/14(日)大阪 environment 0g
ACT:ぶっ恋呂百花 / 木下百花(弾き語り)

前売りチケット・詳細・感染症に関する表記

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2025.8.21 19:00

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