【REVIEW】夕刻の窓辺(御伽の森レーベル) / VA

otogi

繊細な電子音、または静謐なアコースティックサウンド、対照的な音がとても心地よくつながるという事がある。実はどちらも同じことなのだと言わんばかりに。御伽の森レーベルはそういったささやかな驚きと感情のゆらぎを飾らずさりげなく用意してくれる。2014年10月にリリースされたレーベルコンピ第三弾、テーマは夕刻の窓辺。秋の心地よい風とともに流れてくる音楽、御伽の森レーベルが初めて迎えた秋にやはりいつもどおりさりげなく素晴らしいコンピが届いた。

▼01 絵に描いた餅を食べたばかりの老人のための前奏曲 – Hoshino Keisuke
まず、タイトル。ドビュッシーやサティの世界観を連想せずにおれない。トラックはというとサイン波が刻む旋律とメジャーコード、リズムボックスの断片的なリズムが徐々にからみあい、解決するとみせかけて次のフレーズへとつなぐたくみな楽想を提示する。

▼02 The wind reminds me – 荻谷 まどか
秋風のようなホワイトノイズとメロウなブレイクビーツにメランコリックなコードとピアノの旋律。中間部にあらわれるギターと逆回転のようなアプローチで舞う電子音。冷たすぎず、あたたか過ぎず、エンディングに向けて高まるメロディーが見事だ。

▼03 cosmos garden – ちくわエミル
優しげなドローンのアンビエンスと深いリバーブに沈むコード。ここでもやはりドローンは秋風を装って駆け抜けるように楽曲を覆っている。リズムトラックは細かく区切られて断片的に登場するが、終始一貫淡く遠い追憶のように配置されている。

▼04 red leaves – 文月だいご
ここでアコースティックギターによるアルペジオ、エレピのコードとメロディー。Bossaを連想させるシンプルでモノトーンなリズムトラック。後半、畳み掛ける印象的なメロディーが登場すると、その瞬間の色のうつろい大きく変わる。とても美しい。

▼05 One autumnal night – Fluffytails
ニューウェイブとシューゲイズを連想させる揺れるギターと、フィールドレコーディング、エコーに包まれたリズムトラック。中間部、タイムの長いディレイが時折ダブ効果をもたらして静かに覚醒すると、徐々にベースラインが見えてくる。淡さと切り替えのバランスが印象的。

▼06 鈴の音の夜 – Laika
アコースティックギターのアルペジオ、ミュートとハーモニクス、穏やかなコード進行とリバーブに包まれたリズムトラック。ミニマルに繰り返すミュート音、しだいに姿を見せる幾重にも重ねられた旋律。どの旋律を追いかけてもオーガニックで美しい。

▼07 Orbit around our 3 dreams – LTPimo
サイン波と一瞬あらわれる声、細かくカットアップされたエレピとピッチベンド。中間部にあらわれる美しいコードと旋律。ブレイクをはさんで後半はストリングスに包まれたささやかなアンビエント。短いトラックに込められためくるめく展開が見事だ。

▼08 For Cosette – shinonome
ミニマルなピアノの淡い旋律とフィールドレコーディングノイズを活かしたループ。ベースラインが入りコード進行が見えてくる。上品にカットアップされたノイズが美しい。ゆるやかなブレイクをはさんでリズムが強く高まっていく。いつまでも続いて欲しい美しいエンディングが印象的。

通して聴くと分かるのは、どのトラックもメジャーコードを中心とした構成になっているという事。これが案外とコンピレーション全体の調和を作り上げているように思う。ゆったりとした進行で繰り返し聴きたくなる曲集に仕上がった。

テキスト:30smallflowers(@30smallflowers)https://twitter.com/30smallflowers

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2014.10.30 2:52

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