【INTERVIEW】MONO NO AWARE『人生、山おり谷おり』
その日、渋谷は雨だった。咲き乱れ、まさに見頃となっていた桜の花びらは、4月で一番だったといえそうな強い雨に打たれ、散り散りにアスファルトへ落ち、道路脇の排水溝へと流れていった。
今回のインタビューは、そんな日に行われた。メンバーの幾人かが遅れてしまうほどの強雨とは裏腹に、バンドのこと、これまでのこと、これからのこと、彼らはそれぞれに話してくれた。
そのなかでギターボーカルの玉置はこう語ってくれた、「感情を押し付けるようなバンドになりたくはないかな」と。
そこから続いていった会話をしているときの、玉置の眼をぼくは簡単に忘れられやしない。それまで笑いもたびたび起きるような穏やかな空気が、この話になったとたんに、ピンと張り詰めたのを感じたことも忘れやしない。
渋谷の桜は散り、次の季節がやってくる。
ファーストアルバムを生み出したMONO NO AWAREが、つぎにどんな花を咲かせるのだろうか?待ち遠しいかぎりだ。
僕らとGi Gi Giraffeは土俵が違いますが、曲作りという点ですごく嫉妬してしまうほど魅力的ですね(玉置)
- —最初にお聞きしたいのですが、バンド結成のきっかけはもともと玉置さんと加藤さんが高校の時に同級生で仲がよかった、ということから始まっているそうですね。
- 加藤成順(ギター:以下 加藤):僕らは八丈島出身で、同じ地元に生まれたんです。
- —気になるのでお聞きしたいのですが、八丈島の街はどんな場所なんでしょうか?
- 加藤:コンビニとかチェーン店はないし、スーパーも8時に閉まるようなところですね。あとは海と山しかない、そんな場所です。
- 玉置周啓(ギターボーカル以下 玉置):地域の人とのつながりがこっちよりも密接だと思います。父や母に加えて、地域の人々に囲まれて生活してきて、何十人もの親の中で育ってきたと感じてます。
- —お2人は音楽とどう出会ったんでしょう?
- 加藤:音楽を意識して聞き出したのは、中学でインターネットを使いはじめたころからですね。島だとコミュニティが小さいのですぐに広まるんですけど、僕らが中学2年のころはバンドが流行ったんです。その時に友達どうしで「これがいいよ」「あれがいいよ」とおすすめしあって、L’Arc~en~CielやGLAYなどのヴィジュアル系をその頃は聞いてましたね。不思議なのが、同じ頃に東京で流行っていたバンドが同じようにこっちでも盛り上がっていたということ、それはインターネットのおかげだったのかな?と思います。
- 玉置:ぼくはラジオでしたね、ラジオを中1の頃から聴いていて、気になった音楽をインターネットで調べたり、CD置いてあるのが電気屋しかなかったので、その電気屋で探したり、品番を伝えて取り寄せてもらってました。
- —ラジオを聴いていたということですが、いまパッと思い出して「これ聴いてたな」という曲を思い出せますか?
- 玉置:・・・氣志團「One Night Carnival」ですね。当時ラジオではSCHOOL OF LOCK!を聞いていたんですよ。当時は、RADWIMPSやRIP SLYMEにチャットモンチーが出ていたので、あの時期に流行ったものはあの番組を通していろいろ教えてもらいましたね。
- —柳澤さんはいかがでしょう?
- 柳澤豊(ドラム:以下 柳澤):僕は生まれが神奈川の海老名なんですけど、姉が結構音楽が好きで、隣の部屋から流れてくるCoccoや鬼束ちひろ、それこそL’Arc~en~Cielを聞いていました。意識的に聴くようになったのは、アニメ版Bleachのオープニングテーマ「D-tecnoLife」という曲でUVERworldを好きになってからですね。中学卒業する頃からドラムを始めて、そのとき先生になってくれた人や高校で入部した軽音部の友達から流行りのバンドなどいろいろ教えてもらったりしました。友達からはASIAN KUNG-FU GENERATIONやRADWIMPSを、先生からはブラック・ミュージックを教えてもらいましたね。
- —玉置さんと加藤さんはいつ頃出会ったんでしょう?なにか印象的なエピソードはありますか?
- 加藤:高校から同級生だったんですけど、印象的なエピソードとしては、数学か英語でクラス分けするための小テストをしていたときに、玉置が「どれが好き?」っていう感じで女の子の髪型を8通りくらい描いていたことですね(笑)8人分すごくキレイに描いていたのをよく覚えていて、ぼくは黒髪ロングで前髪パッツンの子を「これむっちゃ好き!」って答えたんです、たぶん最初に彼を意識したのがその時だったかなと。
- 玉置:そのとき入学した人みんなに聞いて回って、こういう髪型かーってみんなで納得するみたいなことをしましたね、暇だったんですよ、テスト中でしたけども(笑)
- 加藤:高校の時はサークルや部活もなかったんですが、バンドをやるやつはみんなでグループになっていて、当時僕と玉置は1回だけ組んでやっただけでしたね。そのころは、文化祭や島の祭りに出たりしてましたね。
- —その後上京したあとに、東京と群馬で離れた生活をそれぞれしていながらもバンドを結成された、そのきっかけはなんだったんでしょうか?
