【LIVE REPORTS】小日向由衣『組織で恋愛ハラスメント』
2023年11/23(祝・日)にあたる勤労感謝の日に青山月見ル君想フで開催された『組織で恋愛ハラスメント』は、9/27にリリースされたアルバム「恋愛ハラスメント」を全曲組織(小日向由衣バンド)で演奏するワンマンライブ。確かな演奏力のあるメンバーとは5年目になる。アルバム制作には足掛け2年を要したが、このライブが小日向由衣による「恋愛ハラスメント」の集大成であるという宣言の元、ライブは開催された。
本編はアルバムの曲順どおりのセットリストであることを事前に知らせる事により、アルバムの世界観を表していた。「楽しい1日にしようね」との短いMCから始まった1曲目。「お菓子な家」はバンドアレンジの完成度の高いまさに1曲目にふさわしい曲。ファンの協力のもとステージに溢れた赤やピンクの風船を掻き分け前方に出ると、ここまで付き合ってくれた観客に感謝を述べた。 2曲目「花 火」はアルバム内でも最もポップな曲。疾走するドラムに、ギター、キーボード、ベースがそれぞれ個性を出しながら爽やかに絡み、ライブハウスが一気に夏に戻ったようだった。
続いて「サイダー」では独特なメロディーを静かながらも情熱的に歌い上げるボーカルと、きらびやかな鍵盤のアドリブをじっくり聴かせた。「ハリボテの恋」ではスリリングなギター伴奏をバックに歌詞にも出てくるテディベアを抱きしめながら、「私の孤独に触れていてよ」と力強くも恋する女性の脆い心情を歌い上げた。そして5曲目は、短冊CDでリリースされた「天の川ぶち壊す!」キャッチーなディスコサウンドと小日向の「月見ル君思フをぶち壊す!」のかけ声に観客のボルテージが一気に上がった。小日向はこの曲で後に使う予定の小道具でもある電話を壊してしまうというハプニングに見舞われた。それほどの盛り上がりぶりだった。MCの時間を使って修理を試み、この間ファンには6曲目にあたる「ブラックコーヒー」のコールアンドレスポンスの練習をさせるという小日向由衣らしい展開に。会場も和やかモードに変わり笑い声で溢れた。コールアンドレスポンスを続けていくと次第にギターは激しさをまし演奏が始まると熱の帯びたボーカルで客席を沸かせた。
7曲目「サカナになる」ではがらりと変わり、丁寧なボーカルの歌い出しから少しずつ楽器が混ざり合っていき、まるで天井の高いライブハウスが水槽かと錯覚するようなメロウな雰囲気に。そしてこの曲の途中で修理した電話をまた床に落とて壊してしまい(実は小日向はライブ中に音出しをしているPC を机ごと吹っ飛ばしてライブを終わらせたことがある)悔しがる可愛らしい一面を見せた。
ここからは怒涛の展開。「恋の呪文」は新しいバンドアレンジで現代 的な曲調に。バンドでやるのは無理だと思われていた怪曲かつ難曲でもあるファン待望の「電話」では不穏なギターが鳴り響いた。音源では冷静な狂気を感じさせる曲だが、ライブならではの抑揚と臨場感があった。続く「8月30日の私」も、リズム隊の完成度が高くアナログシンセとドラムのシャッフルビートの掛け合いが素晴らしい。まさにくり返される8月で揺れているような感覚に陥った。
続く「もしも魔法が使えたら」ではステージの上に大きく輝く月の下でこの曲を歌う為に会場を選んだ事を明かした。今目の前にいる人と、これまで私を知ってくれた人。まだ自分のことを知らないこれから出会う人に向けて『私は間違えなくあなたの為に歌ってます』という言葉を添え歌い始めた。ファンと一緒に手を伸ばし、会場の月を掴む姿に涙が溢れた。この曲は吉田豪とのトークイベント『お悩み鑑定団』やインタビューでも明かされているが、ブルースマンの伝説にでてくるクロスロードに似た逸話とともに生まれた曲でもある。
そして本編ラストナンバー「アイスを捧げて」は2023年の夏の思い出を綴 った曲。歌詞が覚えられず客席から歌詞を掲げてもらった事から定番になっていった曲でもある。「私に全てを捧げて」の言葉通り、それぞれが持ち寄った思い出と共にタイトルにもなっているアイスを捧げた。そして小日向由衣の親友でもあるプラカードを持った『謎の女』に扮したダンサー(眉村ちあき)の乱入により、より一層の盛り上がりを見せ本編を終えた。
アンコール1曲目は今年夏に旅立ったPANTAの最後の提供曲「虹のほほえみ」。この曲は PANTA が小日向由衣のことを綴った詩(前作アルバムの帯文になった)をもとに病床で作り、小日向にプレゼントしたもで、アルバムのボーナストトラックに収録されている。今回この曲をみんなでこの場所で歌うことも、もう1つのテーマだった。スクリーンにはPANTA がただ一度だけ歌った時の映像が流れ、会場が一体となり歌い終わると虹のような笑顔で「ありがとう」と告げた。
アンコール2曲目は4年前に開催された月見ル君思フでのワンマンライブでも歌った曲「水色」。生きることに失望し月に行ったけど、逃げちゃダメだと思って地球に帰って来た。と、4年前の思い出も交えつつMCではこの曲の歌詞のテーマでもある~何かをするのに年齢は関係ない~や、~死ぬまで歌い続けたい~という思に重ね「PANTAさんは死ぬまでステージに立っていた。私もそんな風になりたい」という。力強いメッセージに勇気づけられた。
アンコール3曲目は最も多幸感あふれる曲 「ネコみたいに」。小日向が「ほっぺにキスしたら?」と観客に笑いかけるように歌うと、ファンも「ぎゅっと抱きしめた」と全力で応える姿が幸せに包まれた。
~楽しいことを諦めない~という約束と共に始まったアンコール最後の曲は定番のアッパーチューン「パーティーズ」。踊り狂い歌う小日向由衣と組織の演奏。ライブハウス中を乱れ飛ぶ風船に溢れる笑顔でライブは大団円を迎えた。
「恋愛ハラスメント」とは、恋愛はよくわからない。と苦しみながら作り上げた小日向由衣と彼女のバンド組織、そしてファンたちが大量のハートの風船で愛をぶつけ合う、ハートフルなワンマンライブだった。
また月に還る日まで。
配信
【2023.11.23 セットリスト】
M01 お菓子な家
M02 花火
M03 サイダー
M04 ハリボテの恋
M05 天の川ぶち壊す!
M06 ブラックコーヒー
M07 サカナになる
M08 恋の呪文
M09 電話
M10 8月30日の私
M11 もしも魔法が使えたら
M12 アイスを捧げて
EN1 虹のほほえみ
EN2 水色
EN3 ネコみたいに
EN4 パーティーズ
『恋愛ハラスメント』
/ 小日向由衣
2023年9/27リリース
フォーマット:CD
レーベル:こっこっこレコード / なりすレコード
カタログNo.:KOKKO-004
【Track List】
01.お菓子な家
02.花火
03.サイダー
04.ハリボテの恋
05.天の川ぶち壊す
06.ブラックコーヒー
07.サカナになる
08.恋の呪文
09.電話
10.8月30日の私
11.もしも魔法が使えたら
12.アイスを捧げて♡
13.虹のほほえみ(ボーナス・トラック)
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2023.12.10 18:00
カテゴリ:PU3_, REVIEW タグ:JAPAN, 小日向由衣
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