【INTERVIEW】 House Of Tapes ― 混沌かつポップを目指すエレクトロニカ
PitchforkやMTV81等の海外メディアで所属レーベルTanukineiriと共に紹介され、2015年7月にはTeen Daze、NYANTORAとの共演を果たした名古屋在住のトラックメイカーHouse Of Tapes。 その勢いを駆って主催イベント『Nagoya-Elektronic-Fes』を昨年12月に開催するなど、精力的にライヴ活動を行っている。 今年2016年4/16(土)には早くも第2回が開催される同イベントについて話を聞いた。
Interview by 森 豊和(@Toyokazu_Mori)
- —4/16(土)にエレクトロニカ、アンビエント、テクノ中心の音楽イベント第2回を行うとのことですが、今後も継続されるんですね。
- House Of Tapes(以下 H):はい。『音楽愛+名古屋愛=ナゴエレ』をキーワードに続けていきたいです。今回から入場者全員に、出演者のコンピレーションCDを無料で差し上げます。
- —会場の名古屋spazio ritaは地下鉄矢場町駅から東へ5分程度の便利な場所ですね。地下鉄から地下道でセントラルパークを横切って。
-
H:spazio ritaはクラブやライブハウスではなく多目的イベントスペースなんです。生演奏だけでなく、絵の展示、トークショー、映画上映会など、様々なイベントをやっていて面白い場所だと思います。
徒歩圏内には僕がお世話になっているFile-UnderやStiff Slackなどの独立系レコードショップや栄パルコ等があって便利な場所です。
- —西に少し歩きますが大須にRECORD SHOP ZOOもありますね。ところでトラックメイカーは音源をネット・リリースして終わりでもいいのに、主催イベントまで始めたのはなぜでしょう? 何かきっかけでもあったのでしょうか。
-
H:2015年夏に東京の西麻布Bullet’sでライブしたことがきっかけです。蛍光灯で演奏する伊東篤宏さんや、東京で活動するトラックメイカーの皆さんとご一緒して刺激を受けました。 そして、名古屋や東海地方にも素晴らしいトラックメイカーがいることをもっと多くの人に知ってほしいと思いました。それがきっかけです。
- —名古屋のトラックメイカーといえばfredricsonさん(レミ街 / tigerMosのキーボード奏者)など有名ですね。でも食品まつりさんは横浜に移りましたし、あまり横のつながりは目立たないように思います。
- H:名古屋は、あくまで私感ですが、東京や関西に比べてシーンが形成されておらず、閉塞感が漂っている気がしています。そして仰る通り、東海地方のトラックメイカーさんでも、拠点を関東に移したり。
- —有名になるために地方在住では限界があるかもしれませんね。上京する理由はもちろん他にも色々あるとは思いますが。
- H:名古屋や東海地方で活動しているトラックメイカーさん達と繋がって、一緒に名古屋を盛り上げたいんです。そういう場を作れたら。そういった気持ちが最初にあります。イベントを始めた一番の理由です。
- —それでは各出演者の紹介をしていただけますか?
-
H:各プロフィールはフライヤー画像に載っていますので、ライブを見た僕の感想を言いますね。まずSOMA 奏間さん。海外での豊富なライブ経験に基づく圧倒的なビートを繰り出すかた、才人です!
- —海外のフェスといいますと?
