【LINER NOTES】 2/7(火)にワンマンを控えた姫乃たま アルバム 『First Order』のセルフライナー公開
姫乃たま。
フリーランスの地下アイドルとしてキャリアを積み重ね、昨年にはフルアルバムをリリースした彼女は来週2/7(火)に渋谷WWWにて3rdワンマン『アイドルになりたい』を開催する。
ワンマンを直前に控えた彼女が書き上げた『First Order』のセルフライナーノーツをindiegrabで初公開。
姫乃たま『First Order』セルフライナーノーツ
地下アイドルにとって、CDのリリースがどのくらい重要なのか、時折考えます。
私が地下アイドルとして活動を始めた2009年は、まだ業界全体が萌えとかアキバ系文化を引きずっていて、地下アイドルは現在よりも重度の蔑称でした。
知人の編集者は、AKB48がテレビに出始めた時を思い出して、「そのファンも含め、見てはいけないものを見てしまった」と話します。この発言は地下アイドルの文化が、メディア不在でも完結していたことを表わしていました。
また、活動初期のPerfumeをインターネットで追いかけていた知人は、ライブイベントで何が起こっているのかわからないことから、ライブハウスに通うようになったと言います。インディーズで活動する女の子達にとって、重要なのはメディアよりもライブハウスなのです。
そのため地下アイドルには、音源よりもライブのほうが良いという現象がしばしば発生します。あくまで音源はライブの副産物だったのです。CDRに手焼きして、ライブハウスで手売りすれば完結しますし、ファンにとっても手作り感が良いといった風潮すらありました。
その文化はそれで面白いのですが、これを長く続けていると、息苦しくなる人がでてきます。私のように。飽き性だからかもしれません。
2016年の夏に、ボーカルと作詞を手がけた『僕とジョルジュ』を流通した時、全国の様々な人にCDが届いていることで、風穴があくのを感じました。私は今でも、過去の自分の活動を憎みながらも愛していますが(愛しているから憎んでいるとも言える)、ライブとは異なる魅力をきちんと持ったアルバムを制作して流通したいと思いました。
そうして制作されたアルバム『First Order』は、デビュー当時から私の音楽を支え続けている作曲家のSTXさんを始め、ギタリストに悪友とも言えるJOHN★MANJIRO-metalさんとmsysさんが参加してくれています。そこへ、藤井洋平さんと宮崎貴士さんが合流してくださり、飽き性らしく様々な曲が詰め込まれた13曲入りの55分のアルバムが完成しました。
そして『First Order』は、私にいくつかのことをもたらしてくれました。中でも大きな出来事は、ワンマン・ライブ(2月7日19時開演、渋谷WWWにて)を開催する気持ちになったこと。それから、祖母が毎日聴いていることです。
少し長くて重たい音源かもしれませんが、いまスピーカーの前で正座して音楽を聴く人も滅多にいないと思い、このボリュームでリリースしました。以下のセルフライナーノーツは、発売日のイベントで熱心なファンの人と正座して(嘘です、椅子に座って)聴きながら執筆したものです。
『First Order』/ 姫乃たま
2016年11/23リリース
フォーマット:CD
レーベル:My Best! Records
カタログNo.:MYRD106
価格:¥2,400(税抜)
【Track List】
01. 来来ラブソング
02. ねえ、王子
03. マジで簡単なコネクション
04. DSK019
05. 愛はさかあがり
06. 拝啓ジョー ストラマー
07. 静かに 静かに
08. 言いたことがあるんだよ
09. おかえりのうた
10. そういこと
11. さよならのワルツ
12. 人間関係
13. くれあいの花
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01:来来ラブソング
- 作詞:姫乃たま 作曲:STX ギター:msys
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新宿は歌舞伎町の路地裏に、局地的に有名な中華料理屋があって、そこで遊んだ犬が、次に足を運んだ時にはいなくなっていて、メニューをよく見たら犬鍋があったという。店内を平然と猫(こいつは食われない)が歩いているような店だったので、その時のシュールな衝撃を猫目線で歌詞にしました。中華っぽいサウンドは、アイドルと相性がいいと思っています。ギターを演奏してくださったmsysさんは、ギターが本当に好きで良いなあと思います。
もともと芸名にちなんで、アルバムの作詞テーマを猫にしていたのですが、その案はどこへやら。なくなったと言えば、STXさんが作曲した「Himectro(仮)」というエレクトロの楽曲だけ、諸事情で収録を見送りました。彼はTOKYO ELECTRO BEAT PARKを主宰しているのですが、本職のことは見失ってしまうことがありますよね。犬が食べられて、猫が平然と歩いているように。
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02:ねえ、王子
- 作詞・作曲:STX
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アルバムの中では最も古い楽曲で、高校生の頃からもう何年もライブのアンセム曲であり、過去に手売りしていた音源にも収録されています。録音や大事なライブのたびに、トラックもボーカルもブラッシュアップしてきたので、継ぎ足しに継ぎ足して出来た秘伝のたれのような曲です。
音源のコーラス部分は、私のピッチが安定しないことや、音に幅を持たせたいという理由から、当初STXさんのほかに、AkabaYuuichiroさん(ROA/ex.SNAIL RAMP)にも参加してもらっていましたが、今回の収録でやっと私の割合が増えました。歌詞が「姫乃たまらしい」と、よく褒めていただくのですが、作詞はSTXさん。私よりも姫乃たまのことを俯瞰して見られるのだと思います。羨ましいです。
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03:マジで簡単なコネクション
