【INTERVIEW】川本真琴の2022年
2019年8月、9年ぶりの新作アルバム『新しい友達』発売直後の活動の中で、自身がDJをやったイベント時に何の脈絡もなくデビュー前のデモ・テープの一部が流れた。それは驚きをもって迎えられ、急遽、翌2020年2月に限定のカセットテープ『No.1 Hippie Power』として発売された。その後、数百人だけが知るその凄さが口コミで拡がり、2022年1月にCD化発売となった。本取材は、この発売後に行われ、川本真琴の今とこれからを訊いたものである。
音楽とアートが一緒になったものを残したいと思ったんです
- –:2021年に入って、すぐ有本ゆみこ(SINA SUIEN)さんが舞台監督をした生配信ライブ がありました。
- 川本:ひとつの作品になるような配信がしたくて、しっかり企画しました。
- –:かなり作り込んだものだったから準備も大変だったでしょう。
- 川本:半年がかりでしたね。
- –:新曲を披露しましたね。そして詩人の松井茂さんの朗読も。このアイデアは?
- 川本:松井さんとは、たぶん2019年頃からお互いに詩のやりとりをしたり、一緒に何か出来ないかとゆっくり進んでいました。象形文字を読んで下さい、とお願いしました。
- –:『新しい友達』が出来た頃に言ってましたね。それをカセットで出しましょう、何か形にしようって。
- 川本:そこに、書家の下村奈那さんも加わっていただき配信ライブで公開しました。
- –:具体的には何が出来ると考えたんですか?
- 川本:詩と書と音楽が即興でできていくのがおもしろくて。どうなるかわかってなかったです。
- –:そこにさらに写真家の佐内正史さんが加わりますが、その役割は?
- 川本:書をスクリーンに映し出すのに白い画面じゃなくて写真だったらキレイかもって思って。写真には生が映し出されていて、とてもキレイだと思いました。
- –:さらに照明がいい効果を出してました。
- 川本:佐藤円さんですね。2019年くらいから知り合っていつか何か一緒に出来ないかと思っていました。あまり映らなかったのですが、レーザービームが天井に行き交っていてかっこよかったんですよ!
- –:この日の衣装から背景の美術まで凝ってましたからね。
- 川本:有本さんは、衣装をこの日のためだけに全部作ってくれたんです。
- –:そして新曲「カートコバーンと両想いになりたいガール」がとにかく良かった。
- –:ベースが伊賀航さん、ドラムが久下惠生さん、そしてピアノが林正樹さん。この場所はどこですか?
- 川本:両国の門天ホールですね。グランドピアノがあって、ここでライブ出来たらって思ってたんです。やりたかったことを一気に全部詰め込みました。
- –:エポックな配信作品だったと思うんです。
- 川本:音楽とアートが一緒になったものを残したいと思ったんです。
新曲はライブで演ってて、楽しいです
- –:では、今年の話をしましょう。
- 川本:新曲が揃ってきたので、レコーディングを3月から始めようと思っています。
- –:新曲について聞かせてください。
- 川本:前回のアルバムはエンターテイメントに楽しんでもらえるように作りました。最近出来てきた曲は個人的な感じです。とはいえ内に向かっているわけじゃないです。
- –:沢庵みたいなものか。
- 川本:うーん、沢庵ではないです……。
- –:どうやって曲を作っていますか?
- 川本:サビだけボイスメモに録ってあったり。
- –:どういう時に曲ができやすいですか?
- 川本:ライブ前に曲が出来ることがたまにあります。勢いがありますよね。
- –:最近はどんなのが好きですか?
- 川本:ファンシーでダーク感もあるもの。それは元々好きな世界で、少しオルタナ入ってるのが好きです。
- –:それは去年のライブでも感じました。新曲は、これまでとは違う印象で。
- 川本:気軽さもあります。
- –:何も狙うことなく出来た感じがします。アルバム作るためのものじゃないから自然に出来てくるのがいいですね。
- 川本:新曲はライブで演ってて、楽しいです。
- –:1人で演ってもバンドっぽさをも感じますね。
- 川本:そうですか!
