【SELF LINER NOTES】武田理沙 『Pandora』
写真:栁澤和美
今年8月にCD2枚組というボリュームでリリースされた武田理沙のデビュー・アルバム『Pandora』。
彼女の人生をそのまま凝縮したようなこのアルバムは未だに新たな聴き手の捉え、強烈な印象を与え続けている。
そして彼女が8月下旬からTwitterに投稿し始めたセルフライナーがこの度完結し、彼女のホームページに掲載された。
このセルフライナーは彼女に許可を得て、テキストを転載させてもらっているものになる。
以前掲載したインタビューと合わせてアルバムを読み解く助けとしていただければと思う。
Pandra全体の制作環境
使用ソフト:Ableton Liveピアノの音色含め基本ほぼMIDI音源
シンセソロ/ノイズなど:KingKorg、mininova、Particle
生ドラム:全て2ch録音、3点がバランスよく録れる場所にSEIDE PC-M1を、ライド側はボーカル用マイクetc……(模索しながら録音していたので全部録った環境が違います)
Disc-1
01. at daybreak,
これはアルバム全体の入口、そして2曲目「Island」の前奏曲になるように作りました。
MIDIピアノで即興で弾いていい所だけ繋げています。自分の表皮よりも外側にある部分、というイメージです。
02. Island
これは、個人的に印象派音楽とポップスなどの要素が一番心地よくぶつかり合うポイントをかなり明確に提示できた気がしています!
取り分け曲の流れや構成(珍しく次々と展開が浮かんできた)が気に入っています。ライブでやりたい曲No.1かも知れない……。
当初の予定ではサックスピアノドラムのECMっぽい大人しい曲にする予定でした。ドラムは全曲中唯一、ライド側にもSEIDEのコンデンサーマイク置いて録ってます。
何となく異国の小さな島の夜明けから日没、というイメージです。
03. Pagoda 2018
これ実はドビュッシーのピアノ曲集「版画」の中の「塔」という曲のカバーです!!
作曲者にボコられる覚悟で作りました。チープな感じにしたくてLive内のプリセットの音をほぼそのままで使っています。
中盤のノイズの嵐みたいな所が好きなんです!ずっと納得いく展開にできなくて、録音終盤それまで使ってこなかったmininova使ってハチャメチャに弾いてLive内の変態エフェクターかけまくったらこうなりました。1年間押上に住んでいたのですが、ぼんやりスカイツリーのイメージあったかも知れません。
この曲は本当に大好きでライブで弾いたこともあります。マレット系のフレーズは全て原曲の特徴的なメロディそのまま引用してループさせてます。原曲はこちらです
04. Idle brain is the devil’s workshop
これはメロディを軸にドラムと打ち込みのビートの絡みを楽しむ曲にしようとしてたのですが、ビートの種類を選んで組み合わせるのが楽しくなりすぎて結果ドラムなしのテクノ
寄り(?)になった曲です。
冒頭のメロディはすぐ形になったのですがその後の展開とても悩みました!これも最終的に、ポップな音楽に対する気持ちに素直になった途端なんとか決着がついた感じです。実はテクノポップみたいな曲めちゃくちゃ好きです……。
05. NagaRaja
これ!テクノ3部作(?)の中で個人的に1番気に入っています!
恐らく「こういう曲を作ろう」という気持ちより何故か惹かれてしまう江ノ島そのものや関連する伝説に対する憧憬だけで作ったからかと……。
Live使い初めの頃に、かなり手探りで作ったものです。
情景描写から曲を作る時は2パターンあり、片方は物語に沿って視覚情報をダイレクトに音にするやり方で、片方は物語をまとめて抽象化し1度フィルター通してから音楽にするやり方です(NagaRajaは後者)。
江ノ島伝説を元にして前者の方法で作ったのはこちらです(ピアノ曲)
そういえば冒頭の拍子は4/4でなく、4.125/4です。
改めてファイル開くと内蔵エフェクターおかしな使い方していて、それで偶然このような音像になった様です。
しかし、何故こんなに江ノ島に惹かれてしまうのか謎です….主にこんな伝説をイメージしています。
龍伝説 その一「天女と五頭竜」
06. Cursed Destiny -I have opened the Pandora’s box-
1枚目のラスボス……これは本当に半年くらいかかりました。
使用音源全てクリックなしの打ち込み。若干心折れそうでしたが、この度絶対に自分が一番長く触れてきたと思しきクラシック音楽に対する答えが欲しくて必死で作ってました。けど本当に作ってよかった……。
楽器は20種類ほど使っていてほぼ全部リバーブかけただけですが、ビオラだけ少し違和感あったのでEQいじった気がします。音量のオートメーションなどのミックス作業はかなり細かく書いています。それぞれの楽器に役割分担させて情景描写させるのは楽しい作業でした!
冒頭のメロディとても気に入っています!
冒頭~中盤まではIgor Kovalyovの「妻は雌鳥」というアニメーションに音楽をつけるライブの際弾いたものをメロディとして使っています。後半はシェイクスピア的な悲劇を想像しながら感情が爆発するままに曲を展開させました。
07. a time of thaw
これは「雪解けの季節」という意味だったと思うのですが、まさに3~4月の春先、録音作業の終焉と仕事現場の移行、さらに色々なものから離脱する事で自分を取り巻く環境が良い方に変化するであろう予感に対する希望と喜びに溢れてます。終わりと始まりのイメージ。
当初はもっと仕掛けを用意しようとしてたのですが、「曲を難しくする意味とは……」という考えに陥り、結構ポップな展開になりました。録音終盤でかなり疲弊していたせいもあると思います。
ドラム、ライド側は普通のボーカルマイクです。
結果的に1枚目の終焉に相応しい感じになったかなと!!
> DISC2、おまけへ
『Pandora』/ 武田理沙
2018年8/8リリース
フォーマット:CD 2枚組 / デジタル配信
レーベル:MY BEST! RECORDS
カタログNo.:MYRD124
価格:¥2,500(税抜、CD)
【Track List】
Disc-1:
1. at daybreak,
2. Island
3. Pagoda 2018
4. Idle brain is the devil’s workshop
5. NagaRaja
6. Cursed Destiny -I have opened the Pandora’s box-
7. a time of thaw
Disc-2:
1. 鳴
2. 尋常に狂う
3. 業
4. 涅槃
5. 寄生虫
6. 弟切草
7. 孤高の厭世家
8. 革命前夜
9. ラスト・モーメント
作曲、編曲、録音、演奏、プロデュース:武田理沙
ミキシング:武田理沙、佐藤優介
マスタリング:中村宗一郎
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2018.9.29 12:00
カテゴリ:INTERVIEW, PU3_ タグ:blues, classical, electronic, JAPAN, jazz, progressive, punk, rock, 武田理沙