【INTERVIEW】Boyish『めざめ』

「突っ込んでいうと、ブラックか、ブラジルか、ロックか、そこはそれほど拘りがなくて、ただ好きな音楽を素直に形にしたい、そう常日ごろ思っています」(岩澤)

–:Boyishの最新作、作り終えてからもうかなり日にちが経っていて、第三者的に見れるかと思います。いま自分が作った最新作を聴いてみて、どうでしょうか?
岩澤:聞いてみてサウンド的には自分の思い通りのものができ、満足しています。ミックスを手がけて頂いた岩田さんのおかげです。ただ、一部の自分のパートはきになる点が多く気分のいいときにしか聞きません。次はこういう曲作りたいとか……そういったのも、なんとなく思うところがあります
–:前作から一気にメンバーが脱退し、メンバーが決まったりまた抜けたり……を続け、いまのメンバーになったと思います。かなりお辛い時期だったと思いますけど、どんな気持ちで活動を続けていたんでしょうか?
岩澤:抜けると決まったときがキツかったですが、別れるときには関係が修復されたと感じていたのでそこまででした。僕としては、そのあとメンバーが集まりかけたときに再度バラすときのが精神的にきましたね……今のメンバーには感謝しています。兎に角、アルバムを作りたいという気持ちはめちゃくちゃありましたね。
–:前作から音楽性を継続しつつ、より柔らかくなったんじゃないかと思います。メンバーを集めるときにも、すでに念頭にあったんでしょうか?
岩澤:そうですね、構想はあって、なんだかんだ実現できてよかったです。以前作った曲はやる気も無かったし、バンド名も変えたかったのですが、メンバーに諭されたりして、そういう気持ちの変化はあると思います、
–:元々構想があって……それがコンセプトアルバム的なものなのか、サウンドの方向性なのかというのをお伺いしたいのですが、どういったことを考えていたのでしょうか
岩澤:コンセプトとサウンド両方ですね。どうしても一回リセットしてやり直さなきゃいけない状況だったので、素直に自分の心境と好きなサウンドを心がけました。シンプルなバンドサウンドで曲自体はちょっとストレンジな感じというか。
–:なるほどです。では、その話を掘り下げたいと思いますね。先日少しお聞きしましたし、前々からBoyishの音楽の特徴かと思っていたんですが、コード進行やメロディが非常に特徴的だと思っていたんです。特に今作だと、コードをひとつだけくり抜いてみて、それだけを鳴らしたとき、ちょっと不協和音というか、複雑に聞こえるようなものが多いような気がしました。

ディミニッシュやオーギュメント、分数コードやsus4などが多用されているのかと思いますが……そもそも今回の楽曲制作はどんな流れを経ていったんでしょう?以前、デモは岩澤くんがある程度作って、メンバーに投げたあとにどんどんとクオリティをあげていくという話でしたが、今回はそもそもメンバーがいなかったわけで……
岩澤:コード進行は毎回悩んで作っていました。今回は浮遊感を出すためにギターにカポタストを作って開放弦を結構使っていますね、前作は逆だったんですよ。

草野さんには前に分数コードやsus4を使っているとお伝えしましたけど、変なコードは結構使っていて、ミナスのミュージシャンの使ってるコードを調べて使っています。基本は僕がデモを作っていて、メンバーで音を合わせやリハーサルをして作っています。その流れは変わらないですね。
–:不協和音というか、複雑な鳴り方をしているというのが、より精確な感覚です。というのも、以前のギターポップをやっていた頃にもちょっとだけ感じさせていた「メロディラインの複雑な鳴り方」みたいなところが、MPBやミナス・ミュージックを参照するようになった前作を経て、よりハッキリと押し出されているように感じたからです。

ある角度からいえば、サウンド/メロディラインの鳴らし方や絡み方に関して、かなり偏愛的にとらえているような……そんな気さえします。その点は、どのように感じていますか?
岩澤:そうですね、むしろ進んで変な鳴らし方はしてました。以前より顕著だったのは、何年かバンドをやって多少の経験を積んで表現できるようになったのかなとは思います。あとは単純にミナス系ミュージシャンのコピーをかじる程度ですがやりました。