- 加藤:僕が玉置に声をかけたのがきっかけですね。それまでずっと曲を作り続けていたのは知っていたんです、高校卒業したあとに彼からデモを聞かせてもらって「こんなにいい曲を作るならバンド作りなよ!」と言ってたんです。1年経ってもそれが変わらなかったんで、大学2年のときに「オレ群馬だけど、一緒に組もう」ってしびれを切らして言ったのが始まりでしたね。
- —MONO NO AWAREというバンド名、非常に良いなと思うんですけど、誰がどういう想いでつけられたんでしょう?
- 玉置:僕はもともと日本語の響きや表現方法が好きで、それを大事にしたいと思ってこのバンド名を選んだんです。でも、ひらがなやカタカナにしてしまうと、バンド名としてはクサすぎるし、日本的すぎてエグイと思えて、ローマ字表記にしたんです。それによって、移ろいの美しさや得も言われぬ風情とか、そういった意味を逆説的に強く出せたし、バンドは好きなように自分たちのやりたいことを順々にできているので、バンドの在り方にかなりリンクしたバンド名になっているなと。
- —「自分たちのやりたいことを順々にできている」というと、それぞれのプレイングやバンドの質感によるところが重要になってくると思うんですが、メンバー各々で「このプレイヤーになりたい」とか目標のようなものはありますか?
- 柳澤:目指すプレイヤーとしては、ぼくはクリス・デイヴですね。DJ的な要素をドラムでやっていくところは好きですね。ドラマーだけども音楽家という目線で言うと、リンゴ・スターや松本隆さんですね。松本隆さんのドラムだと、はっぴぃえんどで「ももんがーももんがー」っていう曲があって(「暗闇坂むささび変化」のこと)、その曲のなかで「真っ昼間から妖怪変化」というところからドラムのフィルが入るんですけど、まさに煙幕を投げた時の音のように響いて、「ドラムでこういう効果音みたいな音ができるのか」と驚かされたんです。そういうプレイングが僕としては理想ですし、この2人のようになりたいなと思います。
- 玉置:ぼくはタモリさんみたいな・・・なんというか、音楽以外の幅を持つ境地に立ちたいし、人が見て楽しめるような存在、ボーカルという役職にこだわらずにそういう存在になりたいですね。バンド4人がどんな感じでステージに立っているかとか、舞台で見てどう映えるのか?という演出にも関わりたい。最近生で見てきた人で、この人は他の人からどう見られるのか?とか計算していて、かつお客さんを楽しませている人というと、SANABAGUN.やTHE THROTTLEの高岩遼さんが思い浮かびます。彼のようなスタイルでやりたいというわけじゃないですが、同じような考えやプロセスを経て、違った形を出せればいいなと思いますね。
- 加藤:ぼくはプレイヤーとして好きな人はあまりいないんです、好きな音楽を色々と聞いてきたタイプなので。アルバート・リーのクリーンサウンドでめっちゃきれいな単音リフを弾くのが好きだったり、ウェス・モンゴメリーのオクターブ奏法を聞いた時、自分がコピーしていたメロコアバンドの質感とは違ったキレイな音色に驚かされたりしてきたね。皆さんどの方もすごいですし、部分部分を好きになるので、プレイヤ一1人をあげるとなると難しいですね。
- 竹田綾子(ベース:以下 竹田):バンドからあげるとなるとTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTを高校の頃もの凄く好きだったので、ウエノさんですね。プレベを使ってストラップを長くしていたりして、ベースを始めたころはかなり影響されたと思います。その後はThe Strokesを聞き始めてから徐々にストラップは短くなり始めました。どちらのバンドも8ビートとルート弾きが特徴なので、その辺りの影響もあると思います。
- —「このバンドは僕らと同じだな」とか「このバンドは僕らのライバルだな」と思えるような同世代のバンドはいますか?
- 玉置:個人的な話ですと、Gi Gi Giraffeですね。啓遊くんとは友達ですが、毎日のようにyoutuberを見ていて「彼らみたいになりたい」とか言っているし、啓遊くんの軽妙な人柄が曲に出てるんですよね。曲の面白さもそうですが、soundcloudに挙がっているデモ音源でもパーカッションの音位置が面白いんですよね、遊び心がすごくあるんです。僕らとは土俵が違いますが、曲作りという点ですごく嫉妬してしまうほど魅力的ですね。
- 柳澤:似てるバンドやライバル、いま考えていたんですけど、いないですね。
- 竹田:いないね(笑)友達を増やしたいですね。
- 柳澤:ただ言われてみると、オレもGi Gi Giraffeは意識したりしてますね。ドラムフレーズが宅録やっている方らしいフレーズなんですが、ライブでも忠実にこなすんですよね。ドラマーじゃない宅録の方による打ち込みフレーズを、ドラマーである自分のスキルとフィーリングで、どれだけ良いものに仕上げられるか。その点は僕らとも近い部分はあるので、ちょっとしたライバル心はあります。 (昨年Gi GI Giraffeへインタビューした記事はこちら)
→→【INTERVIEW】Gi Gi Giraffe『Gi Gi Giraffe』 https://indiegrab.jp/?p=42659
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感情を押し付けるようなバンドになりたくはない、押し付けたくないですし、断定したくないんですよね。
2017.4.29 12:00
カテゴリ:INTERVIEW タグ:JAPAN, mono no aware
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