【INTERVIEW】THIS IS JAPAN 『WEEKENDER』


サグラダ・ファミリアに4人で住んで建築しつづけてるようなものなんです。4人別々に見ているものがあって、それをサグラダ・ファミリアの建築に還元しているという(小山)




–:徐々に今作の話へと移っていきたいのですが、先程からのお話にもあるように、今作では小山さんがほとんどのギターを弾いていて、そこまで重ね録りもされず、ダブルギターでやってきた前作のような印象がないことが一つ。もう一つあるとすれば、ミドルからハイの音域を使ったギターリフが印象的で、初期の頃のような……『ジャポニカ学習装置』の聴き心地もあったんです。とはいえ、一つ一つを見ていくと、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTだったりDr.Feelgoodのようなオールディーズのロックバンドの姿も見えてきたりする作品でもある。ちょっとしたエレクトロな音も使っていたりして、これまでの作品群とは一線を画すような作品と感じました。
杉森:『FROM ALTERNATIVE』は俺が好きなことを多く詰め込んだ気がするんですけど、今作『WEEKENDER』は4人でこのバンドでどんなことができるのか?ということを再検証する部分が多かったかな?そういう意味では活動初期の雰囲気に近いかもしれないです。とはいえ、音楽的な側面で引っ張っていったのは小山ですね。なので、小山の色合いが今までよりも強くなるのは当然だろうと俺は思いますよ。
–:音源が発売されるというタイミングで、お2人はブログ記事をそれぞれにアップされていて、読ませて頂いたんですけど、小山さんが「THIS IS JAPANをぶっ壊せくらいのつもりでやってた」とも書かれてましたね。
小山:1月から3月の間に30曲作ろうと取り掛かったとき、「打ち込みは合わないだろう」とか「ギター2本じゃないとダメだろう」というような思い込みに縛られると、まず30曲も作れない、とにかく色々やってみようと思ったんです。実際今作にはプログラミングを使用した曲もあるし、逆に「いやこれは本当に無理だろう?!」って言われた曲もあったりしました。
杉森:自分からいうと、「鎧を全部脱いで、全裸で作る」というような感覚でしたね。本当にゼロからもう一度作ってみる、という感じです。ここまでの話の流れを聞いてみると、とてつもなく後ろ向きな感じに見られるかもしれないですけど、実際楽しかったんですよ、制作しているとき。
小山:そうですね。どんどん楽しくなっていったんです。
杉森:さっきも話しましたが、俺はどうしても『FROM ALTERNATIVE』の残像やショックからなかなか抜け出せないままだったので、曲が出せなくなっていったんですよ。小山は逆にどんどんアイディアが出てきたみたいで、その姿を見て、「俺も自由にやってみよう」と改めて作り出したら、徐々に徐々に曲ができるようになったんですよね。
小山:ちょうど1年前、12月末に実家へ帰ったんですが、家族が紅白歌合戦やバラエティ番組を見てワイワイしているとき、1階にある空いた部屋のなかで、Macとサンプラーと親父が持ってたギターを使ってデモを作ってましたね。
杉森:ツアーの遠征中にも、車の中で急に始めるんですよ。小山ソングライティングマシーンは一回スイッチが入ると、ずーっと曲作りしだすので。
小山:『FROM ALTERNATIVE』を作っているころにLogicを導入して、映画2本の音楽制作でもパソコンの中で音源制作をしていたので、その辺りで抵抗がどんどん無くなって、使い方を学べたからこそかもしれないですね。