話は変わりますけど、これまではAORとかジャズ好きではなかったんですが、どんなジャンルでも素晴らしい一枚のアルバムがあって、それにやられちゃうと、自分でもやりたいって毎回思ってしまいますね。
–:なるほどです。今作のレコーディングは、各メンバーで別録りしたものを組み上げたものでしょうか?ないしはスタジオに一旦集まって『いっせーの!』で録音したものでしょうか?
岩澤:ベースとドラムとアコギはベーシックで一発録音して、残りは別々に録音しましたね。
–:なるほどです。 ここまでのお話を聞いてみて、なるほどと合点して、過去作品を一度聞き直してみました。

ギターロックバンド然としていた初期2作、前回と今回の2枚。聞いてみると、岩澤さんの音楽のコアにはやはり『バンドミュージック』があると思えたんです。

例えば、岩澤さんが参照しているミナスやMPBの音楽は、『ソロミュージシャン』として外面を打ち出してますが、その実はスタジオミュージシャンを呼び集めた仲睦まじいバンドミュージックの匂いを、確かに感じられる音楽ですよね。アンドレ・メマーリは、本人はマルチプレイヤーでありながらも、2組ユニットだったりバンドを組んで音楽を作ってますしね。
岩澤:そうですね。





–:ここからは少しだけ鳥瞰したお話ですが……例えば日本のポップミュージックにおいて『バンド』という言葉は、そのまま『≒ロック』として理解されがちです。ですがここ数年の変遷において、シティポップ~ジャズを基盤にしたバンドミュージックが支持を集めています。

そういったなかでBoyishの音楽は、非ロックミュージックとしてのバンドサウンドを前作から今作にまで続けてきました。しかも、ブラックミュージック的な側面を打ち出していない音楽として、そのことは非常にオルタナティヴなものだと感じています。

その実、ミナスミュージックやMPBそのもののコピーのような形ではなく、参照しているだけに留め、あくまで『バンドミュージック』として振る舞う……そのストレンジな感覚は、ほかにないものだとも、僕は感じています。そんな岩澤さんにお聞きしたいのですが、ここ数年で共感した音楽はありますか?バンド活動に還元したという意味ではなく、<一個人として>ということでお願いします
岩澤:ロックと自称していいのか分かりませんが、未だに昔好きになった音楽の敬意はすごくあります。ソロミュージシャンとして頑張りたい時期もありましたが、自分のペースでやるには、多少困難かなと思った事情もありますね。

まぁ、好きな音楽をそのままやることに懐疑的な想いが、初期から一貫してあるんです。かといって、聞いたことのない音楽をやってやるというよりかは、自分の好きな音の中でやりたいという想いがあります。突っ込んでいうと、ブラックか、ブラジルか、ロックか、そこはそれほど拘りがなくて、ただ好きな音楽を素直に形にしたい、そう常日ごろ思っています。

そういった意味で、活動初期から一番共感しているのがwild nothingですね。ニューウェーブ~シューゲイザー~ネオアコと言ってしまえばそうなんですけど、もっと複雑な新しい形の音楽に結果としてなっていて、めちゃくちゃかっこいいなと思ってます。新作も素晴らしかったですしね。





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『めざめ』/ Boyish
2018年9/26リリース
フォーマット:CD/デジタル配信
レーベル:いるかレコーズ
カタログNo.:IRKR-0001
価格:¥2,000
【Track List】
01.君の声
02.魚の夢
03.朝顔の花
04.サウダージ
05.星を見る
06.刹那
07.その青い潤んだ瞳を奪う前に
08.夏の日に
09.虹を見ていた




『Awaking』
~Boyish New Album めざめ Release Party~
2018年11/18(日)三軒茶屋Grapefruit moon
ACT:Boyish / ayU tokiO / For Tracy Hyde / ond densen
DJ:須藤朋寿(Bouquet) / 矢島和義(ココナッツディスク吉祥寺)
Open 18:00 / Start 18:30
Adv. ¥2,500 / Door ¥3,000(+1d)
チケット予約:
メール予約(boyishjp20@gmail.com)

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2018.11.3 12:00

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