【INTERVIEW】either『Endless Summer Ends』
当時はめちゃくちゃに思春期を拗らせまくっていたと思います
- –: バンド結成の経緯を聞かせてください。
- 佐々木: either結成前、激情ハードコアバンドを僕と大野くんで組んでいたのですが、そのバンドで曲を作っていたギタリストが先輩バンドに引き抜かれてしまいまして、そのまま脱退してしまいました。
FILTERのツアーで大阪にライブを行った帰りの道中、ギタリストに脱退の旨を伝えられ「その場で解散しよう!」となったのですが、あの瞬間は忘れもしません。解散をすると決めたときの大野くんの顔は青ざめていました。大野くんは1週間前に高いベースを買ったばかりで、一番バンドをやることを楽しみにしていたんでしょうね。
東京に着き、2人で帰りの電車を待っているとき、ボソッと「僕、ベース買ったばかりだよ……僕とバンドをやってくれ〜」と嘆いていました。
バンドはまたやろうと思ったのですが、自分はギターも歌も下手で、どんな音楽でどんなバンドがやりたいのかも自分の中でわからなかったんです。解散する直前、先ほど話した脱退してしまったギタリストにけちょんけちょんにされていたので、自分がバンドをやるということに自信が無くなっていました。
どうするか悩んでいるときに、前述した”YouTubeを見る会”でみた銀杏BOYZの『せんそうはんたいツアー』を見て、もう一度、好きなことを全力でやってみようとなりました。
別々のバンドをやっていた黒見くん(ex either)とは、年齢も近く、好きな音楽も似ていてよく遊んでいたのですが「同世代でバンドをやってみたい」と相談を受けていましたこともあり、黒見くんと大野くんに「バンドやろうぜ!」と誘いました。
結成当初のドラムは、黒見くんの大学のサークルの先輩で菅野さん。当初、4人でスタジオに入っていたのですがあまりにもヘタクソすぎて「ギターを別に入れないとヤバい」となり、Twitterで募集したところ、バギオがコンタクトをくれて、晴れてeitherは結成されました。
月日は経ち、菅野さんと黒見くんは脱退してしまい、バギオが所属していたスポーツ少年団でセカンドを守っていた、ふみくん、elkというバンドでドラムを叩いていた村田さんが2017年の末に加入してもらい現体制になりました。
また、ドラムが居なかったときにサポートをしてくれた仔豚さん(kOTOnoha)、モリオ(FRIEND SHIP)、こうくん(sans visage / AGATHA / POINT HOPE)には大感謝しています!
- –: 「either」というバンド名ですが、私は沖縄のエイサーからだと思っていたらHusking Beeの歌詞からだという事を今回知りました。Husking Beeや今まで聴いてきた音楽への思い入れを聞かせてください。また、それらの音楽はeitherにどのような影響を与えていますか?
- 佐々木: はい。HUSKING BEEはみんなが大好きなバンドの一つなので、「THE SUN AND THE MOON」の歌詞の中から一単語、とらせていただきました。
出会いは、高校一年生の入学式終わり。ハイスタ、ゴイステ、モンパチが好きだった佐々木少年は、後ろの席に座っていたサトウ君に「ハイスタが好きならこれも好きだべ」と、ブラフマン、マスターロー、アスパラガス、BDB等の日本のバンドを教えてもらいました。
その中に、Husking Beeがいまして、最初は「摩訶不思議テーゼって歌詞やべえよなwww」と、サトウ君とふざけあっていたのですが、どんどん聞きこむにつれて、日本詩と英詩の絶妙なバランス。曲が早くないのにかっこいい。何より、メンバーが全然イケイケじゃない!そんなところに激共感いたしまして、それからはいつか来るであろう復活に向けて、日夜、Husking Beeの解散ライブのDVDを見ながらソファーに向かってダイブの練習をしていました。
サトウ君からはいろんなバンドを教えてもらいました。その中でどうやら自分はパンクというジャンルが好きだ。と気づくことができ、それからは当時流行っていた、ニコニコ動画、myspaceで日本のパンクバンドを自主的に調べることになります。
