【INTERVIEW】OMOIDE LABEL主賓ゆずちん、大いに語る『ミュージシャンやDJが陽の目を見る場所を作りたい』
『Japanese Juke&Footworks Compilation』にも通じる話だとは思うんですが、『Jukeしようや』シリーズも同じように海外の人に聴いてほしいと思って作っているんです。(ゆずちん)
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—Weezerとスピッツがゆずちんさんにとってこれだ!といえるような1曲でありバンドであると。2010年からトラックメイキングを始めたということですよね?
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ゆずちん:そうですね、だいたいそれくらいです。
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—その後にジューク/フットワークに出会うわけですけど、どういった形で出会ったんですか?
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ゆずちん:CRZKNY(クレイジーケニー)さんの音源を聴いたことがきっかけですね。あの方は広島にいるんですけど、食品まつりさんと一緒にずっとシーンを支えてくれて、引っ張ってきている方なんです。今回も参加していただいたんですが、すごくありがたいなと思います。
- —それは2011年とか?
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ゆずちん:もっと後かな?2013年頃だったような気がしますね。ヒップホップに興味を持ってドンドンとdigしていく中で、CRZKNYさんにぶち当たった、といえば良いのかな?。ヒップホップのトラック作りで声ネタを募集したりとかしていたんですよ。そんな感じなので厳密にいつ頃かっていうのは言えないですね。
<CRZKNY 『M.F. HOUSE』(2015年6月リリース)>
<Beybey Feat.Taigen Kawabe From Bo Ningen(2016年5月リリース予定)>
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—いま仰っていただいたお2人、食品まつりさんとCRZKNYさんが参加された『Japanese Juke&Footworks Compilation』というコンピレーションが2012年に発表されています。2人が首謀した作品ですが、やはり影響されていたんでしょうか?
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ゆずちん:もちろんもちろん。最初の『JUKEしようや』コンピにもCRZKNYさんは参加していただいたんですが、彼から「こういう作品を出しているんだ、ぜひコンピを聴いてくれ」という風に伝えられたんです。お2人からは先人としてのスピリットやプライドを感じましたし、僕もそれを受け継ぐような作品を作らないといけないと思いましたよ。ただこうして考えてみると、ジュークに熱が入ってドンドン推していくようになったのはネットレーベル的には遅いと思ってましたよ。
- —影響どころか、受け継ぐものとしてあったということが知れてよかったです。同じく2012年にはTraxmanの『Da Mind Of Traxman』が発売されていますし、この年に多くの人がジューク/フットワークを知ることになったわけですし、この2作品のリリースは運命的なまでにバッチリなタイミングだったといえますよね。シカゴでのハウスミュージックが進化した先にジューク/フットワークがあって、90年代ごろにはあったとも言われています。シカゴから来たDJの方も「いまの日本でのジュークの広がり方は、90年代のシカゴを見ているようだ」なんて言われたりもします。
- ゆずちん:嬉しい話ですよね。本当に
<JAP MUTATION BOOTYISM『Japanese Juke&Footworks Compilation』(2012年4月リリース)>
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—同時に、シカゴでのものと日本でのものとでは、どうも違いが生まれているらしいというお話を聞きます、ゆずちんさんはこの違いについてはどう思われていますか?
