【INTERVIEW】onett『LAST ROMANTIC!』

佐野元春さんは特別な存在です
- –:onettさんの作品を見ていると国内のポップソングからの引用があるなと思うのですが、onettさんのリスニング歴やルーツについてうかがってもいいですか?
- onett: はい!もちろん!物心ついた頃からテレビっ子で、私のルーツである90年代のJ-POPの数々は当時の歌番組やドラマ、アニメを見ていて刷り込まれた気がします。また、お正月やお盆には家族や親戚がよくカラオケに連れて行ってくれて、たくさんのJ-POPを聴いた記憶があります。
その中で最初に良いメロディだなと思った曲は桑田佳祐の「悲しい気持ち(Just a man in love)」、「クリといつまでも」でしたね。はじめにかっこいいと思ったバンドはWANDSだった気がします。ボーカルが上杉昇で中山美穂の後ろで歌ってたり、アクセルローズみたいなファッションをしていた時期のWANDS。今でもあの頃の上杉昇のボーカルに憧れてる。酒井法子の「碧いうさぎ」とかも好きだったな〜。今思えばアレンジ面では小林武史、作曲面では織田哲郎のキャッチーなメロディが好きでしたね。 - –:そういえば、ネットでonettさんが語られる時によくMr.Childrenを引き合いに出されると思っているんですが、Mr.Childrenも小林武史さんがプロデュースで参加していますよね。また、Mr.Childrenとonettさんの距離感ってどんなものなんですか?
- onett: Mr.Childrenは昔から大好きでめちゃくちゃ影響を受けましたね。音楽に限らず歌詞やルックス、プロモーションやメディア露出においての所作まで日本でヒットソングを量産するロックバンド像と市井の人としてのポップスターのアイコンを一手に引き受けたバンドだと思ってます。さらに神格化せず、オリジナルのメンバーで活動し続けているのがありがたい。私は街中や各メディアで流れるMr.Childrenの音楽を聴いては「ミスチルがメインストリームで今こういう音楽活動してるんだ。俺はあっちの路線を走ってて間違ってなかったわ!」と思うことがよくあります。Mr.Childrenによって自分の音楽性だったり活動方針を変更することは無いのですが、Mr.Childrenが動き続けてくれるおかげで背中を押されますし、目指してた自分の道の方角が正しいことを確信します。先生というほど教えてもらってないし、反面教師というほど真逆の道を進んでもいないので、移ろう時代を飛び回り続ける大型ジェット機のような存在です。自分があてもなく街を歩いてる時に突然景色が暗くなったと思ったら太陽を覆い隠す勢いでMr.Childrenが頭上に現れて、その機体と飛行の美しさに見惚れるんですが、スピードが速いのであっという間に過ぎ去ってしまう、でも世界各地の空港に向かって飛んでるのでその瞬間は自分が進んでる方角を認識できる、みたいな。とは言え、じつは近年のMr.Childrenの作品は追えてないんですよね。小林武史が携わってる曲も最近のはわからないかも。今どんな感じなんだろう。
- –:そういえばonettさんはSNSですと佐野元春さんのお話されてることが多い印象もあるんですが、onettさんにとっての佐野元春さんの立ち位置ってどのような形ですか?