調べていく過程でFRUITYに出会うのですが、これもハスキンに次ぐ衝撃度具合で、めちゃめちゃかっこいい……と。そこから、どうやらその昔西荻?という東京の地名のジャンルがあるらしい!!と勝手に盛り上がったり、一種の同族嫌悪で銀杏BOYZのCDをゴミ箱に捨てて聞かなくなったり、日本のパンクはクソだ!と海外のパンクバンドしか聞かなくなってしまったりなど、いろいろありました。
今はどのバンドも大好きなのですが、当時はめちゃくちゃに思春期を拗らせまくっていたと思います。
2018年、エルレガーデンが復活し、SNSでは歓喜の声が絶え間なく流れていたのですが、僕らももちろん例外ではなく、エルレ復活サイコー!とみんなで喜びを分かち合いました。
好きなバンドは数多くいますが、曲を作る際にこのバンドのこの曲……と具体例を挙げてイメージを共有することはなく、抽象的なニュアンスで曲作りをすることが多いです。
ただ、ティッシュだらけの汚れ切った畳の部屋で、何の気もなしにMDコンポから聞いていた歪みきったバカうるさい音楽が、バンドをやりたい。と強く思い始めた原点あることに間違いはありません。
思い出ってどうしたって美化されてしまうんですよね
- –: 「青春発墓場行き」というコピーですが、こちらはどなたの発案ですか?このコピーにはやはり死ぬまで突っ走るという意味合いですか?
- 佐々木: 沢木耕太郎さんの深夜特急という小説の一文から黒見くん(ex either)が抜粋し、キャッチコピーとして使い始めました。「死ぬまで突っ走る」というよりかは「一生青春を謳歌することができる」というニュアンスの方が近いかもしれません。
そもそも、”青春とは何か”ということですが、謂れもない感情の高ぶりこそが青春だと思います。
10代後半の何をするにも興奮していたあのころ。
クレアモールを自転車で駆け抜けた朝や、食堂で殴り合いの喧嘩をただ傍観していた昼、綿菓子機を荷台に積んで車道を全力で走った夕方。
まるひろの駐車場で初めて異性と手をつないだ夜。
あの時の匂いや音、全部が未だに記憶に残っています。
所謂年齢的にも精神的にも大人になり、あの時と同じことをしてもなかなか興奮することが少なくなってきていますが、それでも、今作が出来上がったときに感じた興奮は紛れもなく青春そのものだったし、ライブでしか会わない方の笑顔や、掲げた拳は青春の共有だと思っています。
僕の好きな漫画『シガテラ』の最後、主人公のオギボーは「つまらない大人になった」と言っていましたが、僕たちeitherは、そんなつまらない大人にならないように死ぬまで抗う。
そんな思いが「青春発墓場行き」には込められています。 - –: みなさんサラリーマンをやりながらバンドをやっているとの事ですが、サラリーマンをやりながらの活動で感じているメリットとデメリットみたいなものがあれば聞かせてください。
- 佐々木: 働きながらバンドをやることは、ほとんどがメリットだと感じています。働いているおかげで、バンド以外でも外のつながりができているのは精神的にもいいことだと思います。
仕事のストレスをバンドで発散できますし、バンドで悔しい思いをしたときなどは、逆に仕事に向けることができています。何より、生活の基盤がしっかりしていることは大きいです。
プライベートでバンドが続けられなくなる問題に直面した場合も、会社に所属しているお陰で、バンドを続けることができない。という選択をしなくても済むこともあるかと思います。
仕事とバンド活動を両立するのはなかなか大変ですが、そもそも僕らは幼少期のころ、夏休みの宿題は前日に急いでやるタイプでしたので、仕事をしてようがしてまいが、バンドにさける時間は変わっていないと思います(笑)公私が忙しいほうが、だらけることもなく、何事も楽しんでできています!
- –: ブックレットを読むと脱退してしまったメンバーの方が結構大きな存在だったようですが、脱退した方について聞かせていただいていいですか?
