【INTERVIEW】箕輪政博 interview
数々のバンド・リハーサルでこれらが融合されドラミング・スタイルが出来上がってきたのだと思います
- ―:このころから箕輪さんはバンドの掛け持ちが増えてくるんですよね。
- 箕輪:音楽評論家でベーシストでもある小山哲人君と知り合い、リズム隊としてA-Musik、そして大熊ワタル君のバンド、ルナパーク・アンサンブルや、ピアソラ研究家でピアノ斎藤充正さんのバンド、コリーナ・コリーナなど複数のバンドを同時に。同じころマネージャーが立教だった関係で町田町蔵君と出会い、後に小山君も加入する人民オリンピックショウもスタートしました。人民のころはフランク・ザッパですね。初期のマザーズから、やはりテリー・ボッジオから最期のドラマー、チャド・ワッカーマンまで随分お手本にしました。数々のバンド・リハーサルでこれらが融合されドラミング・スタイルが出来上がってきたのだと思います。
人民オリンピックショウ
- ―:86年に宝島から発売されたカセット・ブック「どてらい奴ら(町田町蔵from至福団)」 のドラムに、それを感じます。
- 箕輪:彼が住んでいた成増の風変わりなアパートでよく呑み交わし、ザッパやキャプテン・ビーフハートを聴きながらバンド構想を練りました。バイトも共にし、バンドの中核を2人で為し濃厚な時期でした。合宿に近い形でバンド練習を重ね、ライブハウスに結構出演し、85年だったか日比谷野音にも出ましたが、公式音源が残っていないのが残念です。手元にある藤井暁さんが残してくれたテープを今聴くと、唯一無二かつ空前絶後の出来ですよ。自分のドラミングも伸び盛りの時期で、手前味噌ですが、町田氏が扇太郎と名付けたように扇で煽るような勢いと手数の多さと変拍子、バンドとしてグルーヴをドラムが引き出しています。
CanisLupus
- ―:Canis Lupusは人民オリンピックショウの後ですよね、この手数の多さは。
- 箕輪:北村さんからバンドをやらないかとオファーがありました。割礼と西日本ツアーなどライブを沢山こなしたり、キャニスは私がマネージメントしていました。80年代末から90年代にかけてアルバムも3枚リリース。ドラミングについては、ここで、かなりプログレシッブでアグレッシブな完成型ですね、私の現役最終バンドですから。
- ―:そして、このころ、Phewさんとも。
- 箕輪:キャニスの頃、ドラマーとして一番熟していたころだったと思います。Phewさんのアルバム「View」(1987年)でドラマーとしてメジャー・デビューとなりますかね。ビクターの河口湖スタジオや青山スタジオなどでレコーディングしました。キーボードはチャクラなどの近藤達郎さん、ギターは大津真さん。完全アウェー状態で緊張しましたしドラミングの制限や抑制が要求されたのは初めてだったかもしれません。でも、このドラミングは今でも好きですし、1つの完成型だと思ってます。
PHEW
音楽活動封印中の30年間はリスナーに徹し、CDに埋もれていた相当沢山の音楽を吸収しました
- ―:90年代になると箕輪さんの名前を見なくなってきます。
- 箕輪:20代後半になると、さすがに将来への不安が段々と大きくなります。バンドの連続、見えない評価、万年金欠……。手に職をと資格本とにらめっこしながら、そんなとき出会ったのが鍼灸・東洋医学でした。専門学校へ進学し、昼は学校とバイト、合間にキャニスやPhewのライブ、ミュージシャンの掛け持ちと人生一番の多忙な生活でした。東洋医学の深みにハマりよく勉強しましたね。こうして転機が訪れ千葉県の教員となり、それに生きがいを感じてきて音楽表現欲求が失せてきました。これまでの音楽活動、人間関係を一切封印しスティックを鍼に持ち替え、仕事、家庭、研究と、あっという間の約30年を過ごし、自分の音源は一切聴きませんでした。
- ―:2010年代のトランス・レコードの再発で、イルボーンやキャニスが再評価され、当時を知らない若い世代にも届きましたが。
- 箕輪:それはインターネットで知りました。自分では自分のドラミングをさほど評価はしていなかったんですが、少なからず私のドラムのファンがいることも知るわけです。
- ―:そして中田さんと再会する……。
箕輪政博(photo by ANZU-SHIN)