ゾンビとスマイル|杉森ジャック

新譜完成まで、小山目線 – 音楽まみれ


–:映画製作に関わったことで、小山さんが皮を破ったともいえますよね。この局面で活躍されたというのは、とてつもなくツイてるんじゃないかとすら思います。
小山:そうですね。杉森さんが動かなくなってしまったなら、僕が動くしかないし、僕がやれる部分だと思ってましたしね。
杉森:実際そうなんですよ。前作では俺がかなりセカセカやっていて、小山はついてきてくれて、今作では小山がセカセカ作って引っ張って、俺がついていく。バトンタッチしただけ、とも言えますね。
小山:30曲作ろうとなったとき、僕と杉森さんの比率が実はあって、1月は杉森さんが5曲で僕が5曲だったんですけど、2月になると杉森3曲で僕が7曲、3月には杉森2曲で僕が8曲、みたいな感じになっていったんですよ。
杉森:結成した当初から俺と小山はワチャワチャ作っていったし、傍から見てると、楽しくやってるなと思われてただろうし、実際俺ら2人とも面白かったですよ。
小山:そういう意味では、確かにバンドを始めた頃のように楽しくやれたのかもとは思いますね。ただまぁ、初期のころの僕らの音楽に戻ったとはまったく思ってないですね。
杉森:そうだね。もしも音源を持っている人は聴いてほしいんだけども、今作の音は原点回帰をしたとは全く思ってないし、新しい『THIS IS JAPANを出す』ということを面白さの指針の1つとしてましたしね。
–:作曲クレジットが今作では別々になっていますが、かわむらさんがどの程度まで今作には関わっていたんでしょう?
小山:サウンドのほうにはほとんど関わっていなくて、歌詞とメロディラインに関してはかわむらさんが全曲やっている形です。
杉森:初期の頃の制作と一番違うのは、3人でほぼ全曲に取り組んでみたという部分でしょうね。水元はこれまで同様にベースラインを最後にバチっとハメる役割で、3人でサウンド・メロディ・歌詞を組み立てていくというのは、これまでになかったことだったし、本当に面白かったですね。
–:今回は作詞をすべてかわむらさんが担当されていますが、これは前作までの制作とはまた異なっていたんでしょうか?
杉森:詞を書くのが俺であれ誰であれ、できあがった歌詞を必ず他の人が読んで、直しをいれるようにしていたんですよね。今作はもう、作詞という蛇口の栓をかわむらがどんどん開けていったんです。
小山:で、僕らも読んで色々というけども、結局は誰の比重が大きいかな?というところなんですよね。
杉森:そうだね。今作だと、かわむらが俺に一旦カウンセリングのような事をしてみたんです、「俺はこの曲はこうこうこれこれで、こうだと思うんだよね」という話をかわむらにしていって、「なるほどなるほど」と聞いたかわむらが、歌詞を書いてきてくれる。そこに俺とかが少しツッコミを入れて……というような形。陶芸で言うなら、俺が大本になる粘土をドーーンと置いて、「こういう形!」って伝えて、かわむらが「おいよ!」って作っていって、形を作り上げ、窯で焼き、出来上がったものをみて「そうそうこういう形、やっぱりそうなるよな」と俺も納得できる、みたいなね。
–:なるほどです(笑)こうして聞いてみると、前作ではかなりリーダーとして杉森さんが制作していたときとは打って変わって、今作ではかわむらさんと小山さんが杉森さんの代わりになって『THIS IS JAPAN』という姿をガチっと作り上げた。その流れは、端的に申し上げてドラマティックに見えます。
杉森:今回のことで2つ思ったことがあるんです。1つは、俺が思っている以上に、本当にメンバーが頼れる存在だったこと。ライブのMCでも言ってますが、他の3人はドライな奴らだと思うし、バンド始めたてのころは「俺が一生懸命頑張んなきゃ」と思ってたんですけど、いつの間にか俺が引っ張られるくらいに力を持つようになっていた、そこに感動しましたね。もう一つは……「俺が曲や歌詞を作り上げるまで待つ」という選択もとれたんだと思うんですよ、正直。でもそう考えず、「THIS IS JAPANとしてはやく前に進みたい」という本当に前のめりな姿勢、止めるくらいなら新しく生まれ変わって進んでいくんだという、バンドの意志を強く感じたんです。
–:「杉森さんの復活を待って進む選択があったはず」という点、僕自身はすっかり頭から抜け落ちてましたね。
杉森:THIS IS JAPANは俺がやっているバンド、でも杉森自身のものではなく、4人みんなでTHIS IS JAPANである、というロックバンドだということなんです。「杉森がダメでも、俺らでできるっしょ?」という気持ちが明確にあるバンドなんです。実際出来上がった楽曲一つ一つ見ても、「これは俺だ!」なんて思ったりしますしね。
小山:そうですね。こんな例えがハマるかわからないですけど、サグラダ・ファミリアに4人で住んで建築しつづけてるようなものなんです。4人別々に見ているものがあって、それをサグラダ・ファミリアの建築に還元しているというね(笑)
–:実は5年前のインタビューで、近しいことを杉森さん自身がおっしゃってます。「シンガーソングライターがいない、それがこのバンドのバランス感に大きく影響を与えてるのかもしれない」という話です。
杉森:ソングライターがいない……というよりも、THIS IS JAPANをやる人、という感じなのかもしれないですね。1番手杉森、2番手かわむら、3番手小山、4番手水元、みたいに加わってTHIS IS JAPANをやっていくと言いますか。
小山:なんでそこ、バンドに入った順番や誘い順みたいになってるんですか!?(笑)
杉森:たとえだよ(笑)でもそれが今回だと、1番手小山、2番手かわむら、3番手杉森みたいに変わったけども、THIS IS JAPANの音楽には変わりない。こうして順番とかヒエラルキーみたいなのは変わっても、違和感はないんですよ。
小山:そうですね。僕もあまり違和感がないです。