最近では人に提供する曲もいくつかあって、それは趣味でやっているのとは少し違う、依頼されている感覚があって、担当のディレクターさんとどういう曲にするのか相談しながらやっています。 - –:先日はニイマリコさんの曲に参加しましたよね?
- 川本:「カートコバーンと両想いになりたいガール」の配信映像をみて、MVに出演してほしいと連絡をいただきました。川本さんじゃなければだめなんです!と言われて嬉しかったです。
- –:女性アーティストとのコラボレーションや対バンが増えましたよね。有本ゆみこさんのファッションショーに出演しましたね。
- 川本:有本さんとは、ただ参加するのではなく企画の段階から何度も相談してました。
- –:2年くらい前だけど、台湾からのオファーもありました。
- 川本:もうすぐ発表できるかと思います。もう出来ている曲もあるので、車の中とかでよく聞いてます。めちゃ可愛いです。早く聞かせたいな〜!あ、私が進めなきゃなのか?
- –:最近だと若手の映像作家、内海拓の作品「ベッドタウンの神様」に参加しました。これは面白かった。
- 川本:大野志門さんとラップしてます。最近ラップを聴くようになりました。
- –:それは今やるべきでしょう。
- 川本:私の中ではラップはベティ・ブーが最初で最後だったんですけど。
- –:ベティ・ブー!1990年ころでしたっけ?
- 川本:『No.1 Hippie Power』の「G.I.W.」でもラップやったつもりなんですけど、あれはベティ・ブーの影響です。最近、歌よりラップの方が表現が自由なんじゃないかと思ったりします。
- –:歌はどうしてもメロディーがあって。
- 川本:ラップはそれがないから表現もいろいろ出来るし、表情みたい。
- –:エンジニアの中村(宗一郎)さんともたまに話すのは、川本さんのボーカル録り、いつも試しに歌った1テイク目がいいよねって、ありますね。気負わずさらっと歌っただけの。
- 川本:ラップはそれに通じるかもしれませんね。最近はちょっと行って、サクっとやってます。「劔ならドラゴンブレード」の時は2テイクだったかな。東京藝大のスタジオで録りました。
- –:いつもは30テイクくらいだからね。
- 川本:でも山本精一さんは、1曲を4日歌録りしたって言ってたから、安心してます。
- –:今、夢中になっていることはありますか?
- 川本:「人形」のMV撮りですね、手作りで。東京藝大のチームで撮影していただきます。
- –:ちょっと時間経ちましたが初夢は何でしたか?
- 川本:旧正月を新年としているんですが、ふんわりしてました、確か。ふんわりしていたいです。
- –:今年をひとことで表すなら?
- 川本:「爽やか」。
- –:カセット発売だけで終わるはずだった『No.1 Hippie Power』がCDで出せたのは今よかったと思うのですよ。
- 川本:『音楽の世界へようこそ』の前くらいから川本真琴を自分目線でやり始めてきたんですけど、もう13年目、少しずつ川本真琴と自分の距離感がなくなってきて、新たなスタート地点に立ってる感じがしてきてます。
新たなスタート地点に立ってる感じがしてきてます
取材:金野篤
『No.1 Hippie Power』
/ 川本和代(川本真琴)
2022年1/19リリース
フォーマット:CD
レーベル:MY BEST! RECORDS
カタログNo.:MYRD146
【Track List】
01. G.I.W.
02. 誕生日
03. No.1 Hippie Pop
04. 少年
05. ギター
06. LOVE YOU
07. 三日月のドア
08. Happy End For You
09. 人形
10. 四次元の風船
11. 夕焼けの丘
12. 悲しい空もよう
13. 恋のリップ
14. さんぞうほうし
15. 助けてよ windy
16. 誕生日(full ver.)
17 Will You Are Marry?
ディスクユニオン
Amazon
【クレジット】
作詞、作曲、編曲演奏、ボーカル、録音:
川本和代 1994 年
2022.3.9 12:00
カテゴリ:INTERVIEW, PU2, PU3_ タグ:JAPAN, 川本真琴
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