- 箕輪:退職後、還暦を過ぎました。ドラマーとして復帰、ましてやバンドの再開なんて皆目考えてはなかったんですね。自由時間が多くなって、運動目的にスティックを握りましたが、体が思うように動かないし、かつてのドラミングも思い出せない。出来ないことには立ち向かう性格でYoutubeなどで細かなテクニックを研究し練習しながら気長にリハビリを始めました。かつての自分が表現していたことが出来ないなんて情けないし悔しいですよね。特にデヴィッド・ボウイの遺作「ブラック・スター」のドラマー、マーク・ジュリアナとブライアン・ブレイドのドラミングは刺激を受けましたね。意外にもスマッシング・パンプキンズのドラマー、ジミー・チェンバレは好きです。
イルボーンは私のドラミングの原点、私不在の再稼働イルボーンに対して、何か違うこれは違うと悶々としました。そして、中田君との再会に繋がります。 - ―:新生イルボーンは、ベース山崎さんが大きな役割をしていると感じました。
- 箕輪:山崎怠雅君との出会いと協力が欠かせなかったです。彼の音楽才能は特筆すべきものがあります。また期限付きで参加してくれた曇ガ原のヴァイオラ伊藤君も素晴らしいギタリストでとても感謝してます。
- ―:では、最後に自身のドラム・スタイルについて
- 箕輪:スネアにおいては普通のショットとリムショット、単打から連打といったルーディメンツ、復帰後はウッドフープのリムショットの導入、タムタムワークではフィルはもちろんリズムワークは一つの特徴かもしれません。また、フロアタムとスネアとのアクセント的連打、シンバルワークは特に重要で、トップシンバルの使用は多く単なるリズムワークのみならず多彩なリズムとカップ、クラッシュシンバルとの併用や兼ね合い、トップとハットの相互リズム、私はチャイナシンバルが好きで、できればシズル付のトップが欲しいですね。これらのテクニックはリハビリを経て個人練習やバンド・リハーサル、イメージ練習で日々深化しています。リズム楽器としてボーカルや弦楽器相互のアンサンブルを重視しながら、ドラム個々の音を響かせたいといつも考えます。そして何よりも全体のグルーヴ感をイメージから引出すことが肝心だと考えます。音楽活動封印中の30年間はリスナーに徹し、CDに埋もれていた相当沢山の音楽を吸収しました。その消化が復帰のドラミングに生きているとも思います。
Canis Lupu “Vlk je stále naživu TOUR”
2024年5/02(火)高円寺HIGH
2024年5/17(金)難波BEARS
2024年5/19(日)京都UrBANGUILD
詳細情報
Dr.箕輪政博
Ba./Vo.森川誠一郎
Gr.マジカズヒデ
※マスクの着用は個人の判断となります。
『青空』/ 造反医学
2024年3/20リリース
フォーマット:CD
レーベル:SUPER FUJI DISCS
カタログNo.:FJSP495
【Track List】
01. 青空
02. カバラ
03. おやすみ
04. 黄土
05. 天皇
06. 60’s poison
07. 平和
(以上カセットアルバム「青空」より M1-4 スタジオ録音 M5-7 ライブ)
08. 光州
09. ベイルート
10. おやすみ
(M8-10 1982年10月ライブ)
ディスクユニオン
Amazon
【クレジット】
Vocal, Bass:中田JUN(中田潤)
Guitar:Lym(石黒浩孝)
Drums:箕輪攻機(箕輪政博)
Sax:TSURU(M1, 2, 4, 7)
編集・マスタリング:George Mori デザイン:ダダオ
解説:中田潤、箕輪政博
『日本』/ ILL BONE
2024年4/10リリース
フォーマット:CD
レーベル:SUPER FUJI DISCS
カタログNo.:FJSP49
【Track List】
01. Jinta
02. 死者
03. アメリカ
04. Christine
05. 住所
06. ネイション・ブルース
07. 霧
08. ベイルート
09. 我等の二月
10. 日本晴れ
11. ひとりの男が殺された
ディスクユニオン
Amazon
【クレジット】
中田潤:ボーカル、ギター、ベース
石黒浩孝:ギター
石川佳世子:ベース
箕輪扇太郎:ドラムス, タブラ
弓削聰:ギター
大熊ワタル:キーボード1. Jinta
M1, 11:1984年12月30日 渋谷ラママ
M2-7:1985年10月27日 新宿ロフト
M8:1983年11月12日 横浜市立大学野外
M9, 10:1983年4月29日 京都大学西部講堂
編集・マスタリング:George Mori デザイン:ダダオ 解説:中田潤、箕輪政博
2024.4.21 12:00
カテゴリ:INTERVIEW, PU3_ タグ:canis lupus, JAPAN, Phew, イルボーン, 人民オリンピックショウ, 箕輪政博