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ゆずちん:僕はね、『Japanese Juke&Footworks Compilation』にも通じる話だとは思うんですが、『Jukeしようや』シリーズも同じように海外の人に聴いてほしいと思って作っているんです。
- —ある意味では、世界に対するPRの場所として考えているんですね
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ゆずちん:その通りです。例えば、TREKKIE TRAXのDJ Ampsさんにはこれまで参加してもらっていて、僕は個人的に彼は日本のジューク/フットワークのキーマンだと思っていたんですが、つい先日にはアメリカのRolling Stones誌にピックアップされていましたよね。
- —そうですね。
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ゆずちん:実はDJ AmpsさんやHiroki Yamamuraさんにはレーベルの初期からいろいろとお世話になっているんです。『すてきなしんせさいざー』というEPをオモイデレーベルから出す際に、彼ら2人にアドヴァイスを頂き、リミックスを作ってくれたことが非常に個人的には大きくて、それが『ジュークしようや』シリーズを作ろうと思えたきっかけでもあるんです。
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—これは根本的なお話なんですけど、なぜジューク/フットワークでのコンピレーションにしたのでしょう?もっと他のジャンルでも良かったと思えたりもするんです。
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ゆずちん:BPM160というのが個人的にはひっかかって、興味があったし面白いと思っていたんですよ。そもそも140とか120だと身体的にはノレるけど、ドラムンベースで180や200だと90とか100でノロる人が多くなっていく。そこで160、ハーフしても80でノる/ノらせるというのは、非常に難しいけども面白い・・・それにですよ?
- —はい
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ゆずちん:Hiroki Yamamuraといったら<関西のジュークしようや>、DJ Ampsといえば<関東のジュークしようや>と言われていたんですよ!この2人を絡めようとしてジューク以外のジャンルでやろう!なんて思えないですよ(笑)。彼ら2人に、CRZKNYさんと食品まつりさんが参加したのが『JUKEしようや ~most dangerous loveromance juke~』となるわけです。
<OMOIDE LABEL『JUKEしようや ~most dangerous loveromance juke~』(2015年7月リリース)>
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—1枚目になりますよね。このお話を伺って、現在の現況も踏まえてこのメンバーを見なおしてみると、素晴らしく豪華なラインナップになっていますね。
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ゆずちん:僕自身がラブコールを送って参加してくれた方ばかりですし、思い出深いですね。
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—この作品が生まれたのが2015年で、これがオモイデレーベルにとって80枚目のリリースになりました。ゆずちんさんが運営しているネットレーベル『オモイデレーベル』ができたのが2013年になりますが、レーベルを作ったきっかけはなんだったんでしょうか?。
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ゆずちん:ミュージシャンやDJが陽の目をみる場所を作って盛り上げていきたい、そのために自分の手で何かできないかな?と思ったのがネットレーベルを作ろうと思ったきっかけですね。いまでは聴いてくれる人にもちゃんと向き合っていくことも重要だと思うようにもなりましたね。音楽と出会うきっかけを与えていければ・・・と思えるようになりました。
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—ゆずちんさんはもともとツイッターを介して、音楽と触れ合ったり人とつながったりしてきている、というのが根幹にあるとは思うんです。同時に、2010年代のSNSは、新種のハウスミュージックやエレクトロニカが口コミとして面白がられて広がったと時期でもありました。ジューク/フットワークもそうだし、ヴェイパーウェイヴ、ファンコット、ゴルジェ、大きく見つめてみればEDMもそうだと思います。ゆずちんさんも同じように楽しんできた人間として、それぞれの音楽をどう見てますか?