- 佐々木: 今までのインタビューの受け答えでもたくさん出てきている通り、バンドの中心人物の1人でしたし、バンド以外でも、親友と胸を張って言えるほど仲の良いやつで、純粋にそんな仲がいいやつが辞めてしまったのってすごく悲しいなあ、と感傷に浸ってしまいます。
今作、加入してくれたメンバーが居なかったら完成しなかったといっても過言ではありませんので、今あいつがいてくれたらな……とは一ミリも思わないです(笑)ですが、思い出ってどうしたって美化されてしまうんですよね。
これはメンバーに限らずなんですが、無くなったり、失くなったり、亡くなったりしてしまうモノや人に、異常にノスタルジーになってしまいます。今まで当たり前にあったものが、そこに無くなってしまうのが超悲しくなってしまうんです。
ただ、脱退したから悲しんでばっかりいられない気持ちも、もちろんあります。仲が良い友達だけではバンド活動は乗り越えられないので、そこは割り切り、僕らが親友であるためには脱退も仕方のなかったことだ。と、時間が経った今、納得はできています。
脱退してしまった黒見くんはもちろん大きすぎる存在でしたが、それ以上に、今いる4人のメンバーはもっともっと大きな存在です。もっと言えば、脱退したのにスタッフとしてバンド活動を手伝ってくれる黒見くんも、あの時より、大きな存在になってくれています。
good old daysな思い出を更新し続けられている周りの人たちのサポートに感謝しています。
- –: 「Apology GIrl」はバギオさんが最初に持って来たとの事ですが、みなさんはこういうパワーポップ系の楽曲もよく聴くんですか?もしよく聴かれるとしたらアーティスト名や作品名を教えてください。
- 佐々木: はい、パワーポップも大好きです!
ゴイステ、銀杏からの流れで、weezerに辿り着き聞いてはいたのですが、その頃は”速くて歪んでいるのが正義!”みたいな思考になっていたため、そこまでハマりませんでした。
その後、アメリカのポップパンクバンド、Bowling for SoupがFountains of WayneのStacy’s Momをカバーしているのを聞いて、かっこいいと思ったのがパワーポップを好きになった理由です。
Motion City Soundtrackなど、キャッチ―で胸キュンサウンドを鳴らす好きなバンドはたくさんいます。
日本のバンドですと、ナードマグネットがblue album(CRAZY,STUPID,LOVE)を出した時は衝撃的でした。日本のバンドなのでたくさん聞いてライブに遊びに行き、たくさんシンガロングしています。 - –: 最後に今回のアルバムはどのような方に聴いて欲しいと思っていますか?
- 佐々木: 泣きたくなるような夜や、仕事や恋愛に失敗したとき、落ちてる空き缶を蹴っ飛ばしたくなる瞬間、思い出を辿って少しだけ感傷に浸ったとき。
はじめて何かを成し遂げようとする人、はじめて何かを成し遂げた帰り道。
そういう時にアルバムを聴いてみてください。
一緒に悲しんだり、喜んだりできる曲がたくさん詰まっています。
また、そう感じていただけることは、バンドマン冥利に尽きます。
僕らが夢中でフォーカラープロブレムを聞いていた頃のように、僕らが必死で「メイキングザロード」をコピーしていた頃のように、
誰かにとってそういう一枚になれたら、これにすぐる喜びはございません。
必死で作ったアルバムです。
知らない誰かにまで届いたら素敵だなって思います。
出会ってしまった人は是非、たくさん聞いてください!
ありがとうございました。
『Endless Summer Ends』/ either
2019年3/13リリース
フォーマット:CD
レーベル:I HATE SMOKE RECORDS
カタログNo.:IHSR-080
価格:¥2,100(税抜)
【Track List】
01. In my room
02. Youthless
03. メロンソーダ
04. Stolen Summer
05. アスピレーション
06. アポロジーガール
07. 少年時代
08. リグレット
09. Hometown
10. OMOIDE INOHEAD
1 2
2019.3.12 12:00
カテゴリ:INTERVIEW, PU3_ タグ:either, JAPAN, punk
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