※註【INTERVIEW】THIS IS JAPAN『DISTORTION』


杉森:あとは、かわむらが歌詞を書いて、小山が曲を作っていた今回の制作のおかげで、「THIS IS JAPANにおける俺とは?」という部分がかなりハッキリ分かるようになったんです。自分の中で「あーでもないこーでもない」と悩むより、メンバーから「こうじゃないか?」とはっきり示してくれることで、気づける部分ががかなり多かった。役割……じゃないな……使命というか……「自分にしか出来ないこと」がかなりクリアに見えるようになった。最初にMVの話をしたじゃないですか?まさにこの話なんです。そういったことを通じて、この4人で生み出せる音楽がTHIS IS JAPANらしい、その感覚は強くなってます。
–:小山さんにお聞きしたいのですが、おそらくこれまでのなかでクリエイティブな感性が一番高く、鋭い状態にあったと思うんですけど、その状態になっているいま、THIS IS JAPANをどう見てますか?
小山:前まではかわむらさんのドラムにあまり興味がなくて、エンジニアさんにおまかせしていたんです。だけど、パソコンで色々と作っていく中で、キックの音一つで色んな違いがあることがどんどん分かってきて、そういった細かいとこにも意識が向くようになったんです。レコーディング中にもかわむらさんに「スネア変えませんか?」と聞いて、嫌な顔されるっていうことが何度かあったり。
杉森:それどころか、かわむらがいないところでスネアを何個か叩いたり、タムを叩いたり、ドラマーばりにチェックしてたしね(笑)
小山:練習の時のスネアと、レコーディングで使用するスネアをシレっと変えた時は、かわむらさんに怒られましたね(笑)
杉森:黙ってやったんでしょ?(笑)
小山:僕は一応声かけたんですけどね……(笑)
–:もしかして他のメンバーにも同じようなことを?
杉森:水元にはそういったことしていなかったけど、俺なんてだいぶ前からそういうことありましたよ。
小山:気づかないだろ?と思って音を小さくしたりとか、そういうところは確かに。覚えたことはすぐに実行したいんですよね。



–: では、少しだけ主語の大きい話をします。あと少しすると、2019年が終わり、2020年が始まる、東京オリンピックがある年ですし、新しい10年間が始まります。2010年代の10年間では、ヒップホップがロックよりもセールスとしてもプロップスも大きい存在になったり、サウンドのエッジさでEDMに脅かされたり、何よりスターとなるバンドが生まれなかったことで、ロックミュージックが全体的に人気を落としてしまった10年だったように思えます。そんななかで、このあと2020年、新しく10年を迎えるなかで、THIS IS JAPANはなにを考えているのか?というのをお聞きしたいんです。
小山: ロックは元々物凄く変化してきた音楽だと思うんです。パンク、ニューウェーブ、ポストパンクみたいにごちゃごちゃしてきて、もう一度シンプルにして、ということを繰り返してきた。それはこれからも続くものだと思っているんです。
–: おっしゃる通りだとおもいます。
小山: いまはダンスミュージックのように、ラップトップでエッジの効いた音楽、テクノロジーによって進化した音楽にファンが増えていて、バンドミュージックのようなスタイルの音楽からは離れていってしまっている、と。でも、The Prodigyのように、テクノロジーが進化した分だけそれを吸収するロックバンドが出てくるだけだとも思うんです。なので、このラリーはまだまだ全然続くとおもっているし、草野さんの仰るような悲観的な見方はしてないんです。
–: ありがとうございます。杉森さんはいかがでしょう?
杉森: いまはサブスクとYouTubeの時代になったことが大きいと思っているんです。昔なら新曲を出して、バンドを知ってもらって、次の音源を聴いてもらう、そんなような順番だったと思います。でもいまは、1曲好きになったら、サブスクで過去の音源を簡単に聴けるし、「昔はこんなこともやっていたのか!こういうこともできるのか!」という風に成長してきた流れがハッキリと、しかも身近に分かるようになった。
–: なるほどです。アクセスしやすくなったからこそ、そういった変化もありますよね。
杉森: その通りです。渾身の一曲を世に産み落とす!ということより、バンドとしての成長や新しい変化が見てもらいやすくなったし、気づかれやすくなったわけで。ジャンルや、シーンといったものに囚われず、それはバンドの存在そのものが、ハッキリと売り物になっていく時代に移り変わってきたんだなと思うんです。
–:ありがとうございます。音楽を生み出すという部分についてはどう考えてますか?
杉森:ソロのかたとは違って、俺らバンドの良いところはチームであるところなんです。メンバーが集まって、それぞれにアイディアを出し合い、これまでのことに引っ張られず、新しくて面白いものをドンドン作っていく。昔に比べて、そっちの方がより大きな意味を持ちはじめてると思ってます。俺らは俺らで、俺らが生み出せる音楽をやっていくだけです。
小山:ソロの方々はよくフューチャリングしたりコラボしたり、色んな人と絡もうとするじゃないですか?あれはなぜなんだろう?と思っていたんですけど、いまの杉森さんの話を聞いてて合点がいくところがありますね。自分のコントロールのなかで良いものができる場合もあるし、逆につまらないものしかできないときも出てきてしまう、自分にとって予期してないものが生まれることがあって、面白さが出てくると。
杉森:俺と小山で作っているのが、杉森fearturing 小山みたいなこと?
小山:そうです(笑)
杉森:そうだね。あとは一人で音楽を作りやすくなった分、スピード感は半端なく早くなったわけで、そこに対抗するのなら、自分たちの音楽を深く理解しているメンバー4人分の脳みそで、どう競り勝っていくか?というところになるかと思ってます。
(2019年12月上旬 新宿にて)

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2019.12.30 22:01

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