【REVIEW】ALDEBARAN(御伽の森レーベル)/ V.A.
http://www.otoginomori.com/otogi-005/
以前、レーベルコンピ第三弾「夕刻の窓辺」をこのレビューで紹介したが、その後、1枚のコンピをはさんで第五弾としてリリースされたのがこのコンピ「ALDEBARAN」だ。2014年に活動をはじめてから一環して、写真やデザインも含めたトータルコンセプトを打ち出した活動で着実にリスナーを魅了し続けている彼らの今回のテーマは冬(配信開始は2015年3月)。自身はこのコンピを「澄んだ夜空に瞬く星々のような音楽」と表現するが、その彼ららしい表現を含めてトータルコンセプトの中に見事に溶け込んでいる。
1. Footsteps – LTPIMO
満天の空の下、雪をかきわけて進む足音、遠く聴こえる聖歌のような和声、星々の粒子のような電子音、あたたかな吐息のように一瞬だけ登場する歌声、細かく刻まれたフォークトロニカスタイル。LTPIMOのトラックはいつも通り短くまとめられたものだが、このコンピの冒頭を飾るに相応しい天体の音楽だ。
2. virhe – toivoa
続くトラックは活動休止が伝えられたばかりのtoivoa。ミニマルなピアノを軸にしたやわらかなアンサンブルの中に時折浮かび上がる透明感を持ったヴォーカルが静かに展開する。凛とした空気を伝えるのに最低限必要な音を配置したアレンジが印象的だ。間奏とエンディングで微かに強調されるギターのアルペジオがとても美しい。
3. bluestar – ユメノマ
ドリームポップを展開するユメノマは、toivoaの凛とした流れを受け継いで穏やかなBPMを刻むが、ディレイを中心としたdubbyな立体構成でtoivoaとは異なる世界観を作り出す。ブレイクで抑制されたリズムトラックがミュートされると折り重なるヴォーカルとギターの幻想的な世界観が一層強調される。
4. 丘の上のプラネタリウム – axvxa
ディレイを受け継いで、やわらかなアルペジエーターの電子音からaxvxaのトラックがはじまる。シンプルなコード進行と繊細な音の積み重ね、バックで響き続けるディレイによって紡がれていくリズム、低音にも高音にも行き過ぎず配慮された音域のバランスが静謐な近代絵画のようだ。
5. Good Morning – Symboby
本コンピの中ではもっともアブストラクトな展開を指向するこのトラックは、フィールドレコーディングとノイズの美しい配置によって成立している。鳥の声、水琴窟に耳を澄まして聴こえる滴り、遠雷、風にたなびく耳元の低音、時折刻まれるノイズがこれらのフィールドを縦横にコントロールする。
6. Freezing Morning – Fluffytails
エコーの中で美しく遠く響くギターとリズムトラックがメジャーコードを淡く紡ぐ。低音を必要最低限に絞り込み中音域で断続的に繰り広げられるギターはディレイの中でゆっくりとコードチェンジを実現する。明確な旋律を指向していないように思えるが、コードワークを支えるトップノートと低音の重なりが結果として美しい旋律を織りなしている。
7. POWDER SNOW – AKR-FITW
ここで明確なリズムトラックをもつAKR-FITWへと続くが、電子音のあらゆる音域を使いながらも上品なミニマルアプローチによって、前曲からのつながりをスムーズに響かせている。中盤のコードチェンジはとても美しく、その後に見えてくるシンプルなフレーズに向かう高揚感がとても印象的だ。
8. fuyuki – 冬・来 – HIROTA_ENO
続くトラックはドローンとパッドによるアンビエント効果を中心とした構成になっている。フィールドレコーディングを思わせる中音域のレイヤーは寡黙だがとても絵画的だ。重なりあう音を聴いているとゆっくりと音が入れ替わる事で和声の表情を変える効果を醸し出している。
9. Covered in snow – Fujiyama Takuyoshi
最後を飾るこのトラックは静謐なピアノのフレーズと印象派を思わせる転調を軸にした和声がとても有機的で美しい。ピアノを下支えするパッド系の電子音の抑制の利いたミックスは中間部の展開の伏線になっている。そしてさらにエンディングに向かうストリングスのフレーズにもつながる。そのすべてのパートが最後のミニマルな1音の繰り返しに集約されていく。エンディングに相応しいトラックだ。
このレーベルのコンピが放つカラーはすでに確立されたものがあるように思う。どのトラックも見事にレーベルカラーを支えているし、レーベルはどのトラックの魅力も見事に伝えきっているように感じる。前後の曲のつなぎは集まった楽曲の魅力を一層引き立てる組み合わせになっているし、結果として全曲通してひとつの流れの中で聴けるひとつの作品に仕上がっている。美しいビジュアルデザインを含めて想像力をかき立てる仕上がりになっており、その世界観に魅了されてしまう。
テキスト:30smallflowers(@30smallflowers)
2015.3.9 2:31
カテゴリ:REVIEW タグ:fluffytails, JAPAN, ltpimo, ユメノマ, 御伽の森レーベル
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