【REVIEW】self titled(tanukineiri records) / ユメノマ
「新緑の風」のMVが公開されてから続くユメノマの作品群はリミックスワークを経て、バンドサウンドを中心とした本作にたどり着いた。ここまでの一連の流れは空間を音で描く、サイケデリア漂うドリームポップ・サウンドの美学に貫かれている。本作はその総仕上げのような作品に仕上がった。
1.新緑の風
逆回転のギターフレーズ、高音を行き来するベース、ストリングス、デッドなドラム、アンディパートリッジ経由、USインディーサイケを思わずにはいられないイントロから引き込まれてしまう。テーマ部分のテンポダウン、エンディングの仕掛け、どれもとても美しい。言葉少なに、淡い世界を紡ぐヴォーカルと絞り込んだ音色でありながらカラフルなトラックがとても綺麗に折り重なる。
2.ミズノネ
アコースティックギターはRCA初期のボウイを連想させる陰影、パーカッションは前のトラックからのつながりをスムーズに響かせる。ライドシンバルの細やかな音符とヴォーカルの重なり具合はエレクトロニカ的なアプローチだが、テーマの美しいコーラスを経た中間部の透明感はエレクトロニカの枠におさまらないアレンジだ。
3.settingsun
前のトラックのエンディングでみせる下降するコードワークが着地すると、アコーディオンとアコースティックギターが瑞々しい言葉を包む。中間部のアコーディオンのソロから続くブリッジのリズムトラックのダビーな抜き差しは浮遊感を効果的に演出している。テーマ直前のコードワークはシンプルなメロディーを美しく飾り立てる。
4.bluestar
アンビエンスの効いた空間に浮き沈みする冒頭のヴォーカルは、1980年代のUKインディーも連想させる。しかし実際にメロディーが進んでいくと、本作中もっともヴォーカルが前面に押し出されたアレンジにつながれていく。あらゆる要素がバランスよく織り込まれたアプローチもワンコードのテーマも美しい。
5.グリーンサン
パッド風のSEからつながる本作最後のトラックは、アルペジオとカッティングがワンコードを刻むポストロック的なミニマルさが印象的だ。リズムトラックは賑やかにエンディングを飾り立てる。ここでの歌詞はまるで鳴り響く音をそのまま言葉にしているような不思議なシンクロ感をもって迫る。
幅広い楽想が安定した美学の中で様々に姿を変えて音を響かせる。そこにはあらゆる時代のポップスが織り込まれている。そして意欲的な言葉と音の関わり方は、繰り返し聴いて確認したくなる不思議な魅力を放っている。特定の音楽におもねる事なく、それでいて一定の美学が保たれている。美しくバランスの良い作品だ。
この作品はライブ会場、tanukineiriオンラインショップ、池袋にあるTOKYO FUTURE MUSICで販売される。
『ユメノマ』/ ユメノマ
2016年5/25リリース
フォーマット:CD(48khz/24bit DLコード付)
レーベル:tanukineiri records
カタログNo.:TNR-100/TNRCD002
価格:¥500
【Track List】
1.新緑の風
2.ミズノネ
3.settingsun
4.bluestar
5.グリーンサン
tanukineiriオンラインショップ / TOKYO FUTURE MUSIC
テキスト:30smallflowers(@30smallflowers)
2016.5.25 21:00
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