- onett: 佐野元春さんは特別な存在です。(ここから敬称略でいきますね!)でもそれは元春の音楽に自分がハマった時期とが関係していますね。自分は19歳の頃、岡村靖幸の音楽にハマりまして、当時はストリーミングサービスがなく、本人も活動休止されていた時期だったのでブックオフをまわってCD買ってジャニスとかでCDもレンタルして、ほとんどすべての作品を聴き込みました。でも、元々自分は何かに熱中するような性分でもなく靖幸だけが特別で当時は若かったので、愛聴ならぬ溺聴するようなテンションで1人のアーティストの音楽を楽しむことができるのは後にも先にも靖幸だなと思ってました。その後先述のMr.Childrenにしても、岡村靖幸にしても、今も好きなことには変わらないですが、コンサートを見に行ったときその情熱は落ち着きました。おそらくそれは実物を見たとき、彼らの凄さはもちろん実感しましたが彼らの幻想は消えて、彼らに対する私の内面化が完了し、私のクリエイティブにおける血肉となったからででしょう。元春は、自分が29歳の頃に御殿場のブックオフで買った『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』を聴いてハマったんですが、そのとき自分はすでに音楽活動をガンガンしていたし、特定のアーティストの音楽を好きになるよりも音楽そのものをさまざまなレイヤーから楽しむフェーズに入っていたので、30間近でこんなに熱中するアーティストがいるんだとまず自分にびっくりしました。しかも、それがすでに面白くて盛り上がっていたテン年代の音楽ではなく、89年リリースのアルバムがきっかけで。それからさまざまな元春の作品を聴き漁り、Zepp DiverCityや高崎FLEEZ、日本武道館、戸田市文化会館などコンサートに足を運びましたが、まったく内面化できない!音楽として模倣を試みても全然血肉にはならない!そこでようやく元春の音楽の求心力と、唯一無二の音楽性を確信しました。コピーライター的だったり英米文学的なフレーズが歌詞やビートに随所に感じられ、ポップな部分はありますが彼の音楽はどこからも逸脱しているし、元春自身のキャラクターも知的でクールで時にチャーミングですが、少しこわいロックのお兄さんでもあり、自分はその、なんと言いますか、掴みどころのないはみ出した部分に畏怖の念を覚えます。本当に孤高の存在です。

佐野元春のコンサートを楽しむonett
- –:岡村さんの名前も出てきましたね(笑)今作を歌詞カード見ながら聴いていると、譜割に岡村さんっぽさを感じるところもちらほらありますが、やはり影響も感じていますか?
- onett: 一度内面化してしまうと、自分じゃわからなくなるんですよね。人に言われてようやく「あぁ、本作でも自分の中の”靖幸”が出ちゃってたか……!」となります。
- –:今作の「真・三井のために」はライブでやりたくてというお話を先ほどされていましたが、ライブメンバーとしてthe stillのみなさんやSTOMP TALK MODSTONEといった面々が参加していますよね。現在のメンバーとはどう言った経緯で参加してもらったのですか?

onett’25バンド(左から岩瀬、やさしさ、onett、萌、宙太)
- onett: the stillのやさしささんは、2020年10月に調布Crossで行われた『ANONYMOUS POP』というイベントで出会いました。別のグループをお客さんとして観に来ていたやさしささんがXでonettのことを呟いてくれて、私もthe stillを聴いて楽曲を好きになって、インターネット上の交流が生まれました。それから時は流れ、2024年にonettの音楽にシンセを取り入れたいと思ったとき、やさしささんの顔が浮かびDMして参加をお願いしました!その後、the stillのライブをはじめて生で見たときボーカル、鍵盤の岩瀬さんのパフォーマンスを見てビビっときて、やさしささんにご紹介いただき今に至ります。現在は岩瀬さんに鍵盤を、やさしささんにギターをサポートしていただいてます。STMTのドラムの萌さんは2016年くらいですかね、大宮ヒソミネでSTMTがライブをしたときにはじめてパフォーマンスを見ました。パワフルでクールでかっこいいドラマーだ!と感激したのを覚えてます。当時STMTのベーシストがonettでも何度かベースを弾いてくれてた友達で、その友達に紹介してもらいました!2018年からドラムをサポートしていただいてます。現在ベースを弾いてくれてるちゅうたくんは同じ学校のサークル出身なんですが在籍期間が被ってなくて、どういう経由で知り合ったかは覚えてないのですが、学校を卒業して何年も経ってる自分が学食に潜り込んでまだ学生のちゅうたくんに面白いバンドをやるから手伝ってくださいとお願いした記憶があります。2014年に南池袋オルグで行われたイベントに出演したときから弾いてもらってるので10年以上の付き合いですね。こうして振り返ると今のメンバーは全員、元々の友達ではなくて、バンドに誘ってから友達になった気がしますね(笑)そんで、onettは自分1人のプロジェクトなのでメンバーは全員サポートでその時々で流動的な編成になってしまうのですが、今年のonettはなるべくメンバー固定でライブ活動をやろうと思ってます。ただし長くは続けない予定です!今のメンバーとのバンドが解散してもレコーディングとか何かあるとき気軽に誘いたいですね。
- –:今後の展望について何かありましたら教えてください。
- onett:今後は積極的に自分の作品が批評されるフィールドに足を踏み入れていきたいですね。onettの作品ってそもそも知名度が低いのも大いにあると思いますが、それにしても絶妙に批評しづらいと思うんです。それは作品そのものよりも、私自身に要因があるのかなと思ったのです。もし自分がもっと魅力的だったらリスナーは私の作品に興味を抱いてもっと入り込めるんじゃないかな。有名になりたくなかったので人気取りのためにパーソナルな部分を曝け出したり、騒ぎ立てるような行動からは一切距離を取っていましたが、作品に興味を持ってもらえるかもと思い、今回のインタビューでひとまず自己開示を試みています。もちろん自分のことをディスられたりするのは嫌ですが、作品についてはたくさんのリスナーに評価をしてほしいし、そのフィールドバックを受けたい。私は作品を通じてリスナーに価値を提供しているわけではなく、いつだってリスナーがわたしの作品にそれぞれの価値を付けると思っています。なので、リスナーが私の作品につけた価値をたくさん知ってそれを次の作品に活かしたい。そのために作品自体からはみ出したプロモーションも今年は行なっていきます。もちろんライブもたくさんやっていきますよ!
