【REVIEW】ROTH BART BARON「ロック・ミュージックを通して世界の人々が生きてきた地図のようなものを覗いてみたい」
今や日本を代表するインディー・ロック・バンドの一つとして認知されつつあるROTH BART BARON。幾つもの国内フェスや海外ツアーをこなし、来たる2016年2月15日にはNHKのTV番組『MUSIC JAPAN』にも出演します。
次の文章はファースト・アルバム・リリース時、2015年1月に海外メディアbeehypeに寄稿いただいたものの原文です。もう一つはセカンド・アルバム・リリース後の現在、2015年を振り返って選んでいただいたベスト・アルバム5枚です。執筆者は三船雅也さん。画像をクリックするとApple Musicで聴くことができます!
僕らの住んでいる東京ではあまりにも”西洋化”と”安っぽい形だけの日本らしさ”に囲まれていて”自分が生まれた場所、国の音楽”というものをとても見失いやすくなっていると感じることがあります。
過去の日本の作曲家たちは、積極的に海外からの音楽を日本のものとブレンドして素晴らしいものに作り変えようというというスピリットを持っていました。僕らはそのワクワクするようなスピリットが好きでロック・ミュージック、古いフォーク・ソングはもちろんのこと、その魂を持った滝廉太郎や伊福部昭に影響を受けています。
僕たちがこの間リリースしたアルバム『ロットバルトバロンの氷河期』は日本語で歌う僕らの音楽をアメリカ、フィラデルフィアの街で日本語を話さないアメリカ人のエンジニア達と一緒に作り上げました。
そういった違う人種同士の交差点にはいつだってハプニングが起きますし、いいアイデアをもたらしてくれる。その交差点、接触が僕らをとても楽しくさせるのです。作品を作り上げる体験はとても日常では得がたいものでしたし、アルバムも素晴らしいものになりました。テクノロジーや手法、楽器は西洋のものを使っていますが、おそらく僕たちはまだ誰も見たことのない、深い奥底にある日本の景色を目指しているのかもしれません。
バンドはいつか世界中を演奏して周り、各土地の土着的な音楽と出会いたいと思います。ロック・ミュージックを通して世界の人々が生きてきた地図のようなものを覗いてみたいのです。
レコーディングでカナダ・モントリオールへ行ったりしていたので自分の作業ばかりで新譜に敏感になれなかったのですが(忙しいのは本当にありがたいことですが)、ふと振り返ると今年も沢山の音楽に励まされてきたし受けとっていたなぁと感じています。
最初のアルバム”氷河期”をレコーディングしたフィラデルフィアのヒーローKurt Vileの新譜は素晴らしいアルバムでしたし、USツアーで出会ったLowの新譜はアランにインタビューもできて印象深い作品でした。待ちに待ったPhil Cookのソロ作品は僕の気持ちを前へ前へと押しやって、Dave Rawlings Machineは相変わらずの素晴らしいギタープレイそしてSufjan Stevensの悲しみと優しさは、自分がどこか遠くへ突き飛ばされたような気持ちになりました。
バンドの新作『ATOM』をこれらの作品たちと同時期にリリースできたことをとても誇らしく思います。さて2016年はどんな年になるのでしょうか。
テキスト 三船雅也(ROTH BART BARON)
取材・編集 森豊和(@Toyokazu_Mori) beehype 日本特派員
2016.2.12 21:30
カテゴリ:REVIEW タグ:JAPAN, roth bart baron