【INTERVIEW】阿佐ヶ谷ロマンティクス『街の色』



古今東西、素晴らしい音楽には、何かしら一方向に向けられた統制が取られている。それはコード進行によるもの、それは音の質感によるもの、それは音に乗って運ばれる言葉やテーマ、そして音楽を紡ぐ者の想いによるもの。
それぞれが絡み合い、一つの統制とバランスが整った音楽は、総じてグッドソングになって聞く人の心を揺り動かしてくれる。

今回インタビューに答えてくれた阿佐ヶ谷ロマンティクスは、今年1月に初アルバムとなる『街の灯』を発表した。レゲエ/ロックステディのルーズなグルーヴ、J-POP/歌謡曲のメロディ、切なさと無情感に溢れた言葉、3つが混ざりあった叙情的な
グッド・ミュージックとなった。バンドの中心人物である貴志とドラムの古谷に、今作を通じて彼らバンドのメカニズムと意識を聞くことができた。

古谷『対バンしたバンドの中で、一番仲が良いのはWanna-Gonnaですね。マインドが私達と凄く似ているんです』

草野:阿佐ヶ谷ロマンティクスさんのプロフィールを追いかけてみると、川口や代々木や新百合ヶ丘などが出てくるのですが、結成は早稲田大学ということでよろしいでしょうか?
貴志:早稲田大学の中南米研究会というサークルに入っていて、サークルを引退した後に集まって結成しました。
草野:顔を見合わせていた5人だったんですね。早稲田の音楽サークルというと、オリジナルの曲を作って披露するサークルもあるわけですが、どういった音楽をコピーしていたんでしょう?
貴志:カプリソ/ロックステディ/レゲエ / ダブなど中南米の音楽です、といってもメインはカリブ海の音楽をコピーしていました。僕はロックステディが好きだったので、The Heptones、Uniques、Paragons、Derrick Harriottとか色々やってましたね。
草野:ものすごく根本的な話なんですけど、そういった音楽と出会ったのはいつごろだったんでしょう?
貴志:大学に入ってからですね。
草野:ということはそれまで全然違う音楽を聴いていたんですよね?古谷さんはどうでしょう?
古谷:東京スカパラダイスオーケストラとかフィッシュマンズを聴いているうちに、興味を持つようになりました。
貴志:先輩に教えてもらったり、レコードショップ行ったり、御茶ノ水のジャニスに行ったり、Youtubeなどでdigったりして良い曲を見つけるとコピーしていたんです。
古谷:そうやって見つけてコピーをするんですが、ガッツリと完璧なコピーをするんじゃなく、途中からソロを回してみたりして、ふわっとコピーする感じですね。
草野:ジャズみたいですね。
貴志:全然原曲に忠実ではやってなかったよね。
古谷:元々はリバーブがかかってないのに、「ここでリバーブかけてスネアいれよう!」って感じでやってみたり、ものすごく遊んでました。
草野:普通の軽音部とかですと、ロックバンドの曲をそのまんまにコピーして満足というような感じになりがちですが、全然違いますね。
貴志:ガッツリ3年間、カリブ海地域の音楽に浸ってましたね。
草野:なるほどです。濃密な3年間を過ごしてサークルを抜けた後、阿佐ヶ谷ロマンティクスを結成することになったということですが、なぜ結成することになったんでしょう?
貴志:サークルを引退して演奏機会が無くなってから外にアウトプットしていきたいという気持ちが強くなったのがきっかけです。
古谷:あとは単純に、バンドをやりたい!という気持ちが大きかったですね。
草野:阿佐ヶ谷ロマンティクスというバンド名ですが阿佐ヶ谷に強い思い入れがあるということでしょうか?
古谷:阿佐ヶ谷という街はメンバーみんな好きなんです。最初にメンバーみんなで集まった場所でもありますし、思い入れは強いですね。
草野:バンドを始めるにあたり、「こういうバンドになりたい」とか「こういう音をやりたい」というような具体的なイメージはあったんでしょうか?
古谷:レゲエとポップスをうまくミックスできた音楽がやれればいいねという話はざっくりしましたね。参考にしたバンドとかあったっけ?
貴志:無かったと思う。個々人で参考にしていたものはあると思うけど。
古谷:まずギターで弾き語った音源を、みんなに聞かせてから曲作りを始めるしね。
草野:その点をお聞きしたかったのですが、曲作りはどのように進んでいくんでしょうか?
貴志:他のバンドよりもアバウトだと思います。私が紙にコードを書いてみんなに配って「雰囲気はこんな感じ」とザックリ伝えているだけですし。
古谷:「雰囲気は分かるでしょ」みたいな?
草野:どういう雰囲気ですかそれ(笑)
貴志:スタジオで合わせて、録音した音を持ち帰ってトライアンドエラーして積み重ねで作っていくのが、僕らのやり方ですね。



草野:貴志さんの中で完全に作り込んで、そのとおりに演奏してくれ!という流れではないんですね。
貴志:そうですね、完全にメンバーにまかせてます。もちろんメンバーが奏でてる音が自分の想定していたものと違うと指摘はしますが。
古谷:そういう場面になると、メンバーに「違うよね」という話をしてくれます。ただまぁ、すごい細かくなときとすごいアバウトなときの差が激しいんですよね(笑)アバウトなときは叩きながら顔だけで表すし、的確なときは「バスとハイハットの間を埋める感じで~」とか「ベースよりももうちょっと後ろで叩いてみて」みたいに言ってくれますね。
貴志:このバンドは民主主義的だと思っていて、そこまでガッチリ作り込んでみんなに弾いてもらうというやり方はこのバンドの曲の作り方じゃない。最初はみんなに自由に投げたほうが想像以上のものが出来る。サークルから知っていて信頼しているので、彼らがどういう音を奏でるかも大体わかるし、お互い譲れないところは譲らないし。それが丁度いい塩梅なのだと思います。
草野:これまで対バンしたバンドのなかで、仲の良いバンドやライバルといえるバンドはいますか?
古谷:一番仲が良いのはWanna-Gonnaですね。マインドが私達と凄く似ているんです。
貴志:自主企画に呼んでもらったりしているしね、なにかあったら彼らを呼ぶみたいな(笑)
古谷:お互いにリスペクトしていて、切磋琢磨している関係かなと思います。
貴志:あとは夕暮れの動物園でしょうね。一緒にスタジオに入ったりします。年齢は離れているんですが、すごい良好な関係だと自分の中で思っています。

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自分の野望としては、リスナーの方が自分たちの音だけで・・・

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2017.3.16 22:08

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