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ゆずちん:まず、ファンコットは今後自分の手で作ってみても面白いかな?と思ってます。作るのが面白そうだなーと思います。ジュークはいろんな人と話してみると、まだまだマイナーなジャンルだなと思います、他の人に言っても伝わっていかない場面もあるので。ゴルジェは発想が面白いですよね。というか、ぼくとしてはここらへんがネット発みたいな感じはしないなぁ
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—昔はショップにいって盤を探して見つけて雑誌とかミニコミとかを読んで探して・・・みたいな感じでどんどんと盛り上がっていくと思うんですけど、いまのネットの感じだとSoundCloudやBandcampで音源を探して盛り上がっていくので、情報源がわかりやすく手の届くところに可視化される、ブレイクするのも目に見えてわかることが多くなったも思うんです。その意味で言いました。
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ゆずちん:ああなるほどね。手前味噌ですけど、先日ANIMAL HACKというユニットがうちからリリースされたんですが、後にすぐに術ノ穴さんからもリリースが決まりましたよね。そういう話か。ヴェイパーウェイヴに関しては食品まつりさん経由で知りました。食品まつりさんはすごく挑戦的なトラックが多くて驚かせてくれて、最初のコンピレーションに収録されている「ゆーとぴあ宝」はヴェイパーウェイヴ感はありますよね。
- —ええ、僕もそう思います。でも食品まつりさんは決してヴェイパーウェイヴ専門のトラックメイカーではないですもんね。
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ゆずちん:彼をヴェイパーウェイヴでくくって考えるのは絶対におかしいですよね。でもまぁ大きく考えてみると、いまでは様々な音源でウェイパーウェイヴらしい要素は見つけることができるとは思うんですよ。ヴェイパーウェイヴが死んだ!という人がいてもおかしくはないですし、ジャンルが死ぬことはそこまで大きい話ではなく、スピリットや方法論が生き延びることで大きな影響を与えたりもする。なので、ヴェイパーウェイヴは常に注目してます。ふっと我に返ってみると、「オモイデレーベルってジューク関係しかやってないれーベリルと思われてないか?!」って個人的には思いますよね
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—そこはもう、bandcampやSoundCloudをみていただければ一目瞭然ですよね。ゆずちんさんとしては、オモイデレーベルがこれほどに雑多にピックアップしていくものだと思っていました?
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ゆずちん:思ってましたよ。というか草野さんがもしもレーベルをやったとしても同じように・・・
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—逆インタビューが始まりましたね(笑)きっと同じようになると思います。話に乗っかりますが、もしも僕がネットレーベルをやるのであれば、バンドモノだけでは収まらないですし、トラックメイカーモノとか他のモノとか混在しますよね。
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ゆずちん:そうそう、やっぱりそういうもんだよね。
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—僕自身、一つの音楽ジャンルに固執せず、いろんな音楽を聞く事で音楽そのものを楽しみたいと思っていますし、ある日交通事故にあってしまい、ビートたけしが北野武になったような才能開花が起こったとしたら、僕は迷わず様々な音楽を作ることにチャレンジすると思います。
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ゆずちん:それは僕自身の由来にも影響するとは思うんですけど、もともとは僕はギタリストだったんですが、交通事故に遭ってしまって左手が思うように動かなくなってしまったんですよ。それまではエリック・クラプトンやテン・イヤーズ・アフターみたいな、ペンタトニックを素早くフレージングしていくミュージシャンを弾いていたんですが、事故のせいで弾けなくなってしまったんです。その立場から音楽をやりたいと考えた時、ジューク/フットワークの音楽には、アイディア一発で面白くできる要素が大きくあると思えたんですよ。
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—それは今回の『JUKEしようや Barren Illusion ~ Remember Hiroki Yamamura ~ 』にとっての大きな要素になっていると思えます。
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ゆずちん:うん。今回参加していただいたトラックメイカーさんにも、イクイップメントの面でハイスペックなものを使っているとは必ずしも言えない方がいるとは思うんですけども、サンプリングのネタ使いがすごく面白いとか音のチョイスが面白いとか、そういうので面白さが変わっていく、初めてジュークを作った人間がベテランのジューク・トラックメイカーをアイディア一発で越えていくことができる、それって痛快じゃないですか?。こういうことができるのは、ネットレーベルだからこそだと思えますし、ジュークだからこそだとも思えます。ある意味で残酷ではありながら、勝負しがいがあるともいえます。
- —トラックメイカー同士の戦い、という側面ですね
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ゆずちん:その通りです。実は、いつもはドラムンベースやヒップホップを作っている人が、今作でジュークを初めて作ったりしているんです。フラットなメディアだからこそ、挑戦的な姿勢を狙っているのは確かですね。
(とある言葉の由来を聞かれて)・・・わからない!!!!(ゆずちん)
2016.5.3 22:00
カテゴリ:INTERVIEW タグ:JAPAN, juke/footwork, JUKEしようや, omoide label, オモイデレーベル