- –:15年ほど活動をしてきて、変わったのはどんなところでしょうか。逆に変わらなかったものがあればおしえてください。
- onett: 変わったのは音楽の楽しみ方にレイヤーが増えたことです。聴き方、つくり方、演奏の仕方それぞれがさまざまな角度から楽しめるようきなりました。逆に変わらなかったことは昔から好きだった音楽は今でも好きなことですね。楽しみ方が増えたので今もあの頃の音楽が好きでいられるのかもしれません。あとは、メカに弱い部分は今でも変わらない(笑)
インタビュー/テキスト:sabadragon
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『LAST ROMANTIC!』
/ onett
2025年2/28リリース
フォーマット:CD
レーベル:PASSiON RECORDS
カタログNo.:PSON-045
【Track List】
01.Stay Alive!
02.ドライブ
03.真・三井のために
04.Losing
05.Calcifer We Are
06.追憶の調べ
07.Last Romantic!
08.事物的
09.Misery
10.エブエブ(アルバム・ヴァージョン)
11.誰もが帰りたい、その後
12.結ぼれ
13.喜びの朝、アゲイン
14.ドレスたち
15.Y2K
Amazon
【初回特典】
『LAST ROMANTIC!』ジャケットイラストステッカー
※特典はなくなり次第終了となります。
【レーベル直販&ライブ物販】
初期活動秘蔵音源CD-R『ポップパンク期のオネット』
01.恋に恋した日々は終わった
02.彼氏になってよ
※特典はなくなり次第終了となります。
PASSiON RECORDS
7周年party『Thanks!』
2025年2/23(日)吉祥寺WARP&WARPスタジオより、onettの8th New Album『LAST ROMANTIC!』の先行発売が決定
吉祥寺WARPフロア内のonett物販ブースにて販売開始されます!
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PASSiON RECORDS
7周年party『Thanks!』
2025年2/23(日)吉祥寺WARP&WARPスタジオ
ACT:easy / 超右腕 / HOGO地球 / onett / fish / bulbs of passion / ちゃんちゃらおかしいズ / ゆ〜すほすてる / Superyou / ピーナッズ / ヒュードロズ / Milk&Cookie / どついたるねん / ひびわれつ / 僕のレテパシーズ / periwinkles / MEGA X / スーパーアイラブユー / オイッス / サイキシミン / さんだるズ / ゆっくり走れ / RUNRUNRUNS / THE DO DO DO’s / QUINCAMPOIX / LIFE IS WATER BAND / OMOHIDE-KYO / 山本狼煙 / 嵯峨山諒 / 森川あづさ / hypermiri / おれ、夕子。 / DJ yamapee / and more..
SHOP:HALO HALO RECORD / tunelessmelody bookstore / たざきたかなり / megumi yamazaki / ニシダキノコ / 大橋裕之 / 夕暮宇宙船 / まるちゃん食堂 / 寺田食堂
Open 13:30 / Live Start 14:00
Entrance ¥4,000(+1d)
※再入場自由(リストバンド確認あり)
チケット予約:
Tiget
PASSiON RECORDS 公式HP
PASSiON RECORDS 公式Twitter(現X)
※マスクの着用は個人のご判断となります
2025.2.21 12:00
カテゴリ:INTERVIEW, PU1 タグ:JAPAN, onett, passion records, pop, rock