- 作詞:姫乃たま 作曲:STX
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ロック系アニソンのようなバンドサウンドは、私が活動を始めた頃、電波ソングと共に地下アイドルの中で流行していました。あえてすべての楽器を打ち込みで制作することによって、当時の自分を俯瞰して見るという意味合いが生まれています。
サビ以外のメロディと歌詞が、レコーディング最終日まで決まらず、制作しながら録音しました。歌詞の内容が、地下アイドル業界について執筆した自著『潜行 地下アイドルの人に言えない生活』を思わせますが、特に人を挑発したり刺激したりしたい意図はありません。というか、歌詞と作詞家はイコールではありません。
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04:DSK019
- 作詞:姫乃たま 作曲:藤井洋平
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アルバムの1曲目として候補にあがっていた楽曲です。当初、仮タイトルに「あそこのディスクユニオン」「ディスクユニオンでバイトをサボってる男の子」などがありましたが、前者は地味、後者はアルバイトが仕事をサボっていると思われそうという理由で、ディスクユニオン下北沢店の略号と店番号に落ち着きました(DSKって大好きの略でもあるからいいね、というアキバ系アイドル的思考も含む)。
記号っぽいタイトルってニューウェーブみたいだね、という話が、アルバムのロゴデザインの着想にもなりました。『First Order』にとって、キーになった曲です。しかし、地元のディスクユニオン下北沢店にはよく足を運びますが、女性客を見かけたことがありません。そして平日のお昼にいつもいる男性がいます。1曲分歌詞が書けるくらいには、います。
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05:愛はさかあがり
- 作詞:姫乃たま 作曲:宮崎貴士 ドラム:堀江研介
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「恋愛をすると最初は楽しいのに、だんだん辛くなって逆上がりみたいだね」という内容の歌詞が、宮崎貴士さんの柔らかくて寂しい曲に乗っています。宮崎さんは以前から、僕とジョルジュの活動も見守ってくださっていたそうです。
リリースしてから気が付いたのですが、逆上がりは途中で止まらないので、頭に血は上りません。完全に運動音痴の発想です。タイトルは、『愛のさかあがり』(とり・みき)から。
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06:拝啓ジョーストラマー
- 作詞:姫乃たま/STX 作曲:STX ギター:JOHN★MANJIRO-metal
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「ジョーストラマー』という名称で送られてきたこの楽曲は、制作途中に曲調が引っ張られないように関係のない仮タイトルを付けるのが癖のSTXさんから届きました。そして仮タイトルに引っ張られがちな私が、ジョーストラマーに憧れる女の子をテーマに作詞して完成した曲です。
楽曲自体は比較的古くからあって、2015年2月の誕生日ライブ阿佐ヶ谷ロフト)で初披露しています。その後、アルバム制作の目処が立たずに、ライブでは徐々に歌われなくなっていました。
今回、収録した音源は『First Order』のために録音したものではなく、何年も前にテストとして録音したものです。とても暑い夏の日でした。アルバム用に制作した音源のほうが、カラオケの音質も、ボーカルのピッチも安定していましたが、声に輝きがあるという理由で過去の音源が採用されました。技術には勝てないものがあると知って、私もSTXさんも複雑な嬉しさを覚えました。
アコースティック・ギターは、私の最初のオリジナル曲『三両列車でにゃんだりあ』を作曲してくれたJOHN★MANJIRO-metalさんが参加してくれています。
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07:静かに静かに
- 作詞・作曲:STX
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いつかSTXさんに、「サンプラーを使ってライブをしたい」と言ったことがあって、当時は「うまくいかないから止めたほうがいい」と言われてそれっきりだったのですが、その会話をどこかで覚えていてくれたのかもしれません。ほとんど私の声で構成されていますが、ベースとドラムだけ入れたのは、斉藤由貴のアカペラ・アルバム『ripple』1987年)がそうだったから。不思議なほどメロディが覚えられなくて、レコーディングにとても時間がかかりました。
ちなみに仮タイトルの「raindrop」は、私が頑なに横文字を嫌がって改題したのですが、結局アルバム・タイトルが横文字になってしまったので、なんとなく気まずい気持ちでいます。すいません。
姫乃たま3rdワンマンライブ
『アイドルになりたい』
2017年2/7(火・大安吉日)渋谷WWW
ACT:
姫乃たま /
僕とジョルジュ(金子麻友美 / 佐久間裕太 / 佐藤優介 / 澤部渡 / シマダボーイ / 清水瑶志郎 / 姫乃たま / 山崎春美) / 藤井洋平
DJ:中村保夫(和ラダイスガラージ)
Open 18:00 / Start 19:00
Adv ¥2,500 / Door ¥3,000(税込 / d別)
チケット予約:
e+
2017.2.2 21:00
カテゴリ:REVIEW タグ:idol, JAPAN, カメラ=万年筆, スカート, 佐久間裕太, 佐藤優介, 僕とジョルジュ, 姫乃たま, 山崎春美, 清水瑶志郎, 澤部渡, 藤井洋平, 金子麻友美
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