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H:彼はヨーロッパのフェスのメインステージでプレイされたりしているんです。海外のイベントでの観客の雰囲気、その場の空気をつかんでらっしゃるんだと思います。そして神戸からのゲストで、Jomyakさん+下村唯さん。電子音楽とダンス・パフォーマンスを融合したステージ。
- —電子音楽だけに止まらない表現活動をされているかたですね。
- H:今回はさらにVJも加わります。前回同様つかさハニーさんにVJを全編していただきます。経験に裏打ちされた圧巻のVJを見せてくれます。壁2面使って音に合わせて次々と展開するビジュアルがとても新鮮だったので今回もお願いしました。
- —つかさハニーさんのVJは観ていて飽きないですね。
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H:はい。そしてrobotmeさんは徹底的にミニマルでシンプル。ループミュージック好きには堪らない感じです。
Vista Visionさんは宇宙的アンビエント。独自の世界観が炸裂します。ビートを強調した他出演者の音に対して、アンビエントな表現を得意とされる彼を合わせたくて、第1回に続いて参加してもらいました。
そして主催の私House Of Tapesは、今回の出演者の方々はビートを強調する方が多いので、メリハリをつけつつ、ポップなメロディを炸裂させたいと思います。
- —House Of Tapesの新曲についてお伺いしたいです。最近発表された曲はほとんど披露されますか。
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H:ええ、そのつもりです。
- —まず「Twinkle Color」はトイトロニカを作りたかったとのことですが美しい曲ですね。
- H:ありがとうございます。ポップさを全面に出してメロディを紡ぎました。
- —対して「Disorder!!!」、「Rev-Ex」はその反動で大暴れ、ないし原点回帰しているかのような。
- H:混沌好きな僕ですが、「Disorder!!!」は混沌を混沌だけに終わらせないというテーマで作りました。「Rev-Ex」は現在の僕のテクノを、そのまま出す、というテーマの曲です。
- —硬派なハードボイルドな感じですね。これらの曲はただぶっ壊すのではなく、破壊の後の再生といいますか、戦争や自然災害で荒廃した土地に、草花が芽生えるように、後半キラキラしたメロディーが生まれる瞬間がありますね。
- H:適確な表現をありがとうございます。混沌かつポップな曲作りを指向していますが、混沌なだけで終わらず、音楽的にするということを心がけているつもりです。
また過去のデモである「アネモネの花を食いちぎった」については、架空のベースレス・サイケデリックバンドの曲、というコンセプトで作りました。ヴォーカルや歌詞、雰囲気を面白くしたつもりです。
- —3/1配信の新曲「Floating Ache」については?(Apple Musicで聴けます)
- H:僕の中では最近の流れでつながっていて、ただ明るいだけでなく、不穏なコード進行を入れてみました。それをどれだけポップに聴かせられるか、考えながら作りました。
- —ありがとうございます。それでは最後に、今後のナゴエレをどういったイベントにしていきたいですか?
- H:ナゴエレをライフワークにしたいです。東海地方で埋もれているトラックメイカーさん達を世に紹介していく。繰り返しますが、一緒に名古屋を盛り上げたいんです。そのためにHouse Of Tapesも成長したいです。いつか枯れても、限界を感じても、成長しようと努める心があれば、成長できると思うのです。名古屋を拠点に東京や他の地方からお誘いがあれば喜んで出演したいし、期待に応えられるよう成長したいです。
- —SOMAさんのように海外からオファーがあれば?
- H:ぜひ行ってみたいです!
- —お話を聞いていると、House Of Tapesさんにとって、音楽は生きること、感情そのものなんだろうなと感じます。『音楽愛+名古屋愛=ナゴエレ』というキャッチフレーズ通り。
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H:ええ、僕にとって音楽は血液です。全身を巡る、愛おしい血液。僕は混沌とポップさを織り交ぜた曲を追求しています。楽曲制作して発表するサイクルが短いのは、死を意識しているからです。いつ死ぬか分からないから、生き急いでいます。
最後に
以前、彼は海外メディアSoundfrinedsのインタビューで「Nice Dream」という曲について「涙が出るほどの、多幸感あふれる曲が作りたかったのです。しかしそれだけではなく、せめて眠っている時だけは良い夢を見たい(逃避では無く)、現実と対峙して疲弊した後の癒やしの曲になれば」と答えていた。
彼にとって音楽は、美しい癒しであり、ユーモアを交え、他者を楽しませるものであるべきなのかもしれない。そしてそれこそが彼にとっての「音楽的」ということではないか。
そう問うと、彼は静かにゆっくりと、しかし力強く頷いた。
『Nagoya-Elektronic-Fes 2016春』
2016年4/16(土)名古屋矢場町spazio rita
Act: SOMA 奏間 / jomyak+下村唯 (神戸) / robotome/ Vista Vision / House Of Tapes
VJ:つかさハニー
open 17:30 / start 18:00
adv2500(1D込)/ door 3000(1D込)
2016.3.4 21:00
カテゴリ:INTERVIEW タグ:electronica, house of tapes, JAPAN, jomyak, NAGOYA, robotme, SOMA, vista vision, つかさハニー
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